2018年、世界選手権の直前に放映された、安藤美姫さんがインドネシアにフィギュアスケートを教えに行くという企画。その時の主役級で出ていたインドネシアのスケーター二人、女子のサビカと男子のリズキー。二人のその後を時折追っています。
二人の今シーズン初戦は、8月頭にアジアンオープンフィギュアのはずだったのですが、延期というか実質的には中止からの再設定で10月末に移ってしまったので、初戦がジュニアグランプリシリーズになりました。
二人とも、ジュニアグランプリの二戦目、レークプラシッドの試合に出ています。
サビカはショートプログラムは良い出来でした。
Elements |
BaseValue |
GOE |
Scores |
||||
1 |
LSp4 |
2.70 |
0.58 |
3.28 |
2.000 |
||
2 |
2A |
3.30 |
0.00 |
3.30 |
0.111 |
||
3 |
FSSp4 |
3.00 |
0.21 |
3.21 |
0.556 |
||
4 |
2Lz+2T |
3.40 |
0.00 |
3.40 |
0.000 |
||
5 |
StSq2 |
2.60 |
-0.15 |
2.45 |
-0.444 |
||
6 |
2Lo |
1.87 |
x |
0.00 |
1.87 |
0.000 |
|
7 |
CCoSp4V |
2.63 |
0.19 |
2.82 |
0.667 |
||
TES |
19.50 |
0.83 |
20.33 |
技術点20.33 演技構成点16.89のトータル37.22 これは彼女のパーソナルベストになります。キスアンドクライでも得点発表後笑顔を見せていました。昨シーズンは技術点16.30 演技構成点16.59のトータル32.89でした。
このショートではスピン3つのうち二つがレベル4、一つがレベル4V 昨年は3二つに2一つでしたから、まずスピンの基礎点が大きく上がりました。冒頭のレイバックスピンではGOE+2がついています。また、国際大会で初となるダブルアクセルの着氷に成功。GOEは0 加点は付きませんでしたが、しっかり成功です。ステップはレベル2 途中で多少ぐらついた部分もありGOEもマイナス。最後のスピンもレベル4ではなく4Vになったのは少し残念でした。
昨シーズンの世界ジュニア、ショートプログラムのミニマムスコアは23.00でした。今シーズンは固定ジャンプがフリップからループになったぶん、多少基礎点が下がるので、ミニマムスコアも23.00からやや下がる可能性が高いのですが、それでも20.33までは降りてこないでしょうか。ただ、それでも、ミニマムスコアまであと少し、というところまでショートは持ってきています。
一方、フリーは残念な出来でした。冒頭トリプルサルコウに挑みましたがダウングレード、三つ目のダブルアクセルは転倒。結局ダブルアクセル以上のジャンプが決まらず、技術点25.82 演技構成点35.06 トータル59.88に終わりました。
Elements |
BaseValue |
GOE |
Scores |
||||
1 |
3S<< |
<< |
1.30 |
-0.54 |
0.76 |
-4.111 |
|
2 |
2F |
1.80 |
0.15 |
1.95 |
0.889 |
||
3 |
2A |
3.30 |
-1.65 |
1.65 |
-5.000 |
||
4 |
FSSp3 |
2.60 |
0.04 |
2.64 |
0.111 |
||
5 |
2Lz+2T |
3.40 |
0.00 |
3.40 |
0.111 |
||
6 |
LSp4 |
2.70 |
0.04 |
2.74 |
0.111 |
||
7 |
1A |
1.21 |
x |
-0.28 |
0.93 |
-2.556 |
|
8 |
2F+1Eu+2S |
3.96 |
x |
0.03 |
3.99 |
0.222 |
|
9 |
2Lz |
2.31 |
x |
0.00 |
2.31 |
0.000 |
|
10 |
StSq1 |
1.80 |
0.00 |
1.80 |
0.000 |
||
11 |
CCoSp4 |
3.50 |
0.15 |
3.65 |
0.333 |
||
TES |
27.88 |
-2.06 |
25.82 |
