19年夏 地方ローカル大会

フィギュアスケートの1年は7月1日に始まり6月30日に終わります

ジュニアグランプリシリーズの始まる8月半ばからシーズンイン、チャレンジャーシリーズの始まる9月半ばからシニアが本格的に動く出して、グランプリシリーズの始まる10月から本格的なシーズン、という感覚があります

ただ、夏場、7月から8月にかけても、国内の地方ローカル大会は行われています。9月に始まる全日本選手権に向けての予選に当たる地方大会への準備段階、調整段階、ともいえる大会ですが、全日本ははるか遠い、という選手にとってはこういった地方ローカル大会が競技人生の締めくくりになったりもする、という試合です

そんな夏の地方ローカル大会を少し振り返ります。

 

ここに載せている以外でも、飯塚杯であるとか、邦和杯であるとか、大会はあるのですが、試合結果が公に公表されてませんので、そのあたりは入っていません。

 

Event Pl Name Nation Total SP TSS FS TSS
げんさんサマーカップ 1 松  生  理  乃 グランプリ東海クラブ 184.95 63.94 121.01
関東サマートロフィー 1 吉  岡  詩  果 植草学園大学附属高校 169.26 61.98 107.28
関東サマートロフィー 2 川  畑  和  愛 N高東京 161.69 51.06 110.63
げんさんサマーカップ 2 住  吉  りをん 駒場学園高校 160.51 54.27 106.24
西日本中小学生フィギュア 1 吉  田  陽  菜 名東FSC 158.77 48.39 110.38
げんさんサマーカップ 3 吉  田  陽  菜 名東FSC 154.77 49.94 104.83
西日本中小学生フィギュア 2 横  井  きな結 邦和スポーツランド 150.21 52.29 97.92
げんさんサマーカップ 4 手  嶋  里  佳 名東FSC 145.68 49.96 95.72
東京夏季フィギュア 1 TzuHan Ting 中華民国(台湾) 145.39 50.43 94.96
西日本中小学生フィギュア 3 岡  本  真  綸 倉敷FSC 140.80 51.21 89.59
MGCアイスアリーナCUP 1 千  葉  百  音 仙台FSC 140.72 56.00 84.72
げんさんサマーカップ 5 岡  本  真  綸 倉敷FSC 140.53 48.51 92.02
げんさんサマーカップ 6 本  田  望  結 関西大学中・高スケート部 139.18 54.47 84.71
げんさんサマーカップ 7 渡  辺  倫  果 青森山田高校 138.17 50.34 87.83
西日本中小学生フィギュア 4 片  山  緋奈子 倉敷FSC 135.46 52.07 83.39
げんさんサマーカップ 8 伊  勢  野  花 広島スケートクラブ 134.28 50.66 83.62
リンスポ杯 1 滝  野  莉  子 関西大学KFSC 133.33 47.41 85.92
げんさんサマーカップ 9 浦  松  千  聖 中京大中京高校 133.13 48.10 85.03
リンスポ杯 2 岩  崎  陽  菜 なみはやクラブ 132.92 50.25 82.67
げんさんサマーカップ 10 吉  本      玲 神戸FSC 131.17 48.28 82.89
東京夏季フィギュア 2 平  金      桐 明治神宮外苑FSC 130.17 51.09 79.08

ジュニアの女子シングルで130点以上のスコアを並べました。

夏のローカル大会トップスコアは松生理乃選手。184.95と一人だけ図抜けています。昨シーズン、ジュニアで180点を超えたのは横井ゆは菜選手だけ。その横井選手がシニアに抜けて、次のジュニアはだれが引っ張るんだろう? というところだったのですが、ジュニア二シーズン目の松生選手が名乗りを上げたという感じになっています。実際、ジュニアグランプリシリーズに出場し、190点台の好スコアを出して三位表彰台に乗りました。

 

160点台に三人。ジュニアグランプリ組かと思いきや、吉岡選手は今シーズンジュニアグランプリシリーズへのエントリーがいまのところ確認されていません。昨シーズンはジュニアグランプリ2戦に出て表彰台にも乗っているのですが、どうしたのでしょう?

川畑選手は昨シーズンの世界ジュニア組で唯一今シーズンジュニア参戦ですが、ちょっと点が伸びていませんかね。ジュニアグランプリでは170点台には乗せていました。

住吉りをん選手もジュニアグランプリ組で、160点台前半。

昨シーズンの全日本進出の下限は154.94でしたので、160点乗せておけば全日本まで進める計算ではあるのですが、ジュニアグランプリシリーズですでに160点以上を5人が出していることを考えると、今シーズンはもう少し全日本ラインが上がっていきそうに感じます。

 

今シーズンからジュニアに上がった吉田陽菜選手は二戦して二戦とも150点台。もう少し伸びてくるかと思ったのですが、ショートプログラムが40点台なんですね。ジュニアのレベルが高い、というか中堅層に多数いるので、ショートが40点台だと、全日本ジュニアでショート落ちの危険があったりします。フリーで100点に乗せているのはこの吉田選手まで。

150点台にはもう一人横井きな結選手もいます。ジュニアのトリプルアクセル組が二人150点台にいる形。

 

ちょっと意外なのは、昨シーズン全日本選手権まで進んだ渡辺倫果選手が130点台であまり伸びていないところでしょうか。本田望結選手がその上に行きました。ショートは良かったのですけれどフリーは80点台だと上位進出はちょっと苦しい。ジャンプの数が増えるフリーの方がいつも苦しんでいる印象です。載っていませんが二戦目のフリーは70点台でした。ジャンプそろえば上位進出できそうなんですけどねえ。

 

載っていませんが、サマートロフィーでショートのみで棄権した青木祐奈選手は骨折しているとのこと。おそらくジュニア最後の年で今シーズンこそ世界ジュニアへ、そして来シーズンのグランプリの椅子を! というシーズンだったと思うので、大変残念です。

 

 

Event Pl Name Nation Total SP TSS FS TSS
げんさんサマーカップ 1 横  井  ゆは菜 中京大学 198.30 67.01 131.29
げんさんサマーカップ 2 坂  本  花  織 シスメックス 187.53 58.62 128.91
げんさんサマーカップ 3 白  岩  優  奈 関西大学KFSC 181.44 68.52 112.92
げんさんサマーカップ 4 笠  掛  梨  乃 愛知みずほ大瑞穂高 162.35 59.72 102.63
げんさんサマーカップ 5 竹  野  比  奈 福岡大学 160.24 52.77 107.47
げんさんサマーカップ 6 永  井  優  香 早稲田大学 158.09 56.35 101.74
げんさんサマーカップ 7 新田谷      凜 中京大学 155.15 56.95 98.20
東京夏季フィギュア 1 佐  藤  伊  吹 明治大学 154.79 50.77 104.02
げんさんサマーカップ 8 三  宅  咲  綺 岡山理大附高校 152.13 60.16 91.97
げんさんサマーカップ 9 籠  谷  歩  未 同志社大学 151.66 55.43 96.23
げんさんサマーカップ 10 山  下  真  瑚 中京大中京高校 151.11 61.12 89.99
東京夏季フィギュア 2 永  井  優  香 早稲田大学 149.35 51.59 97.76
OHK杯スポーツ岡山 1 片  山  緋奈子 倉敷FSC 145.99 52.40 93.59
げんさんサマーカップ 11 大  庭      雅 東海東京FH 143.99 51.17 92.82
げんさんサマーカップ 12 山  田  さくら 立命館大学 142.85 47.47 95.38
MGCアイスアリーナCUP 1 廣  谷  帆  香 岩手大学 141.13 55.47 85.66
東京夏季フィギュア 3 船  迫  麗  愛 日本大学 139.21 49.25 89.96
リンスポ杯 1 山  田  さくら アクアピアスケーティングC 137.60 48.37 89.23
げんさんサマーカップ 13 藤  崎  ひなの 名東FSC 136.52 52.13 84.39
東京夏季フィギュア 4 井  上  千  尋 明治大学 134.60 47.56 87.04
札幌フィギュアスケート選手権 1 加  藤  花  怜 北海高等学校 134.42 47.92 86.50
リンスポ杯 2 森  下  実  咲 関西大学 134.37 52.34 82.03
OHK杯スポーツ岡山 2 岡  本  真  綸 倉敷FSC 132.19 42.51 89.68

シニアも130点以上で並べました。

昨シーズンの全日本進出ラインは、西日本が144.62 東日本が146.81でした。安心するんは160点台、悪くても150点台は出せる自信をもって地方大会へ進みたいところでしょうか。

 

そんな地方大会に関係ない上位陣、今シーズンのこれまでの国内ベストスコアは横井ゆは菜選手の198.30となっています。国内戦強い印象なんですよね。なんとなく、公認されなかろうが、この段階で200点を出しておきたかったような気はしますが、今シーズンのシニアデビューが楽しみな選手です。

オリンピアンの坂本選手にシニア三シーズン目の白岩選手と続きます。この辺は体調も悪かったりまだまだ調整段階だったりでよくわかりませんが、それでも180点台ならいつでも出せるよ、という感じなんでしょうか。

