ジュニアグランプリファイナル23 男子シングル展望

前回のジュニア女子に続いて今回はジュニアの男子の展望です。

 

○今季の成績

Event Pl Name Nation Total SP FS
Trophee Metropole Nice 2 Francois PITOT FRA 236.23 84.56 151.67
Denis Ten Memorial 1 Juheon LIM KOR 234.86 76.52 158.34
Nepela Memorial 4 Hyungyeom KIM KOR 230.46 75.24 155.22
Nepela Memorial 5 Adam HAGARA SVK 222.78 74.27 148.51
JGP Istanbul 2 Rio NAKATA JPN 222.35 73.55 148.80
JGP Budapest 1 Hyungyeom KIM KOR 222.15 72.61 149.54
JGP Gdansk 1 Juheon LIM KOR 221.55 76.08 145.47
JGP Austria 1 Adam HAGARA SVK 220.33 74.01 146.32
JGP Armenia 1 Daniel MARTYNOV USA 220.09 79.24 140.85
JGP Osaka 1 Francois PITOT FRA 219.86 71.49 148.37
JGP Osaka 2 Juheon LIM KOR 217.95 75.38 142.57
JGP Bangkok 1 Rio NAKATA JPN 217.65 75.28 142.37
JGP Bangkok 2 Francois PITOT FRA 217.50 76.52 140.98
JGP Austria 2 Hyungyeom KIM KOR 211.76 73.45 138.31
Warsaw Cup 4 Francois PITOT FRA 211.36 78.55 132.81
JGP Osaka 3 Daniel MARTYNOV USA 207.98 70.75 137.23
Warsaw Cup 8 Adam HAGARA SVK 205.53 66.90 138.63
Tirnavia Ice Cup 2 Adam HAGARA SVK 200.24 59.86 140.38
JGP Budapest 4 Adam HAGARA SVK 200.10 74.94 125.16
Warsaw Cup 11 Daniel MARTYNOV USA 197.36 68.32 129.04

男子はシニアの試合に出られる選手もいるので、かなりの選手がジュニアグランプリシリーズ以外の試合も出ています。ジュニアグランプリシリーズ以外の試合はすべてシニアグレードの試合になっています。

シーズンベストはシニアの試合で出した選手が多く4人います。フランスのフランソワピトー選手がシーズンベストは1位で236.23まで出しています。ただこの試合はISU非公認のB級試合です。ピトー選手はジュニアグランプリシリーズのスコアとしては6番目の219.86です。

ISU公認では韓国勢の2人が強く230点超えの試合があります。この2人はジュニアグランプリのスコアでは2位3位。ジュニアグランプリのスコアで1位は中田璃士選手です。

ただ、ジュニアグランプリシリーズのスコアは非常に拮抗しています。6人のいい方の試合は最高で222.35 最低で219.86 2.5点の範囲に全員入っているという非常に僅差の中にいます。

 

ショートプログラムの構成

  Rio
NAKATA
Hyungyeom
KIM
Juheon
LIM
Adam
HAGARA
Daniel
MARTYNOV
Francois
PITOT
1 3A 3A 3Aq 3F+3T 3A 3A
2 3Lz! 3F+3T< 3F+3T 3A 3Lz 3Lz
3 FSSp4 CCSp4 CCSp4 CCSp3 CCSp3 FSSp4
4 3T+3T 3Lzq FSSp4 3Lz 3F!+3T CCSp2
5 CCoSp4 StSq4 3Lz FSSp4 CCoSp4 3F!+3T
6 StSq3 FSSp4 StSq4 StSq3 StSq3 StSq2
7 CCSp2 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 FSSp4 CCoSp4
Base 35.24 36.75 37.59 36.59 36.95 35.75
TES 39.25 38.50 40.90 42.14 42.57 39.60
PCS 36.03 34.95 35.18 32.80 36.67 36.92
Total 75.28 73.45 76.08 74.94 79.24 76.52

構成はジュニアグランプリの2試合の中で技術点が高かった方の試合を載せています。基礎点が高かったけれど技術点は低かったというものよりも、基礎点が低くても技術点が高かった方が優先されて載せられています。

ショートプログラムはやはり男子もジュニアの構成は似たり寄ったりになってきます。

女子と違ってトリプルアクセルは可ですが、男子の場合は全員トリプルアクセルが入ってきます。単独ジャンプはルッツ強制で3回転ルッツ。コンビネーションは3F+3Tにほとんどなりますが、中田璃士選手のみは3T+3Tです。

ステップは韓国勢2人はレベル4が取れています。スピンのレベル4率はシニアも含めて男子より女子の方が高い傾向がありますが、ここでもレベル4を3つ揃えたのは韓国勢の2人です。

基礎点は最大で37.59 最低で35.24ですので2.35の差です。レベル4を揃えればその差はもう少し小さくなります。

PCSはハガラ選手が32.80でやや落ちますが後はそれほど差がありません。結局ショートは出来栄えの差がどれだけ出るか? という勝負です。

 