プログラム構成を見ると、今シーズンは、ダブルアクセルは彼女の中の感覚としては、挑むジャンプではなくて飛べるジャンプのつもりになったのかな、と感じました。ショートでは実際に着氷。フリーも、二つ目に2Fを挟んでの三つ目のジャンプとしての2Aですし、また、後半にシングルアクセルになった要素があったのですが、おそらくこのジャンプはダブルアクセルを途中で開いて降りてきてしまったもの、に見えました。実際、彼女の構成でシングルアクセルを組み込む理由はありません。また、失敗したジャンプが3Sと2A二つで、コンビネーションが入ったのが二つしかない、ということは、3Sと2A二つのどれかはコンビネーションジャンプのつもりだった、ということになり、飛べたことのない3Sをコンビネーションにすることはないでしょうから、2Aの一つはコンビネーションのつもりだった、ということになります。結果的にはうまくいきませんでしたが、ジャンプのレベルは昨シーズンより一つ上がった、と見えます。また、三連続ジャンプに初めて成功していました。2F-1Eu-2S さして難度の高いものではないですが、後半の1.1倍の中に入れてGOE+0.11と減点なく成功です。まだ3回転は飛べませんが、ジャンプの構成は以前より上がってきています。
さらに得意のスピンはレベル4二つにレベル3一つ。昨シーズンはショートフリー6つのスピンでレベル4は一つもつかなかったのが、今回は4つレベル4 加点はまだほとんどついていませんが、レベル4の数だけで言ったら日本のトップジュニアとそん色ありません。
昨シーズンの世界ジュニアのフリーのミニマムスコアは38.00 サビカの今回の25.82はまだまだ遠い点数です。ただ、構成が上がってきたことで希望は見えてきました。3Sと2A2本にコンビネーションがプラスされれば、GOE±0としても現在より9.10点数が伸びます。そうすると残り3.08点。ステップをレベル2にする、スピンを三つすべてレベル4にする、そこまでもっていって、あと少しづつ全体で加点が取れれば届く、という水準です。
三回転1本で、スピンレベル4が三つ取れれば届かないことはない、というのが世界ジュニアのミニマムスコア。サビカにとっては、来シーズンには現実的な数字、となってきているように見えます。
サビカは今回、出場32選手中、ショート22位 フリー25位で総合25位でした。ジュニアグランプリはショートで足切り24人、ということはなく、全員フリーも滑るのですが、仮に24人足切りがあったとしてもフリーに進めた点数をしっかりとりました。総合得点も97.10ともう少しで100点到達。もちろん、トップ選手とのレベルの差は顕著ですが、階段を一つ一つ上っているのははっきり見えます。ジュニアグランプリシリーズはここまで3戦終わっていますが、97.10という点数なら、どの大会でも、最下位とは程遠い成績です。この先への希望が見える試合でした。
今回残念だったのはリズキーです。ショートは技術点13.43 演技構成点16.86に減点-1がついて29.29で終わりました。
Elements |
BaseValue |
GOE |
Scores |
||||
1 |
CCSp2 |
2.30 |
-0.53 |
1.77 |
-2.333 |
||
2 |
3S<+COMBO |
< |
3.44 |
-1.72 |
1.72 |
-5.000 |
|
3 |
3Lo< |
< |
3.92 |
-1.96 |
1.96 |
-5.000 |
|
4 |
FSSp4 |
3.00 |
0.26 |
3.26 |
0.889 |
||
5 |
StSq2 |
2.60 |
-0.37 |
2.23 |
-1.556 |
||
6 |
1A* |
* |
0.00 |
0.00 |
0.00 |
||
7 |
CCoSp3 |
3.00 |
-0.51 |
2.49 |
-1.778 |
||
TES |
18.26 |
-4.83 |
13.43 |
今回、チャンスだったはずなんです。今シーズンのジュニアの単独ジャンプの課題要素はループです。リズキーはループなら三回転が飛べます。フリップやルッツの年と違い、ループの今シーズンは、単独ジャンプに三回転を持ってこられます。また、三回転のサルコウも要素として入っていて、これはコンビネーションで付けられます。したがって、ジャンプ3本が、3回転-2回転、3回転単独、ダブルアクセル、という上位選手とそん色ない構成にすることが可能でした。実際、その構成で挑んだのですが、トリプルサルコウで転倒しコンビネーション付かず、トリプルループは回転不足両足着氷動き泊まりでGOE-5、ダブルアクセルはシングルアクセルになり零点。結果が技術点13.43という昨シーズンの14.99からも技術点を下げる形になってしまいました。
