チャジュンファン Cha JunHwan 19-20

2001年10月21日生まれ

シニア3シーズン目

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シーズン獲得賞金:$5,000

世界ランキング:10位

シーズンランキング:16位

シーズンベストスコア 265.43(9位) 四大陸選手権

ショートプログラムシーズンベスト 90.37 四大陸選手権

フリーシーズンベスト 175.06 四大陸選手権

ショートプログラム楽曲: Michelangelo 70 / La Muerte del Angel

フリープログラム楽曲 :The Fire Within

スピンレベル4率 19/24=79.2%

ステップレベル4率 3/8=37.5%

スピンオールレベル4 1/4

スピンステップオールレベル4 1/4

ジャンプ回転不足率  16/40=40.0%

ジャンプ回転不足なし試合 0/4

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 0/4

 

 ●チャジュンファン選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Autumn Classic 4 230.44 84.23 44.58 39.65 146.21 68.31 77.90
GP Skate America 8 219.67 78.98 39.20 39.78 140.69 67.61 75.08
GP Cup of China 6 222.26 69.40 33.90 37.50 152.86 74.86 78.00
4CC Four Continents 5 265.43 90.37 48.49 41.88 175.06 88.78 86.28

昨シーズン前半に大活躍したチャジュンファン選手のシニア三シーズン目。今シーズンは前半大苦戦しました。

チャレンジャーシリーズオータムクラシックではショートフリーで四回転5本に挑み、GOE+の成功ジャンプはなし。230.44という今一つなスコアでスタートしました。

グランプリ二戦もショートから出遅れます。スケートアメリカのショートは四回転1本としますがこれが2回転になり零点。フリーは四回転三本すべて回転を満たせず、219.67と現行ルールの自己ワーストスコアを記録してしまいます。

中国杯はショートから四回転とトリプルアクセルでどちらも回転不足なうえ転倒という痛い出だしで69.40 ショートの70点割れはやはり現行ルールのワーストです。フリーも4回転二つを含めて回転不足4つとてこずって、結局222.26に終わりました。

チャジュンファン選手は昨シーズン結果をある程度出していますので、今シーズンはもう序盤から結果を出し続けなくてはいけない立場でもありません。

年が明けてから調子が上がってくればいい、という立場です。年明けすぐの国内選手権は圧勝で四連覇。日米露とは違い、この水準の力があれば国内選手権は単なる調整試合となります。

それを経ての四大陸選手権。この試合もショートフリー通じて4つの回転不足があり、完璧とはいきませんでしたが、スピンステップオールレベル4で、四回転もショートフリーで3本決め、調子が上がってきているのは感じさせられました。シーズンベストの265.43で5位 世界選手権へいい流れで入っていけそうだったのですが、中止となりシーズン終了となりました。

 

 ●チャジュンファン選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Autumn Classic 4 230.44 112.89 117.55 79.43 21.59 11.87
GP Skate America 8 219.67 106.81 114.86 70.25 23.46 13.10
GP Cup of China 6 222.26 108.76 115.50 74.70 22.30 11.76
4CC Four Continents 5 265.43 137.27 128.16 98.07 24.23 14.97

要素別は四大陸以外の試合では技術点が伸びず演技構成点の方が高くなっています。ある程度しっかり滑った四大陸選手権は技術点が上。しっかり滑ってPCSは128.16まで出ました。これは全体8位の高いスコアです。各要素平均8.5点でPCS合計127.5点になりますので、おおよそ8.5平均くらいは出せていることになります。

ジャンプは四大陸で98.07と100点近いスコアとなりました。100点越えは12人いますので、トップ層ではありませんが、ジャンプもそれなりにしっかり点が取れています。

スピンは24点台。これは普通くらいな数字。トップは27点台ですし、26点台後半を出す選手が結構いますので、2.5~3点ほど、スピンでビハインドを追うことになります。

ステップ系要素は14.97がベスト。これは今シーズン全体で8位のスコアです。

ステップ系要素とPCSが上位にいて、ジャンプもちゃんと飛べた時にはそれなりのところにいますよ、というのが今の位置づけです。

 

 ●チャジュンファン選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Autumn Classic 4 56.68 59.59 44.79 53.66 52.22 57.73
Skate America 8 53.93 52.12 47.79 59.50 58.03 56.09
Cup of China 6 54.59 58.86 40.30 55.88 51.70 56.48
Four Continents 5 65.60 61.17 64.95 61.91 66.86 64.16

シーズン前半はトータルスコア55前後と伸びませんでしたが、四大陸選手権で65まで持ってきました。

ジャンプは基礎点は偏差値60前後。GOEがシーズン前半苦労していて偏差値50に届いていませんでしたが、四大陸では65付近まで来ました。

スピンは一番いい時で偏差値61.91なので、ほかの要素よりやや弱めです。

ステップ系要素はしっかり演じると60台後半の偏差値が出ました。四大陸選手権はショートフリーレベル4が揃いましたので、それが効いています。

PCSも65前後。

どの要素も偏差値60を超えて、得意なものは60台後半まで出すということで、上位層にいる選手だなというのが見えます。

 

 

チャジュンファン スケート偏差値

レーダーチャートは、ちゃんと滑った時はバランス型。ただ、それでもジャンプの基礎点偏差値がやや低めです。回転不足に今シーズンは苦しんでいたため、ジャンプの基礎点がしっかり確保しきれませんでした。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic 1 4S+3T< 13.06   -2.13 10.93 -2.429
Autumn Classic 2 4T   9.50   -0.95 8.55 -0.857
Autumn Classic 3 CSSp4   3.00   0.72 3.72 2.286
Autumn Classic 4 3A   8.80 x 1.76 10.56 2.143
Autumn Classic 5 FCSp4   3.20   0.58 3.78 1.571
Autumn Classic 6 StSq3   3.30   0.79 4.09 2.429
Autumn Classic 7 CCoSp2   2.50   0.45 2.95 1.714
Autumn Classic   TES   43.36   1.22 44.58  

ショートプログラムでは四回転二本に挑戦した構成の時の43.36が基礎点最高でした。トップは49.10ですので、同じ四回転二本でも、まだだいぶ差があります。

この構成、着氷まではしているのであと少しというところまで来ていました。コンビネーションの後ろが回転不足なのですが、これが回転足りれば0.84基礎点が上がります。あとはステップで0.6 スピンで1.0 レベル4をそろえた時には基礎点を上げることができます。したがって、この構成であと2.44基礎点を上げて45.80までは持っていくことができます。

中身いじって基礎点を上げることを目指すよりも、まずこの構成をしっかり演じられるようにする、という方向をたぶん目指すことになるのだろうと思います。

実際には今シーズン、ショートでの4回転二本構成は、このオータムクラシックのみで、グランプリシリーズ以降は4回転一本構成でした。チャジュンファン選手がショートで四回転二本構成にするのは、実はほかの選手よりハードルが高くなっています。他の選手は3回転-3回転のコンビネーションを入れると3Lz-3Tで基礎点10.1で、4T-2Tに上げられれば基礎点10.8なので、基礎点が上がります。しかしチャジュンファン選手は3Lz-3Loなので基礎点10.8 セカンドが2回転だと基礎点は上がりません。セカンドに3回転を付ける自信がない場合は、3Lz-3Loにしておいた方が無難なわけです。したがって、四回転二本目を入れる場合はコンビネーションの二つ目3回転が必須となる分、他の選手より四回転二本投入のハードルが高くなっています。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents 1 4T   9.50   2.85 12.35 3.000
Four Continents 2 4S   9.70   3.05 12.75 3.111
Four Continents 3 3Lz+3Lo   10.80   1.18 11.98 2.111
Four Continents 4 FCSp4   3.20   0.50 3.70 1.556
Four Continents 5 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.222
Four Continents 6 3A+2T< 9.04   -0.69 8.35 -0.667
Four Continents 7 3A< 7.04 x -0.37 6.67 -0.444
Four Continents 8 3F<+1Eu+3S< 9.00 x -0.67 8.33 -1.667
Four Continents 9 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
Four Continents 10 3Lo   5.39 x 1.19 6.58 2.333
Four Continents 11 CSSp4   3.00   0.73 3.73 2.444
Four Continents 12 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 3.000
Four Continents   TES   77.07   11.71 88.78  

フリーの最高基礎点は77.07 基礎点順に付けると20位台になりますので、それほど高い順位ではありません。四回転は二本構成ですので、基礎点勝負というよりは出来栄え勝負でもっと上げていきたい、ということになるかと思います。

この試合は結局回転不足が三つの要素で4つありました。なので、この構成で得られる基礎点のポテンシャルはもっと高いです。

回転不足がすべて解消されたとき、基礎点は81.20まで上がります。6番目の要素のコンビネーションはセカンドがダブルトーループですが、これはトリプルトーループにすることが可能です。そこまでできればさらに基礎点は上がって84.10となります。そこまで持ってくれば、フリーの基礎点が8位にまでなってきます。

四回転二本の構成ですが、男子では特に希少なセカンド3Lo持ちなため、3Aと3Lo二本という高いレベルのエイトトリプル+4回転二本で、2回転が一本もなくなるというハイレベル構成を作ることができます。

ただ、実際にはこれらは理論上の計算に過ぎず、セカンドルーパーにたまにいるのですが、チャジュンファン選手はセカンド3Tを昨シーズンも今シーズンもしっかり決めることができた試合というのはありません。なので、いまのところ、ノーミスした時の基礎点マックスは81.20と見ることになると思います

 

なお、シーズン序盤は4回転三本構成に挑戦していました。これができるようになると、さらに基礎点は上がっていきます。

 

●平均GOE+2.600以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents SP 7 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Four Continents FS 9 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
Skate America SP 7 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
Four Continents FS 5 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.222
Autumn Classic FS 12 CCoSp3   3.00   0.96 3.96 3.143
Four Continents SP 1 4S   9.70   2.91 12.61 3.111
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.111
Four Continents FS 2 4S   9.70   3.05 12.75 3.111
Autumn Classic FS 5 StSq2   2.60   0.78 3.38 3.000
Autumn Classic FS 9 ChSq1   3.00   1.40 4.40 3.000
Four Continents FS 1 4T   9.50   2.85 12.35 3.000
Four Continents FS 12 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 3.000
Skate America SP 6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.889
Cup of China SP 7 CCoSp3   3.00   0.86 3.86 2.889
Four Continents SP 3 CSSp4   3.00   0.90 3.90 2.778
Skate America SP 3 CSSp4   3.00   0.77 3.77 2.667
Cup of China FS 9 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.667

評価が高い要素はスピンにコレオ、ステップです。スピンはCCoSpが上の方にいます。

四回転もGOE+3以上に入ってきているのですが、それ以外のジャンプのGOEはあまり伸びていないようです。

四回転2本で上位と戦っていくには、平均GOEが+3.5以上の要素が一シーズン通じてない、という状態だと少々苦しいでしょうか。ただ、調子の上がってきた四大陸では、GOE+3以上の要素が多数出てきています。

 

●4回転フリップ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic FS 1 4F< 8.80   -0.70 8.10 -0.714
Skate America FS 1 4F< 8.80   -4.40 4.40 -5.000

今シーズン四回転フリップに挑戦しましたが、回転が足りたジャンプはありませんでした。オータムクラシックでは回転不足ながら着氷。スコア8.10あれば、トリプルフリップと比べればおつりが来ますので、失敗とは言い切れませんが、四回転フリップの認定はありませんでした。

グランプリ2戦目以降は封印されています。

 

●一つ目サルコウ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 1 4S+3T< 13.06   -2.13 10.93 -2.429
Autumn Classic FS 2 2S   1.30   0.00 1.30 0.000
Skate America SP 1 2S*   0.00   0.00 0.00  
Skate America FS 2 4S   9.70   -4.57 5.13 -4.667
Cup of China SP 1 4S< 7.76   -3.88 3.88 -5.000
Cup of China FS 2 4S< 7.76   -3.43 4.33 -4.333
Four Continents SP 1 4S   9.70   2.91 12.61 3.111
Four Continents FS 2 4S   9.70   3.05 12.75 3.111

チャジュンファン選手は四回転のサルコウをショートフリーで1本づつ入れています。トーループと比べてサルコウの方が得意なタイプなはずなのですが、今シーズンの成功率は低く、グランプリシリーズまでの3試合では、すべて失敗ジャンプ扱いです。

四大陸選手権ではしっかり二本成功。四大陸で上位に戻ってきた一つの要因になっています。

 

●一つ目トーループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 2 4T   9.50   -0.95 8.55 -0.857
Autumn Classic FS 3 4T< 7.60   -2.89 4.71 -3.714
Skate America FS 3 1T   0.40   -0.04 0.36 -1.000
Cup of China FS 1 4T< 7.60   -0.87 6.73 -1.222
Four Continents FS 1 4T   9.50   2.85 12.35 3.000

四回転トーループはショート四回転2本構成の時にはショートにも入りますが、ショート四回転一本の時はフリーで一本だけの投入になります。

これは5回飛んで2本成功。四大陸ではサルコウと合わせて、ショートフリーで3本飛んだ四回転がすべて成功ジャンプとなっていました。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 4 3A   8.80 x 1.76 10.56 2.143
Autumn Classic FS 6 3A+1Eu+3S   12.80   0.80 13.60 1.000
Autumn Classic FS 7 3A+2T< 9.94 x -1.28 8.66 -1.429
Skate America SP 4 3A   8.80 x 1.49 10.29 1.889
Skate America FS 6 3A+1Eu+3S   12.80   1.71 14.51 2.111
Skate America FS 7 3A   8.80 x 1.26 10.06 1.444
Cup of China SP 4 3A< 7.04 x -3.20 3.84 -5.000
Cup of China FS 6 3A+2T   9.30   1.14 10.44 1.444
Cup of China FS 7 3A   8.80 x 1.49 10.29 1.778
Four Continents SP 4 3A< 7.04 x -0.82 6.22 -1.222
Four Continents FS 6 3A+2T< 9.04   -0.69 8.35 -0.667
Four Continents FS 7 3A< 7.04 x -0.37 6.67 -0.444

トリプルアクセルはショートフリーで合計三本入れている要素です。これが残念ながら成功率が低い。

12回飛んで、回転不足3回、セカンドの回転不足2回を含め、GOEマイナスは5回。成功率は半分を少し超える程度です。四大陸では三本すべてマイナス。これが三本決まっていれば表彰台でした。

トリプルアクセルはそれなりに高難度のジャンプではあるのですが、四回転の本数が増えると、どんどん後ろの方に追いやられるジャンプでもあります。早い要素順で飛んでいれば成功率が高いという選手も、四回転が増えて、トリプルアクセルに咲く練習時間が削られたうえで、体力を消耗した後半に回ってきて飛ばないといけない。しかも、二本飛ぶことになることの多いジャンプなのでコンビネーションもつけなくてはいけなくなったりする。そういった条件でも高い成功率にしていくことが上位で勝負するためには求められてきます。

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic FS 6 3A+1Eu+3S   12.80   0.80 13.60 1.000
Skate America FS 6 3A+1Eu+3S   12.80   1.71 14.51 2.111
Cup of China FS 8 3F+1Eu+3S< 10.16 x -0.08 10.08 -0.222
Four Continents FS 8 3F<+1Eu+3S< 9.00 x -0.67 8.33 -1.667

3連続ジャンプは、四回転三本構成を試していた序盤はトリプルアクセルから、シーズン後半は昨シーズン同様のトリプルフリップからで1.1倍ボーナスタイム投入、というものでした。

トリプルアクセルから飛んだ2回は成功、フリップからの2回は減点ジャンプになっています。

ジャンプ自体の難しさと、飛ぶ順番による体力消耗度合いと。どちらが成功率に影響を与える度合いが強いのかは場合に寄るのでしょうが、ここでは順番の方が影響を与えているようです。

男子としてはシニアに早く上がっていて、体力面で心配が、という声もオリンピックシーズンや昨シーズンもあったようですが、今シーズンもその辺の影響が少しこういうところに見えているように感じます。

 

●ルッツループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic FS 8 3Lz+3Lo<< <<  8.36 x -1.42 6.94 -2.429
Skate America SP 2 3Lz+3Lo   10.8   1.43 12.23 2.444
Skate America FS 8 3Lz+1Lo   7.04 x -1.01 6.03 -1.667
Cup of China SP 2 3Lz+3Lo   10.8   1.26 12.06 2.111
Cup of China FS 3 3Lz+3Lo< 9.82   -2.44 7.38 -4.111
Four Continents SP 2 3Lz+3Lo   10.8   1.43 12.23 2.444
Four Continents FS 3 3Lz+3Lo   10.8   1.18 11.98 2.111

チャジュンファン選手は男子では希少なセカンドループを持つ選手です。

ショートプログラムで4回転1本構成の時には3Lz-3Loが構成に入りますし、フリーでも入ってきます。フリーで4回転3本構成に挑戦していた時には1.1倍ルッツループというなかなか難しい要素となっていました。

成功率は5割。四大陸選手権ではショートフリー共に成功させていました。セカンドのループが1回転になってしまうと大きなミスですが、セカンドが回転不足でも基礎点は9.82あります。セカンドが最初からトーループの時は10.1の基礎点でそれほど差はありません。回転不足はGOEにもやや悪影響が得るので、その分も考えなくてはいけませんが、成功率5割あれば、トーループではなくループに賭けるのはお得な選択に見えます

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 6 StSq3   3.30   0.79 4.09 2.429
Autumn Classic FS 5 StSq2   2.60   0.78 3.38 3.000
Autumn Classic FS 9 ChSq1   3.00   1.40 4.40 3.000
Skate America SP 6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.889
Skate America FS 5 StSq4   3.90   0.89 4.79 2.222
Skate America FS 9 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111
Cup of China SP 6 StSq2   2.60   0.63 3.23 2.222
Cup of China FS 5 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.444
Cup of China FS 9 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.667
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.111
Four Continents FS 5 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.222
Four Continents FS 9 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444

ステップ系要素は、シーズン前半はGOE+2台だったのですが、四大陸選手権では+3台で、かつ、ステップレベル4でした。レベル4で+3台のGOEがあると、得意要素と言えます。