その下、160点台になりますが、笠掛梨乃選手がサマーカップ4位のスコアで入っています。シニアに上がっていたんですね。現在の高三世代は本田真凛選手を中心に、白岩優奈選手やノービス時代に優勝していた青木祐奈選手など、綺羅星のごとく人材がいた世代のなかでちょっと埋もれがちだったのですけれど、全日本ジュニアで4位にまで入ったことのある選手。復活してくれるといいのですけれど。

 

その下には竹野比奈選手、永井優香選手、新田谷凛選手と全日本組が続いています。竹野選手と新田谷選手は大学四年生。今後はどうするのでしょう。新田谷選手は今シーズンで終わり、という雰囲気をツイッターなどでは醸し出していますけれど。二人とも、グランプリシリーズくらいで見てみたい選手だったんですけれど、今シーズンで終わりなのかどうか

 

グランプリ組では151.11に終わった山下真瑚選手はちょっと心配です。足を痛めていたなんて言う話もありますし。載っていませんがショートだけで棄権した樋口新葉選手やチャレンジャーシリーズの欠場も表明した三原舞依選手など、体調面で心配な選手が何人かいます。

 

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
吉  田  陽  菜 1 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.00
横  井  きな結 1 3A   8.00   0.53 8.53 0.60
吉  田  陽  菜 1 3A   8.00   1.28 9.28 1.60
横  井  きな結 1 3A+2T   9.30   -0.16 9.14 -0.20
三  宅  咲  綺 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.00

要素別を少し見ます

今シーズンのローカル大会では、早くもトリプルアクセルが見られました。横井きな結選手は二回飛んで二回着氷。コンビネーションジャンプにした方はGOEわずかにマイナスですが、それでもしっかり着氷です。吉田陽菜選手は二回飛んで一回成功。三宅咲綺選手は回転不足で転倒なので、まだ、飛べたとは言えない段階です。

ジュニアの二人が成功させてきているんですね。ただ、二人ともジュニアグランプリへのエントリーはなし。総合点も150点台に留まっている。トリプルアクセルだけ飛べても十分ではない、ということの表れではあるのですが、それでもジュニアから複数の選手がトリプルアクセルを飛んでいる、というのは一つの希望です。二人ともまだ中学生。もう少し年齢が上がっても跳び続けることができるのか? というのは未知数ですが、今シーズン、トリプルアクセルを武器に全日本ジュニアで活躍する姿は見てみたいものです。

 

 

J/S Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
J 吉  田  陽  菜 2 3Lz+3T   10.10   0.59 10.69 1.00
J 吉  岡  詩  果 1 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.20
J 松  生  理  乃 4 3Lz+3T   11.11 X 0.44 11.55 0.75
J 久  保  智  聖 1 3T+3T   8.40   -1.05 7.35 -2.50
J 松  生  理  乃 8 3F+3T   10.45 X 1.27 11.72 2.40
J 住  吉  りをん 1 3F+3T   9.50   -0.85 8.65 -1.60
S 白  岩  優  奈 1 3Lz+3T   10.10   1.65 11.75 2.80
S 横  井  ゆは菜 1 3F+3T   9.50   1.70 11.20 3.20
S 山  下  真  瑚 1 3S+3T   8.50   0.86 9.36 2.00
S 三  宅  咲  綺 1 3T+3T   8.40   1.09 9.49 2.60
S 永  井  優  香 1 3T+3T   8.40   0.59 8.99 1.40
S 竹  野  比  奈 1 3T+3T   8.40   -0.42 7.98 -1.00
S 藤  崎  ひなの 1 3T+3T   8.40   0.92 9.32 2.20
S 横  井  ゆは菜 9 3S+3T   9.35 X -0.43 8.92 -1.00
S 坂  本  花  織 2 3F+3T   9.50   1.70 11.20 3.20
S 佐  藤  伊  吹 1 3Lo+3T   9.10   1.14 10.24 2.00
J 平  金      桐 1 3T+3T   8.40   0.84 9.24 1.80
S 廣  谷  帆  香 1 3T+3T   8.40   0.98 9.38 2.40

3回転-3回転のコンビネーションジャンプを、回転不足なく、エッジエラーもなく跳んだのは18例ありました。ショートフリーで2回入っているのは、ジュニアの松生選手とシニアで横井ゆは菜選手の二人。松生選手はショートもフリーも3回転-3回転を1.1倍ボーナスタイムに入れる、という攻めた構成で、かつ、成功させています。ジュニアグランプリでも、ショートフリーのコンビネーション4本をすべて1.1倍のところで飛んでいて、ジャンプの充実ぶりが目立ちます

 

 

J/S Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
S 笠  掛  梨  乃 7 StSq4   3.90   0.86 4.76 2.20
S 樋  口  新  葉 7 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.00
S 坂  本  花  織 5 StSq4   3.90   1.09 4.99 2.80

ステップでレベル4を取ったのは3例

ジュニア勢でステップレベル4はなし。スピンと比べてステップでレベル4を取るのは難しいんですね

フリーを体調不良で棄権した試合の樋口選手のショートでのステップが、レベル4でかつ最高加点でした。実力者っぷりがこんなところにでています。坂本選手も普通に名前がある。

そんな中に、笠掛選手も名前を連ねました。

 

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
横  井  ゆは菜 7 ChSq1   3.00   1.40 4.40 2.80
坂  本  花  織 10 ChSq1   3.00   1.90 4.90 3.80
白  岩  優  奈 5 ChSq1   3.00   1.10 4.10 2.20
新田谷      凜 11 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.00
山  田  さくら 10 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.00
大  庭      雅 10 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.00
佐  藤  伊  吹 9 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.00
永  井  優  香 6 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.40
井  上  千  尋 9 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.40
川  島  優  子 12 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.40
山  田  さくら 10 ChSq1   3.00   1.20 4.20 2.40

コレオシークエンスで平均GOEが+2以上を取り出すと11例。最高評価は一人とびぬけて坂本選手。+2台では新田谷凛選手、大庭雅選手、永井優香選手といった、強化選手としてなお連ねてきた実力者の名前が並んでいます。高いグレードで試合をしてきた選手というのは、ジャンプとスピンをつなげただけではなく、こういう要素でちゃんと点が出る滑り、というのができるということなんでしょうかね

 

 

J/S Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
J 片  山  緋奈子 3 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.00
J 岡  本  真  綸 7 LSp4   2.70   0.99 3.69 3.40
J 吉  本      玲 4 CCoSp4   3.50   1.17 4.67 3.40
J 松  生  理  乃 7 LSp4   2.70   0.88 3.58 3.25
J 住  吉  りをん 7 LSp4   2.70   0.95 3.65 3.50
J 吉  本      玲 7 LSp4   2.70   0.88 3.58 3.25
J 浦  松  千  聖 3 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.00
J 岡  田  芹  菜 7 LSp4   2.70   1.15 3.85 4.25
J 片  山  緋奈子 6 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.00
J 岩  崎  陽  菜 7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.00
J 平  金      桐 7 LSp4   2.70   0.88 3.58 3.25
J 岡  田  芹  菜 4 FCSp4   3.20   1.15 4.35 3.60
J 岡  田  芹  菜 11 LSp4   2.70   0.97 3.67 3.60
S 竹  野  比  奈 3 FCSp4   3.20   1.09 4.29 3.40
S 森  下  実  咲 3 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.00
S 鴨  井  彬莉彩 4 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.00
S 片  山  緋奈子 3 LSp4   2.70   0.86 3.56 3.20
S 岩  崎  陽  菜 11 LSp4   2.70   1.03 3.73 3.80
S 鈴  木  星  佳 2 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.00
S 大  矢  里  佳 7 CCoSp4   3.50   1.17 4.67 3.20
S 遠  藤  美  稀 1 LSp4   2.70   0.99 3.69 3.20
S 井  上  千  尋 12 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.20
J 平  金      桐 7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.20
J 千  葉  百  音 11 LSp4   2.70   0.72 3.42 3.00
S 廣  谷  帆  香 2 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.00
S 森  下  実  咲 3 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.00
J 藤  原  莉  子 4 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.00
S 遠  藤  美  稀 1 LSp4   2.70   0.86 3.56 3.20

スピンがレベル4でGOE平均3.0以上は28例。スピンのレベル4はかなりの人が取れ、かつ、加点も大きく稼げているのですが、そのうち21例がレイバックスピンになっています。女子にとってはレイバックスピンはほとんど必須のスピンで、基礎点はやや低めですが、加点を大きくもらう、というのが日本人選手のセオリーと化してる感じがありそうです。

GOE最高評価はジュニアの岡田芹菜選手で+4.250 岡田選手はショートフリーで6回あるスピンのうち3回で名前を連ねています。合計スコアでは上位に入ってこなかった選手なのですが、こういう選手もいます。

気になるのは、シニアの上位選手の名前がここでは皆無になっているところ。調整段階ではジャンプやステップ・振付へ意識が行って、スピンはややおざなりになるようなところでもあるんでしょうか