フリーも技術点25.12 演技構成点34.42に減点-1がついて、総合58.54 これも昨シーズンより低い点数です。冒頭の3Lo-2Tはループが回転不足、単独トリプルループは回転は十分ながら転倒。転倒のすぐ後の要素のスピンはノーバリュー。そのほか各要素もGOEはマイナスがついていて、技術点を伸ばせませんでした。
Elements |
BaseValue |
GOE |
Scores |
||||
1 |
3Lo<+2T |
< |
5.22 |
-1.63 |
3.59 |
-4.111 |
|
2 |
2A |
3.30 |
-0.28 |
3.02 |
-0.889 |
||
3 |
2Lz |
2.10 |
0.00 |
2.10 |
0.000 |
||
4 |
3Lo |
4.90 |
-2.45 |
2.45 |
-5.000 |
||
5 |
CSp |
0.00 |
0.00 |
0.00 |
|||
6 |
2Lz! |
! |
2.10 |
-0.24 |
1.86 |
-1.111 |
|
7 |
FSSp3 |
2.60 |
-0.22 |
2.38 |
-0.778 |
||
8 |
StSq2 |
2.60 |
-0.26 |
2.34 |
-1.111 |
||
9 |
2F |
1.98 |
x |
-0.18 |
1.80 |
-0.889 |
|
10 |
2F+1Eu+2S |
3.96 |
x |
-0.18 |
3.78 |
-1.000 |
|
11 |
CCoSp1 |
2.00 |
-0.20 |
1.80 |
-1.111 |
||
TES |
30.76 |
-5.64 |
25.12 |
ショートフリー合わせて87.83というのは、出場20選手中最下位。ここまでジュニアグランプリ3戦終わりましたが、3戦を通じて一番低いスコアになっています。残念ながら周りと比べると、一つも二つもレベルが落ちる、という水準でした。
希望は、スピンのレベルが上がってきたことでしょうか。昨シーズンは最高でもレベル2だったのが、今回はレベル3一つ、レベル4一つ。どちらもフライングシットスピンで、昨シーズンまでは要素として入れていなかったものでした。また、二回転のジャンプは安定して決めています。フリーは、タノ族化していて、2回転のジャンプではほとんど手を上げていました。それも、三連続ジャンプの三つ目でさえもです。三連続ジャンプでしっかり三つ目に2回転を付けられたのもこの大会が初めてでした。
今回の成績では世界ジュニアのミニマムスコアははるか遠いです。ただ、ショートは昨シーズン23.00で女子と同じ、フリーでも42.00で、女子の38.00とそれほど変わらない、というミニマムスコアは、現実的に目指すことができない程遠いものではありません。ショートはミスが一つくらいなら今回の構成で十分届くものでした。フリーも、3Loを2本に2A1本、という今回の構成だと、少し苦しいですが、3Sを付けるか、2Aを2本にするか出来て、かつ、コンビネーションジャンプをちゃんと3回入れられれば、ノーミスあるいはミス一つくらいなら届く、という水準です。
どちらかというと、サビカの方が世界ジュニアに近いのですが、リズキーはすでに三回転を標準装備として入れているので、一発当てれば一気に点は伸びるという点で十分チャンスはあるんですよね。
サビカの次の試合は10/31からのアジアンオープンフィギュアになるようです。アジアンオープンフィギュアのスコアが公認スコアとして世界ジュニアのミニマムスコア獲得のチャンスになっているのかどうか、今シーズンはちょっとわからないのですが、いずれにしてもおそらく彼女にとって今シーズン最後のチャンスになるので、なんとかとってきてほしいです。
その後、11/29からのSEA Games 東南アジア競技会に二人とも出場するようです。前回、リズキーは代表に入っているけれど、サビカは微妙、というようなことを記しましたが、サビカもインドネシア代表としてSEA Gamesに出場する、と本人が公表しています。
SEA Gamesはシニアの試合です。なので、フリーは、コレオシークエンス付きで時間も30秒伸びます。おそらく二人にとって初のシニアの試合。
今シーズンの世界ジュニアには繋がらない(ミニマムスコアとして使えない)試合ですが、SEA Gamesはこれ自体が東南アジア地域にとっては大きな試合です。他国の出場選手はわかりませんが、メンバー次第では彼女たちでも上位入賞が狙える試合。活躍を期待したいと思います。