ただ、レベル4率自体は高くないので、安定してこれが出せるかどうか、というあたりはたぶん課題になっているのだろうと思われます。

 

 

スピンはレベル4率が79.2% あまり高くありません。四大陸選手権ではスピンステップオールレベル4でしたので、ちゃんと滑ればレベル4を取る力があるのだろうと思います。昨シーズンもレベル4率は高くないながら、グランプリファイナルと四大陸ではすぴのーるレベル4 安定していなくて調子に左右されるけれど、レベル4を並べる力はある、ということかと思われます。

 

 

韓国男子として昨シーズン初めてグランプリファイナルの表彰台に乗ったチャジュンファン選手。今シーズンは苦しみました。平昌オリンピックがあるせいか、15歳でシニアに上がり、すでにシニア3シーズン目ではありますが、まだ18歳。ようやく高校卒業年齢という位置です。世界ジュニアにずっと出ていたら、優勝するチャンスもあったのではないかと思いますが、早くシニアに上がってそのままシニアで戦う道を選びました。

オーサー先生が好きそうなトータルバランスの取れた選手。ただ、得点バランスが良いだけに、点数を上げていくには全体を伸ばしていかなくてはならず、なかなか苦労しているようです。

まだ18歳ですし、ライバルの少ない国なので、この先しばらくは世界の舞台に常に顔を出す選手としてやっていくことになると思います。平昌には16歳で出場しました。北京、26年、30年と来てもまだ28歳。あと3回、もしかしたら4回、オリンピックの可能性がある。羽生選手、ジェイソンブラウン選手、あるいはメドベージェワ選手をまじかに見続けてトレーニングを重ねていったときに、どんな選手になっていくのか楽しみに思います。

 

 

ボーヤンジン 金博洋 Boyang Jin 19-20

1997年10月3日生まれ

シニア5シーズン目

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シーズン獲得賞金:$28,000

世界ランキング:9位

シーズンランキング:3位

シーズンベストスコア 268.31(8位) ロンバルディア

ショートプログラムシーズンベスト 101.09 ロンバルディア

フリーシーズンベスト 176.10 中国杯

ショートプログラム楽曲: First Light

フリープログラム楽曲 :The Path of Silence / Yellow Moon

スピンレベル4率 34/36=94.4%

ステップレベル4率 8/12=66.7%

スピンオールレベル4 4/6

スピンステップオールレベル4 2/6

ジャンプ回転不足率  8/60=13.3%

ジャンプ回転不足なし試合 2/6

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 1/6

 

 ●ボーヤンジン選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Lombardia Trophy 1 268.31 101.09 60.44 40.65 167.22 87.12 80.10
IC Shanghai Trophy 3 232.17 70.71 33.96 37.75 161.46 85.12 77.34
GP Skate America 6 224.98 74.56 36.32 39.24 150.42 77.20 75.22
GP Cup of China 1 261.53 85.43 45.71 40.72 176.10 93.80 83.30
GPF Grand Prix Final 5 241.44 80.67 40.10 40.57 160.77 85.35 77.42
4CC Four Continents 4 267.67 95.83 54.23 41.60 171.84 88.72 83.12

ボーヤンジン選手、今シーズンはロンバルディア杯からスタートしました。

初戦のショートから会心の出来。101.09は現行ルールになってから初の100点越えです。フリーはそれほど伸びませんでしたが、268.31のスコアで圧勝します。

2戦目は上海の招待試合。主演、ボーヤンジン、なはずの大会でしたがショートから転倒1も含む大崩れで70.71の5位スタート。フリーで巻き返すも総合3位に終わってしまいました。

グランプリシリーズは、鮮烈なシニアデビューのシーズン以外は、実はあまり強くないのですが、今シーズンもスケートアメリカではスコアが伸びず224.98 これは結局今シーズンのワーストスコアになります。1戦目6位だとほぼファイナルないな、という流れなのですが、二戦目は中国での試合。先輩ハンヤン選手の復帰戦としても注目された試合で、ショートではそのハンヤン選手に上を行かれて2位スタート。フリーは四回転2本、トリプルアクセル2本を決め、176.10 フリーのシーズンベストを出して逆転優勝。実はこれがグランプリシリーズ初優勝となりました。

1戦目6位からの2戦目優勝でも、普通は届かないのですが、今シーズンはこれでファイナル進出となりました。シニアデビューシーズン以来2度目のファイナル。

ただ、ファイナルではショートフリー共に四回転、特にルッツが決まらず241.44という平凡なスコアで5位に終わりました。

例年、年が明けてからが強いという印象のボーヤンジン選手。

四大陸選手権は、顔触れを見ると唯一羽生選手に対抗できるかな、という立ち位置で、ショートプログラムは実際に2位につけます。フリーは羽生選手の次の滑走順。ノーミス演技ならチャンスはあるかも、という展開でしたが、サルコウトーループと二つ2回転になり、優勝の目は消えました。結果、4位。3年連続の表彰台には届きませんでした。

 

シニアに上がってから、調子の悪いシーズンでもシーズン後半の取りたい試合1試合にはしっかり合わせてくる選手でしたので、世界選手権が楽しみだったのですが、直前に中止となり、シーズン終了となりました。

 

 ●ボーヤンジン選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Lombardia Trophy 1 268.31 147.56 120.75 109.47 24.20 13.89
IC Shanghai Trophy 3 232.17 119.08 115.09 83.86 22.84 12.38
GP Skate America 6 224.98 113.52 114.46 77.45 22.78 13.29
GP Cup of China 1 261.53 139.51 124.02 102.37 23.76 13.38
GPF Grand Prix Final 5 241.44 125.45 117.99 90.75 23.13 11.57
4CC Four Continents 4 267.67 142.95 124.72 105.68 23.68 13.59

ボーヤンジン選手は技術点優位型です。PCSは120点前後。5項目の平均は8点ほどです。

ジャンプのベストスコアは109.47 これは全選手中5位のスコアです。さすが四回転時代の第二幕を切った選手なだけあります。

スピンは一番いい時で24点台、標準的には23点台。それほど良くはありませ。トップは27点台なので、スピンのスコアで3~4点負けることになります。ぎりぎりの勝負になるとここで不利になる部分ではありますが、四回転一本多く成功させれば補えるくらいとも言えます。

ステップ系要素は13点台。これもトップは16点台なので少し差があります。

 

 ●ボーヤンジン選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Lombardia Trophy 1 66.33 65.64 70.51 61.81 61.76 59.67
Shanghai Trophy 3 57.12 63.33 43.07 57.56 54.63 56.23
Skate America 6 55.29 60.20 41.14 57.38 58.93 55.85
Cup of China 1 64.61 64.02 64.79 60.44 59.35 61.65
Grand Prix Final 5 59.48 65.12 48.19 58.47 50.81 57.99
Four Continents 4 66.17 64.19 68.60 60.19 60.34 62.07

偏差値換算すると、260点台のトータルスコアなロンバルディア杯、四大陸は60台後半にまでなりました。

ジャンプは基礎点が60台。いい時で偏差値65に達します。ジャンプのGOEはばらつきが大きく、崩れた時は50を切って平均以下、いい時は60台後半から70にまで乗せて来る力があります。

スピンは偏差値60前後。ステップはいい時には偏差値60に乗ってきます。トップ層とは差がありますが、苦手と言えるほど悪い偏差値でもないです。ただ、ファイナルのように崩れるとステップは偏差値50、全選手の普通くらいまで落ち込むこともあるようです。

PCSも偏差値60台にのってくるようになっています。

 

 

 

ボーヤンジン スケート偏差値

ジャンプのイメージの強いボーヤンジン選手ですが、レーダーチャートは意外とバランスが取れています。ジャンプがうまくいかないときはジャンプGOEが著しく凹む、というのはありますが、ある程度うまくいけば割とバランス型。今シーズンは世界選手権が結局ありませんでしたが、そういう、一発当てたい試合で一発当てた時には、バランスにプラスしてジャンプのGOEが突出するという、高得点選手に求められるチャートの形になっていくようです。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy 1 4Lz+3T   15.70   3.45 19.15 3.000
Lombardia Trophy 2 4T   9.50   3.04 12.54 3.286
Lombardia Trophy 3 FCSp4   3.20   0.77 3.97 2.429
Lombardia Trophy 4 3A   8.80 x 2.56 11.36 3.143
Lombardia Trophy 5 CSSp4   3.00   0.72 3.72 2.429
Lombardia Trophy 6 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Lombardia Trophy 7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Lombardia Trophy   TES   47.60   12.84 60.44  

ショートプログラムの最高基礎点は47.60 今シーズンの全選手の中で3位の構成です。

ルッツがあり、セカンド三回転が入り、スピンステップレベル4 これがここに載せたロンバルディア杯だけでなく、四大陸選手権でも出した、ボーヤンジン選手の現在の最高構成です。

この構成で全要素GOE満点取ると、加点は21.30入ります。すなわち、技術点満点は68.90です。トータルの満点は118.90 110点に乗せるにはPCSもかなり高いものが必要とされるのでちょっと苦しいですが、105点くらいまでは、PCSで42~43点まで伸ばせば、十分届きそうな領域です。ノーミスで普通に100点を超える、という構成にボーヤンジン選手はなっています。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Grand Prix Final 1 4Lz   11.50   -5.75 5.75 -4.889
Grand Prix Final 2 4T+2T   10.80   1.36 12.16 1.556
Grand Prix Final 3 4T   9.50   -4.75 4.75 -5.000
Grand Prix Final 4 3A+1Eu+3S   12.80   1.49 14.29 1.667
Grand Prix Final 5 ChSq1   3.00   0.50 3.50 1.000
Grand Prix Final 6 FCSp4   3.20   0.46 3.66 1.444
Grand Prix Final 7 3A   8.80 x 1.37 10.17 1.778
Grand Prix Final 8 3Lz+3T   11.11 x 1.69 12.80 2.778
Grand Prix Final 9 3F   5.83 x 0.83 6.66 1.778
Grand Prix Final 10 StSq3   3.30   0.57 3.87 1.778
Grand Prix Final 11 CSSp4   3.00   0.64 3.64 2.111
Grand Prix Final 12 CCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.778
Grand Prix Final   TES   86.34   -0.99 85.35  

フリーの最高基礎点は86.34 これは全選手中4位の基礎点構成。やはり四回転時代第二幕の扉を開いた選手ですので、ショートもフリーも高い基礎点構成を持っています。

四回転はルッツとトーループで合計三本。今シーズンはサルコウも構成に入れていたのですが、ファイナルのこの時には入っていませんでした。

二回飛ぶジャンプは四回転トーループトリプルアクセル。高い基礎点のものが入っています。3回転のジャンプの使い方も、3連続最後にサルコウが入り、セカンド3Tもあり、基礎点高くなるようにしっかり使われています。セカンドループがないので3Loは余ってますが、一つ目にループを飛ぶ余地はもうないのでしかたありません。

強いて言えば、1.1倍部分の構成はやや弱いかな、というのはあります。多くの選手が1.1倍に3連続を入れるのですが、ボーヤンジン選手はかなり早い段階で入れている。この構成、割とシンプルに、難しい順に飛んでいるという流れです。トリプルアクセルからの3連続を1.1倍のところに入れれば、基礎点が0.48上がりはします。ただ、ショートでもそうなのですが、ボーヤンジン選手は、コンビネーションジャンプのリカバリーがしやすいように意図的に組んでいるように見えるので、0.48基礎点を上げるよりも、先にコンビネーションを入れておいて、うまくいかなかったら後の方でもう一回試みる、という風にしているのでしょう。4回転トーループのコンビネーションも、トリプルルッツからのコンビネーションも、うまくいかなかったら次の要素でリカバリーコンビネーションに出来るように組まれています。

 

なお、上海トロフィーでは結果的にうまくいきませんでしたが、4Sも入れた四回転4本構成を試みようとしていました。それがうまくいけば、基礎点91.76の全要素GOE満点で加点が40.5入る、技術点満点が132.26の構成でした。ボーヤンジン選手の現時点でのマックススコアはそのあたりになります。PCS加味して、しっかり滑れば200点には問題なく乗ってきます。現行ルールで国際試合での300点はまだありませんが、ポテンシャルとしては、実績のある要素をしっかりこなすだけでそこまで問題なく達するだけのものがあります。

 

●平均GOE+2.600以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 2 4T   9.50   3.04 12.54 3.286
Lombardia Trophy FS 1 4Lz   11.50   3.91 15.41 3.286
Cup of China SP 3 3A   8.00   2.63 10.63 3.222
Cup of China SP 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
Lombardia Trophy SP 4 3A   8.80 x 2.56 11.36 3.143
Lombardia Trophy SP 6 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Cup of China FS 1 4Lz   11.50   3.45 14.95 3.111
Lombardia Trophy SP 1 4Lz+3T   15.70   3.45 19.15 3.000
Lombardia Trophy SP 7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Cup of China SP 7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Four Continents SP 7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Skate America SP 6 StSq4   3.90   1.17 5.07 2.889
Cup of China FS 7 3A   8.80 x 2.29 11.09 2.889
Cup of China FS 10 StSq3   3.30   0.90 4.20 2.778
Grand Prix Final FS 8 3Lz+3T   11.11 x 1.69 12.80 2.778
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
Lombardia Trophy FS 4 4T+2T   10.80   2.66 13.46 2.714
Grand Prix Final SP 6 StSq3   3.30   0.90 4.20 2.667
Shanghai Trophy FS 10 StSq4   3.90   0.91 4.81 2.600
Shanghai Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.600

評価の高い要素はジャンプが多いです。4T、4Lz、3Aと上から並んでいます。ステップも+3までは取れてきています、スピンは1種類、CCoSp チェンジフットコンビネーションスピンの評価が高くなっています。

4Tも4Lzも3Aも上の方の評価にいるとうことは、全部が同じプログラムにそろったときにはすごい加点がついて高スコアが出る、ということです。そういう試合をシーズンに一回、世界選手権なりオリンピックになり、合わせてくれば、世界のメダルが取れるという形です。

 

●4回転ルッツ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 1 4Lz+3T   15.70   3.45 19.15 3.000
Lombardia Trophy FS 1 4Lz   11.50   3.91 15.41 3.286
Shanghai Trophy FS 1 4Lz   11.50   -1.92 9.58 -1.800
Skate America FS 1 4Lz   11.50   -5.75 5.75 -4.889
Cup of China SP 1 4Lz   11.50   -5.75 5.75 -5.000
Cup of China FS 1 4Lz   11.50   3.45 14.95 3.111
Grand Prix Final FS 1 4Lz   11.50   -5.75 5.75 -4.889
Four Continents SP 1 4Lz+3T   15.70   0.99 16.69 0.889
Four Continents FS 1 4Lz   11.50   2.46 13.96 2.111

四回転ルッツは基本的にショートフリーどちらも冒頭に飛ぶ、という構成です。9回飛んでGOEマイナスは4回。プラスの成功ジャンプは5回です。ただ、この外数に、4回転にならなかった要素、というのが二つあるので、実際の成功率は5/11となり5割を切ります。

転倒だけでも3回あり、この要素の成否で10点差がつくので影響度が大きいです。

 

●単独のサルコウ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy FS 2 2S   1.30   0.10 1.40 0.857
Shanghai Trophy FS 2 2S   1.30   0.00 1.30 0.000
Four Continents FS 2 2S   1.30   0.06 1.36 0.444

今シーズン、四回転サルコウを飛ぼうとしたと思われる試合は3試合あったのですが、すべて2回転になってしまいました。四回転サルコウは昨シーズンも一度も成功がありませんでした。以前は飛べていましたし、実績のないジャンプではないのですが、現在装備している三種類の中では一番苦手で、うまく跳べていないようです。

 

●一つ目トーループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 2 4T   9.50   3.04 12.54 3.286
Lombardia Trophy FS 4 4T+2T   10.80   2.66 13.46 2.714
Lombardia Trophy FS 7 4T   10.45 x 1.90 12.35 1.857
Shanghai Trophy SP 2 4T+3T   13.70   -0.63 13.07 -0.400
Shanghai Trophy FS 4 4T+2T   10.80   1.27 12.07 1.400
Shanghai Trophy FS 7 4T   10.45 x -4.75 5.70 -4.800
Skate America SP 2 4T+3T   13.70   2.44 16.14 2.556
Skate America FS 2 4T+2T   10.80   1.36 12.16 1.444
Skate America FS 4 4T< 7.60   -3.80 3.80 -5.000
Cup of China SP 2 4T+2T   10.80   1.22 12.02 1.222
Cup of China FS 2 4T+2T   10.80   2.44 13.24 2.556
Cup of China FS 3 2T   1.30   -0.02 1.28 -0.222
Grand Prix Final SP 2 4T+3T   13.70   -0.41 13.29 -0.222
Grand Prix Final FS 2 4T+2T   10.80   1.36 12.16 1.556
Grand Prix Final FS 3 4T   9.50   -4.75 4.75 -5.000
Four Continents SP 2 4T   9.50   2.17 11.67 2.222
Four Continents FS 4 2T   1.30   0.04 1.34 0.222
Four Continents FS 7 4T+2T   11.88 x 2.04 13.92 2.111

四回転のトーループはショートで一回、フリーで二回が基本構成です。

2回転になってしまったのが2回、回転不足が1回、あとは回転は足りていますが、転倒3含めてGOEマイナスが6 成功率は2/3程度です。

今シーズンは結局、ショートフリーで3本そろったのがロンバルディア杯だけでした。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 4 3A   8.80 x 2.56 11.36 3.143
Lombardia Trophy FS 3 3A+1Eu+3S< 11.94   -2.08 9.86 -2.571
Lombardia Trophy FS 8 3A< 7.04 x -0.90 6.14 -1.286
Shanghai Trophy SP 4 3A   8.80 x -4.00 4.80 -5.000
Shanghai Trophy FS 3 3A+1Eu+3S   12.80   0.53 13.33 0.800
Shanghai Trophy FS 8 3A   8.80 x 1.87 10.67 2.400
Skate America SP 4 3A< 7.04 x -3.20 3.84 -5.000
Skate America FS 3 3A+1Eu+3S   12.80   1.37 14.17 1.667
Skate America FS 8 3A< 7.04 x -1.28 5.76 -2.000
Cup of China SP 3 3A   8.00   2.63 10.63 3.222
Cup of China FS 4 3A+1Eu+3S   12.80   1.26 14.06 1.556
Cup of China FS 7 3A   8.80 x 2.29 11.09 2.889
Grand Prix Final SP 3 3A   8.00   1.83 9.83 2.333
Grand Prix Final FS 4 3A+1Eu+3S   12.80   1.49 14.29 1.667
Grand Prix Final FS 7 3A   8.80 x 1.37 10.17 1.778
Four Continents SP 4 3A   8.80 x 0.11 8.91 0.222
Four Continents FS 3 3A+1Eu+3S   12.80   2.06 14.86 2.444
Four Continents FS 8 3A   8.80 x 1.71 10.51 2.111