 

シーズンはまだ序盤。9月からは全日本につながる地方大会が始まっていきます。今シーズンも、多くの素晴らしい演技が見られたら良いと思います。

 

 

サビカとリズキー ジュニアグランプリ19 レークプラシッド

2018年、世界選手権の直前に放映された、安藤美姫さんがインドネシアフィギュアスケートを教えに行くという企画。その時の主役級で出ていたインドネシアのスケーター二人、女子のサビカと男子のリズキー。二人のその後を時折追っています。

 

二人の今シーズン初戦は、8月頭にアジアンオープンフィギュアのはずだったのですが、延期というか実質的には中止からの再設定で10月末に移ってしまったので、初戦がジュニアグランプリシリーズになりました。

二人とも、ジュニアグランプリの二戦目、レークプラシッドの試合に出ています。

 

サビカはショートプログラムは良い出来でした。

 

Elements

 

 BaseValue

 

GOE

Scores

 

1

LSp4

 

2.70

 

0.58

3.28

2.000

2

2A

 

3.30

 

0.00

3.30

0.111

3

FSSp4

 

3.00

 

0.21

3.21

0.556

4

2Lz+2T

 

3.40

 

0.00

3.40

0.000

5

StSq2

 

2.60

 

-0.15

2.45

-0.444

6

2Lo

 

1.87

x

0.00

1.87

0.000

7

CCoSp4V

 

2.63

 

0.19

2.82

0.667

 

TES

 

19.50

 

0.83

20.33

 

 

技術点20.33 演技構成点16.89のトータル37.22 これは彼女のパーソナルベストになります。キスアンドクライでも得点発表後笑顔を見せていました。昨シーズンは技術点16.30 演技構成点16.59のトータル32.89でした。

このショートではスピン3つのうち二つがレベル4、一つがレベル4V  昨年は3二つに2一つでしたから、まずスピンの基礎点が大きく上がりました。冒頭のレイバックスピンではGOE+2がついています。また、国際大会で初となるダブルアクセルの着氷に成功。GOEは0 加点は付きませんでしたが、しっかり成功です。ステップはレベル2 途中で多少ぐらついた部分もありGOEもマイナス。最後のスピンもレベル4ではなく4Vになったのは少し残念でした。

昨シーズンの世界ジュニア、ショートプログラムのミニマムスコアは23.00でした。今シーズンは固定ジャンプがフリップからループになったぶん、多少基礎点が下がるので、ミニマムスコアも23.00からやや下がる可能性が高いのですが、それでも20.33までは降りてこないでしょうか。ただ、それでも、ミニマムスコアまであと少し、というところまでショートは持ってきています。

一方、フリーは残念な出来でした。冒頭トリプルサルコウに挑みましたがダウングレード、三つ目のダブルアクセルは転倒。結局ダブルアクセル以上のジャンプが決まらず、技術点25.82 演技構成点35.06 トータル59.88に終わりました。

 

Elements

 

 BaseValue

 

GOE

Scores

 

1

3S<<

<< 

1.30

 

-0.54

0.76

-4.111

2

2F

 

1.80

 

0.15

1.95

0.889

3

2A

 

3.30

 

-1.65

1.65

-5.000

4

FSSp3

 

2.60

 

0.04

2.64

0.111

5

2Lz+2T

 

3.40

 

0.00

3.40

0.111

6

LSp4

 

2.70

 

0.04

2.74

0.111

7

1A

 

1.21

x

-0.28

0.93

-2.556

8

2F+1Eu+2S

 

3.96

x

0.03

3.99

0.222

9

2Lz

 

2.31

x

0.00

2.31

0.000

10

StSq1

 

1.80

 

0.00

1.80

0.000

11

CCoSp4

 

3.50

 

0.15

3.65

0.333

 

TES

 

27.88

 

-2.06

25.82

 

 

プログラム構成を見ると、今シーズンは、ダブルアクセルは彼女の中の感覚としては、挑むジャンプではなくて飛べるジャンプのつもりになったのかな、と感じました。ショートでは実際に着氷。フリーも、二つ目に2Fを挟んでの三つ目のジャンプとしての2Aですし、また、後半にシングルアクセルになった要素があったのですが、おそらくこのジャンプはダブルアクセルを途中で開いて降りてきてしまったもの、に見えました。実際、彼女の構成でシングルアクセルを組み込む理由はありません。また、失敗したジャンプが3Sと2A二つで、コンビネーションが入ったのが二つしかない、ということは、3Sと2A二つのどれかはコンビネーションジャンプのつもりだった、ということになり、飛べたことのない3Sをコンビネーションにすることはないでしょうから、2Aの一つはコンビネーションのつもりだった、ということになります。結果的にはうまくいきませんでしたが、ジャンプのレベルは昨シーズンより一つ上がった、と見えます。また、三連続ジャンプに初めて成功していました。2F-1Eu-2S さして難度の高いものではないですが、後半の1.1倍の中に入れてGOE+0.11と減点なく成功です。まだ3回転は飛べませんが、ジャンプの構成は以前より上がってきています。

さらに得意のスピンはレベル4二つにレベル3一つ。昨シーズンはショートフリー6つのスピンでレベル4は一つもつかなかったのが、今回は4つレベル4 加点はまだほとんどついていませんが、レベル4の数だけで言ったら日本のトップジュニアとそん色ありません。

昨シーズンの世界ジュニアのフリーのミニマムスコアは38.00 サビカの今回の25.82はまだまだ遠い点数です。ただ、構成が上がってきたことで希望は見えてきました。3Sと2A2本にコンビネーションがプラスされれば、GOE±0としても現在より9.10点数が伸びます。そうすると残り3.08点。ステップをレベル2にする、スピンを三つすべてレベル4にする、そこまでもっていって、あと少しづつ全体で加点が取れれば届く、という水準です。

三回転1本で、スピンレベル4が三つ取れれば届かないことはない、というのが世界ジュニアのミニマムスコア。サビカにとっては、来シーズンには現実的な数字、となってきているように見えます。

サビカは今回、出場32選手中、ショート22位 フリー25位で総合25位でした。ジュニアグランプリはショートで足切り24人、ということはなく、全員フリーも滑るのですが、仮に24人足切りがあったとしてもフリーに進めた点数をしっかりとりました。総合得点も97.10ともう少しで100点到達。もちろん、トップ選手とのレベルの差は顕著ですが、階段を一つ一つ上っているのははっきり見えます。ジュニアグランプリシリーズはここまで3戦終わっていますが、97.10という点数なら、どの大会でも、最下位とは程遠い成績です。この先への希望が見える試合でした。

 

 

今回残念だったのはリズキーです。ショートは技術点13.43 演技構成点16.86に減点-1がついて29.29で終わりました。

 

Elements

 

 BaseValue

 

GOE

Scores

 

1

CCSp2

 

2.30

 

-0.53

1.77

-2.333

2

3S<+COMBO

3.44

 

-1.72

1.72

-5.000

3

3Lo<

3.92

 

-1.96

1.96

-5.000

4

FSSp4

 

3.00

 

0.26

3.26

0.889

5

StSq2

 

2.60

 

-0.37

2.23

-1.556

6

1A*

*

0.00

 

0.00

0.00

 

7

CCoSp3

 

3.00

 

-0.51

2.49

-1.778

 

TES

 

18.26

 

-4.83

13.43

 

 

今回、チャンスだったはずなんです。今シーズンのジュニアの単独ジャンプの課題要素はループです。リズキーはループなら三回転が飛べます。フリップやルッツの年と違い、ループの今シーズンは、単独ジャンプに三回転を持ってこられます。また、三回転のサルコウも要素として入っていて、これはコンビネーションで付けられます。したがって、ジャンプ3本が、3回転-2回転、3回転単独、ダブルアクセル、という上位選手とそん色ない構成にすることが可能でした。実際、その構成で挑んだのですが、トリプルサルコウで転倒しコンビネーション付かず、トリプルループは回転不足両足着氷動き泊まりでGOE-5、ダブルアクセルはシングルアクセルになり零点。結果が技術点13.43という昨シーズンの14.99からも技術点を下げる形になってしまいました。

フリーも技術点25.12 演技構成点34.42に減点-1がついて、総合58.54 これも昨シーズンより低い点数です。冒頭の3Lo-2Tはループが回転不足、単独トリプルループは回転は十分ながら転倒。転倒のすぐ後の要素のスピンはノーバリュー。そのほか各要素もGOEはマイナスがついていて、技術点を伸ばせませんでした。

 

Elements

 

 BaseValue

 

GOE

Scores

 

1

3Lo<+2T

5.22

 

-1.63

3.59

-4.111

2

2A

 

3.30

 

-0.28

3.02

-0.889

3

2Lz

 

2.10

 

0.00

2.10

0.000

4

3Lo

 

4.90

 

-2.45

2.45

-5.000

5

CSp

 

0.00

 

0.00

0.00

 

6

2Lz!

!

