前回、卓球の世界ランキングの決め方の話をしました
今回は、その、世界ランキングで決まる東京オリンピック日本代表についてのお話です
東京オリンピックには、2020年1月の世界ランキング上位二人が代表に選出されます。団体戦メンバーに入る三人目も、世界ランキングで三番手に入ることでその有力候補になることができるのではないか? とされています
まず、2020年1月まで残るポイントを、各選手がどれだけ確保できているか? というのを見てみます。2019年8月末時点でのものです
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ポイント |
8番目 |
7番目 |
10865 |
900 |
900 |
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10175 |
900 |
900 |
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9855 |
900 |
900 |
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佐藤瞳 |
7135 |
720 |
720 |
7015 |
540 |
550 |
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5975 |
450 |
540 |
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芝田沙希 |
5720 |
675 |
675 |
上位7選手まで上げてみました。ポイントは合計ポイント。8番目というのは、合計8試合のポイントのうち一番低い8番目のポイントはいくつか? というものです。これは、このポイントより多くのポイントを稼ぐと、この8番目のポイントがなくなってそこに入れ替わって入る、というものです。7番目、というのもほぼ同じでその選手の8試合のポイントのうち、上から7番目のものは何ポイントか? ということです。
この中で、上三人が抜けているのははっきりしています。残りは四カ月、実質的にはこの三人の勝負、という感じになってきました。8月末のワールドツアー準決勝で、石川選手と平野選手の直接対決があり、平野選手が勝ち上がったことで、ポイントが逆転しました。この先、代表が決まるまでは中国選手との対戦よりも日本人選手同士、特に上位三選手同士の対戦、直接対決、というものの方が大事になってきそうです。
残り4カ月でワールドツアーのプラチナ大会が10月11月で2試合、通常のワールドツアーが1試合あります。チャレンジプラスが9月12月で2試合、通常のチャレンジリーズは10月2試合、11月1試合あるようです。
そのほかに、10月にはワールドカップがあります。これに出場できるのは、石川選手と平野選手のみです。9月にはアジア選手権があり、石川選手、平野選手、佐藤選手、加藤選手に芝田選手の5選手が出場します。
さらに12月にはツアーファイナルがありますが、これに出場出来るツアー上位16選手には、現段階では、伊藤選手石川選手平野選手と佐藤瞳選手の4人が入っています。
それらのほかに、ボーナスポイントとして獲得可能なT2ダイヤモンドが11月にあり、そこに出場できる選手は最低400ポイントを得ることができます。
上位三選手は、8番目のポイントで900ポイントあるので、今後、ワールドツアーでベスト8に残ってもポイントをプラスすることができません。プラチナ大会でもベスト16だとポイントが増えません。したがって、通常のツアー大会では、かなり勝ち上がらないとポイントが稼げない、ということになります。
上位三選手の中では、二番手三番手の石川平野、両選手は、ポイントの大きなワールドカップの出場権があります。ここで決勝まで残れば、それだけで伊藤選手の上までポイントを稼ぐことができます。さらに、三選手ともT2ダイヤモンドに出場する権利を手に入れられる可能性が極めて高いので、最低400ポイントを積み増すことが出来そうです。また、ツアーファイナルへ出場できる可能性もあるため、場合によっては、ファイナルで直接対決という形になり、勝った方が代表、というシチュエーションも出てくる可能性があります。
そんな、この先ポイントをさらに積み増す可能性が高い上位三選手に、加藤選手以下が追いつくためには、残りのワールドツアーとツアープラチナの三試合で三つとも上位に入りポイントを多数稼ぎ、その上でツアーファイナルにも進出して、そこでも高ポイントを稼ぐ、ということが必要です。
現在ポイント2位の平野選手はすでに10000ポイントを超えています。ここに、最低でもT2ダイヤモンドの400ポイント、さらにワールドカップやツアーファイナルでもポイントを積み増すことが必至なことを考えると、日本人選手中二番手に入るためには、最低でも11000ポイントまで到達させることが必要で、できれば12000ポイントあたりまで欲しいわけです。現在の通常のランキングでは日本人二番手の石川選手が12443ポイントですし、三番手の平野選手が12140ポイントですから、12000ポイント台の勝負になってきそうに見えます。
ケーススタディしてみましょう。
この先ツアー1試合、プラチナ2試合で好成績を上げ、T2ダイヤモンドの出場権を得、ツアーファイナルの出場権を得た、ということで5試合出場したとします。すべて優勝するとこうなります。
佐藤瞳 7135+1800+2250×2+1000+2550-720×3-850=13975
加藤美優 7015+1800+2250×2+1000+2550-540-550-675-680=14420
早田ひな 5975+1800+2250×2+1000+2550-450-540×2-675=13620
芝田沙希 5720+1800+2250×2+1000+2550-675×4=11870
こうしてみると、芝田選手は、最低線の11000ポイントは超えてきますが、12000にまでは届かない。ツアーとプラチナ2試合にT2ダイヤモンドとツアーファイナルすべて優勝という条件でこれですから、現実的には早田選手以上の三選手までが、まだ可能性を残している、というところかと思われます。(理論的には、チャレンジプラスなどの試合に出てポイントを上積みすれば12000を上回ることが完全に不可能なわけではないです)。
では次、ツアーで優勝、プラチナ二連勝でT2ダイヤモンドとツアーファイナルの出場権を得たけれど、どちらも初戦敗退、となった場合どうなるか?