トリプルアクセルもショートフリーで合わせて3回飛ぶ要素です。

合計18回ある要素で、転倒2、回転不足は3回と、コンビネーションの後ろに回転不足があったもの1回 それら含めてGOEマイナスは5回。成功率は13/18で7割ほどです。

三連続はすべてトリプルアクセルからの三つ目3Sですが、これの成功率は5/6 安定的に稼げる要素になっています。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 6 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Lombardia Trophy FS 5 ChSq1   3.00   0.90 3.90 1.857
Lombardia Trophy FS 10 StSq4   3.90   0.94 4.84 1.857
Shanghai Trophy SP 6 StSq3   3.30   0.77 4.07 2.400
Shanghai Trophy FS 5 ChSq1   3.00   0.50 3.50 1.000
Shanghai Trophy FS 10 StSq4   3.90   0.91 4.81 2.600
Skate America SP 6 StSq4   3.90   1.17 5.07 2.889
Skate America FS 5 ChSq1   3.00   0.71 3.71 1.333
Skate America FS 10 StSq4   3.90   0.61 4.51 1.667
Cup of China SP 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
Cup of China FS 5 ChSq1   3.00   1.00 4.00 1.889
Cup of China FS 10 StSq3   3.30   0.90 4.20 2.778
Grand Prix Final SP 6 StSq3   3.30   0.90 4.20 2.667
Grand Prix Final FS 5 ChSq1   3.00   0.50 3.50 1.000
Grand Prix Final FS 10 StSq3   3.30   0.57 3.87 1.778
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
Four Continents FS 5 ChSq1   3.00   0.79 3.79 1.444
Four Continents FS 10 StSq4   3.90   0.89 4.79 2.444

ステップはGOE+2台が多く、いい時には+3にのります。コレオシークエンスが今一つ評価が伸びておらず、GOE+1台 それも1台前半なことが多いです。コレオシークエンスは力を入れれば、もう1点くらいトータルスコアを上げる力がありそうに見えます。

ステップレベル4率は66.7%で2/3 上位選手でもこれくらいの確率の選手は多く、標準的くらいの位置です。

 

スピンレベル4率は94.4%ありました。ここが実は昨シーズンと比べて大きく伸びたところです。昨シーズンは7割程度でした。レベル4が取れていれば、加点がやや弱くても、大きく足を引っ張る要素にはなりません。

 

四大陸選手権ではスピンステップオールレベル4で回転不足もなし、ついでに全要素GOEプラスというクリアーな評価を受けていました(4回転が二つ2回転になりましたが)。

 

 

中国男子初、という枕詞で作実績を数々上げてきたボーヤンジン選手。世界の表彰台も経験している選手からすると、今シーズンの結果は今一つだった、というべきか、ちゃんと勝負する気になる試合が中止になってしまったので本領を発揮する場自体がなかったというべきか、そんなシーズンでした。

うわっ、四回転のルッツ跳んでる、ちゃんと飛んでる、しっかり降りてる。本物だこれ、という衝撃から早くも4年半がたちました。シニアデビューから2シーズンほどは言われていて、最近言われていないこと。宇野選手と同い年で、シニアデビューも同期。ジュニア最終年の世界ジュニア1位2位。結構いいライバル関係にあったんですよね。四大陸や世界選手権で先に表彰台に乗ったのはボーヤンジン選手。四大陸を先に獲ったのもボーヤンジン選手でした。世界選手権最高位は宇野選手が上ですし、オリンピックの表彰台も宇野選手が乗りました。

二人とも、持っているタイトルは四大陸まで。グランプリファイナル、世界選手権、オリンピック。世界のタイトルはまだ持っていません。

 

ネイサンチェン選手、羽生結弦選手の二強状態の男子フィギュア界ですが、ボーヤンジン選手は宇野選手と並んで、300点を出す力があり、上二人を脅かすことのできる数少ない選手です。サルコウまで取り戻しての4回転3種類4本体制を整えれば、来シーズン、300点復帰して、世界の頂点を伺うチャンスも出てくるのではないかと期待されます。

 

 

 

マッテオリッツォ Matteo Rizzo 19-20

1998年9月5日生まれ

シニア2シーズン目

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シーズン獲得賞金:$14,000

世界ランキング:8位

シーズンランキング:8位

シーズンベストスコア 248.53(20位) 上海トロフィー

ショートプログラムシーズンベスト 87.76 上海トロフィー

フリーシーズンベスト 160.77 上海トロフィー

ショートプログラム楽曲: LaLaLandより

フリープログラム楽曲 : Galicia Flamenca

スピンレベル4率 26/36=72.2%

ステップレベル4率 7/12=58.3%

スピンオールレベル4 0/6

スピンステップオールレベル4 0/6

ジャンプ回転不足率  14/60=23.3%

ジャンプ回転不足なし試合 0/6

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 0/6

 

 ●マッテオリッツォ選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Lombardia Trophy 3 227.38 71.76 35.36 37.40 155.62 75.82 79.80
CS Nepela Memorial 2 232.70 75.87 37.72 39.15 156.83 76.13 80.70
IC Shanghai Trophy 1 248.53 87.76 46.69 41.07 160.77 77.27 83.50
GP Skate Canada 6 223.78 70.12 31.59 39.53 153.66 73.82 79.84
GP Cup of China 3 241.88 81.72 42.54 40.18 160.16 79.00 82.16
ECC Europe Championships 5 237.01 79.07 39.89 39.18 157.94 78.78 80.16

マッテオリッツォ選手はシーズン序盤から今シーズンは試合を重ねました。

チャレンジャーシリーズから2試合。ただ、スコアは今一つ伸びず。四回転、それもループの投入を試みていたのですが、この二試合ではしっかり決められません。

三戦目は10月に入って上海での招待試合。ここでも四回転のループは決まらなかったのですが、全体は程よくまとめて248.53 結果的にこれがシーズンベストになるわけですがこのスコアで優勝。上海の招待試合でボーヤンジン選手に勝ってしまうという、なんというか、あらら、という感じの試合でした。

グランプリシリーズ2戦。ここからは四回転ループを要素から外しました。スケートカナダはショートで四回転回転不足のコンビネーション1つ目で転倒と散々で、フリーいくらか巻き返しましたが6位に終わります。

中国杯はまずまずの出来で、中国勢2人に次ぐ3位表彰台。なんだか中国の試合に相性の良い今シーズンでした。ISU公認スコアとしては、この241.88が結果的に今シーズンのベストとなりました。

イタリア選手権では2年連続の2位。グラスル選手が上を行った模様。世界選手権の枠は、リッツォ選手自身が昨シーズン7位に入って2つに増やしているので問題ありません。

ヨーロッパ選手権ショートプログラム、コンビネーションでミスが出て7位。最終グループ入りを逃しましたが、フリーで巻き返して5位フィニッシュ。二年連続の表彰台は鳴りませんでした。

 

世界選手権中止により、このヨーロッパ選手権をもって、リッツォ選手の今シーズンは終了ということになりました。

 

 ●マッテオリッツォ選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Lombardia Trophy 3 227.38 111.18 117.20 75.21 21.17 14.80
CS Nepela Memorial 2 232.70 113.85 119.85 76.26 22.71 14.88
IC Shanghai Trophy 1 248.53 123.96 124.57 88.05 23.52 12.39
GP Skate Canada 6 223.78 105.41 119.37 72.32 19.99 13.10
GP Cup of China 3 241.88 121.54 122.34 85.05 22.21 14.28
ECC Europe Championships 5 237.01 118.67 119.34 83.26 22.95 12.46

要素別でみると、今シーズンはすべての試合でTESよりPCSの方が高いという結果になりました。

PCSは120点前後。各要素平均8点ほどとなります。

ジャンプで得た点数は上海トロフィーの88.05が最高。世界ランキング一桁の選手からすると、これは低めの点数です。

スピンは22点台が多く、上海トロフィーのみ23点台。これもやはりあまり伸びていないです。

ステップ系要素は14点台を出しています。ネペラメモリアルの14.88は今シーズンの10位のスコア。ステップは高評価です。

 

 ●マッテオリッツォ選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Lombardia Trophy 3 55.90 55.40 47.63 52.35 66.06 57.51
Nepela Memorial 2 57.26 56.89 46.05 57.16 66.44 59.12
Shanghai Trophy 1 61.29 60.58 53.61 59.69 54.68 61.98
Skate Canada 6 54.98 55.65 43.55 48.66 58.03 58.83
Cup of China 3 59.60 55.45 59.79 55.60 63.60 60.63
Europe Championships 5 58.35 56.04 56.42 57.91 55.01 58.81

偏差値に直すと、今シーズンのスコアはほとんど50台でした。240点台後半まで出た上海トロフィーのみ偏差値60に乗っています。

ジャンプは基礎点で50台半ば。加点もあまり稼いでいなくて50割れも目立ちます。

スピンも本人比普通くらいの要素で偏差値50代後半です。

高評価なのはステップとPCS ステップはいい時は偏差値60台後半まで伸びていました。PCSも偏差値60前後。この二つが得意側な位置づけです。

 

マッテオリッツォ スケート偏差値

レーダーチャートで表すと、ステップが飛び出ているように見えるでしょうか。

ヨーロッパ選手権はステップも伸びておらず、失敗したんだなというのも見えます。

ジャンプのGOEが凹んでしまっていることが多いです。ここがもう少し高い水準に来ることが、250点台260点台を出していくのに求められるのだろうと思います。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Shanghai Trophy 1 4T+3T   13.70   1.90 15.60 1.200
Shanghai Trophy 2 3A   8.00   -0.53 7.47 -0.600
Shanghai Trophy 3 FSSp4   3.00   0.80 3.80 2.400
Shanghai Trophy 4 CCSp4   3.20   0.64 3.84 2.200
Shanghai Trophy 5 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.000
Shanghai Trophy 6 CCoSp3   3.00   0.80 3.80 2.600
Shanghai Trophy 7 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Shanghai Trophy   TES   40.69   6.00 46.69  

ショートプログラムの最高基礎点は40.69 今シーズン全体で30位台ですので普通くらいの構成です。

四回転一本で1.1倍には三回転のルッツ。スピンステップのレベル3を4に出来れば1.1基礎点が上がって41.79にまではなります。これくらいの基礎点があれば、しっかり滑れば技術点50点に乗って、演技構成点がリッツォ選手ならミスしなければ40点台出ますので、ショート90点台で折り返すことが可能です。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Shanghai Trophy 1 4Lo< 8.40   -3.08 5.32 -3.400
Shanghai Trophy 2 4T< 7.60   -1.27 6.33 -1.800
Shanghai Trophy 3 3A+2T   9.30   1.33 10.63 1.600
Shanghai Trophy 4 3Lz!+2T ! 7.20   -0.39 6.81 -0.600
Shanghai Trophy 5 CCSp4   3.20   0.53 3.73 1.400
Shanghai Trophy 6 StSq2   2.60   0.78 3.38 3.200
Shanghai Trophy 7 3A   8.80 x -0.27 8.53 -0.600
Shanghai Trophy 8 3F+1Eu+3S 11.11 x 0.71 11.82 1.400
Shanghai Trophy 9 3Lz   6.49 x 1.38 7.87 2.200
Shanghai Trophy 10 FSSp4   3.00   0.80 3.80 2.400
Shanghai Trophy 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Shanghai Trophy 12 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 2.800
Shanghai Trophy   TES   74.20   3.07 77.27  

フリーの最高基礎点は74.20 これも今シーズン全体で30位台の構成ですので普通くらいです。

上海トロフィーの時期はチャレンジプログラムでやっていたようで四回転ループが冒頭に入っています。まだ、四回転ループは飛べていませんので、ちゃんとこなせばこれができる、というプログラムではありません。

2回飛ぶジャンプは3Aと3Lzになっています。4回転1種類で2本飛ぼうとすると、この構成から3Lzが1本減ってしまうので、あまりお得ではなく、4回転を2本飛ぶには2種類にしたいという考え方は妥当なところではあるのですが、今のところうまくいっていません。

昨シーズンから四回転が入り始めて、まだ1本だけですので、何とか2本入れていきたい、というのが本人の中の一番の課題とされているのかな、と思われます。

 

なお、4Loを構成に入れていない最高基礎点は、スケートカナダの72.95でした。スケートカナダ以降、4Loは外していますが、冒頭に3Loを入れていますので、4Loをしゅうとくして飛ぶんだ、ということは想定されたままなようです。

 

●平均GOE+2.800以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Shanghai Trophy SP 7 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Lombardia Trophy FS 7 3A   8.80 x 2.72 11.52 3.429
Nepela Memorial FS 6 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.286
Europe Championships FS 12 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.222
Shanghai Trophy FS 6 StSq2   2.60   0.78 3.38 3.200
Lombardia Trophy SP 7 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Lombardia Trophy FS 6 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Nepela Memorial SP 7 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Cup of China SP 2 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
Lombardia Trophy FS 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Nepela Memorial FS 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Shanghai Trophy FS 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Cup of China SP 7 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Cup of China FS 6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Europe Championships FS 3 3A+3T   12.20   2.40 14.60 3.000
Europe Championships FS 7 3A   8.80 x 2.29 11.09 3.000
Cup of China SP 1 4T   9.50   2.85 12.35 2.889
Cup of China FS 1 3Lo   4.90   1.40 6.30 2.889
Cup of China FS 2 4T   9.50   2.71 12.21 2.889
Europe Championships SP 7 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.889
Europe Championships FS 1 3Lo   4.90   1.40 6.30 2.889
Lombardia Trophy FS 3 3A+2T   9.30   2.24 11.54 2.857
Shanghai Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 2.800

評価の高い要素は、上の方にステップが多くいます。GOE+3付近にはコレオシークエンスもいて、ステップ、コレオは評価が高めなものが多いです。

ジャンプからはトリプルアクセルが上の方に入ってきています。あとは四回転トーループ。難易度高くても、早い要素順で飛ぶと集中していていいジャンプが入ることもあるようです。

あとはトリプルループもいます。これは、四回転にしたいけど今はまだ三回転、ということで冒頭にいるのでその影響でしょう。

GOEが+4以上の評価の要素はなし。四回転を増やしてスコアを上げていくか、GOEを高めてスコアを上げていくか。両方あるのが当然いいわけですけれど、どちらも上げていく余地は十分ありそうです。

 

●単独のループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 2 4Lo<< <<  4.90   -2.45 2.45 -4.857
Lombardia Trophy FS 1 4Lo< 8.40   -3.36 5.04 -4.143
Nepela Memorial FS 1 4Lo< 8.40   -2.69 5.71 -3.143
Shanghai Trophy FS 1 4Lo< 8.40   -3.08 5.32 -3.400
Skate Canada FS 1 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.444
Cup of China FS 1 3Lo   4.90   1.40 6.30 2.889
Europe Championships FS 1 3Lo   4.90   1.40 6.30 2.889

ループで四回転を飛ぼうとしている稀有な選手です。今シーズン四回転ループを挑んだ選手は5人だけ。ただ、リッツォ選手はすべて回転が足りず、四回転ループの認定はなりませんでした。

グランプリシリーズに入ってからは三回転にしていますが、冒頭に残しているあたりが、練習で成功率上がったら入れる、という意志の表れにも見えます。

 

●一つ目トーループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 1 4T+2T   10.80   2.47 13.27 2.571
Lombardia Trophy FS 2 2T   1.30   0.05 1.35 0.571
Nepela Memorial SP 1 4T< 7.60   -3.80 3.80 -5.000
Nepela Memorial FS 2 2T   1.30   0.13 1.43 0.857
Shanghai Trophy SP 1 4T+3T   13.70   1.90 15.60 1.200
Shanghai Trophy FS 2 4T< 7.60   -1.27 6.33 -1.800
Skate Canada SP 1 4T< 7.60   -3.47 4.13 -4.556
Skate Canada FS 2 4T< 7.60   -3.04 4.56 -3.889
Cup of China SP 1 4T   9.50   2.85 12.35 2.889
Cup of China FS 2 4T   9.50   2.71 12.21 2.889
Europe Championships SP 1 4T   9.50   -0.54 8.96 -0.444
Europe Championships FS 2 4T< 7.60   -3.80 3.80 -5.000

四回転トーループはショートフリーで一回づつ入れています。12回飛んで2回転になったのが2回、回転不足5回、回転足りてのGOEマイナスが1回なので、成功ジャンプは4回。まだ確率は1/3です。

2回とも成功させた中国はいやコンビネーションで成功させた上海トロフィーではトータルで好成績を上げました。四回転トーループの成否が全体の出来と強く相関しているように見えます。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 5 3A   8.80 x -4.00 4.80 -5.000
Lombardia Trophy FS 3 3A+2T   9.30   2.24 11.54 2.857
Lombardia Trophy FS 7 3A   8.80 x 2.72 11.52 3.429
Nepela Memorial SP 2 3A   8.00   -2.56 5.44 -3.143
Nepela Memorial FS 3 3A+2T   9.30   1.76 11.06 2.143
Nepela Memorial FS 7 3A   8.80 x 0.64 9.44 0.714
Shanghai Trophy SP 2 3A   8.00   -0.53 7.47 -0.600
Shanghai Trophy FS 3 3A+2T   9.30   1.33 10.63 1.600
Shanghai Trophy FS 7 3A   8.80 x -0.27 8.53 -0.600
Skate Canada SP 2 3A   8.00   2.06 10.06 2.444
Skate Canada FS 3 3A+3T   12.20   1.60 13.80 2.000
Skate Canada FS 7 3A   8.80 x -2.51 6.29 -3.111
Cup of China SP 2 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
Cup of China FS 3 3A+3T   12.20   1.94 14.14 2.444
Cup of China FS 7 3A< 7.04 x -3.20 3.84 -5.000
Europe Championships SP 2 3A   8.00   2.06 10.06 2.444
Europe Championships FS 3 3A+3T   12.20   2.40 14.60 3.000
Europe Championships FS 7 3A   8.80 x 2.29 11.09 3.000