2.10

 

-0.24

1.86

-1.111

7

FSSp3

 

2.60

 

-0.22

2.38

-0.778

8

StSq2

 

2.60

 

-0.26

2.34

-1.111

9

2F

 

1.98

x

-0.18

1.80

-0.889

10

2F+1Eu+2S

 

3.96

x

-0.18

3.78

-1.000

11

CCoSp1

 

2.00

 

-0.20

1.80

-1.111

 

TES

 

30.76

 

-5.64

25.12

 

 

ショートフリー合わせて87.83というのは、出場20選手中最下位。ここまでジュニアグランプリ3戦終わりましたが、3戦を通じて一番低いスコアになっています。残念ながら周りと比べると、一つも二つもレベルが落ちる、という水準でした。

 

希望は、スピンのレベルが上がってきたことでしょうか。昨シーズンは最高でもレベル2だったのが、今回はレベル3一つ、レベル4一つ。どちらもフライングシットスピンで、昨シーズンまでは要素として入れていなかったものでした。また、二回転のジャンプは安定して決めています。フリーは、タノ族化していて、2回転のジャンプではほとんど手を上げていました。それも、三連続ジャンプの三つ目でさえもです。三連続ジャンプでしっかり三つ目に2回転を付けられたのもこの大会が初めてでした。

 

今回の成績では世界ジュニアのミニマムスコアははるか遠いです。ただ、ショートは昨シーズン23.00で女子と同じ、フリーでも42.00で、女子の38.00とそれほど変わらない、というミニマムスコアは、現実的に目指すことができない程遠いものではありません。ショートはミスが一つくらいなら今回の構成で十分届くものでした。フリーも、3Loを2本に2A1本、という今回の構成だと、少し苦しいですが、3Sを付けるか、2Aを2本にするか出来て、かつ、コンビネーションジャンプをちゃんと3回入れられれば、ノーミスあるいはミス一つくらいなら届く、という水準です。

 

どちらかというと、サビカの方が世界ジュニアに近いのですが、リズキーはすでに三回転を標準装備として入れているので、一発当てれば一気に点は伸びるという点で十分チャンスはあるんですよね。

 

サビカの次の試合は10/31からのアジアンオープンフィギュアになるようです。アジアンオープンフィギュアのスコアが公認スコアとして世界ジュニアのミニマムスコア獲得のチャンスになっているのかどうか、今シーズンはちょっとわからないのですが、いずれにしてもおそらく彼女にとって今シーズン最後のチャンスになるので、なんとかとってきてほしいです。

 

その後、11/29からのSEA Games 東南アジア競技会に二人とも出場するようです。前回、リズキーは代表に入っているけれど、サビカは微妙、というようなことを記しましたが、サビカもインドネシア代表としてSEA Gamesに出場する、と本人が公表しています。

SEA Gamesはシニアの試合です。なので、フリーは、コレオシークエンス付きで時間も30秒伸びます。おそらく二人にとって初のシニアの試合。

今シーズンの世界ジュニアには繋がらない(ミニマムスコアとして使えない)試合ですが、SEA Gamesはこれ自体が東南アジア地域にとっては大きな試合です。他国の出場選手はわかりませんが、メンバー次第では彼女たちでも上位入賞が狙える試合。活躍を期待したいと思います。

 

卓球 東京オリンピックへ ランキングケーススタディ男子

前回、女子の世界ランキングポイントから、オリンピック代表選考について見てみました。

今回は男子です。

東京オリンピックには、2020年1月の世界ランキング上位二人が代表に選出されます。団体戦メンバーに入る三人目も、世界ランキングで三番手に入ることでその有力候補になることができるのではないか? とされています

 

まず、2020年1月まで残るポイントを、各選手がどれだけ確保できているか? というのを見てみます。2019年8月末時点でのものです

 

 

ポイント

8番目

7番目

張本智和

10660

900

1080

水谷隼

8245

720

900

丹羽考希

7690

675

675

吉村和弘

4810

340

540

森園政崇

4125

340

340

吉村真晴

3400

180

340

 

上位6選手まで上げてみました。ポイントは合計ポイント。8番目というのは、合計8試合のポイントのうち一番低い8番目のポイントはいくつか? というものです。これは、このポイントより多くのポイントを稼ぐと、この8番目のポイントがなくなってそこに入れ替わって入る、というものです。7番目、というのもほぼ同じでその選手の8試合のポイントのうち、上から7番目のものは何ポイントか? ということです。

 

張本選手が一人抜けているのははっきり見えます。三番手の丹羽選手とのポイント差は2970

女子で4番手の佐藤瞳選手と2番手の平野美宇選手のポイント差が3040ポイントで、逆転するのは非常に難しい、ということを前回記しました。丹羽選手の場合は、アジア選手権の出場権もありません。ここのところツアーで4戦続けて初戦敗退が続いている状態から、残り4カ月足らずで張本選手の上まで行くのは苦しいと言えるでしょう。すなわち、張本選手はすでに当確、と言えそうです。

 

次に、吉村和弘選手以下の選手が、水谷選手に追いつくことが可能か? というのを見てみます。

吉村和弘選手の今シーズンのツアーでの最高成績は、ツアープラチナでベスト16が一つあるだけです。森園選手は本線1回戦敗退が最高、吉村真晴選手はツアーでベスト16が一つあります。ただ、三選手とも、現在のランキングだと、ツアーには予選からの出場になります。水谷選手の上まで出るには、最低でも4000ポイント、できれば5000ポイント以上の上積みが必要なわけですが、そのためには、最低でもツアーで勝ち上がって、T2ダイヤモンドやツアーファイナルの出場権を得ないといけません。現実的にはかなり苦しいと言わざるを得ない状態です。4番手以下の選手が2020年1月時点で2番手にまで入ってくる可能性は、極めて低いと言えるでしょう。

 

あとはもう、水谷選手と丹羽選手の勝負です。

 

残り4カ月でワールドツアーのプラチナ大会が10月11月で2試合、通常のワールドツアーが1試合あります。チャレンジプラスが9月12月で2試合、通常のチャレンジリーズは10月2試合、11月1試合あるようです。

そのほかに、10月にはワールドカップがあります。これに出場できるのは、張本選手と丹羽選手のみです。水谷選手に出場権はない。9月のアジア選手権は、水谷選手も丹羽選手も出場しません。

さらに12月にはツアーファイナルがありますが、これに出場出来るツアー上位16選手には、現段階では、水谷選手は張本選手と並んで入っていますが、丹羽選手は19番手であり入っていません。

それらのほかに、ボーナスポイントとして獲得可能なT2ダイヤモンドが11月にあり、そこに出場できる選手は最低400ポイントを得ることができます。

 

こうなると、今後のポイントは、丹羽選手がツアーの上位16選手が出場できるT2ダイヤモンド、あるいはツアーファイナルへの出場資格を、残りのツアー試合で好成績を上げて得ることができるか? というのと、水谷選手の出ないワールドカップで勝ち上がってポイントを得られるか、という二つになってきそうです。

いずれにしても丹羽選手次第、というところ

丹羽選手は今シーズン、ツアー大会には8試合出場してベスト16が最高です。ベスト8が三つある水谷選手との差がそこにあります。水谷選手はツアーランキングで現在13位 残り3試合でファイナル進出の16位以内を守れるか? というのも一つポイントになります。

 

直近では9月10日から、チャレンジプラスグレードの試合がパラグアイで行われるのですが、この試合に丹羽選手がエントリーしていて第一シードになっています。これに優勝することができれば1100ポイント獲得で、8番目のポイントの675との差し引きで425ポイントプラスされ、8115ポイントまで伸ばし、水谷選手との差を130ポイントにまで縮めることができます。地球の真裏にまで、なりふりかまわずポイントを取りに行っていますが、どこまで勝ち上がることができるでしょう。

次の勝負所は10月のストックホルムでのワールドツアーシリーズに、翌週のブレーメンでのプラチナ大会の二連戦になるかと思われます。

 

 

 

卓球 東京オリンピックへ ランキングケーススタディ(女子)

前回、卓球の世界ランキングの決め方の話をしました

今回は、その、世界ランキングで決まる東京オリンピック日本代表についてのお話です

東京オリンピックには、2020年1月の世界ランキング上位二人が代表に選出されます。団体戦メンバーに入る三人目も、世界ランキングで三番手に入ることでその有力候補になることができるのではないか? とされています

 

まず、2020年1月まで残るポイントを、各選手がどれだけ確保できているか? というのを見てみます。2019年8月末時点でのものです

 

 

ポイント

8番目

7番目

伊藤美誠

10865

900

900

平野美宇

10175

900

900

石川佳純

9855

900

900

佐藤瞳

7135

720

720

加藤美優

7015

540

550

早田ひな

5975

450

540

芝田沙希

5720

675

675

 

上位7選手まで上げてみました。ポイントは合計ポイント。8番目というのは、合計8試合のポイントのうち一番低い8番目のポイントはいくつか? というものです。これは、このポイントより多くのポイントを稼ぐと、この8番目のポイントがなくなってそこに入れ替わって入る、というものです。7番目、というのもほぼ同じでその選手の8試合のポイントのうち、上から7番目のものは何ポイントか? ということです。