○フリーの構成

  Rio
NAKATA
Hyungyeom
KIM
Juheon
LIM
Adam
HAGARA
Daniel
MARTYNOV
Francois
PITOT
1 4T 4T 3A+3T 3A+2T 3A 3A+2T
2 3A+1Eu+3S 3A 3A 3A 3A+2T 3A
3 FCSp4 3Lz+3T 3Lz+2A+SEQ 3F+3T CCSp4 3F!
4 3F 3F FCCoSp4 3Lo 3Lo 3Lo
5 3Lo FCSp3 3F+2T+2T FCCoSp4 3Lz CSSp3
6 3Lo+2T 3Lz+3T 3Lz 3F+2A+2A+SEQ ChSq1 ChSq1
7 3T 3Lo< 3Lo 3Lz 3Lz+2A+2T+SEQ 3S
8 CSSp4 3S+2A+2A+SEQ 3S CSSp4 3F!+2T* 3Lz+3T
9 ChSq1 ChSq1 CCoSp4 3S 2A 3Lz+2A+2A+SEQ
10 3T+1A+SEQ CCoSp4 CSSp4 ChSq1 FSSp4 FCSp4
11 CCoSp2 FCCoSp4 ChSq1 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp3
Base 61.47 73.11 66.91 69.01 61.81 68.89
TES 72.90 79.04 74.23 78.19 69.15 74.51
PCS 75.90 71.50 71.24 68.13 71.70 73.86
Total 148.80 149.54 145.47 146.32 140.85 148.37

フリーは構成に差が出てきます。4回転が入っているのは中田璃士選手とキムヒョンギョム選手の2人。後の4人は4回転無しでトリプルアクセル2本です。4回転のある2人はトリプルアクセルが1本になっています。

コンビネーションでセカンド3回転、3連3サルコウ、シークエンスアクセルと3つそろった選手はいません。ダブルアクセル2つをシークエンスに入れるという選手が結構いるのは特徴的でしょうか。

基礎点はキムヒョンギョム選手が73.11と1人だけ70点を超えています。同じ4回転持ちの中田選手は61.47 構成にルッツが入っておらず2回飛ぶジャンプがループとトーループなところがもともと弱いですし、スピンのレベル2やシークエンスがシングルアクセルになっていたりセカンド3回転が無いなどで基礎点下がっています。強い構成になっていないので、勝つためにはノーミスに近い演技が求められそうです。

4回転の無い4人はトリプルアクセルともう1つはルッツあるいはフリップが2回飛ぶジャンプとして選ばれています。その結果、4回転持ちの中田選手より基礎点が上になっています。4回転持ちで2回飛ぶジャンプがルッツとトーループで、3連続をシークエンスでダブルアクセル2本入れてコンビネーションでもダブルトーループは無い、という構成のキムヒョンギョム選手が構成面ではやはり一枚上で、1つくらいミスしても技術点では優位です。一方で、中田選手はPCSが1位。4回転持ちですが出来栄え勝負で何とか勝ちたい、という構図になっています。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
Rio NAKATA 222.35 111.32 72.91 8.22 21.41 8.49
Hyungyeom KIM 222.15 105.79 82.70 4.41 21.35 8.90
Juheon LIM 221.55 106.42 77.90 5.02 22.86 9.35
Adam HAGARA 220.33 100.98 80.00 11.05 21.80 6.50
Daniel MARTYNOV 220.09 108.37 73.46 7.33 22.93 8.00
Francois PITOT 219.86 108.29 78.25 5.88 19.40 8.04
Juheon LIM 217.95 107.73 79.08 0.97 21.50 8.67
Rio NAKATA 217.65 107.72 73.10 7.44 21.29 8.10
Francois PITOT 217.50 109.25 77.06 4.15 20.26 6.78
Hyungyeom KIM 211.76 103.48 85.29 -8.31 22.30 9.00
Daniel MARTYNOV 207.98 104.74 70.32 4.15 20.58 8.19
Adam HAGARA 200.10 97.36 78.40 -0.29 21.38 7.25

ジュニアグランプリシリーズ2試合でのショートフリーあわせた要素別のスコアを並べています。

PCSは中田選手が強いです。悪い方の試合でも100点台後半まで出せました。ピトー選手がそれに続きます。ハガラ選手はPCSはやや落ちます。

ジャンプの基礎点はキムヒョンギョム選手が2試合とも80点超えです。ハガラ選手もいい方の試合では80点に乗せました。中田選手は2試合とも70点台前半で、4回転持ちながら基礎点面では不利です。

ジャンプの加点はハガラ選手が二桁稼いだ試合がありました。中田選手が2位で+8点得ていることがあります。キムヒョンギョム選手はこちらはいい方の試合でも程々、悪い試合だとかなりのマイナスを背負いました。

スピンはマルティノフ選手が1位ですが22.93と22点台まで。他の選手も21点台までは出しますのでそれほど差は無いです。

ステップ系要素はイムジュホン選手が9.35で1位。他の選手も8点台くらいは出せることが多いですがハガラ選手は少し落ちます。ピトー選手もいい方で8.04悪い方は6.78ですからやや劣るでしょうか。

大きな差は付かず、いい出来の選手の中で際どい点差で最後の勝負がつく、みたいな構図になりそうな雰囲気があります。

 

男子は韓国2、フランス、スロバキアアメリカ、日本が各1と国籍は割とばらけました。実績は非常に僅差です。その日の出来で誰が勝ってもおかしくないし、誰が6位でもおかしくないです。シニアジュニアのシングル4種目の中で1番読めないのがジュニア男子かと思われます。

中田選手は2人しかいない4回転持ちなのに基礎点で見ると優位に立てていないという不思議な状態です。日本勢はシングル4種目に出ますが、この男子ジュニアだけはただ1人の出場。表彰台に日本人選手が乗れるかどうかわからないなあ、と思われるのはこの男子ジュニアだけです。東日本や全日本ジュニアを見ると、少し調子落とし気味かなあ、という印象ですが、12月に向けてまた調子を上げてきているかどうか? その日の出来で優勝もあれば6位もある、際どい勝負になりそうですが、楽しみでもあります。