トリプルアクセルは一試合に3本飛ぶのが標準です。回転不足は1回だけですが、転倒は2回、GOEマイナスはそれを含めて6回あり、成功率は2/3 四回転よりは成功率高いですが、まだ、安心してみていられるというところまでは達していません。

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy FS 8 3F+1Eu+3S< 10.16 x -1.27 8.89 -2.286
Nepela Memorial FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.06 12.17 2.000
Shanghai Trophy FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 0.71 11.82 1.400
Skate Canada FS 8 3F!+1Eu+3S< 10.16 x -1.59 8.57 -2.889
Cup of China FS 8 3F+1Eu+2S   7.81 x 0.83 8.64 1.556
Europe Championships FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 0.91 12.02 1.778

3連続ジャンプはフリップからの3つ目サルコウ型。サルコウの回転不足が二つ、サルコウを2回転にしたもの1つなので、成功率は5割でしょうか。

ただ、大きなミスになっていることはなく、それなりの得点は常に確保できています。この辺は、四回転やトリプルアクセルよりも、計算できる要素になっています。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 7 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Lombardia Trophy FS 6 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Lombardia Trophy FS 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Nepela Memorial SP 7 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
Nepela Memorial FS 6 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.286
Nepela Memorial FS 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Shanghai Trophy SP 7 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Shanghai Trophy FS 6 StSq2   2.60   0.78 3.38 3.200
Shanghai Trophy FS 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Skate Canada SP 7 StSq4   3.90   0.95 4.85 2.444
Skate Canada FS 6 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000
Skate Canada FS 11 ChSq1   3.00   1.29 4.29 2.556
Cup of China SP 7 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Cup of China FS 6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Cup of China FS 11 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.222
Europe Championships SP 7 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.889
Europe Championships FS 6 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.556
Europe Championships FS 11 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.333

ステップとコレオは、シーズン序盤はGOE+3台が並んでいたのですが、グランプリシリーズに入ってからは+2台が多くなっています。フリーでは終盤にあるコレオシークエンスより、中盤のステップの方が評価が高くなる傾向です。

レベル4率は50%を超えていてまずまずです。

 

スピンはレベル4率70%台前半。トップに来る選手は90%台なことが多いのと比べると見劣りします。加点がやや弱くてもレベル4を取れていればそれほど足を引っ張る要素にはならないのですが、リッツォ選手くらいの水準の選手で、スピンレベル4が取れないと、その部分は弱点となるはずですので、この辺の強化もしていきたいところのように見えます。

 

 

女の子と手をつなげるペアやアイスダンスがあるのに、シングルを選ぶ奴なんていないよ、という理由でトップ選手が全然いなかったと噂のイタリアから、初めて出てきた世界の上位で戦う男子シングル選手です。

初めてちゃんと見たのはオリンピックの団体戦だったと記憶していますが、イタリアの男子でしょー・・・、と思っていたら、思いのほかいい演技で驚いたのを覚えています。

当時はまだジュニアが主戦場で、チャレンジャー-ジュニアグランプリ-ヨーロッパ選手権-オリンピック-世界ジュニア-世界選手権という、理論上出られる試合全部出る、みたいなすごいスケジュールで転戦していました。世界ジュニア銅メダリスト。

シニア参戦というか、ジュニア卒業した昨シーズンは、グランプリシリーズ初表彰台、ヨーロッパ選手権初表彰台、さらにはユニバーシアード優勝と大躍進し、世界選手権も7位。イタリア男子初、という枕詞が常について回る位シーズンを過ごしていました。

それを経ての今シーズン。シニア二シーズン目、と呼んでいいのか微妙ではありますが、二年目のジンクス的に少し苦しんだシーズンだったかな、と感じました。

 

今シーズンの成績だけ見ると、普通の選手です。250点乗ってないですし。ISU公認のシーズンベストは25位。上位24位に入っていませんので、シーズンベストからのグランプリ優先枠はもらえない、という位置づけです。まあ、世界ランク8位ですし、ヨーロッパ選手権も5位にいる選手が2枠もらえないってことはないでしょうけれど。

 

イタリア男子はリッツォ選手の登場から急激にレベルが上がりました。いまではグラスル選手も続いていて、世界選手権は2枠ないと大変なことになるところでした。

女子でコストナー選手がもう一回オリンピックに出てあのレベルを保っていてくれれば、団体戦メダルのチャンスもある、というくらいにまで上がってきてます。

四回転、もう一種類増やすのがループ、というのはあまりない選択です。オリンピックまでに2種類入って、全体の出来栄えも上げることができるようになると面白い存在になってくるでしょうか。

 

アレクサンドルサマリン Alexander Samarin 19-20

1998年6月15日生まれ

シニア3シーズン目

Instagram

シーズン獲得賞金:$37,000

世界ランキング:7位

シーズンランキング:4位

シーズンベストスコア 265.10(10位) フランス杯

ショートプログラムシーズンベスト 98.48 フランス杯

フリーシーズンベスト 172.97 タリンホステルカップ

ショートプログラム楽曲: Blues for Klook

フリープログラム楽曲 : Persecution / Good News

スピンレベル4率 40/42=95.2%

ステップレベル4率 9/14=64.3%

スピンオールレベル4 6/7

スピンステップオールレベル4 3/7

ジャンプ回転不足率  7/70=10.0%

ジャンプ回転不足なし試合 2/7

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 0/7

 

 ●アレクサンドルサマリン選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Nepela Memorial 4 218.45 79.56 39.41 41.15 138.89 61.69 78.20
IC Shanghai Trophy 2 246.36 84.66 44.08 40.58 161.70 79.18 83.52
GP Internationaux de France 2 265.10 98.48 55.13 43.35 166.62 85.40 83.22
GP Rostelecom Cup 1 264.45 92.81 51.20 42.61 171.64 84.86 86.78
GPF Grand Prix Final 4 248.83 81.32 39.82 41.50 167.51 84.43 83.08
ECC Europe Championships 10 220.43 74.77 35.80 39.97 145.66 70.44 76.22
IC Tallink Hostels Cup 1 255.86 82.89 43.06 39.83 172.97 91.13 82.84

サマリン選手は昨シーズンヨーロッパ選手権2位と躍進してからの今シーズンというながれでした。

シーズン初戦はチャレンジャーシリーズのネペラメモリアル。ここで218.45という、ちょっと苦しいシーズン初戦となりました。

二戦目はジャパンオープンの裏で行われていた上海の招待試合。スコアは246.36まで戻ってきました。

本格シーズンインのグランプリ2戦では本領発揮。フランス杯ではショートで98.48というパーソナルベストを出し、グランプリシリーズ過去最高位の2位に入ります。

間一週置いてのグランプリ二戦目はロステレコム杯。ロシア勢三人の激しい優勝争いとなりますが、ショートフリー共に1位でグランプリシリーズ初優勝、同時にファイナル初進出を決めました。

 

残念ながらここから、ショートプログラムのジャンプがしっかり決まらなくなっていきます。グランプリファイナルは四回転2本で大幅減点のショートで81.32と出遅れて総合4位。ファイナル表彰台とはなりませんでした。

年末のロシア選手権もショート8位スタートの出遅れからフリー巻き返すも3位で表彰だに上るのがやっと。初優勝のチャンスだったのですが、戴冠なりませんでした。

 

フェルナンデスさん引退により、誰が勝っても初優勝のヨーロッパ選手権もサマリン選手にとって初のビッグタイトルのチャンスの舞台。ここでもショートで2本の四回転が決まらず13位発進からの総合10位にとどまります。

 

もう一戦、国際B級大会に出場し255点とまずまずのスコアは出しますが、ここでシーズン終了となりました。

 

 ●アレクサンドルサマリン選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Nepela Memorial 4 218.45 101.10 119.35 63.16 24.19 13.75
IC Shanghai Trophy 2 246.36 123.26 124.10 85.21 24.04 14.01
GP Internationaux de France 2 265.10 140.53 126.57 102.82 24.29 13.42
GP Rostelecom Cup 1 264.45 136.06 129.39 98.61 24.64 12.81
GPF Grand Prix Final 4 248.83 124.25 124.58 87.78 24.30 12.17
ECC Europe Championships 10 220.43 106.24 116.19 70.68 23.61 11.95
IC Tallink Hostels Cup 1 255.86 134.19 122.67 100.32 22.29 11.58

サマリン選手は技術点と演技構成点が拮抗している試合が多いです。演技構成点は120点台が多いでしょうか。一番いい時でロステレコム杯の129.39 これは今シーズンの全体で6位の数値です。ジャンプのイメージが強いサマリン選手ですが、PCSも上位にいます。

ジャンプの出来は良い悪い大きく差がやはり出るようです。一番良かったのはフランス杯の102.82で100点に乗せました。ただ、ジャンプでこのスコアは全体9位。実はPCSよりもベストスコア順位が低かったりします。

スピンは24点台。決して悪くはないですが、得意というようなスコアでもなく、本人比で普通くらいの要素です。

ステップは一番良くて14.01の上海トロフィー。ファイナル以降の重要な試合では12点前後となっています。14点に乗ったくらいだと、この位置の選手としてはやや苦手側ですし、まして12点を切るようですと、弱点と言える要素となってきます。

 

 ●アレクサンドルサマリン選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Nepela Memorial 4 53.62 49.41 44.21 61.78 61.10 58.82
Shanghai Trophy 2 60.74 60.04 51.11 61.31 62.33 61.70
Internationaux de France 2 65.52 71.68 50.54 62.09 59.54 63.20
Rostelecom Cup 1 65.35 63.90 60.35 63.19 56.66 64.91
Grand Prix Final 4 61.37 61.41 51.67 62.12 53.64 61.99
Europe Championships 10 54.13 56.73 39.42 59.97 52.60 56.90
Tallink Hostels Cup 1 63.16 63.80 62.67 55.85 50.85 60.83

偏差値で表すと、260点台に乗ったフランス杯やロステレコムで、トータルスコア偏差値は65前後となりました。

ジャンプは回転不足が多発すると下がるのでネペラメモリアルのように50を切るということも起きますが、しっかり回り切ればやはり高く、フランス杯では70を超えるスコアとなっています。

ちゃんと回れば基礎点の高いジャンプなのですが、そのジャンプでGOEを稼ぐということがあまり出来ていません。主要大会ではロステレコム杯で偏差値60に乗ったのが最高で、あとは50前後。一番大きな試合であったヨーロッパ選手権ではジャンプのGOEが40を切るという事態になっていて、安定感のなさがうかがわれます。

 

スピンは偏差値60前後。本人比で普通レベルの要素。

ステップは偏差値60に乗ることも多いですが、50台前半に落ち込むことも多く、あまり得意な感じはありません。

一方で、PCSが実は偏差値60台を基本的には出してきています。

 

アレクサンデルサマリン スケート偏差値

レーダーチャートは、PCSとスピンは安定しているけど、あとはバラバラ、という一見してよくわかりにくいチャートです。

ジャンプは基礎点もGOEも上から下まで本当にバラバラ。出来の不安定さが垣間見えます。ただ、フランス杯のように回転まわり切れば高い基礎点があるので、そのジャンプがうまくすべてそろったときには、極めて高い点が出てくるんだろうな、というのは感じられます。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Rostelecom Cup 1 4Lz+3T   15.70   5.09 20.79 4.333
Rostelecom Cup 2 4F   11.00   -5.50 5.50 -5.000
Rostelecom Cup 3 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.778
Rostelecom Cup 4 3A   8.80 x -1.03 7.77 -1.444
Rostelecom Cup 5 CSSp4   3.00   0.73 3.73 2.333
Rostelecom Cup 6 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.778
Rostelecom Cup 7 StSq4   3.90   0.95 4.85 2.556
Rostelecom Cup   TES   49.10   2.10 51.20  

ショートプログラムの最高基礎点は49.10 これは今シーズンの全選手中最高点でした。ネイサンチェン選手も羽生結弦選手も上回ります。

ショートで四回転のルッツフリップ2本立てをしっかり回転足りてこなせたのはサマリン選手だけです。

この構成で得られる加点は全要素GOE満点で22.05あります。つまり技術点満点は71.15となり、トータルスコア満点は121.15です。

ここから基礎点を上げようとするなら、4Lz-3Tを1.1倍に持ってくる、という手はあり、その場合0.77基礎点が上昇します。この時のトータルスコア満点は121.92 ここが現在可能な理論上の上限値となります。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Internationaux de France 1 4Lz+3T   15.70   3.61 19.31 3.111
Internationaux de France 2 4F   11.00   -5.50 5.50 -5.000
Internationaux de France 3 4T   9.50   3.12 12.62 3.222
Internationaux de France 4 3Lz   5.90   -2.95 2.95 -4.889
Internationaux de France 5 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.667
Internationaux de France 6 ChSq1   3.00   0.79 3.79 1.222
Internationaux de France 7 3A+2T   10.23 x -1.37 8.86 -1.667
Internationaux de France 8 3Lz+3T   11.11 x -0.76 10.35 -1.222
Internationaux de France 9 3Lo   5.39 x 0.07 5.46 0.222
Internationaux de France 10 CSSp4   3.00   0.47 3.47 1.444
Internationaux de France 11 StSq4   3.90   0.72 4.62 1.667
Internationaux de France 12 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.444
Internationaux de France   TES   85.43   -0.03 85.40  

フリーの最古基礎点は85.43 これは全体5位の基礎点です。

ショートと違って、ルッツフリップ両方四回転が入る選手というのは他にもいますし、4回転3本+トリプルアクセル、という構成は、十分すごいはすごいですが、スペシャルな構成とまでは言えません。

また、三連続が入っていませんね。それを入れられればもう少し基礎点は上がります。

意外な構図なのですが、2回飛ぶジャンプは3回転のルッツとトーループです。4回転は3種類を1回づつ。また、4回転のフリップはあるのに3回転のフリップは構成にありません。3回転のループのところをフリップにすれば、基礎点はあがります。

細かくいじれジャンプの種類を増やすことなく基礎点はまだまだ上げられる余地はあるのですが、それよりも今は成功率を上げていくこと、というのを目指しているという段階なのでしょうか。

 

●平均GOE+2.800以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Rostelecom Cup FS 1 4Lz+3T   15.70   5.42 21.12 4.556
Rostelecom Cup SP 1 4Lz+3T   15.70   5.09 20.79 4.333
Internationaux de France SP 1 4Lz+3T   15.70   4.44 20.14 3.889
Shanghai Trophy FS 11 StSq4   3.90   1.30 5.20 3.400
Internationaux de France FS 3 4T   9.50   3.12 12.62 3.222
Internationaux de France FS 1 4Lz+3T   15.70   3.61 19.31 3.111
Nepela Memorial SP 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
Internationaux de France SP 6 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Rostelecom Cup FS 4 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
Tallink Hostels Cup FS 3 3Lz+1Eu+3F   11.70   1.77 13.47 3.000
Tallink Hostels Cup FS 8 3Lz+2A+SEQ   8.10 x 1.77 9.87 3.000
Internationaux de France SP 7 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.889
Rostelecom Cup FS 12 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.889
Grand Prix Final SP 7 StSq2   2.60   0.74 3.34 2.889
Grand Prix Final FS 8 3Lz   6.49 x 1.69 8.18 2.889
Shanghai Trophy SP 4 3A   8.80 x 2.40 11.20 2.800
Shanghai Trophy SP 5 CSSp4   3.00   0.90 3.90 2.800
Shanghai Trophy FS 1 4Lz+2T   12.80   3.07 15.87 2.800
Tallink Hostels Cup SP 6 CCoSp3   3.00   0.80 3.80 2.800
Tallink Hostels Cup SP 7 StSq2   2.60   0.69 3.29 2.800
Tallink Hostels Cup FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.800

サマリン選手の中で評価の高い要素というのは、恐ろしいことに4Lz-3Tだったりします。ロステレコム杯フリー冒頭の4Lz-3Tの平均GOEは4.556 驚異的な値であり、一つの要素で獲得した得点として21.12は過去最高です。

この4Lz-3Tの高評価は、一度たまたまあっただけではなく、GOE+4以上が2回、+3以上が4回と、高確率で高い評価を得ています。現在存在するこの世で一番難しいジャンプ構成が、一番評価が高くなる、という不思議な構図です。

 

●四回転ルッツ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Nepela Memorial SP 1 4Lz<+COMBO 9.20   -4.60 4.60 -5.000
Nepela Memorial FS 1 4Lz   11.50   1.84 13.34 1.714
Shanghai Trophy SP 1 4Lz   11.50   0.00 11.50 -0.200
Shanghai Trophy FS 1 4Lz+2T   12.80   3.07 15.87 2.800
Internationaux de France SP 1 4Lz+3T   15.70   4.44 20.14 3.889
Internationaux de France FS 1 4Lz+3T   15.70   3.61 19.31 3.111
Rostelecom Cup SP 1 4Lz+3T   15.70   5.09 20.79 4.333
Rostelecom Cup FS 1 4Lz+3T   15.70   5.42 21.12 4.556
Grand Prix Final SP 1 4Lz   11.50   -4.93 6.57 -4.000
Grand Prix Final FS 1 4Lz+3T   15.70   2.63 18.33 2.000
Europe Championships SP 1 4Lz< 9.20   -3.81 5.39 -4.111
Europe Championships FS 1 4Lz   11.50   -0.16 11.34 -0.111
Tallink Hostels Cup SP 1 4Lz< 9.20   -1.84 7.36 -2.000