この中で、上三人が抜けているのははっきりしています。残りは四カ月、実質的にはこの三人の勝負、という感じになってきました。8月末のワールドツアー準決勝で、石川選手と平野選手の直接対決があり、平野選手が勝ち上がったことで、ポイントが逆転しました。この先、代表が決まるまでは中国選手との対戦よりも日本人選手同士、特に上位三選手同士の対戦、直接対決、というものの方が大事になってきそうです。

 

残り4カ月でワールドツアーのプラチナ大会が10月11月で2試合、通常のワールドツアーが1試合あります。チャレンジプラスが9月12月で2試合、通常のチャレンジリーズは10月2試合、11月1試合あるようです。

そのほかに、10月にはワールドカップがあります。これに出場できるのは、石川選手と平野選手のみです。9月にはアジア選手権があり、石川選手、平野選手、佐藤選手、加藤選手に芝田選手の5選手が出場します。

さらに12月にはツアーファイナルがありますが、これに出場出来るツアー上位16選手には、現段階では、伊藤選手石川選手平野選手と佐藤瞳選手の4人が入っています。

それらのほかに、ボーナスポイントとして獲得可能なT2ダイヤモンドが11月にあり、そこに出場できる選手は最低400ポイントを得ることができます。

 

上位三選手は、8番目のポイントで900ポイントあるので、今後、ワールドツアーでベスト8に残ってもポイントをプラスすることができません。プラチナ大会でもベスト16だとポイントが増えません。したがって、通常のツアー大会では、かなり勝ち上がらないとポイントが稼げない、ということになります。

上位三選手の中では、二番手三番手の石川平野、両選手は、ポイントの大きなワールドカップの出場権があります。ここで決勝まで残れば、それだけで伊藤選手の上までポイントを稼ぐことができます。さらに、三選手ともT2ダイヤモンドに出場する権利を手に入れられる可能性が極めて高いので、最低400ポイントを積み増すことが出来そうです。また、ツアーファイナルへ出場できる可能性もあるため、場合によっては、ファイナルで直接対決という形になり、勝った方が代表、というシチュエーションも出てくる可能性があります。

 

そんな、この先ポイントをさらに積み増す可能性が高い上位三選手に、加藤選手以下が追いつくためには、残りのワールドツアーとツアープラチナの三試合で三つとも上位に入りポイントを多数稼ぎ、その上でツアーファイナルにも進出して、そこでも高ポイントを稼ぐ、ということが必要です。

現在ポイント2位の平野選手はすでに10000ポイントを超えています。ここに、最低でもT2ダイヤモンドの400ポイント、さらにワールドカップやツアーファイナルでもポイントを積み増すことが必至なことを考えると、日本人選手中二番手に入るためには、最低でも11000ポイントまで到達させることが必要で、できれば12000ポイントあたりまで欲しいわけです。現在の通常のランキングでは日本人二番手の石川選手が12443ポイントですし、三番手の平野選手が12140ポイントですから、12000ポイント台の勝負になってきそうに見えます。

 

ケーススタディしてみましょう。

この先ツアー1試合、プラチナ2試合で好成績を上げ、T2ダイヤモンドの出場権を得、ツアーファイナルの出場権を得た、ということで5試合出場したとします。すべて優勝するとこうなります。

 

 

佐藤瞳 7135+1800+2250×2+1000+2550-720×3-850=13975

加藤美優 7015+1800+2250×2+1000+2550-540-550-675-680=14420

早田ひな 5975+1800+2250×2+1000+2550-450-540×2-675=13620

芝田沙希 5720+1800+2250×2+1000+2550-675×4=11870

 

こうしてみると、芝田選手は、最低線の11000ポイントは超えてきますが、12000にまでは届かない。ツアーとプラチナ2試合にT2ダイヤモンドとツアーファイナルすべて優勝という条件でこれですから、現実的には早田選手以上の三選手までが、まだ可能性を残している、というところかと思われます。(理論的には、チャレンジプラスなどの試合に出てポイントを上積みすれば12000を上回ることが完全に不可能なわけではないです)。

 

では次、ツアーで優勝、プラチナ二連勝でT2ダイヤモンドとツアーファイナルの出場権を得たけれど、どちらも初戦敗退、となった場合どうなるか? 

 

佐藤瞳 7135+1800+2250×2+400+1020-720×3-850=11845

加藤美優 7015+1800+2250×2+400+1020-540-550-675-680=12290

早田ひな 5975+1800+2250×2+400+1020-450-540×2-675=11490

 

ツアーとプラチナで三連勝しても、T2ダイヤモンドとファイナルがだめだと、12000ポイントに届くのは加藤選手くらいになってしまいます。先ほどもそうでしたが、すでに稼いでいるポイントは加藤選手より佐藤選手の方が上なのですが、7番目8番目のポイントが加藤選手の方が低いため、今後大きなポイントを稼いだ時に消えるポイントが加藤選手の方が小さく、合計で高いポイントに届くポテンシャルは加藤選手の方が上、という構図になっています。

 

次に、5試合出て、すべて準優勝だった場合、という過程で計算するとこうなります

 

佐藤瞳 7135+1440+1800×2+800+2040-720×3-850=12005

加藤美優 7015+1440+1800×2+800+2040-540-550-675-680=12450

早田ひな 5975+1440+1800×2+800+2040-450-540×2-675=11650

 

全部準優勝だと早田選手は12000ポイントまで届きません。佐藤選手でぎりぎり12000ポイント。かなり過酷な条件です。

 

次に、上記の五試合のうち、一番近い試合はワールドツアーになるのですが、この試合で本線一回戦負けとなった場合、残り四試合をすべて優勝したとしてどうなるか計算します。

 

佐藤瞳 7135+1800×2+1000+2550-720×3=13025

加藤美優 7015+1800×2+1000+2550-540-550-675=13300

早田ひな 5975+1800×2+1000+2550-450-540×2=12495

 

ワールドツアーで一つ初戦敗退が出ても、後全勝すればまだ可能性は残る、という状態ではあります。

 

佐藤選手と加藤選手は9月のアジア選手権への出場権があるので、そこで、ポイントを稼ぐチャンスはあります。おおよそワールドツアーと同じ程度のグレードなので、ツアー一回分チャンスが増えるイメージではあります。

 

 

ここまで、簡単に、ツアー優勝とかプラチナ優勝とか、そんなことを言っていますが、今シーズン日本人選手でツアー大会優勝は1つもありません。準優勝で、伊藤選手と平野選手が一回づつあるだけです。ツアー大会で決勝まで残るのは簡単なことではありません。佐藤選手は今シーズン、ツアー、プラチナ、それぞれベスト8を一回経験していますが、ツアーもプラチナもベスト16が最高、早田選手はツアーはベスト16、プラチナでは本線一回戦敗退が最高成績です。

上位三選手の戦い、というのも面白いわけですが、それを脅かす位置にいる選手が、最後の最後に一勝負して一波乱、というのも期待されるところ。昨年ファイナルに残った佐藤選手、T2ダイヤモンドで陳夢に勝った加藤選手、今シーズンチャレンジシリーズ2連勝にチャレンジプラスで優勝も経験したダブルス巧者の早田選手。厳しい情勢ではあるのですけれど、それぞれチャンスのある選手だと思われますので、ぎりぎりまで期待してみていたいと思います。

 

 

 

卓球 世界ランキングの決め方

今回は、卓球の世界ランキングの決め方のお話をします。今回の対象は2019年のランキングシステムです。割と毎年変わってしまうので、今回の話は昨シーズン以前にはそのまま適用できませんし、また、来シーズンもいくらか変わってしまうことが予想されます

 

ここではシングルスのランキングについて記します。シングルスであれば男子も女子も変わらず同じ仕組みです

 

  • ランキングポイントはイベントカテゴリー毎に決まります
  • ランキングポイントは、次の例外を除いて12カ月有効です
  • 世界選手権、世界ジュニア選手権、ワールドツアーグランドファイナル、ワールドカップ、大陸選手権、大陸カップで得たランキングポイントは、次の同じタイプの大会まで有効です
  • 世界ランキングの決定に使われるポイントは、得られたポイントの大きい方から8試合分までとなります
  • シングルスの大陸選手権、チーム大陸選手権、大陸カップは、これらの中で最大1つのみをランキングポイントとして使うことができます。
  • マルチスポーツイベントは最大1つのみカウントされます
  • T2ダイヤモンドイベントに出場した選手は、ランキングポイントにカウントする8つの試合をすでに保持していても、それ以外のボーナスポイントとしてT2ダイヤモンドの試合のポイントを得ることができます。

 

シングルスの大会での結果のみではなくチーム戦でのシングルス戦の結果についても、シングルスの世界ランキングポイントにカウントすることができます。そのルールを以下に記します。

 

