世界選手権24 男子シングルプレビュー

女子に続いて男子です。同じように、今シーズンのこれまでの実績から世界選手権の展望をしていきます。

 

○今シーズンの戦績

  Name Nation Season best 2nd best Worst National
1 Ilia MALININ USA 314.66 310.47 281.68 294.35
2 Yuma KAGIYAMA JPN 307.58 288.65 265.59 292.10
3 Adam SIAO HIM FA FRA 306.78 298.61 276.17 304.41
4 Shoma UNO JPN 297.34 286.55 279.98 298.04
5 Kao MIURA JPN 274.56 267.81 242.95 280.08
6 Junhwan CHA KOR 272.95 254.86 216.61 275.94
7 Mikhail SHAIDOROV KAZ 264.46 256.34 235.29  
8 Lukas BRITSCHGI SUI 263.43 254.60 229.37 264.89
9 Boyang JIN CHN 258.67 256.89 226.79  
10 Aleksandr SELEVKO EST 256.99 244.46 214.18 235.99
11 Nikolaj MEMOLA ITA 256.24 250.37 199.38 248.68
12 Deniss VASILJEVS LAT 256.18 255.15 215.34  
13 Gabriele FRANGIPANI ITA 251.59 246.09 187.55 239.78
14 Nika EGADZE GEO 243.35 243.31 233.16  
15 Wesley CHIU CAN 240.38 230.52 208.82 232.15
16 Vladimir LITVINTSEV AZE 237.44 228.57 209.21  
17 Jason BROWN USA 236.75   236.75 264.50
18 Camden PULKINEN USA 230.84 229.32 210.46 262.33
19 Luc ECONOMIDES FRA 230.74 212.91 204.97 243.59
20 Hyungyeom KIM KOR 230.46 223.61 211.76 229.50
21 Vladimir SAMOILOV POL 230.17 222.94 202.43 192.01
22 Adam HAGARA SVK 225.61 222.78 200.10 208.93
23 Nikita STAROSTIN GER 220.38 211.85 198.32 198.94
24 Roman SADOVSKY CAN 217.83   217.83 204.94
25 Maurizio ZANDRON AUT 216.28 207.59 202.91 224.34
26 Tomas Llorenc GUARINO ESP 215.98 214.20 151.36 220.64
27 Lev VINOKUR ISR 215.87 205.36 170.85  
28 Ivan SHMURATKO UKR 215.68 210.65 200.67  
29 Andreas NORDEBACK SWE 214.29 198.95 189.42  
30 Burak DEMIRBOGA TUR 213.38 211.02 182.95 220.99
31 Semen DANILIANTS ARM 212.07 179.92 171.38  
32 Sihyeong LEE KOR 209.13   209.13 241.05
33 Valtter VIRTANEN FIN 208.98 200.83 188.80 200.83
34 Donovan CARILLO SUAZO MEX 205.70 202.47 153.68 223.87
35 Edward APPLEBY GBR 205.55 202.68 170.97 219.61
36 Alexander ZLATKOV BUL 204.37 190.21 169.57 183.81
37 Jarri KESSLER CRO 199.77 192.04 169.97 221.86
38 Davide LEWTON BRAIN MON 198.23 197.17 163.22 154.72
39 Jari KESSLER CRO 199.77 192.04 169.97  
40 Aleksandr VLASENKO HUN 187.27 183.76 156.79 189.29

男子シングルは40人がエントリー。シーズンベスト1位はマリニン選手です。複数回の310点台。強いです。ただ、必ず300点を超えるということもなくて、ワーストは280点程度まで下がります。

シーズンベスト2位は鍵山選手です。試合ごとにスコアを上げてきています。4大陸の307.58より上はあるか? 優勝するには、おそらくその上まで行くことが必要そうには感じます。

アダムシャオイムファ選手がシーズンベスト3位。ここまでが300点超えです。ヨーロッパ選手権は結果的に楽勝でしたが、世界選手権はバク転してる余裕はないはずです。ヨーロッパ男子の世界選手権制覇は16年のハビエルフェルナンデス選手まで遡ります。ヨーロッパ勢として8年ぶり、フランス勢としては17年ぶりのワールド制覇なるか?