今シーズンサマリン選手は、四回転のルッツを単独で7回、コンビネーションで6回飛びました。単独は回転不足が3回、GOEマイナスは6回で、GOEがプラスになった成功ジャンプは1回だけでした。

コンビネーションの方は6回すべてGOEプラスの成功ジャンプです。

これはおそらく、生存バイアスみたいなもので、ルッツを飛んでうまくいったらコンビネーションを付ける、という方針になっていて、逆に、コンビネーションになっているときは成功ジャンプになる、ということかと思われます。そうやって考えると、四回転ルッツ全体として成功率は5割程度、と見るのがいでしょうか。

 

●四回転のフリップとループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Nepela Memorial SP 2 4F   11.00   -3.52 7.48 -3.143
Shanghai Trophy SP 2 4F!<+COMBO 8.80   -4.40 4.40 -5.000
Shanghai Trophy FS 2 4F!< 8.80   -3.52 5.28 -3.800
Internationaux de France SP 2 4F! ! 11.00   0.00 11.00 0.000
Internationaux de France FS 2 4F   11.00   -5.50 5.50 -5.000
Rostelecom Cup SP 2 4F   11.00   -5.50 5.50 -5.000
Grand Prix Final SP 2 4F<+2T 10.10   -3.02 7.08 -3.444
Grand Prix Final FS 2 4F   11.00   -3.46 7.54 -3.111
Tallink Hostels Cup FS 1 4Lo   10.50   -1.05 9.45 -0.800

ルッツと比べると四回転のフリップは成功率が下がります。8回飛んで回転不足が3回、転倒3含めてGOEのマイナスが7回。プラスはなくGOE0が一回あるだけです。まだ、ちゃんと飛べているとはいいがたいジャンプです。

そして、ちょっと驚いたのは、国際B級大会で四回転ループを要素に入れてきました。回転はしっかり足りて着氷。GOEはわずかにマイナスですが、十分に合格レベルのジャンプになっています。

四回転の中でもループは飛ぶ選手が少なく、今シーズン試みたのも5人だけ。回転不足なく着氷したのは4人だけなのですが、その中の一人にサマリン選手もなりました。

意外にも、サルコウがまだないのですが、サマリン選手はこれで4回転5種類完備に一番近い選手になってきたように感じます。

 

●四回転のトーループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Shanghai Trophy FS 3 4T   9.50   1.58 11.08 1.400
Internationaux de France FS 3 4T   9.50   3.12 12.62 3.222
Europe Championships SP 2 4T<+COMBO 7.60   -3.80 3.80 -5.000
Europe Championships FS 2 4T   9.50   -0.27 9.23 -0.222
Tallink Hostels Cup SP 2 4T+2T   10.80   0.00 10.80 0.200
Tallink Hostels Cup FS 2 4T   9.50   1.27 10.77 1.400

四回転のトーループは意外と本数少なく6回のみの実施でした。回転不足が1 転倒1 GOEプラスの成功ジャンプは4回で成功率2/3です。実際には四回転トーループを飛ぼうとして2Tになった3Tになった、というものが他にあるので、成功率は半分程度になります。成功率自体はルッツと変わりません。同じ四回転なら、基礎点の高いルッツやフリップを優先しよう、という戦略なのでしょうか。それほど成功率が変わらないのなら、そういうやり方もあるんだろうな、と思われます。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Nepela Memorial SP 4 3A   8.80 x 1.12 9.92 1.286
Nepela Memorial FS 7 3A   8.80 x -4.00 4.80 -5.000
Shanghai Trophy SP 4 3A   8.80 x 2.40 11.20 2.800
Shanghai Trophy FS 7 3A+2T   10.23 x 1.33 11.56 1.800
Internationaux de France SP 4 3A   8.80 x -2.17 6.63 -2.778
Internationaux de France FS 7 3A+2T   10.23 x -1.37 8.86 -1.667
Rostelecom Cup SP 4 3A   8.80 x -1.03 7.77 -1.444
Rostelecom Cup FS 5 3A   8.00   0.46 8.46 0.444
Rostelecom Cup FS 7 3A+2T   10.23 x 0.57 10.80 0.667
Grand Prix Final SP 4 3A   8.80 x 1.83 10.63 2.222
Grand Prix Final FS 5 3A+2T   9.30   1.94 11.24 2.444
Grand Prix Final FS 7 3A+2T*   8.80 x 1.37 10.17 1.667
Europe Championships SP 4 3A   8.80 x 1.71 10.51 2.222
Europe Championships FS 5 3A   8.00   -0.91 7.09 -1.222
Europe Championships FS 7 3A+REP   6.16 x -4.00 2.16 -5.000
Tallink Hostels Cup SP 4 3A   8.80 x 1.87 10.67 2.400
Tallink Hostels Cup FS 5 3A+2T   9.30   1.33 10.63 1.600
Tallink Hostels Cup FS 7 3A   8.80 x 2.13 10.93 2.600

トリプルアクセルは18回実施。回転不足はないですが、GOEマイナスは転倒2回を含めて6回あり、成功率は2/3になっています。

成功率2/3だと、ショートフリーで3回飛んだら1回失敗する、という確率なので、これもあんまり安定感のあるジャンプとは言えません。

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Europe Championships FS 3 3Lz+1Eu+3F   11.70   0.76 12.46 1.111
Tallink Hostels Cup FS 3 3Lz+1Eu+3F   11.70   1.77 13.47 3.000

今シーズンサマリン選手は7試合出ているのですが、3連続ジャンプは2回しか実施されませんでした。

ルッツからの3連続で最後にフリップを入れるというもの。2回入って2回とも成功です。

この構成はヨーロッパ選手権以降に入れられたものです。それ以前はフリーの三つ目の要素は四回転トーループでした。その構成の時に三連続をどこに入れようとしていたのか、いまひとつわからないです。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Nepela Memorial SP 7 StSq4   3.90   1.09 4.99 2.714
Nepela Memorial FS 6 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.000
Nepela Memorial FS 11 StSq4   3.90   0.86 4.76 2.143
Shanghai Trophy SP 7 StSq4   3.90   0.91 4.81 2.600
Shanghai Trophy FS 6 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.000
Shanghai Trophy FS 11 StSq4   3.90   1.30 5.20 3.400
Internationaux de France SP 7 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.889
Internationaux de France FS 6 ChSq1   3.00   0.79 3.79 1.222
Internationaux de France FS 11 StSq4   3.90   0.72 4.62 1.667
Rostelecom Cup SP 7 StSq4   3.90   0.95 4.85 2.556
Rostelecom Cup FS 6 ChSq1   3.00   0.86 3.86 1.667
Rostelecom Cup FS 11 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.444
Grand Prix Final SP 7 StSq2   2.60   0.74 3.34 2.889
Grand Prix Final FS 6 ChSq1   3.00   0.93 3.93 1.778
Grand Prix Final FS 11 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.667
Europe Championships SP 7 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.444
Europe Championships FS 6 ChSq1   3.00   0.50 3.50 1.000
Europe Championships FS 11 StSq4   3.90   0.45 4.35 1.333
Tallink Hostels Cup SP 7 StSq2   2.60   0.69 3.29 2.800
Tallink Hostels Cup FS 6 ChSq1   3.00   1.00 4.00 1.800
Tallink Hostels Cup FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.800

ステップはレベル4率64.3% GOEはプラス3を超えたことが1度ありますが、多くの場合+2台になります。コレオシークエンスは+1台が多いです。

 

スピンは加点はそれほど取れていないのですが、レベル4率は95.2%と高い水準にあります。加点は取れた方が当然望ましいですが、レベル4をすべてしっかり取れていれば、それほど足を引っ張る要素とまではならないように感じます。

 

 

昨シーズンヨーロッパ選手権2位 世界選手権にも出場し、躍進のシーズンだったサマリン選手。それを受けての今シーズンも、グランプリシリーズまでは順調でした。

ところがファイナル以降は不振。ヨーロッパ選手権で10位に終わったことで、最終的に中止にはなりましたが、世界選手権の出場権は得ることができませんでした。

ロシア男子は今のところ世界の枠は2つしかありません。

世界ランキングで上を行くアリエフ選手がいますし、今シーズンはケガで試合に出られなかったコリヤダ選手もいます。そのほかにも近い水準の力を持った選手が多数いる。

そういったなかで、高い基礎点を持つサマリン選手は一発の魅力があります。一方で、不安定さを抱えている。選考会と世界の舞台。二つでともに結果を出すことができるか? と問われたときに、一発当たるけど二発は・・、という部分があることは否めません。

 

ただ、やはり、あの四回転ルッツは、世界の舞台にいてくれないと寂しいというか物足りないというか。それ自体が強烈な個性なので、一発当たるかどうか? というのは毎試合楽しみにしていたい。

 

いつか、もう少しジャンプの成功率が上がったら、ショートで、後半4Lz-3Tで、一要素得点記録の更新、なんてのもしてほしいと思ったりします。(フリーで4Lz-1Eu-3Fなんてのも見てみたい)。

 

 

 

 

ジェイソンブラウン Jason Brown 19-20

1994年12月15日生まれ

シニア7シーズン目

Website Twitter Instagram

シーズン獲得賞金:$31,000

世界ランキング:6位

シーズンランキング:6位

シーズンベストスコア 274.82(5位) 四大陸選手権

ショートプログラムシーズンベスト 94.71 四大陸選手権

フリーシーズンベスト 180.11 四大陸選手権

ショートプログラム楽曲: I Can't Go On Without You

フリープログラム楽曲 : Schindler's List

スピンレベル4率 23/24=95.8%

ステップレベル4率 7/8=87.5%

スピンオールレベル4 3/4

スピンステップオールレベル4 3/4

ジャンプ回転不足率  6/40=15.0%

ジャンプ回転不足なし試合 2/4

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 2/4

 

●ジェイソンブラン選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
GP Skate America 2 255.09 83.45 39.23 44.22 171.64 80.94 90.70
GP NHK Trophy 5 231.27 73.73 32.45 43.28 157.54 72.16 87.38
CS Golden Spin 1 242.39 79.44 37.79 42.65 162.95 78.05 85.90
4CC Four Continents 2 274.82 94.71 48.81 45.90 180.11 87.53 92.58

ジェイソンブラウン選手は今シーズンはスケートアメリカから始動。いつもより遅めの初戦となりました。まずまずの出来で255.09 2位表彰台です。これで、シニアに上がってから7シーズン続けてグランプリシリーズの表彰台に乗っています。

ファイナルがかかった2戦目のNHK杯。ここで残念ながらショートからジャンプで二つの転倒。まさかの8位発進でフリーで巻き返すも総合順位5位。4位でファイナルが見えていたのですが2シーズンぶりのファイナル進出はなりませんでした。

ファイナルの裏で行われていたチャンレジャーシリーズの最終戦ゴールデンスピンに出場します。ここでもショートのコンビネーションで転倒し70点台となりますが、フリー巻き返して優勝。実はゴールデンスピン2連覇だったりします。

 

年が明けての全米選手権。ショート100点越えは、まあ全米なんでね、という注釈付きにはなりますが、いい出来だったのは事実で、ショートフリートータルすべて、ネイサンチェン選手に次ぐ2位でシーズン後半のチャンピオンシップの出場権を確保しました。

 

四大陸選手権はフリーノーミスの94.78 シーズンベストの3位で折り返します。

フリーは最終滑走。表彰台に乗るにはパーソナルベストが必要という状況で、四回転こそ入りませんでしたが、その他はミスなくまとめて、180.11 現行ルールで初めてフリー180点に乗せて、トータル2位表彰台。チャンピオンシップのメダル獲得となりました。

 

この出来なら世界選手権のメダルも、という可能性が感じられたのですが中止。シーズン終了となりました。

 

 ●ジェイソンブラウン選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
GP Skate America 2 255.09 120.17 134.92 76.84 27.35 15.98
GP NHK Trophy 5 231.27 104.61 130.66 63.16 26.52 14.93
CS Golden Spin 1 242.39 115.84 128.55 72.93 26.81 16.10
4CC Four Continents 2 274.82 136.34 138.48 92.09 27.63 16.62

ジェイソンブラウン選手は、技術点より演技構成点の方が高い選手です。2位表彰台だった四大陸選手権でもTESよりPCSの方が上になっています。

PCSは四大陸で138.48 各要素平均9点で合計135点ですので、平均9点を少し超えたくらいのスコアになります。138.48は全体で4位のスコアです。

ジャンプは一番いい四大陸で92,09 100点まで届きません。ミスが出ると70点台、悪いと60点台にまで落ち込みます。ジャンプだけで見ると普通の選手です。

スピンの27.63は全体の2位でシニア選手中トップ。ステップ系要素の16.62は全体トップです。

スピンステップPCSは世界の頂上におり、ネイサンチェン選手、羽生結弦選手を向こうに回しても、この分野は勝っています、とはっきり言えるものを持つ数少ない選手です。

 

 ●ジェイソンブラウン選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Skate America 2 62.96 46.62 66.64 71.65 71.63 68.26
NHK Trophy 5 56.89 48.49 45.98 69.06 66.67 65.68
Golden Spin 1 59.73 49.40 56.40 69.96 72.20 64.40
Four Continents 2 67.99 52.73 73.82 72.52 74.65 70.42

偏差値で見ると、270点台に乗った四大陸選手権で60台後半まで出ました。

ジャンプの基礎点は四大陸選手権で平均を超えましたが、ほかの三試合は平均割れの40台です。ジャンプの構成の低さはやはり弱点です。

ジャンプの加点は、いい時はしっかり得られていて、スケートアメリカで60台後半。四大陸選手権では73.82という高い偏差値を得ました。ジャンプに関しても、出来栄え勝負の部分ではトップクラスなわけです。ジャンプが苦手というべきか、高難度ジャンプが苦手というべきか。

スピンは安定的に偏差値70前後。ステップも同様で、良い時は偏差値75に近い水準になるという極めて高い評価です。

PCSは通常だと60台というのはむしろ低めに感じてしまいますが、四大陸では偏差値70に乗りました。

四大陸選手権はジャンプの基礎点以外はすべて偏差値70台。出来栄えが非常に良かったことが見て取れます。

 

 

ジェイソンブラウン スケート偏差値

レーダーチャートは非常に特徴的。ジャンプ基礎点の右上が凹む形です。こんなチャートは他の選手で見たことがありません。

この形からジャンプで失敗するとNHK杯のように右側ほとんどない、みたいな形になって点数苦しくなります。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents 1 3F   5.30   2.20 7.50 4.111
Four Continents 2 3A   8.00   2.17 10.17 2.667
Four Continents 3 FSSp4   3.00   0.94 3.94 3.111
Four Continents 4 3Lz+3T   10.10   1.94 12.04 3.333
Four Continents 5 CCSp4   3.20   1.33 4.53 4.222
Four Continents 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Four Continents 7 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.222
Four Continents   TES   37.00   11.81 48.81  

ショートプログラムの基礎点最高は37.00でした。この値は極めて普通のスコアです。これ、一番最後のジャンプを3Lz-3Tにしてるんですが、後半の1.1倍ボーナスがついていないんですね。たぶん、時間経過の関係で後半になるより前に飛んでしまった、ということなのだと思います。他の試合ではこのタイミングのジャンプで1.1倍ついていましたし。

そのため、本来1.1倍に出来ていたら基礎点は38.01にはなるはずでした。

ただ、男子のトップ選手は、ショートにはまず四回転を入れますので、基礎点40点は普通超えてきます。それと比べるとかなり低い基礎点と言わざるを得ません。

 

この構成で得られる加点はGOEオール満点の時16.4です。なので満点は53.40となります。満点53.40で実際に取った点数が48.81だったわけですから、いかにすごい出来だったのかがよくわかります。

なお、コンビネーションが1.1倍カウントちゃんとされたとしても満点が54.41 この構成で100点を超えるというのはほとんど不可能レベルに近そうなのですが、全米選手権では100点を超えた点数が出ていました。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents 1 3A+2T   9.30   1.83 11.13 2.222
Four Continents 2 2T   1.30   0.04 1.34 0.222
Four Continents 3 3A   8.00   2.17 10.17 2.667
Four Continents 4 3F   5.30   2.12 7.42 4.000
Four Continents 5 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
Four Continents 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.444
Four Continents 7 3F+3T   10.45 x 1.29 11.74 2.444
Four Continents 8 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.556
Four Continents 9 3Lo   5.39 x 1.40 6.79 2.778
Four Continents 10 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
Four Continents 11 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Four Continents 12 CCSp4   3.20   1.51 4.71 4.667
Four Continents   TES   68.61   18.92 87.53  

フリーの最高基礎点は68.61でした。これもやはり平凡です。

まだ四回転を飛べたことはありませんが、2つ目の要素2Tは4Tを飛びたくて入れています。これが四回転半と飛べた場合は基礎点が8.2上がるので74.81にまでなります。

多くの選手が基礎点80を超えますし、トップは90を超えているところからすると、まだまだ低いですが、まずはその、四回転が入った構成、というのが目指すところなのでしょう。

 

この基礎点68.61の構成の場合、GOE満点で得られる加点は28.85なので、技術点の満点は97.46です。すなわち、この構成で200点を出すのは不可能、という計算になります。

四回転トーループが一本入った場合は加点満点は32.95になって、技術点の満点は107.76になります。これでも、200点に乗せるのは神業レベルが必要そうです。

四回転が入らなかった状態で180点まで乗せた、というこの四大陸選手権はすごかったことがよくわかります。現実的には四回転が一本入ったとして、190点くらいまでが限界でしょうか。

 

●平均GOE+4.000以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Golden Spin FS 12 CCSp4   3.20   1.54 4.74 4.714
Four Continents FS 12 CCSp4   3.20   1.51 4.71 4.667
NHK Trophy FS 12 CCSp3   2.80   1.28 4.08 4.556
Four Continents FS 8 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.556
Skate America SP 1 3F   5.30   2.35 7.65 4.333
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Four Continents FS 11 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Skate America FS 11 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
NHK Trophy FS 11 StSq3   3.30   1.37 4.67 4.222
Four Continents SP 5 CCSp4   3.20   1.33 4.53 4.222
Four Continents SP 7 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.222
Golden Spin SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.143
Golden Spin FS 11 StSq4   3.90   1.64 5.54 4.143
Skate America FS 2 3F   5.30   2.20 7.50 4.111
Skate America FS 12 CCSp4   3.20   1.33 4.53 4.111
Four Continents SP 1 3F   5.30   2.20 7.50 4.111
Skate America SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
Skate America SP 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
Skate America FS 8 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Golden Spin SP 5 CCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
Golden Spin FS 8 ChSq1   3.00   2.10 5.10 4.000
Four Continents FS 4 3F   5.30   2.12 7.42 4.000