  • オリンピックのチーム戦でのシングルスのポイントはシングルスランキングに反映します。
  • 大陸チーム選手権の試合は、個人戦の大陸選手権とは分けられ、最大で8勝までカウントできます。
  • 大陸チーム選手権の予選での勝利も、②の最大8勝分の中に含まれます。
  • 大陸ゲームのチーム戦や個人戦のポイントも、シングルスランキングのポイントにカウントされます。

 

おおざっぱにまとめてしまうと、基本的にはランキングは直近1年の間の試合の結果で決まるけれど、世界選手権とか特別な大き目な大会は1年単位ではなく、大会単位でポイントが更新され、それも含めて全体でよい方から8試合分のポイントの合計でランキングが決まります、ただしT2ダイヤモンドという選抜された人だけが出られる試合はボーナスポイントとして8試合の外数として上積みできます、ということです。

 

というわけで、各大会でどんな成績を得ると何ポイント取れるのか? というのが重要になってくるわけですが、その辺もざっと記します

 

 

オリンピック

世界選手権

ワールドカップ

優勝

3000

3000

2550

準優勝

2250

2250

1915

3位

1950

 

1660

4位

1800

 

1530

ベスト4

 

1950

 

ベスト8

1500

1500

1275

ベスト16

1200

1200

1020

17-20位

 

 

765

ベスト32

900

900

 

ベスト64

600

600

 

ベスト128

450

450

 

予選負け

300

300

 

グループ2

 

225

 

グループ3

 

150

 

グループ4

 

75

 

グループ5

 

30

 

チーム戦の1勝

250

 

250

 

オリンピックと世界選手権が基本的に同じポイント、というのはフィギュアスケートあたりと同じ考え方です。

 

 

世界選手権 団体戦

チャンピオンシップディビジョン

250

チャンピオンシップディビジョン順位決定戦

180

2ndディビジョン

100

2ndディビジョン順位決定戦

72

3rdディビジョン

50

3rdディビジョン順位決定戦

36

 

世界選手権の団体戦は各個人の1勝毎にポイントが得られます。日本が出るようなチャンピオンシップディビジョンは、基本的に勝てば250ポイントが得られます。順位決定戦というのは、決勝トーナメントに進めなかったチームで行われるものです。団体戦はグループステージが国として5試合あり、その後決勝トーナメントにつながります。全勝で決勝まで勝ち続けると、チームとして8勝出来ます。なので、個人も1人1試合で決勝まですべて勝てば8勝で2,000ポイント得られる、という計算です

 

 

ツアーファイナル

ツアープラチナ

ワールドツアー

優勝

2550

2250

1800

準優勝

2040

1800

1440

ベスト4

1660

1465

1170

ベスト8

1275

1125

900

ベスト16

1020

900

720

ベスト32

 

675

540

予選決勝負け

 

450

360

予選ベスト64

 

340

270

予選ベスト128

 

225

180

予選ベスト256

 

170

135

予選ベスト512以下

 

115

90

 

ワールドツアーは、通常のものとプラチナグレードの二つに分けられ、年間の最後にツアーファイナルがあります。ツアーファイナルは世界選手権よりポイントは少ないですが、ワールドカップ並みのポイントはあります。出場は16人

プラチナと通常のワールドツアーでは、勝ち上がり1つ分程度のポイント差がつきます。

2019年はワールドツアーが6試合、プラチナも6試合開催されます。

 

 

大陸選手権

大陸大会

マルチスポーツゲーム

優勝

1800

1050

600

準優勝

1350

790

450

3位

1170

685

390

4位

1080

630

360

5位

900

525

300

6位

855

500

285

7位

810

475

270

8位

765

445

255

ベスト16

720

420

240

ベスト32

540

315

180

ベスト64

360

210

120

ベスト128

270

160

90

予選ベスト32

270

160

90

予選ベスト64

180

105

60

予選ベスト128

135

80

45

予選ベスト256

90

55

30

グループリーグ勝利

25

18

10

参加

12

9

5

 

大陸選手権というのは、卓球だけの大会のアジア選手権など各大陸の選手権、大陸大会というのはアジア大会などの総合競技会を指します。マルチスポーツゲームユニバーシアードや東南アジア大会のような大陸大会以外の総合競技会です。大陸選手権はワールドツアー並みのポイントを得られますが、大陸大会のポイントはそれと比べるとかなり低めです。

2018年のアジア大会に、卓球は日本の上位選手は全然出てこなかった、というのはこのあたりの理由によります。

 

 

チャレンジ+

チャレンジ

T2ダイヤモンド

優勝

1100

850

1000

準優勝

880

680

800

3位

 

 

700

4位

 

 

600

ベスト4

715

555

 

ベスト8

550

425

500

ベスト16

440

340

400

ベスト32

330

255

 

ベスト64

220

170

 

 

ツアーの下のグレードでチャレンジシリーズがあります。チャレンジプラスは6試合、チャレンジシリーズは9試合予定されています。

T2ダイヤモンドは、ツアー上位15名と開催国枠1の16人で行われる大会で、3大会あります。優勝から初戦敗退までのポイント差が他の試合と比べて小さくなっていて、参加するだけでボーナスポイントが得やすい、という仕組みになっているようです。

 

その他も細かく設定はありますが、主なものは以上です。

 

 

卓球の世界ランキングは、日本では東京オリンピックの代表を決めるために使用されます。男女それぞれ、2020年1月のランキングの上位2人は、シングルスの代表になります。

また、ワールドツアーなどの出場権は世界ランキングで決まります。世界ランキングの上位からシードが付き、上位から本線の出場権を得ていき、本線の出場権が埋まってしまうと、ランキング下位の選手は予選から、ということになります。

世界ランキングで組み合わせが決まってきますので、ランキングは極めて重要です。世界ランキングは飾りに近い競技と、世界ランキングが選手の人生の最重要事項に近い競技とそれぞれありますが、卓球は、世界ランキングが重要な側、特に、オリンピックの選考をこれで決めるという日本人選手にとっては大変重要になっている競技になります。

 

 

 

国際スケート連盟の財務状況 時系列

 


前回は2018年12月期の国際スケート連盟の決算を見ました

今回は、過去からの推移を見てみます

ただ、過去と言っても2015年からの4年分とします。

前回も記しましたが、国際スケート連盟の決算書の通貨は基本的にはスイスフラン(CHF)です。1スイスフランはほぼ1ドル程度です。文中に、〇〇スイスフラン、と記しても、それがいくらくらいなのかイメージしづらいと思いますので、文中では基本的にスイスフラン表記はせずに、おおよそ〇〇ドル、という風に、ドルで記します。1ドルは最近は105~110円ほどですが、めんどくさかったらおおよそ100円、すなわち、ドル表記の100倍に換算していただいてもよいかと思います。

なお、以下のグラフでは、国際スケート連盟の通貨であるスイスフラン(CHF)表記で記します。

 

まずは年間収入の推移

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ISUの年間収入はおおよそ3,500万ドル近辺を推移しています。日本円では30億円台後半付近。年による変化はあまりありません。2018年がオリンピックの開催年なのですが、オリンピックの年だけ極端に増える、ということもありませんでした。オリンピック関連の直接的な収入は、IOCから得るわけですが、その収入はオリンピック開催年だけではなく、4年間の間にだいたい均されて付与されるので、オリンピック年だけ収入が膨らむ、ということはありません。また、国際スケート連盟としての直接的な収入も、オリンピック年だけ膨らむ、ということがないのもわかります。逆に、オリンピック年のオリンピック後の世界選手権は有力選手が来ないので客が入らず収入が減る、というようなことも起きなかった、ということも見て取れます。

この辺は、日本スケート連盟との大きな違いかと思います。日本スケート連盟は、露骨に、オリンピックシーズンの収入が大きくなっています。オリンピックシーズンだけマーケティング収益が膨らむ、あるいはオリンピックシーズンだけ主催大会の収益が膨らむ、ということが起きているのですが、国際スケート連盟ではそれが起きていないわけです。

また、収入規模では、国際スケート連盟は、日本スケート連盟と大差ない、こともわかります。日本スケート連盟はオリンピックシーズンの18年6月期決算では32.3億円の収入でした。浅田真央さんの最後のオリンピック、羽生結弦選手の最初の金メダルのソチオリンピックシーズン、14年6月期決算に至っては、51.4億円の収入があります。

 

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国際スケート連盟の主な収入源は三つ、それにプラスして金融資産からの収益があります。金融資産からの収益は、上記の年間収入の外数としてカウントされています。

最大の収入源は放映権料です。1,500万ドルから2,000万ドルの幅で推移しています。奇数年に大きく、偶数年に小さいのには理由があります。フィギュアスケートの国別対抗戦の有り無しです。国別対抗戦があると放映権料として、17年は225万ドルほどの収入があるとされています。15年は220万ドルほどだった、とのことなので、わずかですが増えてるんですね。