2連覇中の宇野昌磨選手がシーズンベストは4番目。意外とノーミスが少ない宇野選手。ノーミスすれば310点も問題なく出るのですが、シーズン終盤に調子を合わせてこられているかどうか。

この上位4人が順当にいけば優勝争い、ということになりそうです。

三浦佳生選手、チャジュンファン選手が270点台のシーズンベストを持っています。優勝争いは厳しいけれど表彰台を伺う位置にいる、と言えるでしょうか。

260点台に2人、カザフスタンのシャイドロフ選手とスイスのブリッチギー選手。近年の成長株。たまたま1つ入スコア持っているというのでもなく250点台のセカンドベストもありますし、地力をつけてきている印象。上位争いに絡んでくるかもしれません。

250点台に5人います。ベテランのボーヤンジン選手とバシリエフス選手、イタリアから新鋭のメモラ選手にフランジパーニ選手、さらにエストニアのセレフコ選手といます。このあたりの選手は来期2枠欲しい、イタリアは出来れば3枠欲しいという位置です。エストニアのセレフコ選手は特に、兄弟で世界選手権に出るには2枠必須ですのでトップ10にどうしても入りたいところ。2枠確保争いも激しい。

それより下では、今期はジャパンオープンの他にはゴールデンスピンとナショナルしか出ていないジェイソンブラウン選手がいます。236.75というシーズンベストはあまり参考にならなさそうです。表彰台争いまでするのは厳しい構成なのですが、また存在感は示してくれるのではないかと思います。

 

ショートプログラム シーズンベスト上位24人

  Name Nation Season best 2nd best Worst National
1 Adam SIAO HIM FA FRA 109.04 101.07 84.00 99.82
2 Ilia MALININ USA 106.90 104.06 100.87 108.57
3 Yuma KAGIYAMA JPN 106.82 105.51 91.47 93.94
4 Shoma UNO JPN 106.02 105.25 100.20 104.69
5 Kao MIURA JPN 99.58 94.86 80.80 93.91
6 Junhwan CHA KOR 95.30 91.80 83.91 96.51
7 Aleksandr SELEVKO EST 93.10 90.05 75.85 68.81
8 Lukas BRITSCHGI SUI 91.51 91.17 74.02 93.09
9 Boyang JIN CHN 91.25 89.41 76.21  
10 Mikhail SHAIDOROV KAZ 89.94 85.75 79.18  
11 Nikolaj MEMOLA ITA 89.41 88.99 70.27 90.70
12 Camden PULKINEN USA 86.40 83.44 62.96 87.90
13 Nika EGADZE GEO 85.76 84.11 77.00  
14 Deniss VASILJEVS LAT 85.36 82.40 75.84  
15 Gabriele FRANGIPANI ITA 85.19 83.51 63.95 91.04
16 Wesley CHIU CAN 83.50 80.93 72.02 88.98
17 Vladimir SAMOILOV POL 81.88 79.76 68.14 62.64
18 Vladimir LITVINTSEV AZE 80.03 74.61 62.13  
19 Luc ECONOMIDES FRA 78.59 76.99 69.54 86.55
20 Jason BROWN USA 78.48   78.48 89.02
21 Adam HAGARA SVK 78.02 74.97 59.86 73.88
22 Andreas NORDEBACK SWE 78.01 77.62 66.28  
23 Hyungyeom KIM KOR 77.01 75.24 72.61 79.44
24 Tomas Llorenc GUARINO ESP 76.89 71.93 55.04 75.20

ショートプログラムはシーズンベスト24位で76.89あります。上位選手でもシーズンワーストがこれより低い選手は結構な数います。まずはショート通過が第一関門。

ベストスコア1位はアダムシャオイムファ選手です。ただし、この109.04はB級大会で出したものでISU公認スコアにはなっていません。公認スコアでも100点超えを持っています。

100点超えは4選手いて、トータルスコア上位4名と同じです。優勝争いにはショート100点超えは必須で、ショートからミスが入った選手は脱落かと思われます。ただ、表彰台争いにまではまだ絡めるかもしれません。

三浦選手も100点に近いシーズンベスト。初の100点超えで上位に食らいつきたいところ。チャジュンファン選手も100点実績ありますし、2年連続表彰台には100点が欲しいところです。

ちょっとその下はスコアが落ちてきます。ボーヤンジン選手が完全復活する、ジェイソンブラウン選手が超絶PCSで稼ぐ、などで100点近いスコアを出してくる、という展開はあるかもしれませんが、他は厳しいか。それとも、このワールドで覚醒して新たに上位に顔を出してくる選手がいるでしょうか。

 