ジェイソンブラウン選手は今シーズン国際試合は4試合しか出ていませんが、平均GOE+4以上の評価の要素を集めると、これだけ長いリストになりました。

上の方にはスピンが並びます。CCSp チェンジフットキャメルスピン。平均GOE+4.714は、このスピンの今シーズンの中での最高評価です。

コレオシークエンスやステップも高評価がたくさんあります。四大陸ではショートフリーのステップコレオがすべて平均GOE+4.333以上。ステップのGOE+4.333は全体で2位、コレオシークエンスのGOE+4.556も全体の2位です。

ジャンプは苦手、と思いきや、単独のトリプルフリップは平均GOE+4以上を連発しています。単独のトリプルフリップを飛ぶ選手、というのはそれほど多いわけではないですが、平均GOE+4.000以上を出しているのはジェイソンブラウン選手のみです。

 

●単独のトーループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
NHK Trophy FS 2 3T   4.20   1.08 5.28 2.667
Golden Spin FS 2 4T<< <<  4.20   -2.10 2.10 -5.000
Four Continents FS 2 2T   1.30   0.04 1.34 0.222

今シーズン、四回転トーループを何とか飛ぼうとしてきていますが、成功はありません。回転が足りたものもなく、回転不足の4T扱いもなく、ダウングレードから、3回転や2回転になったもののみでした。

気持ち的には、ジェイソンブラウン選手が無理に四回転飛ばなくてもよい、と思ったりもするのですが、四回転がないと全米を勝ち抜いてチャンピオンシップの試合に、次のオリンピック二、と出てくるのが大変なのも確かなので、何とか一本だけでも飛べるようになってもらえたらいいなと思います。

 

アクセルジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Skate America SP 2 1A* * 0.00   0.00 0.00  
Skate America FS 1 3A+2T   9.30   1.14 10.44 1.333
Skate America FS 3 3A   8.00   1.94 9.94 2.444
NHK Trophy SP 2 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
NHK Trophy FS 1 3A+2T   9.30   0.34 9.64 0.444
NHK Trophy FS 3 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.000
Golden Spin SP 2 3A   8.00   1.92 9.92 2.571
Golden Spin FS 1 3A+2T   9.30   2.24 11.54 2.714
Golden Spin FS 3 3A   8.00   1.92 9.92 2.143
Four Continents SP 2 3A   8.00   2.17 10.17 2.667
Four Continents FS 1 3A+2T   9.30   1.83 11.13 2.222
Four Continents FS 3 3A   8.00   2.17 10.17 2.667

四回転がなくてもトリプルアクセルがしっかり決まれば、この選手は上位で戦うことは出来ます。

ただ、トリプルアクセルの成功率がそれほど高くないという現実がシーズン前半にはありました。

スケートアメリカのショートはシングルアクセルになって零点。NHK杯は転倒二つです。

ゴールデンスピン以降はショートフリーで3回とも成功させてGOEも+2台。これが決まってくれると、全体の出来が良いので、すごく印象の良いプログラムになります。

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Skate America FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.21 10.34 2.222
NHK Trophy FS 6 3Lz!+1Eu+3S ! 11.77 X 0.67 12.44 1.222
Golden Spin FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.53 13.30 2.571
Four Continents FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.444

三連続ジャンプはスケートアメリカだけフリップからでしたが後はルッツから。すべて加点付きの成功です。

トリプルルッツ起点の三連続、というのもそれほど多くの選手が飛ぶわけでもないですが、+3.444という評価はトリプルルッツ起点の三連続として今シーズンの最高評価です。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Skate America SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
Skate America FS 8 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Skate America FS 11 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
NHK Trophy SP 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.778
NHK Trophy FS 8 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.667
NHK Trophy FS 11 StSq3   3.30   1.37 4.67 4.222
Golden Spin SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.143
Golden Spin FS 8 ChSq1   3.00   2.10 5.10 4.000
Golden Spin FS 11 StSq4   3.90   1.64 5.54 4.143
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Four Continents FS 8 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.556
Four Continents FS 11 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333

ステップとコレオはものすごい評価が並んでいます。どちらも平均GOEが+3台に落ちたのは1度だけ。あとは+4以上を出しています。

また、ステップのレベル4率も極めて高く、レベル3になったのはNHK杯フリーの一回だけ。ここまで高いステップレベル4率を誇る選手は他にいません。

 

●CCSp チェンジフットキャメルスピン

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Skate America SP 5 CCSp4   3.20   1.19 4.39 3.444
Skate America FS 12 CCSp4   3.20   1.33 4.53 4.111
NHK Trophy SP 5 CCSp4   3.20   1.28 4.48 3.778
NHK Trophy FS 12 CCSp3   2.80   1.28 4.08 4.556
Golden Spin SP 5 CCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
Golden Spin FS 12 CCSp4   3.20   1.54 4.74 4.714
Four Continents SP 5 CCSp4   3.20   1.33 4.53 4.222
Four Continents FS 12 CCSp4   3.20   1.51 4.71 4.667

スピンから一つだけ取り出しました。

チェンジフットキャメルスピン。平均GOE+4.667という高い評価を四大陸選手権で得ました。これはこのスピンの中で今シーズン全選手のトップ評価です。

スピンは今シーズン24回実施で1度だけレベル3があり、あとはすべてレベル4でした。レベル4率100%とはいきませんでしたが、さすが高いレベルで安定しています。

 

 

すっかりベテランの域に入ってきたジェイソンブラウン選手。親日家で国別対抗戦など含め日本の試合に多く出場してくれて、日本でのファンも多く毎シーズン活躍しているように見えるのですが、実は世界の舞台での結果は今一つ出せていませんでした。

グランプリシリーズこそシニアに上がってから毎シーズン表彰台に上がっていますが、ファイナルに進んだのは1度だけ。その1度も6位に終わっています。オリンピックはソチには出場しましたが、平昌は出場ならず。世界選手権の出場も実は3回だけで、隔年での出場になっていて、毎年出ているわけではありません。

そんなブラウン選手ですが、今シーズンは四大陸選手権というチャンピオンシップ大会でのメダル獲得が叶いました。四大陸での表彰台は二度目。前回は3位でしたので、2位は最高位となります。

 

ブラウン選手がシニアに上がったのはソチオリンピックのシーズンでした。ちょうど男子では四回転時代に入っていたころ。羽生選手が、四回転一種類では勝てないと二種類目のサルコウの習得を目指していたころです。

一世代前ならブラウン選手の完成度で圧倒的な強さを世界で誇っていたようにも感じられるのですが、今や四回転二種類では勝てず、三種類で表彰台、勝つには四種類五本という時代になってきました。

時代に合わなかったのかなあ、とも思うのですが、そういって終わってしまうのはあまりにももったいない他の要素の水準の高さがあります。常に世界の舞台にはいてほしい選手。

クリケットクラブのオーサー先生の下に移って2シーズンになるでしょうか。ここには羽生選手をはじめ、四回転を飛ぶ選手が何人もいました。一方で、オーサー先生は、高難度ジャンプばかりを追い求めていくことにはあまり賛成ではないとも聞きます。そういったあたりから、ほかの要素で極めて高い水準にありつつ四回転を飛べるようになりたい、というブラウン選手には、ちょうどいい環境なのではないかなと思います

来シーズン以降、四回転をプログラムに加えて、トータルバランスの整った選手として、世界の舞台に立ち続けてほしいです。

 

 

 

ドミトリーアリエフ Dmitri Aliev 19-20

1999年6月1日生まれ

シニア3シーズン目

Twitter

シーズン獲得賞金:$46,000

世界ランキング:4位

シーズンランキング:2位

シーズンベストスコア 272.89(6位) ヨーロッパ選手権

ショートプログラムシーズンベスト 101.89 ネペラメモリアル

フリーシーズンベスト 184.44 ヨーロッパ選手権

ショートプログラム楽曲: Je Dors Sur Des Roses

フリープログラム楽曲 : The Sound of Silence

スピンレベル4率 22/36=61.1%

ステップレベル4率 9/12=75.0%

スピンオールレベル4 0/6

スピンステップオールレベル4 0/6

ジャンプ回転不足率  7/60=11.7%

ジャンプ回転不足なし試合 1/6

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 0/6

 

 ●ドミトリーアリエフ選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Lombardia Trophy 2 249.62 81.18 42.03 40.15 168.44 86.34 82.10
CS Nepela Memorial 1 255.32 101.49 58.19 43.30 153.83 71.93 82.90
GP Skate America 3 253.55 96.57 54.54 42.03 156.98 73.98 83.00
GP Rostelecom Cup 2 259.88 90.64 48.18 42.46 169.24 82.88 86.36
GPF Grand Prix Final 6 220.04 88.78 47.22 41.56 131.26 61.56 73.70
ECC Europe Championships 1 272.89 88.45 47.17 41.28 184.44 98.10 86.34

ドミトリーアリエフ選手はシニア三シーズン目。過去の大きなタイトルはジュニアグランプリファイナル優勝くらいでしたが、着実に実績を積み重ねて今シーズンエンドの段階では世界ランキングを4位にまで上げてきました。

シーズン序盤はチャレンジャーシリーズ2試合。ロンバルディア杯では冒頭四回転ルッツから転倒という嫌なシーズンの入りになりショートは点が伸びませんでしたが、フリーはそこそこまとめて249.62という初戦になりました。

2戦目ネペラメモリアルショートプログラム会心の出来。101.49はパーソナルベストで初の100点越え。現行ルールで6人だけのショート100点スコアラーに仲間入りしました。

しかしながらフリーで崩れてトータル255.32 これはこれでパーソナルベスト更新でしたが、何とも残念な結果。

グランプリ2戦は250点台というまずまずのスコアで2戦連続表彰台。グランプリシリーズで表彰台に乗ったのはこのスケートアメリカが初で、そのままファイナルにまで進出します。

ところがこのグランプリファイナルで大崩れ。ショートは大きなミスは出さずに踏みとどまったのですが、フリーで転倒三つ回転不足二つ、スピンもノーカウントまで出して131.26という自己ワーストスコアを出し、トータルも220.04 初のファイナルは痛い結果で終わりました。

年末のロシア選手権はシーズン後半のチャンピオンシップの出場権をかけた戦い。この試合でショート4位からの逆転優勝。ロシア選手権初優勝を果たします。

 

年が明けてヨーロッパ選手権。フェルナンデスさんが7連覇したまま引退。誰が勝っても初優勝という試合。ショートは回転不足二つながらもなんとか2位発進。フリーは23番滑走で冒頭の四回転ルッツこそ回転不足になったものの、他はしっかりまとめて184.44のパーソナルベスト。首位に立ってプレッシャーをかけた状態で最終滑走のショート1位ブレジナ選手を待ちます。初のビッグタイトルがかかったベテランブレジナ選手でしたが、三回挑んだ4回転はすべて失敗。ジャンプ要素三つで7.72点と減点2しかとれず、その後は立て直したものの点数は届かず。アリエフ選手が逆転でビッグタイトルをつかみました。

 

世界選手権は中止になったため、ヨーロッパ制覇でアリエフ選手の今シーズンは終了しました。

 

 ●ドミトリーアリエフ選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Lombardia Trophy 2 249.62 128.37 122.25 93.58 20.90 13.89
CS Nepela Memorial 1 255.32 130.12 126.20 93.69 22.41 14.02
GP Skate America 3 253.55 128.52 125.03 94.60 21.00 12.92
GP Rostelecom Cup 2 259.88 131.06 128.82 95.20 22.15 13.71
GPF Grand Prix Final 6 220.04 108.78 115.26 83.59 13.87 11.32
ECC Europe Championships 1 272.89 145.27 127.62 107.87 22.95 14.45

アリエフ選手も技術点優位型。大崩れしたグランプリファイナルのみはPCSの方が高くなっています。

PCSは120点台が標準的です。各要素平均8点で120点。8.5まで行くと127.5点まで出ますので、いい時は平均8.5ほど取れていることがわかります。

ジャンプは伸びると100点台後半まで出ます。ヨーロッパ選手権の107.87は全体7位。ヨーロッパ圏の選手ではトップです。

スピンが苦手。ファイナルの13.87はちょっといろいろあってひどいですが、それ以外でも一番いい時で22点台に留まっています。スピンのトップは27点台、上位選手は26点台を出すのと比べるとスピンだけで4点差がついてくることになります。

ステップは14点台まで。これは苦手というほどではないですが、トップは16点台出しますのでトップ層にはとどきません。

 

 ●ドミトリーアリエフ選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Lombardia Trophy 2 61.57 63.84 54.20 51.51 61.76 60.58
Nepela Memorial 1 63.02 62.56 56.80 56.22 62.37 62.97
Skate America 3 62.57 57.92 66.91 51.82 57.18 62.26
Rostelecom Cup 2 64.18 57.69 68.11 55.41 60.91 64.56
Grand Prix Final 6 54.03 60.24 48.70 29.55 49.63 56.34
Europe Championships 1 67.50 67.75 64.44 57.91 64.41 63.83

偏差値で取ると、250点台のスコアは60前半になります。270点台乗ったヨーロッパ選手権は偏差値67.5 かなり高いスコアです。

ジャンプはしっかりこなせば基礎点60台後半まで出る構成ですが、回転不足がいくつか重なってくると60前後に落ちてきます。

ジャンプのGOEは良い時で60台後半まで。70までは乗ってきません。

苦手要素のスピンは基本的には50台です

ステップは60に乗ってきてPCSも60台前半です。

ジャンプが得意側でスピンは苦手、ステップとPCSが普通、というのが本人比でみたところなようです。

 

 

ドミトリーアリエフスケート偏差値

レーダーチャートで見るとグランプリファイナルの凹みがなかなかひどいですが・・・。

スピン以外の四項目は割とバランスが取れています。四回転ルッツ使いなので、ジャンプ側にもう少し寄ってもよさそうなものなのですが、その辺は成功率の関係もあって、それほど極端にそちらによる形にはならないようです。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Nepela Memorial 1 4Lz+3T   15.70   3.45 19.15 3.000
Nepela Memorial 2 4T   9.50   2.66 12.16 2.286
Nepela Memorial 3 FCSp4   3.20   0.64 3.84 1.857
Nepela Memorial 4 3A   8.80 x 1.76 10.56 2.143
Nepela Memorial 5 StSq4   3.90   1.40 5.30 3.571
Nepela Memorial 6 CSSp3   2.60   0.31 2.91 0.857
Nepela Memorial 7 CCoSp4   3.50   0.77 4.27 2.143
Nepela Memorial   TES   47.20   10.99 58.19  

ショートプログラムの最高基礎点は47.20でした。これは全体で4位のスコアで羽生結弦選手より上に行きます。スピンが一つレベル3ですが、これをレベル4に出来れば、基礎点は0.4上がって47.60になり、3位に並びます。加点はGOE満点の時に21.3まで出せるので、技術点の満点は68.90となります。PCSが各要素8.5点くらいまでで、ショートでは43点ほどまでなことを考えると、ショートで100点は出せる、110点は厳しい、105点くらいが今の限界目標値かな、という印象です。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Europe Championships 1 4Lz< 9.20   -0.92 8.28 -1.111
Europe Championships 2 4T   9.50   1.90 11.40 1.889
Europe Championships 3 4T+3T   13.70   2.71 16.41 2.889
Europe Championships 4 3F   5.30   1.29 6.59 2.556
Europe Championships 5 FCSp4   3.20   0.41 3.61 1.222
Europe Championships 6 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.444
Europe Championships 7 3A   8.80 x 2.29 11.09 2.778
Europe Championships 8 3Lz+3T   11.11 x 0.93 12.04 1.667
Europe Championships 9 3Lo+1Eu+3S   10.67 x 0.91 11.58 1.889
Europe Championships 10 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
Europe Championships 11 CSSp3   2.60   0.67 3.27 2.667
Europe Championships 12 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.778
Europe Championships   TES   84.48   13.62 98.10  

フリーの最高基礎点は84.48 これは全体7位のやはり高い基礎点です。

ルッツ回転不足が効いていて、ここだけで回転足りれば2.3基礎点を上げることができます。スピンのレベル3を4にするのと合わせると2.7 やりたいこと全部できた理想形で87.18の基礎点になります。そこまで行けば、上にいるのはネイサンチェン選手と羽生結弦選手の二人だけ、という領域になります。

 

2回飛ぶジャンプは四回転トーループと三回転トーループ。3T(4.2)を一つ2T(1.3)に下げて、3Lo(4.9)を3A(8.0にすれば、わずかに基礎点を上げることは出来ますが、難易度の上がり方と比べると損になるのでこのままでいい、というのは自然でしょうか。

コンビネーションを二つ1.1倍のところに入れています。ここに四回転からのコンビネーションが入ってくるようになるとさらに基礎点が上がるのですが、そのためには四回転の安定度をさらに上げる必要があるでしょうか。

四回転は二種類。もっと飛んでいそうな印象なのですが、トーループの次にルッツを入れていて、エッジ系ジャンプのサルコウは入っていません。3種類目をこの先入れていくのか、今の完成度を上げていくのか。

上二人がすごすぎるのでかすんでしまう部分がありますが、この構成で十分すごいですので、これより基礎点を上げることを考えるより、この構成で完成度を上げる、成功率を上げることを考える、というスタイルで、たぶん良いのだろうと思います。

 