なお、2016年には、チームチャレンジカップ、という三大陸対抗の試合が行われましたが、これは、ISU主催ではなく、ISU公認でアメリカの協会が主催の試合でした。

日本スケート連盟の放映権収入は2億円ほどですので、一桁違います。日本スケート連盟が主催している試合というのはそれほど多くはなく、一番高く売れているのは全日本フィギュアであることを考えると、一桁違うくらいはきっと妥当なのでしょう。ちょうどISUが国別対抗戦で得ている放映権料と同じくらい、ということを考えると、世界中に放映権を売れる、という市場性の違いというのは大きいのでしょうね。全日本フィギュアもアジアの国とか、ロシアとかに売れるといいのですけど、むしろロシア選手権にJ-Sportsが払っている放映権料の方が大きそうでしょうか。その辺うまくやれるといいのですけれど

また、16年→17年で、TV ASAHIからの放映権料が14万ドルほど増加、15年→16年では額の記載はないのですが、FUJI ASAHI JSports からの放映権料が増えた、とあります。日本のテレビ局は、国際スケート連盟にだいぶ吸い上げられているようですし、その額は徐々に増えて行っているようです。その辺からの集金は、日本スケート連盟にもうまくやっていただいて、選手に還元してもらえる流れが出来たらと思います。なお、日本のテレビ局よりもっと大きな増加が見られたのが16年→17年のTencentで37.65万ドルほど増加した、とあります。中国からの集金額を増やすことができれば、スケート界ももっと裕福になっていけるので、期待しております。

 

オリンピックからの収入は放映権収入の半分程度です。まあ、四年に一回だけしかない大会でこれだけ入ってくるというのはやはり大きいですね。冬のオリンピックといえばフィギュアスケート。ただ、オリンピックの時だけはスピードスケートも日本では盛り上がりますし、ショートトラックなんかは東アジア圏では盛り上がっているでしょう。

 

放映権料と比べると広告収入は三分の一程度になっています。国別対抗戦の有り無しでやはりいくらかの増減はあるようなのですが、数百万円程度なようなので、広告収入の方にはあまり影響は大きくないようです。年間の総額で数億円の後半。リンクの壁に貼られる広告っていくらくらいなんですかね? その辺の具体的な額がわかると面白いのですが、そういったデータは得られていません。

この広告収入が17年→18年で減っているのですが、理由が、ショートトラックでISU主催の試合が中国韓国でなかったため、スポンサーが減ってしまって、おおよそ115万ドルほどの減収要因となった、とされています。ショートトラックの広告収入、というのも結構あるんですね。総額で7億円前後な中で、ショートトラック要因での減収が1億円以上あった、というわけですから、広告収入の中での影響度は結構大きいわけです。放映権収入のために試合を午前中にするのはいかがなものか? みたいな話はよく出てくるわけですが、広告料収入のために開催地をコントロールするのはいかがなものか、みたいな話にこの辺はなってくるでしょうか。難しいですね。連盟がある程度お金を稼いでくれた方が、その教義の選手にとっても当然プラスになるので、放映権収入も広告収入もガンガン増やしてほしい。でも、そのために試合時間や開催地が決められてしまう。バランスをどうとったら良いでしょう。

 

そして、収入のもう一つの柱として、金融資産からの収益があります。国際スケート連盟には300億円を超える資産があり、これを金融資産の形で持っているので、それが生む金利から収益が入るわけです。時期によっては広告収入並みの収益が金融資産から得られていました。ここに記載した金額は、金融資産からの収入だけでなく、その維持コストや為替差損などによる増減を加味した後の金額になります。金融資産からの収入だけを単純にみるならば、15年の680万ドルほどから18年の590万ドル程度まで微減傾向ですが、グラフに記載されているほどの落ち込みはありません。債権の値下がりによる損失の部分が毎年いくらかあるようです。

それにしても、金融資産からの収入がこれくらいあると、これが最初から計算されて予算が組まれるので、これに頼った運営になります。つまり、300億円以上の資産があると、そこから生み出される収益がすでに連盟運営のための資金源として計算されてしまっているんですね。したがって、この膨大な資産は減らしたくない、という心理が働きます。それがいいことなのかどうかは何ともわかりません。毎年数億円生み出してくれる金の卵として持っておけば、確かに毎年の運営に余裕は出てくる。一方で、そんなにため込んだならもっと直接的に選手に還元、あるいは普及事業につぎ込むべき、という考え方もあります。

 

次は支出の方を見ていきます。

 

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支出は右肩上がりで、2015年におおよそ3,200万ドル台だったものが2018年には3,900万ドル台にまで増加しています。3年で2割ほど増える、というのはかなりの増加です。何の費用が増えているのでしょう?

 

 

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ISUイベント、つまり、世界選手権やグランプリシリーズなどにかかる費用が支出の半分ほどになっています。この金額はグラフを見るととくに増えていません。むしろ減少傾向です。

開発プログラムというのは、ようは普及などのことを指すと考えられますが、この支出が15年から16年にかけて増えています。予算が増えたから、という記録はあるのですが、予算を増やした理由はよくわかりません。予算が増やせるのは、やりたいことがあり、かつ、お金があるときです。お金はある、という状態でしたので、何かやりたいことができたので使ったということなのでしょうが、その何かが何なのかはちょっとわからないです。

 

継続的に増えているのはその他の営業費用、という項目になっています。15年には460万ドルほどだったものが18年には950万ドルほどにまでなっており、3年の間に二倍以上に増えました。18年に目立って増えているのは、オリンピック関連の出張や会議などで250万ドル近い費用が発生していて、この辺の出張・会議系の費用が前年より100万ドル以上増えています。あまり、増えてうれしいタイプの出費ではないですね。メディアPR費用やドーピング対策費用などが増えているのは仕方のないところなんでしょうけれど、こういうところばかり増えてしまうのもなあ・・・、という印象な項目です。

 

また、事務局費用も2015年に240万ドル相当だったものが2018年には330万ドル程度にまで大幅に増えています。増えているのは、サラリー・・・、給料ですね・・・。どうやらスタッフが増えたというような記述がありました。

 

支出はそういったところではなく、ISUイベントや普及活動の方を増やしていきたいはずなのですが、今一つ、そういう方向に進めていないようです。

 

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増やしたい支出であるところのISUイベントへの支出の推移。これが各項目増えてません・・・。チャンピオンシップというのは世界選手権や世界ジュニア、ヨーロッパ選手権あたりのことを指しますが、2015年に1,040万ドル程度だったものが2018年には1,100万ドルほどにまではふえました。一方でその他のISUイベントの費用は17年→18年で減少。ショートトラックのワールドカップが17年は6試合だったのが18年は4試合だったことで30万ドルほど費用が減少したそうです。これは試合数の縮小ですから、スケート界としては悲しむべきことです。また、17年はフィギュアスケートのオリンピッククオリファイがありましたが、18年はなかったので20万ドルほど費用が減ったとされています。ようは、ネーベルホルン杯がオリンピックの最終予選とされるときはISUの主催になる、ということなようです。なので、これはまあ、受け持ちが変わっただけなので特に問題ないでしょう。

チャンピオンシップの賞金は、実は微減傾向です。15年に210万ドル台だったのが、18年は180万ドル台になってしまっています。17年→18年はスピードスケートの1大会がなかったために減少した、とされています。大会数が減るのはスケート界として悲しむべきこと・・・。

その他のISUイベントの賞金は微増傾向で、15年230万ドル台が18年は260万ドル弱にまで増えています。この辺の中身の変化はよくわかりません

 

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そんなこんなで、各年の最終損益は右肩下がりになっています。15年には1,400万ドル近い黒字があったのですが、18年はついに赤字。赤字理由が資金に余裕もあるし普及に力をお金をつぎ込もう、とかだったらよかったのですが、ここまで見てきた感じからすると、近年は運営コストが嵩んでしまっていて費用が増えて赤字になった、という風に見えます。あまりよくない赤字理由に感じます。

 

国際スケート連盟のここ数年の財務状況はこういった形になっています。前回見たように資産は十分にある。自己資本が2.6億ドル余りあり自己資本比率が80%にも達しています。なので資金面の危険性はないのですが、最近はその豊富な資金を生かせていないように見えます。

短期的にはこういった、コストが増えてしまう時期というのがあるのはしかたのないことなのかもしれません。しかしながら、中長期的にはそのままではよくなく、選手への還元、あるいは幅広い地域への普及、といった方へ力を、お金を、つぎ込んでいけるようになってほしい、と思います

 

 

国際スケート連盟2018年12月期決算

だいぶ時間が経ってしまっていますが、ISU 国際スケート連盟の2018年12月期の決算報告書が公開されました。

日本スケート連盟は7月1日始まりの6月30日終わり、という年度で決算がなされますが、国際スケート連盟は、1月1日始まりの12月31日終わり、という年度になっています。シーズンのど真ん中でぶった切るという形になっているので、ちょっとわかりにくい部分もあるのですが、まあ、いつの年の決算かというのはわかりやすい形にはなっています

12月決算なのに、決算書が公表されたのは6月の半ばになってからで、だいぶ遅いのですが、上場企業でもなければ、仕方ないのでやっている作業、という側面がだいぶ強いでしょうから仕方ない部分はあるのでしょう。