○フリー シーズンベスト上位24人

  Name Nation Season best 2nd best Worst National
1 Ilia MALININ USA 207.76 206.41 180.81 185.78
2 Adam SIAO HIM FA FRA 207.17 205.71 182.04 204.59
3 Yuma KAGIYAMA JPN 200.76 184.93 174.12 198.16
4 Shoma UNO JPN 191.32 186.35 174.73 193.35
5 Kao MIURA JPN 181.02 177.09 143.37 186.17
6 Junhwan CHA KOR 177.65 163.06 130.43 179.43
7 Lukas BRITSCHGI SUI 176.49 168.34 151.29 171.80
8 Mikhail SHAIDOROV KAZ 174.52 170.59 152.47  
9 Deniss VASILJEVS LAT 174.14 170.82 133.38  
10 Boyang JIN CHN 167.48 167.42 145.36  
11 Aleksandr SELEVKO EST 166.94 158.74 133.64 167.18
12 Nikolaj MEMOLA ITA 166.83 161.38 129.11 157.98
13 Gabriele FRANGIPANI ITA 166.40 164.87 123.60 148.74
14 Nika EGADZE GEO 164.60 159.20 150.87  
15 Vladimir LITVINTSEV AZE 162.83 158.97 139.49  
16 Vladimir SAMOILOV POL 159.12 144.70 132.79 129.37
17 Jason BROWN USA 158.27 144.38 144.38 175.48
18 Wesley CHIU CAN 158.19 156.88 127.89 143.17
19 Hyungyeom KIM KOR 155.22 149.54 138.31 150.06
20 Luc ECONOMIDES FRA 153.75 139.78 131.97 157.04
21 Adam HAGARA SVK 148.51 147.59 125.16 135.05
22 Camden PULKINEN USA 147.50 147.40 142.92 174.43
23 Lev VINOKUR ISR 147.28 135.46 121.65  
24 Roman SADOVSKY CAN 145.39   145.39 136.65

フリーは200点超えが3選手います。マリニン選手とアダムシャオイムファ選手が207点台。この2人は200点超えを今期複数回出しています。ワーストだと180点台。意外と伸びない、というケースもあるかもしれません。

鍵山選手もぎりぎり200点があります。ノーミスではなかったので伸びしろはある。宇野選手は191点までです。どこまでワールドに合わせてくるか。

三浦選手は180点台。上位の4人と比べるとワーストが極端に下がります。安定感はあまりない。ただ、枠取りは気にしなくていいと思われますので、一発勝負して表彰台か、大崩れか、でいいかとも思います。

170点台は4選手。チャジュンファン選手はもう少し出せる力がありましたが今季はまだあまり力を発揮していません。ワールドで本領発揮できるか? ブリッチギー選手、シャイドロフ選手もセカンドベストがシーズンベストに近いですので、ワールドでもしっかり上位で勝負できそうに見えます。バシリエフス選手は4回転決められると強いのですがどうか。

ボーヤンジン選手は旧ルールで300点を出したこともある選手。そろそろ復活した姿を見たいところです。

 

○上位6選手のフリーの技術点シーズンベスト時の構成

  Ilia Yuma Adam Shoma Kao Junhwan
MALININ KAGIYAMA SIAO HIM FA UNO MIURA CHA
1 4A 4S 4Lz 4Lo 3A+1Eu+3S 4S
2 4Lz 4F 4T+2T 4Fq 4T+3T 4T
3 4Lo 4T+1Eu+3S 3A+2A 3A 4S 3Lz!+3Lo
4 4S 3A+2A 4S 1A FCSp1 FCSp4
5 CCSp4 FCSSp4 4T StSq4 3A 3Lz!
6 StSq3 3A 3A 4T+3T StSq3 StSq4
7 4Lz+1Eu+3S 3Lz!+3T StSq4 4Tq 4T 3A+2A
8 4T+3T ChSq1 3Lz+1Eu+3S 3A+1Eu+3Fq 3Lo+2A 3A
9 ChSq1 3F FCCoSp4 FCSp4 3F 3F+1Eu+3S
10 3Lz+3A StSq4 ChSq1 CSSp3 CSSp2 CCoSp4
11 FSSp3 CCoSp4 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 ChSq1
12 CCoSp4 FCCoSp4 CSSp4 CCoSp3 CCoSp4V FCCoSp4
Base 108.09 88.94 91.22 87.00 82.63 85.34
GOE 13.40 18.34 24.48 11.95 14.17 6.43
PCS 87.27 93.48 90.01 93.37 84.22 85.88
Total 207.76 200.76 205.71 191.32 181.02 177.65

マリニン選手はアクセル込みで4回転6本。アダムシャオイムファ選手と宇野選手は4本、鍵山選手、三浦選手は3本、チャジュンファン選手は2本、という構成。マリニン選手がやはり突出しています。基礎点108.09は驚異的。