●平均GOE+2.800以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy FS 1 4Lz   11.50   4.37 15.87 3.714
Nepela Memorial SP 5 StSq4   3.90   1.40 5.30 3.571
Rostelecom Cup SP 1 3Lz+3T   10.10   2.02 12.12 3.333
Europe Championships FS 10 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
Lombardia Trophy FS 3 4T+3T   13.70   2.85 16.55 3.000
Nepela Memorial SP 1 4Lz+3T   15.70   3.45 19.15 3.000
Nepela Memorial FS 1 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.000
Europe Championships SP 5 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Skate America SP 4 3A   8.80 x 2.40 11.20 2.889
Skate America SP 5 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.889
Rostelecom Cup FS 1 3Lz   5.90   1.69 7.59 2.889
Grand Prix Final FS 1 4Lz   11.50   3.29 14.79 2.889
Europe Championships FS 3 4T+3T   13.70   2.71 16.41 2.889
Lombardia Trophy SP 5 StSq4   3.90   1.09 4.99 2.857
Nepela Memorial FS 6 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.857

アリエフ選手の中で、今シーズン一番評価の高い要素は、なんと四回転ルッツでした。一番難しい技が一番加点も高いという、なかなか珍しいことが起きています。

上位にあるのはジャンプとステップ。スピンが苦手なのはここにもはっきり表れていて、GOEが3に達したことがシーズン通じでありませんでした。

トリプルアクセルよりも四回転の方が評価が高い傾向があります。これは、要素順の兼ね合いで先に飛ぶ方に集中力、エネルギーを投入出来て四回転の評価の方が高くなるのか、アクセルというジャンプがそれほど得意ではないためか、どちらかはわかりません。

アリエフ選手はシーズン通じて平均GOEが+4に達した要素がありませんでした。この辺が、上二人、あるいはいい時の宇野選手あたりとの差になっています。基礎点は上と勝負できる領域にいるのですが、出来栄え勝負で負けている、という状態です。

 

 ●四回転ルッツ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 1 4Lz   11.50   -5.75 5.75 -4.571
Lombardia Trophy FS 1 4Lz   11.50   4.37 15.87 3.714
Nepela Memorial SP 1 4Lz+3T   15.70   3.45 19.15 3.000
Skate America SP 1 4Lz+3T   15.70   3.29 18.99 2.778
Grand Prix Final SP 1 4Lz+2T   12.80   1.31 14.11 1.222
Grand Prix Final FS 1 4Lz   11.50   3.29 14.79 2.889
Europe Championships SP 1 4Lz<+3T 13.40   -0.53 12.87 -0.444
Europe Championships FS 1 4Lz< 9.20   -0.92 8.28 -1.111

今シーズン四回転ルッツは8回飛んで、回転不足が2回、回転足りた転倒が1回、あとの5回は成功ジャンプでした。四回転ルッツが成功率5/8はかなりすごいという印象です。

ショートでは4回コンビネーションで飛んでいます。現在までの最高基礎点4Lz-3Tを2度成功させ、GOE+3も得ています。

 

●四回転のトーループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 2 4T+2T   10.80   0.38 11.18 0.571
Lombardia Trophy FS 2 4T   9.50   -3.23 6.27 -3.429
Lombardia Trophy FS 3 4T+3T   13.70   2.85 16.55 3.000
Nepela Memorial SP 2 4T   9.50   2.66 12.16 2.286
Nepela Memorial FS 2 4T   9.50   -4.75 4.75 -5.000
Nepela Memorial FS 3 4T+REP   6.65   -3.04 3.61 -3.286
Skate America SP 2 4T   9.50   -0.14 9.36 -0.111
Skate America FS 2 4T   9.50   2.58 12.08 2.667
Skate America FS 3 4T+3T   13.70   1.36 15.06 1.444
Rostelecom Cup SP 2 4T   9.50   1.49 10.99 1.667
Rostelecom Cup FS 3 4T+3T   13.70   2.58 16.28 2.667
Rostelecom Cup FS 4 4T   9.50   1.22 10.72 1.222
Grand Prix Final SP 2 4T   9.50   1.22 10.72 1.222
Grand Prix Final FS 2 4T   9.50   -4.61 4.89 -4.667
Europe Championships SP 2 4T   9.50   2.44 11.94 2.444
Europe Championships FS 2 4T   9.50   1.90 11.40 1.889
Europe Championships FS 3 4T+3T   13.70   2.71 16.41 2.889

4回転トーループはシーズン通じて17回飛びました。回転不足はなし。ただ、抜けて2回転になったこと、3回転になったことは1回づつあります。

コンビネーションにしようとしたのは6回。1回はセカンド入らずにリピート扱いに。1回はセカンドがトーループ二。セカンド3回転までついた意図通りの成功ジャンプは4/6あります。

単独の四回転トーループの成功率は案外高くなくて、11回のうち4回がGOEマイナスです。フリーの二つ目に飛ぶ要素としての4Tで3回失敗しています。四回転ルッツの次の要素、という位置が負荷高いのでしょうか。

 

アクセルジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 4 3A   8.80 x 0.80 9.60 1.000
Lombardia Trophy FS 7 3A   8.80 x 1.92 10.72 2.429
Nepela Memorial SP 4 3A   8.80 x 1.76 10.56 2.143
Nepela Memorial FS 7 3A< 7.04 x -0.77 6.27 -1.143
Skate America SP 4 3A   8.80 x 2.40 11.20 2.889
Skate America FS 7 1A   1.21 x -0.05 1.16 -0.444
Rostelecom Cup SP 4 3A   8.80 x 0.46 9.26 0.444
Rostelecom Cup FS 7 3A   8.80 x 1.37 10.17 1.667
Grand Prix Final SP 4 3A   8.80 x 0.69 9.49 1.000
Grand Prix Final FS 7 3A< 7.04 x -2.19 4.85 -3.444
Europe Championships SP 4 3A< 7.04 x -1.37 5.67 -2.222
Europe Championships FS 7 3A   8.80 x 2.29 11.09 2.778

アクセルジャンプは12回飛んで1回は1回転に、3回が回転武装で、あとの8回がGOEプラスの成功ジャンプです。成功率は8/12 四回転とあまり変わりありません。

すべて1.1倍のところで飛んでいるのですが、コンビネーションにはしていません。ショートは当然ですが、フリーでコンビネーションにしていないのは、する価値がないからというだけなのか、あまり得意でないからなのか。

世界のトップ点くらいだと、四回転含めこれくらいの成功率あれば十分。

一方、上二人と戦うこと、世界の表彰台上ることを考えると、もう少し高い確率が必要になるんでしょうか。

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Nepela Memorial FS 9 3Lo+1Eu+3S   10.67 x 0.20 10.87 0.429
Skate America FS 9 3Lo+1Eu+3S   10.67 x 0.70 11.37 1.333
Rostelecom Cup FS 8 3Lz*+1Eu+3S * 5.28 x 0.18 5.46 0.333
Grand Prix Final FS 9 3Lo+1Eu+3S< 9.72 x -0.77 8.95 -1.556
Europe Championships FS 9 3Lo+1Eu+3S   10.67 x 0.91 11.58 1.889

3連続ジャンプは3-1-3の構成。基本はループからなようです。ロステレコム杯でルッツから入れたのは完全に失敗。3Lzが、3種類目の2回飛ぶジャンプになってノーカウントにされました。ただ、ルール上のノーカウントであって、ジャンプ自体は飛べています。

このレベルの選手から見たら、難易度はそれほど高くない構成で、5回飛んで4回はちゃんと成功させています。ファイナルは、たぶんこの辺では精神的に折れていた段階だと思うので、あまり参考にはならないでしょうか。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 5 StSq4   3.90   1.09 4.99 2.857
Lombardia Trophy FS 6 ChSq1   3.00   1.30 4.30 2.429
Lombardia Trophy FS 10 StSq4   3.90   0.70 4.60 1.857
Nepela Memorial SP 5 StSq4   3.90   1.40 5.30 3.571
Nepela Memorial FS 6 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.857
Nepela Memorial FS 10 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.714
Skate America SP 5 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.889
Skate America FS 6 ChSq1   3.00   0.86 3.86 1.667
Skate America FS 10 StSq3   3.30   0.75 4.05 2.444
Rostelecom Cup SP 5 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.556
Rostelecom Cup FS 6 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.222
Rostelecom Cup FS 10 StSq4   3.90   0.84 4.74 2.111
Grand Prix Final SP 5 StSq3   3.30   0.00 3.30 0.000
Grand Prix Final FS 6 ChSq1   3.00   0.79 3.79 1.444
Grand Prix Final FS 10 StSq4   3.90   0.33 4.23 0.889
Europe Championships SP 5 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Europe Championships FS 6 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.444
Europe Championships FS 10 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333

ステップとコレオは本人比で普通くらいの評価です。GOEは+2台が多く、良い時は+3まで乗ってきます。

レベルは4の方が多め。レベル4率がステップの方がスピンより高い、という珍しい選手です。レベル4でGOE+3を獲っておけば、上位との差は付きません。

 

●レベル4のスピン

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 3 FCSp4   3.20   0.51 3.71 1.571
Lombardia Trophy SP 7 CCoSp4   3.50   0.49 3.99 1.286
Lombardia Trophy FS 5 FCSp4   3.20   0.32 3.52 1.000
Lombardia Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   0.56 4.06 1.571
Nepela Memorial SP 3 FCSp4   3.20   0.64 3.84 1.857
Nepela Memorial SP 7 CCoSp4   3.50   0.77 4.27 2.143
Nepela Memorial FS 5 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.143
Nepela Memorial FS 12 CCoSp4   3.50   0.98 4.48 2.714
Skate America SP 3 FCSp4   3.20   0.50 3.70 1.444
Skate America SP 6 CSSp4   3.00   0.51 3.51 1.667
Skate America FS 5 FCSp4   3.20   0.59 3.79 1.889
Skate America FS 12 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
Rostelecom Cup SP 3 FCSp4   3.20   0.55 3.75 1.778
Rostelecom Cup SP 6 CSSp4   3.00   0.56 3.56 1.667
Rostelecom Cup FS 5 FCSp4   3.20   0.46 3.66 1.333
Rostelecom Cup FS 12 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
Grand Prix Final SP 7 CCoSp4   3.50   0.55 4.05 1.667
Europe Championships SP 3 FCSp4   3.20   0.59 3.79 1.889
Europe Championships SP 6 CSSp4   3.00   0.43 3.43 1.333
Europe Championships SP 7 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.444
Europe Championships FS 5 FCSp4   3.20   0.41 3.61 1.222
Europe Championships FS 12 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.778

スピンはレベル4のものだけ並べました。

トップ選手としては、スピンのレベル4率は低めです。また、加点もあまり取れていません。GOEで+3をシーズン通じてスピンで超えたことがない、というのは上位選手ではあまり聞きません。

 

 

日本にいると分かりにくいのですが、アリエフ選手は今シーズン大躍進のシーズンだったと言えます。初のグランプリ表彰台。それも2戦連続。ショートプログラムでは100点スコアラーの仲間入り。そして初のファイナル進出。

ロシアの国内選手権も初制覇。さらにヨーロッパ選手権も初優勝。

 

たぶん、ファイナルの印象が強すぎるのと、ノーミス試合がなく高い基礎点を確保しての高スコアで勝つ、という形なので、良い形のインパクトが伝わってこないため、というのもあると思います。

それでも、今の段階でも世界の表彰台は争って来る位置にいる選手ですし、もう一種類四回転が入って、全体の完成度が上がれば、300点が見える選手でもあります。

 

年齢的にはネイサンチェン選手と同じ二十歳のシーズンでした。羽生選手はもちろんのこと、宇野選手よりも年下。日本の上位選手で言えば、山本草太選手と同じ学年に当たります。

女子は知りませんが、男子シングルの二十歳はまだまだ若い。

この先、スピンの苦手が克服されるのかはわかりませんが、表現面は年齢を経て成長をしていくでしょうし、滑りの印象も変わっていくのかもしれません。

 

フェルナンデスさんの引退後、最初のヨーロッパチャンピオンとなりました。

現在の男子フィギュア界は、あまりにもアジア太平洋地域に勢力図が偏ってしまっています。

それと戦うヨーロッパ勢の顔、ロシア勢の顔として、来シーズン以降も期待したいと思います。

 

 

 

宇野昌磨 19-20

1997年12月17日生まれ

シニア5シーズン目

Website

所属: トヨタ自動車 中京大学

スポンサー関連: トヨタ自動車 ミズノ コラントッテ

CM: DHC

シーズン獲得賞金:$3,000

世界ランキング:3位

シーズンランキング:24位

シーズンベストスコア 290.57(3位) 全日本選手権

 ISU公認試合では255.23 フィンランディアトロフィー

ショートプログラムシーズンベスト 105.71 全日本選手権

 国際試合では92.28 フィンランディアトロフィー

フリーシーズンベスト 198.70 チャレンジカップ

ショートプログラム楽曲: Great Spilit

フリープログラム楽曲: Dancing On My Own

スピンレベル4率 27/33=81.8%(国際試合21/27=77.8%)

ステップレベル4率 5/11=45.5%(国際試合3/9=33.3%)

スピンオールレベル4 2/5 (国際試合1/4)

スピンステップオールレベル4 1/5(国際試合0/4)

ジャンプ回転不足率  8/57=14.0%(国際試合8/47=17.0%)

ジャンプ回転不足なし試合 1/5(国際試合0/4)

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 1/5

 

 ●宇野昌磨選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
Others Japan Open 2 169.09       169.09 80.37 89.72
CS Finlandia Trophy 1 255.23 92.28 47.60 44.68 162.95 76.95 87.00
GP Internationaux de France 8 215.84 79.05 37.94 43.11 136.79 61.57 79.22
GP Rostelecom Cup 4 252.24 87.29 44.49 43.80 164.95 80.17 86.78
NC 全日本選手権 1 290.57 105.71 58.78 46.93 184.86 94.14 90.72
IC Challenge Cup 1 290.41 91.71 46.31 45.40 198.70 104.50 94.20

波乱万丈という表現が今シーズンの宇野選手にはぴったり当てはまるでしょうか。

樋口先生の下を離れて、今シーズンはコーチ不在という状態でスタートしました。

初戦はジャパンオープン。出来は悪かったですが、この時点では、まあジャパンオープンだし、という感じもしていました。

翌週にはすぐにチャレンジャーシリーズのフィンランディア杯。ここでも思いのほか点が伸びませんでした。安定的に300点を取る選手ではないですが、270点280点くらいはしっかり出す選手。それがフリーで伸びずに250点台というあたりが不安感を誘う内容となっていました。

その不安が当たってしまうのがグランプリシリーズフランス杯。ショート冒頭の四回転フリップこそ決まったものの、コンビネーションとトリプルアクセルが転倒で80点に届きません。フリーも転倒三つ。GOEがプラスの成功ジャンプが2つしかなく、スピンで二つレベル2、ステップもレベル2という、ジャンプだけですらなく全体的に壊れてしまった演技で、トータル215.84という信じられない点数になってしまいました。

ここで声をかけたのがランビエール先生だったでしょうか。日本にも、夏の代表合宿などで何度も訪れていて、宇野選手とも旧知の仲だったはず。宇野選手にも、この人なら、という感覚はあったのでしょうか。正式にコーチということではまだないですが、トレーニングをチームの中で積ませてもらうようになったようでした。

というのを経て、たった二週間しか時間がありませんでしたがロステレコム杯を迎えます。ショートは冒頭のフリップで回転不足から転倒、やっぱりまだ駄目なのか? と心配になりますが、あとの二つのジャンプは手堅くまとめます。フリーは、四回転トーループが入るべきところでジャンプを入れずにスルーという、目を疑うようなシーンもありつつ、リンクサイドから、ジャンプ余ってる! というランビエール先生の声を受けて終盤に一本追加。回転不足で転倒でしたので、リカバリーは出来てませんが、なんというか、微笑ましいような出来事もありました。スコアは252.24 宇野選手基準では、まだ、ひどい、に属する点数ですが、試合の前後には笑顔も見られ、精神的にはだいぶ回復したな、というのが見える試合でした。

 

シニアに上がってから初めてファイナルに出場できず、という流れで、今シーズンはグランプリシリーズから全日本に直行します。形としては四連覇がかかる全日本。一方で、羽生選手と久しぶりに全日本で直接対決、という場でもありました。ショートはノーミスで105.71発進。復活を印象付ける演技でした。フリーは大きなミスなくまとめましたが、加点は今一つ伸びずの184.86 トータル290.57は優勝するにはちょっと厳しいかな、という感じで最終滑走羽生選手待ちでしたが、まさかの羽生選手の中盤以降大崩れもあり、四連覇となりました。

 

全日本優勝ですので、シーズン後半は四大陸と世界選手権の権利がありましたが、四大陸は昨シーズン優勝していることもあってかスキップ。全日本後、ランビエール先生にしっかりコーチとしてついてもらうということを発表し、ヨーロッパでトレーニングを重ね、調整試合として2月前半にチャレンジカップを選びました。ショートは転倒もあり点が伸びませんでしたが、フリーは198.70と久しぶりにまとめてきて、世界選手権が期待されるという展開だったのですが、世界選手権中止により、ここでシーズンを終了しました。

 

 ●宇野昌磨選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
Others Japan Open 2 169.09 80.37 89.72 57.45 13.17 9.75
CS Finlandia Trophy 1 255.23 124.55 131.68 87.00 23.81 13.74
GP Internationaux de France 8 215.84 99.51 122.33 66.88 21.55 11.08
GP Rostelecom Cup 4 252.24 124.66 130.58 87.69 23.84 13.13
NC 全日本選手権 1 290.57 152.92 137.65 111.87 25.36 15.69
IC Challenge Cup 1 290.41 150.81 139.60 109.16 26.26 15.39

要素別は、出来の良くなかったロステレコム杯以前はTESよりPCSの方が高くなっています。崩れた時はTESの下がりは大きいですが、PCSはそれほど極端には下がらないためです。

全日本以降はTESが150点を超えていて、PCS満点が150点ですので、当然TESの方が高くなります。

PCSはシーズン後半は130点台後半。各要素平均9点で135点ですので、平均9点を少し超える水準です。9.5点なら142.5点になりますので、9.5までは届いていません。それでも、全体の3位。ちゃんと滑れば世界の三番手、というのが今の宇野選手の立ち位置なようです。