 

さて、国際スケート連盟が出している決算書なわけですから、当然、英語で出てきます。その上、決算書という会計用語(専門用語)が飛び交っている書類なわけですから、つまり、英語の専門用語を読み解かないといけないわけです。これを、単語そのまま持ってきて、これです、と出してもなかなかつらいと思いますので、私の方で適当に日本語化して出します。専門家ならそういう日本語は使わない、というような言葉の当て方をしている場合もあるかと思いますが、そのあたりはご了承いただけましたらと思います。

また、国際スケート連盟の決算書の通過はスイスフランとなっています。以下、通貨の表記は省きますが、スイスフランです。1スイスフランが何円くらいなのか、というのは直接的にはイメージしづらいと思いますが、1スイスフランは、ほぼ1ドル、と思っていただければほとんど間違いはないです。1ドルが何円かは、為替相場次第で動きますが、110円くらいに思っておけばいいですし、それがめんどくさかったら100円くらい、と思ってもそんなに間違いはありません。

なお、以下では、スイスフランスイスフランいうのは面倒なのとイメージがしづらいのと、二つの理由により、最初から、〇〇ドルくらい、というような記述の仕方をすることにします

 

まず、貸借対照表に当たる、Balance Sheetを見てみます

 

流動資産:39,826,334

固定資産:284,453,973

総資産    :324,280,307

流動負債:44,737,716

固定負債:16,000,000

自己資本:263,542,591

 

 こうやって数字が並ぶとイメージしづらいですかね

 

総資産が3.24億ドル程度。おおよそ330億円ほど、とイメージしたら良いでしょうか。日本スケート連盟の2018年6月期の総資産が30.5億円ほどでしたから、おおよそ10倍の資産規模になっています

これに対して負債はおおよそ6,000万ドル程度にすぎません。自己資本比率にして80%を超える状態ですので、かなり優良な財務状態にあるといえます。

資産のうち固定資産が2.84億ドル程度あり、かなり部分を占めます。ここの部分、固定資産、という訳を当てましたが、その中身としてはほとんど金融資産になっています。2.79憶ドルほどなので280~300億円近くが金融資産です。どうも金融資産は債権の形で持っているようですが、この債権の金利で毎年数億円相当の収入を生み出しています。金持ちは金を生みやすいの法則です。

 

この自己資本は、ほぼ、利益剰余金で出来ています。国際スケート連盟のような、利益を上げることを目的とするわけではない団体においては、この利益剰余金が多額にあることは、ある意味では、稼ぎすぎ、を意味する部分があります。財務の安定性、という意味ではいいのですが、稼ぐのが目的ではないのだから、そんなにため込まずに、普及のために使うか、選手に還元するか、何か考えなさい、と言われてしまうような構図にある、ともいえるわけです。

 

では次に、損益計算書に相当するINCOME STATEMENTについてみてみます

 

営業収益              :35,612,217

営業費用              :39,196,198

営業利益              :-3,583,982

金融収入/費用      :3,316,387

その他収益           :34,880

本年損益              :-232,714

 

2018年度は、収益より費用が大きく、358万ドル、3.6億円程度の営業赤字でした。まあ、赤字はあまりいいことではないですが、300億円近い利益剰余金を抱えている状態ですから、痛くも痒くもない額であるとも言えます。

 

営業外収益に当たる部分を見ると、金融資産関係で332万ドル程度の黒字が入っています。先述した多額の金融資産により、金が金を生む、ということによって生まれた姿です。この辺まで含めると、2018年度の最終損益は、23万ドル程度の赤字、ということで2,500万円ほどの赤字で終わっています。普通の企業では、少額と家でも赤字は問題、ということになりますが、国際スケート連盟は利益を追求する企業ではありませんので、お金が十分に余っている中ではこれくらいの赤字は問題にならない、とみてよいかと思います。

 

営業収益が日本円にすると30億円台後半程度の規模なのですが、これは、日本スケート連盟の2018年6月期の収益32.3億円よりやや大きい程度に過ぎません。資産規模は10倍程度あるのですが、毎年動かしている金額は、国際スケート連盟日本スケート連盟も、実はそれほど変わらない、という水準だったりします。

 

次に、営業収益の中身を見てみます。

 

テレビ収入                                       :17,044,403

広告収入                                          :6,855,883

オリンピック年間収益配分              :11,058,135

 

国際スケート連盟の収入の柱はテレビ収入なようです。その額1,700万ドルほど。日本円にして20億円弱程度。日本スケート連盟の放映権料収入は2億円程度でしたからそれと比べると10倍規模になります。テレビ収入は実は17年比で18年は減っていて、その原因は、ワールドチームトロフィー(国別対抗戦)がなかったからだ、と言っていて、金額として2,250,000CHFほど、その影響があった、とされています。日本円にして2億数千万円ほど。国別対抗戦は賞金も大きく、このテレビ収入は連盟丸儲けなわけではないのですが、連盟のテレビ収入の1割以上の大きさをこれが占める、というのは意外でした。たまに忘れられてしまいますが、国際スケート連盟は、フィギュアスケートだけの連盟ではないですからね。スピードスケートもショートトラックもその範疇にあります(アイスホッケーは氷上ですが別団体です)。スピードスケートやショートトラックの運営にも、ああいう収益源が役に立つ、というのは確かなのでしょう。

 

広告収入は700万ドル弱。7億円ほど。オリンピックからの配分は1,100万ドルほどなので、10億円台前半。2018年はオリンピックがあった年ですが、この1,100万ドル程度というのは全額ではなく、4年間に適当に分けて配分されるようです。毎年同じ額なわけではなく、実際のオリンピック関連の収入の推移に合わせて調整が入っているようですが、まあ、オリンピックからの金銭的配当は1回あたりこの4倍程度、4,000万ドルくらいあるんだな、と思えばよさそうです。

こうしてみると、オリンピックというのはやはり大きいんだなあ、とは思います。

 

 

次は支出を見ます。

 

ISUイベント                     :18,330,808

ISU育成プログラム          :7,694,900

ISUその他の営業費用       :9,525,122

ISU事務局費用                 :3,345,108

 

支出の最大はISUイベント。ようは世界選手権とか、グランプリシリーズ、スピードスケートなどのワールドカップとか、そういったものの運営にかかる費用です。

 

ISUチャンピオンシップ   :11,024,239

その他のISUイベント      :2,905,692

チャンピオンシップ賞金    :1,822,487

その他の賞金                     :2,578,390

 

ISUイベントの費用の内訳ですが、チャンピオンシップにかかる費用がほとんどで、その他イベントはそれほど大きな額ではありません。チャンピオンシップ大会というのは、世界選手権、世界ジュニア、あるいはヨーロッパ選手権四大陸選手権を指します。

賞金はチャンピオンシップよりもそれ以外の試合での支出の方が多いのですね。それにしても、スピードスケート、ショートトラックまで含めて、年間の賞金支出が440万ドル程度、日本円にして5億円に満たない、というのは寂しい限りです。

 

事務局の費用というのは300万ドル台。3億円台半ばですので、ここがやたら大きい、ということはありません。それなりに適正な規模で運営されているんだろうな、というのは想像されます。

 

日本スケート連盟の支出で大きな部分を占めるけれど、国際スケート連盟の支出項目としては存在しないものがあります。選手の強化費的な部分です。国際スケート連盟は、特定の選手を支援して強化する、というような機能は持っていません。そのため、そういった費用は存在しません。一方で、国からの支援、補助金、的なものも受け取っていないので、その分収入側にそういった科目が存在しません。

 

 

国際スケート連盟は、かなり巨額な資産を持ち、財務的な安定性がある中で、昨年度の損益はごくわずかな赤字でした。この巨額な資産をどう生かしていくのがよいのでしょう。

想像ですが、スケート連盟の収入のほとんどは、フィギュアスケートに依存しているように感じられます。一方で、スピードスケート、ショートトラック、といった競技も抱えています。競技団体ですから、大会の運営、選手を守ること、というのが一つの存在意義ですが、その一方で、競技の普及、というのも存在目的になります。

収入の大きな部分はフィギュアスケートに依存しているように感じられるのですが、この、フィギュアスケートという競技、今現在、広く世界で受け入れられているか? と考えると、ちょっと疑問なところもあります。日本では、カップル競技のマイナーさ、という問題はあるものの、大会を開けば客席はほぼ間違いなく埋まるという状態はあります。では、世界ではどうなのでしょう?

アメリカですら最近は埋まらない、ということも聞きます、ネイサンチェン選手が出てきて、アメリカのフィギュアスケートも、競技レベルとしては復権してきたようには感じられますが、人気の面ではどうなのでしょう?

さらに心配なのはヨーロッパ。ロシア以外のヨーロッパ。競技レベルの面でも人気の面でも不安を感じざるを得ません。

 

スピードスケートも、ショートトラックも、おそらくそうですが、スケート連盟として、できれば、世界への普及、という視点での活動を強めてもらえたら、資金の配分を高めても絶えたら。そんなことを思ったりします。