宇野選手は昨季は4回転5本構成がありましたが今季はそこまで組んだことはありません。このシーズンベストの構成の時はアクセルが1回転ですし、コンビネーションも1つ余っていますし、4回転増やさずとももう少し基礎点は上がります。

アダムシャオイムファ選手はセカンド2回転があるのでここも基礎点の上りどころです。

鍵山選手はフリップを決められるかどうか。2回飛ぶジャンプがトリプルアクセルだけなので4回転なにか2回飛ぶこともできるのですが、今期はやらなさそうに感じます。

三浦選手はサルコウトーループで3本。ループかフリップか、どちらかを足しそうです。足さないと上位4人を超えていくのは難しい。

チャジュンファン選手はこの構成で完成度で勝負にしてくるでしょうか。

加点はアダムシャオイムファ選手が20点を超えるものをもらっています。ここまで稼げると強い。鍵山選手はフリップ失敗しても20点近い。ノーミスなら25点近いところになるはずです。マリニン選手はこの高難度だとさすがにノーミスは厳しくGOEは驚異的というほどは稼げていない。ただ、この構成でノーミスしてしっかり滑れば時代確立が確定しそうに感じます。まだ今期は他の選手も勝負になる。

PCSが鍵山選手宇野選手が高いです。アダムシャオイムファ選手はもう少し出そうな気もします。マリニン選手と鍵山選手で6.21差。80点台後半くらいでいてくれれば、PCSで4回転1本差分くらいはカバーできます。PCSまで上がってきたらもう手も付けられません。

 

○7-12番手の選手のフリーの技術点シーズンベスト時構成

  Mikhail Lukas Boyang Aleksandr Nikolaj Deniss
SHAIDOROV BRITSCHGI JIN SELEVKO MEMOLA VASILJEVS
1 4Lzq 4T+3T 4Lz 4T 4Lz 4S+2T
2 4Fe 4T 4T 3F 3A+1Eu+3S 4Sq
3 4T+3T 3A+2T 3A+1Eu+3S< 3Lo 3Lz 3A+2A
4 ChSq1 3Lo 3A 3A+3T 3Lo 3Lo
5 3F! CCoSp4 FCSp3 CCSp4 FCSp4 FSSp4
6 FCCoSp4 3A 4T+2T StSq4 3A ChSq1
7 4T 3F!+1Eu+3S 3Lz+2T 2A+2T 3Lz+3T 3A
8 3A+2A 3Lz CSSp4 3Lz+2A+2T 3F!+2A 3Lz+1Eu+3S
9 3Lz+1Eu+3S StSq3 ChSq1 3S CSSp4 3F
10 FCSSp3 ChSq1 3F FSSp3 StSq4 CCoSp4
11 StSq3 FCCoSp3 StSq4 ChSq1 ChSq1 StSq4
12 CCoSp3 CSSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 FCCoSp4
Base 89.35 79.60 82.77 69.44 80.27 80.20
GOE 8.81 14.94 9.02 13.98 8.31 9.49
PCS 72.43 81.95 76.69 83.52 78.25 85.45
Total 170.59 176.49 167.48 166.94 166.83 174.14

シャイドロフ選手は4回転4本あります。ボーヤンジン選手は3本。ブリッチギー選手が2本で、バシリエフス選手も2本入れています。セレフコ選手、メモラ選手は1本です。

シャイドロフ選手はフリップのeがありますが、それでも4回転4本あると基礎点は90点近いところまで来ます。他はあまり基礎点は高くありません。

ブリッチギー選手、セレフコ選手はGOEが高いです。4回転1種類だとGOEで稼ぐしかありません。

PCSはバシリエフス選手は80点台中盤まであります。一方、シャイドロフ選手は70点台前半。トップとはPCSで20点の差が付く。これだと4回転の本数増やしても追いつけないですので、シャイドロフ選手は滑りをもう少し磨かないといけなさそうです。

 

4強、の闘いなのか? 2連覇しているけれどシーズンベスト4位、という宇野選手の位置付けが微妙ですが、日米欧、それぞれのトップ選手で頂点を争います。マリニン選手の4回転アクセルが目立つので、そちらばかり注目が集まっていますが、アダムシャオイムファ選手も強い。優勝争いは非常に面白いものになりそうです。

宇野選手、3連覇すれば日本男子としては初の3回目のチャンピオンとなります。女子と違って男子は割と連覇が多いので、3連覇はネイサンチェンさん以来、というか2人続けて、ということになりますが、果たしてそれを成し遂げられるでしょうか?