ジャンプはいい時に110点前後稼ぎます。チャレンジカップの109.16は今シーズン6位の数字。

スピンはシーズン前半は24点に満たず、崩れたのはジャンプだけではないことが表れていますが、チャレンジカップでは26点台まで出してきました。このスコアで全体7位。足を引っ張るような要素ではないです。

ステップもシーズン前半ひどいスコアがありますが、チャレンジカップで15.39までちゃんと出していて、これは全体5位です。

やはり総合的にどの要素もしっかりこなせて、総合力で世界の三番手、ちゃんと滑れば、というのが見えます。

 

 ●宇野昌磨選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Finlandia Trophy 1 63.00 59.81 53.79 60.59 61.05 66.30
Internationaux de France 8 52.96 61.33 25.79 53.54 48.49 60.62
Rostelecom Cup 4 62.24 62.27 49.90 60.69 58.17 65.63
全日本選手権 1 72.01 65.06 74.62 65.43 70.26 69.92
Challenge Cup 1 71.97 65.99 69.45 68.24 68.84 71.10

偏差値に直すと、ものすごく悪かったフランス杯でも、トータルスコア偏差値50は超えています。まあ、ジャンプGOEが偏差値25.79という、なかなか見ることのない値で、ホントひどかったんだな、というのがわかりますけれど。ちなみに、このフランス杯のじゃんぷのGOEは-21.37というもので、今シーズンの全選手の全演技の中で最低のものでした。基礎点の高いジャンプを飛んだうえで失敗しないと、GOEのマイナスを大きくできないので、宇野選手級の選手があれだけ崩れたことによって生まれたスコアです。

 

トータルスコア、ちゃんと滑れば偏差値70に乗ります。上にいるのは、統計上の異常値レベルの選手二人だけしかいませんので。

ジャンプは基礎点、GOE共に、ちゃんと滑った時は60後半まで出ます。出来が良ければGOEは偏差値70超えるのでしょう。シーズンベストはチャレンジカップのスコアですが、本当にすべてが揃えばもっと上が出せるはずの選手。

スピンステップもちゃんと滑ると偏差値60台後半。70にはなかなか乗らないんですかね。

 

宇野昌磨スケート偏差値

レーダーチャートで表すと、フランス杯がすごいことになってますが、それは横に置くと、全体のバランスが割と取れたチャートになっています。上二人はジャンプのGOEが突出したチャートになってますので、もう一段階上がるにはそこが求められるわけです。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
全日本選手権 1 4F   11.00   3.93 14.93 3.111
全日本選手権 2 4T+2T   10.80   2.85 13.65 2.778
全日本選手権 3 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.444
全日本選手権 4 3A   8.80 X 3.20 12.00 3.556
全日本選手権 5 CSSp4   3.00   0.86 3.86 2.444
全日本選手権 6 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 2.778
全日本選手権 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.000
全日本選手権   TES   44.20   14.58 58.78  

 

ショートプログラムの最高基礎点は全日本の44.20でした。今シーズンはちゃんとまとめたと言えるショートは全日本だけでしたでしょうか。国際大会ではフィンランディア杯の42.08が最高で、それくらいの値だと、男子としては割と平凡、という値だったりします。

全日本はこの基礎点で105.71まで出していますが、構成的にはもっと上が普通にあります。コンビネーションの後ろを3Tに出来れば基礎点が2.9上がります。そうすると基礎点は47.10になる。その基礎点になれば、上にいるのは四回転ルッツ組だけになってきますし、全日本は単純計算で108.61まで出たことになる。

ノーミス構成だと宇野選手はショート110点が狙える、つまり、羽生選手、ネイサンチェン選手と、ほぼ並んだスコアでフリーに進むことができる、ということがわかります。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Challenge Cup 1 4S   9.70   2.91 12.61 3.143
Challenge Cup 2 4F   11.00   2.86 13.86 2.571
Challenge Cup 3 4T< 7.60   -2.43 5.17 -3.286
Challenge Cup 4 3A   8.00   3.04 11.04 3.857
Challenge Cup 5 FCSp4   3.20   0.83 4.03 2.571
Challenge Cup 6 4T+2T   11.88 x 2.66 14.54 2.714
Challenge Cup 7 3S   4.73 x 1.29 6.02 2.857
Challenge Cup 8 3A+1Eu+3F   15.18 x 2.40 17.58 3.000
Challenge Cup 9 StSq3   3.30   1.45 4.75 4.143
Challenge Cup 10 FCCoSp4   3.50   1.12 4.62 3.143
Challenge Cup 11 ChSq1   3.00   2.10 5.10 4.000
Challenge Cup 12 CCoSp4   3.50   1.68 5.18 4.571
Challenge Cup   TES   84.59   19.91 104.50  

フリーの最高基礎点は84.59 これは今シーズン6位の構成です。

この構成で198.70まで宇野選手は出したのですが、これ、どう見ても全然ノーミスではありません。

まず、四回転トーループが回転不足。次にステップがレベル3 その上で、コンビネーションが二つしかありません。

本当にやりたかった構成は、3Sの後ろに3Tだと思いますので、その場合基礎点は7.12上がるので91.71となります。この段階で、上にいるのはあの二人だけ、となります。

宇野選手は、コンビネーションをすべて1.1倍のところに入れる、という構成を今シーズンは組もうとしていたようです。また、これまでもコンビネーションを後ろに法にまとめる傾向があります。そのためなのか、結果的にコンビネーションが二つしか入りませんでした、となる試合が多い。ここが解消できると、もう5点くらいは普通に上がってきます。

 

また、上記の構成もそうなのですが、今シーズン、宇野選手は一度もルッツジャンプを飛んでいません。四回転の、ではなく、三回転も含めてルッツジャンプが一つもない。昨シーズンもそうでした。練習中に四回転ルッツを飛んだ、という報道はあったりしますが、試合でのルッツは三回転のものでも久しく見ていません。

今の構成であれば、3Sのところはルッツに組み替え可能です。それをしない、というのは、あまり得意ではないんだな、というのの表れかと思います

何となくですが、山田先生の系譜のチームは、ルッツを好まない選手が多いかなあ、と感じています。

 

●平均GOE+3.200以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Challenge Cup FS 12 CCoSp4   3.50   1.68 5.18 4.571
Challenge Cup FS 9 StSq3   3.30   1.45 4.75 4.143
Finlandia Trophy SP 7 StSq2   2.60   1.04 3.64 4.000
Challenge Cup SP 7 StSq4   3.90   1.64 5.54 4.000
Challenge Cup FS 11 ChSq1   3.00   2.10 5.10 4.000
全日本選手権 SP 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.000
Finlandia Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   1.34 4.84 3.875
Challenge Cup FS 4 3A   8.00   3.04 11.04 3.857
Finlandia Trophy FS 11 ChSq1   3.00   1.83 4.83 3.750
Japan Open FS 12 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.556
Rostelecom Cup FS 2 3A   8.00   2.74 10.74 3.556
全日本選手権 SP 4 3A   8.80 X 3.20 12.00 3.556
Rostelecom Cup SP 6 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Rostelecom Cup SP 7 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.444
Finlandia Trophy FS 9 StSq4   3.90   1.37 5.27 3.375
Internationaux de France SP 7 StSq2   2.60   0.85 3.45 3.333
Japan Open FS 9 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
全日本選手権 FS 9 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.222

評価の高い要素はスピンのうちのCCoSpすなわち、チェンジフットコンビネーションスピンと、ステップ系要素が並びます。また、ジャンプの中ではトリプルアクセルが入ってきます。

今シーズン、全体的に出来が良くなかったこともあって、上記のリストは+3.200まで含まれる、この水準の選手からするといくらか甘い基準なのですが、ジャンプで入ってきているのは単独のトリプルアクセルだけ。この辺が、上二人と差があることの表れかな、とも感じます。

 

●四回転のフリップとサルコウ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Japan Open FS 2 4F   11.00   -1.10 9.90 -0.889
Finlandia Trophy SP 1 4F   11.00   -0.18 10.82 0.000
Finlandia Trophy FS 2 4F   11.00   2.57 13.57 2.500
Internationaux de France SP 1 4F   11.00   2.36 13.36 2.222
Internationaux de France FS 1 4S< 7.76   -3.44 4.32 -4.333
Internationaux de France FS 2 4F   11.00   -4.71 6.29 -4.222
Rostelecom Cup SP 1 4F< 8.80   -4.40 4.40 -5.000
Rostelecom Cup FS 1 4S   9.70   -4.85 4.85 -5.000
Challenge Cup SP 1 4F   11.00   3.30 14.30 3.000
Challenge Cup FS 1 4S   9.70   2.91 12.61 3.143
Challenge Cup FS 2 4F   11.00   2.86 13.86 2.571
全日本選手権 SP 1 4F   11.00   3.93 14.93 3.111
全日本選手権 FS 1 4F   11.00   1.57 12.57 1.222

四回転フリップと言えば宇野昌磨選手。

今シーズン不調ながらも、10回飛んで回転不足は1度だけ。GOEマイナスはそれも含めて3回ありますが、7回はGOEがマイナスにならない成功ジャンプです。一番信頼できるジャンプかもしれません。

サルコウは3回飛んで回転不足1、転倒も2で成功ジャンプは一度だけです。まだ、あまり計算できるジャンプではありません。

 

●四回転トーループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Japan Open FS 6 4T   9.50   -4.75 4.75 -5.000
Finlandia Trophy SP 2 4T+2T   10.80   2.69 13.49 2.875
Finlandia Trophy FS 6 4T   9.50   -4.59 4.91 -4.750
Internationaux de France SP 2 4T+COMBO   9.50   -4.75 4.75 -5.000
Internationaux de France FS 3 4T+2T   10.80   2.71 13.51 2.667
Internationaux de France FS 6 4T   9.50   -4.75 4.75 -5.000
Rostelecom Cup SP 2 4T+2T   10.80   2.44 13.24 2.556
Rostelecom Cup FS 5 4T   9.50   2.04 11.54 2.111
Rostelecom Cup FS 11 4T<+REP 5.85 x -3.80 2.05 -5.000
Challenge Cup SP 2 4T<+COMBO 7.60   -3.80 3.80 -5.000
Challenge Cup FS 3 4T< 7.60   -2.43 5.17 -3.286
Challenge Cup FS 6 4T+2T   11.88 x 2.66 14.54 2.714
全日本選手権 SP 2 4T+2T   10.80   2.85 13.65 2.778
全日本選手権 FS 2 4T   9.50   0.95 10.45 1.111
全日本選手権 FS 6 4T+2T   10.80   2.99 13.79 2.889

四回転トーループが昨シーズンまでと比べて確率が著しく下がったのが、今シーズン目立ちます。

15回飛んで3回回転不足、転倒が6 GOEプラスの成功ジャンプは8回で、成功率5割程度しかありません。トーループは宇野選手の中で、それほど難易度が高くないという認識なのか、ショートもフリーも最初のジャンプとはなっておらず2番目以降、フリーでは後半に入ってくることもあります。フリップは冒頭に飛ぶことが多いのに対し、トーループはそれより後の方に来ることから、体力的あるいは集中力的に不利になり、成功率が上がりにくい、という要素はあります

とは言え、これが決まってこないと苦しい。

ほぼ復活したと思われるチャレンジカップでも、ショート転倒のフリーも一つ目は回転不足と、しっかり決まっていません。来シーズン、300点超えて2強と勝負、ということを考えた時に、キーになる要素かもしれません。

 

●単独のトリプルアクセル

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Japan Open FS 3 3A   8.00   1.03 9.03 1.222
Finlandia Trophy SP 4 3A   8.80 x -0.27 8.53 -0.125
Finlandia Trophy FS 3 3A   8.00   2.40 10.40 3.125
Internationaux de France SP 4 3A   8.80 x -4.00 4.80 -5.000
Internationaux de France FS 4 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.000
Internationaux de France FS 8 3A<<+REP <<  2.54 x -1.65 0.89 -5.000
Rostelecom Cup SP 4 3A   8.80 x 2.51 11.31 3.111
Rostelecom Cup FS 2 3A   8.00   2.74 10.74 3.556
Challenge Cup SP 4 3A   8.80 x 1.44 10.24 1.857
Challenge Cup FS 4 3A   8.00   3.04 11.04 3.857
全日本選手権 SP 4 3A   8.80 X 3.20 12.00 3.556
全日本選手権 FS 3 3A   8.00   1.26 9.26 1.333

単独のトリプルアクセルは、基本的には成功率高く入りました。

転倒が3回ありますが、すべてあのフランス杯のものです。それ以外はフィンランディア杯でGOEマイナスがありますが、あとはGOEプラスの成功ジャンプでした。

問題なく跳べるジャンプで、あとはどれだけ加点を稼げるか、ということになるんだと思われます。

 

●3連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Japan Open FS 8 3A+1Eu+3F   15.18 X 2.63 17.81 3.111
Finlandia Trophy FS 8 3A+1Eu<<+1F <<  9.35 x -2.40 6.95 -3.000
Rostelecom Cup FS 7 3A+1Eu+3F< 14.01 x -0.46 13.55 -0.667
Challenge Cup FS 8 3A+1Eu+3F   15.18 x 2.40 17.58 3.000
全日本選手権 FS 8 3A+1Eu+1F   9.90 X 0.69 10.59 0.778

3連続ジャンプはトリプルアクセルからで最後がフリップという変わり種。フリップが余っているわけでもなく、トリプルサルコウからのコンビネーションを飛んでいますから、そちらをフリップにして、三連続の最後をサルコウにする方が本来自然です。それをあえてフリップにしているのは、よほどフリップが得意というのがあるのでしょう。ただし、最後がフリップでもサルコウでもGOEの基準幅は変わらないのに対し、3S-3Tが3F-3Tになると、GOEが+1毎に上がる点数は3F-3Tの方が高くなるので、実は計算上不利なことをしています。

この三連続、トリプルアクセルまではしっかり決まっているのですが、最後のフリップがいまいち決まりません。

しっかり決まったのは5回中2回。このジャンプ一つで一番いい時と悪い時で11点ほど差が出ているので、一つカギになる要素です。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Japan Open FS 9 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
Japan Open FS 11 ChSq1   3.00   1.57 4.57 3.111
Finlandia Trophy SP 7 StSq2   2.60   1.04 3.64 4.000
Finlandia Trophy FS 9 StSq4   3.90   1.37 5.27 3.375
Finlandia Trophy FS 11 ChSq1   3.00   1.83 4.83 3.750
Internationaux de France SP 7 StSq2   2.60   0.85 3.45 3.333
Internationaux de France FS 9 StSq2   2.60   0.67 3.27 2.444
Internationaux de France FS 11 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.667
Rostelecom Cup SP 7 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.444
Rostelecom Cup FS 8 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
Rostelecom Cup FS 10 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.556
Challenge Cup SP 7 StSq4   3.90   1.64 5.54 4.000
Challenge Cup FS 9 StSq3   3.30   1.45 4.75 4.143
Challenge Cup FS 11 ChSq1   3.00   2.10 5.10 4.000
全日本選手権 SP 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.000
全日本選手権 FS 9 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.222
全日本選手権 FS 11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.000

ステップ、コレオも評価が高い要素ではあるのですが、目につくのはステップのレベル2あるいは3  案外ステップレベル4が取れていません。GOEは高く+4.000もよくあるのですが、レベルは2だったりする。レベル2のGOE+4は3.64点 レベル4ならGOE+0でも3.90点。GOEよりレベルの方が圧倒的に重要です。

コレオシークエンスは一番高くて4.000 要素順としてはコレオの方がステップより後の構成ですが、ステップとコレオとどちらが高評価かというのは試合によります。この辺、あとの要素だけ高い、という選手が結構いるのですが、宇野選手はこのあたりのバランスが取れています。

 

 

スピンはレベル4率81.8% トップ選手としては低め。ただ、ロステレコム杯では6つ中5つがレベル4になり、全日本とチャレンジカップではショートフリーオールレベル4でした。スピンの名手ランビエール先生の指導を直接受けるようになり、ちゃんと安定してレベル4が取れるようになったようです。

なお、昨シーズンもレベル4率は80%台前半でしたので、シーズン前半の不振の影響だけでなく、元々、安定してレベル4は取れていませんでした。

 

 

今シーズン紆余曲折あった宇野選手。これで世界選手権に勝ったらドラマチックだったのですが、世界選手権は中止。ただ、全日本で羽生選手に勝ったというだけでも十分ドラマチックではありました。

この不振シーズンに羽生選手との直接対決で初勝利。それが国内大会だったのがいいのか悪いのか何ともわかりませんが、次は世界の舞台で勝ちたい。

ジュニアのタイトルは獲った、四大陸も獲った。あとはグランプリファイナル、世界選手権、オリンピックという三つ。頂点三つ。この三つすべて2位は持っているので、あとは頂点大会の頂点だけです。

 

たぶん、そういうところまで来ていたので、山田先生は自分のところを離れるように言ったのかな、とも思いました。山田先生は、世界選手権までは獲っていますが、オリンピックは二位までです。足りないものは何か? そんなことはわかりませんけれど、その位置まで来た宇野選手、そして、世界で勝ちたいと思った宇野選手に対して、与えられるものは、自分達とは違う世界にある、そう思った、思われたのかな、ということを思いました。

 

その外の世界が、コーチ無し、という選択なのはかなりの予想外でしたが、半年の紆余曲折を経てランビエール先生のところに落ち着きました。その成否はまだよくわかりません。結局のところ北京オリンピックが終わったところで問われることなのかなと思います。

 

今シーズン、コーチだけでなく、振付も樋口先生を離れたのは初めてでした。

ショートプログラム Great Splitはたぶん名作。ただ、成功したのが全日本だけなので、宇野選手レベルの選手が代表作というにはちょっと弱い。世界の舞台で成功して初めて代表作と言えると思うので、できれば来シーズンも持ち越しでやってもらえたらと思います。ただ、これまで2シーズンプログラムを続けたことないので、どうですかね。

 

来シーズンはランビエール先生門下生としての実質的一年目として迎えます。

2強プラス1の1ではなく、3強として横並びで称されるくらいの活躍が見られたら良いなと思います。