佐藤瞳 7135+1800+2250×2+400+1020-720×3-850=11845
加藤美優 7015+1800+2250×2+400+1020-540-550-675-680=12290
早田ひな 5975+1800+2250×2+400+1020-450-540×2-675=11490
ツアーとプラチナで三連勝しても、T2ダイヤモンドとファイナルがだめだと、12000ポイントに届くのは加藤選手くらいになってしまいます。先ほどもそうでしたが、すでに稼いでいるポイントは加藤選手より佐藤選手の方が上なのですが、7番目8番目のポイントが加藤選手の方が低いため、今後大きなポイントを稼いだ時に消えるポイントが加藤選手の方が小さく、合計で高いポイントに届くポテンシャルは加藤選手の方が上、という構図になっています。
次に、5試合出て、すべて準優勝だった場合、という過程で計算するとこうなります
佐藤瞳 7135+1440+1800×2+800+2040-720×3-850=12005
加藤美優 7015+1440+1800×2+800+2040-540-550-675-680=12450
早田ひな 5975+1440+1800×2+800+2040-450-540×2-675=11650
全部準優勝だと早田選手は12000ポイントまで届きません。佐藤選手でぎりぎり12000ポイント。かなり過酷な条件です。
次に、上記の五試合のうち、一番近い試合はワールドツアーになるのですが、この試合で本線一回戦負けとなった場合、残り四試合をすべて優勝したとしてどうなるか計算します。
佐藤瞳 7135+1800×2+1000+2550-720×3=13025
加藤美優 7015+1800×2+1000+2550-540-550-675=13300
早田ひな 5975+1800×2+1000+2550-450-540×2=12495
ワールドツアーで一つ初戦敗退が出ても、後全勝すればまだ可能性は残る、という状態ではあります。
佐藤選手と加藤選手は9月のアジア選手権への出場権があるので、そこで、ポイントを稼ぐチャンスはあります。おおよそワールドツアーと同じ程度のグレードなので、ツアー一回分チャンスが増えるイメージではあります。
ここまで、簡単に、ツアー優勝とかプラチナ優勝とか、そんなことを言っていますが、今シーズン日本人選手でツアー大会優勝は1つもありません。準優勝で、伊藤選手と平野選手が一回づつあるだけです。ツアー大会で決勝まで残るのは簡単なことではありません。佐藤選手は今シーズン、ツアー、プラチナ、それぞれベスト8を一回経験していますが、ツアーもプラチナもベスト16が最高、早田選手はツアーはベスト16、プラチナでは本線一回戦敗退が最高成績です。
上位三選手の戦い、というのも面白いわけですが、それを脅かす位置にいる選手が、最後の最後に一勝負して一波乱、というのも期待されるところ。昨年ファイナルに残った佐藤選手、T2ダイヤモンドで陳夢に勝った加藤選手、今シーズンチャレンジシリーズ2連勝にチャレンジプラスで優勝も経験したダブルス巧者の早田選手。厳しい情勢ではあるのですけれど、それぞれチャンスのある選手だと思われますので、ぎりぎりまで期待してみていたいと思います。