21-22 ユヨン

2004年5月27日生まれ

シニア3シーズン目

シーズン獲得賞金:$32,000

世界ランキング:4位

シーズンランキング:5位

シーズンベストスコア 216.97 (14位) スケートアメリカ

ショートプログラムシーズンベスト 72.08 世界選手権

フリーシーズンベスト 146.24 スケートアメリカ

ショートプログラム楽曲:The Leftovers より

フリープログラム楽曲:レミゼラブルより

スピンレベル4率 38/48=79.2%

ステップレベル4率 9/16=56.3%

スピンオールレベル4 2/7

スピンステップオールレベル4  2/7

ジャンプ要素回転不足率 21/80=26.3%

ジャンプ回転不足なし 1/8

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/8

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC Cranberry Cup 2 182.88 59.74 123.14
CS Autumn Classic 2 180.25 60.66 119.59
GP Skate America 3 216.97 70.73 146.24
GP NHK Trophy 3 203.60 68.08 135.52
NC Korean Championships 1 221.49 76.55 144.94
4CC Four Continents 6 198.56 67.86 130.70
OG Olympic Games 6 213.09 70.34 142.75
WC World Championships 5 204.91 72.08 132.83

今シーズンは8月から試合に出てきました。シーズン開幕戦、クランベリーカップでは182.88で2位。2位はいいとして180点台前半? と心配な初戦でした。まあ8月だしな、とは思いましたが、9月のオータムクラシックも180.25にとどまります。韓国の代表争いは結構厳しい。180点そこそこでは代表になれません。大丈夫なのか? という心配を払しょくしたのがグランプリシリーズ、スケートアメリカでした。ショートではトリプルアクセル転倒ながら70点台に乗せ、フリーではトリプルアクセルを着氷。課題の回転不足もqまでに留め146.24と140点台後半までスコアを出し、トータル216.97 表彰台に上ります。210点台半ばまで出せれば、韓国の代表争いも十分リードできます。

NHK杯はそれほどスコアを伸ばせませんでしたがそれでも3位表彰台。グランプリ2戦で表彰台にのり、代表争いをリードしてナショナル選手権へ向かいます。

韓国選手権は楽な試合ではありませんでしたが、それでも貫禄を見せて220点台に乗せて5回目の優勝。オリンピック代表に選出されます。

意外だったのがその次、間一週で四大陸選手権に出場してきました。ここでは200点に届かないスコアで6位。ナショナルとオリンピックの間、一度調子が落ちる時期、としては妥当な結果かと思いますが、わざわざ出なくてもよかったんじゃないか、と思う試合でした。

オリンピックは、今回は韓国は団体戦無し。個人戦のみの出場になります。ショートプログラムトリプルアクセルがダウングレードになりながらも70点には乗せて6位スタート。フリーは回転不足ではありながらもトリプルアクセルも着氷し、140点台に乗せて総合6位入賞を果たします。

世界選手権は表彰台チャンス。ショートではトリプルアクセルを封印し確実に72.08 シーズンベストで4位で折り返します。フリーで投入したトリプルアクセルは回転不足からのステップアウト。そこまではまだ織り込み済みかと思いますが、3つ目のループが1回転に、最後のフリップが回転不足の転倒。トリプルアクセル以外ノーミスなら3位表彰台まであったのですが、結局5位に終わりました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Cranberry Cup 2 182.88 96.07 89.81 64.86 -5.24 22.89 13.56
Autumn Classic 2 180.25 90.33 90.92 63.76 -8.16 22.01 12.72
Skate America 3 216.97 116.11 101.86 76.08 1.74 23.72 14.57
NHK Trophy 3 203.60 105.14 100.46 71.12 -1.71 23.10 12.63
Korean Championships 1 221.49 119.45 102.04 74.48 8.19 23.05 13.73
Four Continents 6 198.56 103.00 97.56 61.14 5.59 23.19 13.08
Olympic Games 6 213.09 110.96 102.13 68.86 3.15 24.50 14.45
World Championships 5 204.91 103.74 102.17 63.29 0.42 25.13 14.90

技術点はシーズン序盤2試合は90点台ですがスケートアメリカでは110点台後半まで出ました。PCSは100点前後まで。5項目平均8.5あたりにいます。

ジャンプの基礎点はスケートアメリカで76.08まで出ました。これは今シーズンはロシア勢以外はトップの基礎点になります。

ジャンプの加点はナショナル選手権以外だと4位大陸の8.19が最高。マイナスの試合も目立ちます。ここがおそらくもう少し欲しいところだったかと思います。

スピンは23点台が多いですがオリンピックで24点台、世界選手権で25点台に乗せました。スピンではレベルの取りこぼしが目立ったのですが、オリンピックと世界選手権の2試合だけはショートフリー通じてスピンステップオールレベル4 でした。集中力が違うのでしょうか。

ステップは世界選手権の14.90が最高。ステップが得意な選手ともそれほど遜色ないスコアです。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Cranberry Cup 2 56.30 60.77 43.59 56.95 60.54 56.43
Autumn Classic 2 55.59 59.95 38.68 54.21 57.19 57.17
Skate America 3 65.55 69.15 55.31 59.53 64.56 64.46
NHK Trophy 3 61.93 65.44 49.51 57.60 56.83 63.53
Korean Championships 1 66.78 67.95 66.14 57.45 61.21 64.58
Four Continents 6 60.56 57.99 61.77 57.88 58.63 61.60
Olympic Games 6 64.50 63.75 57.67 61.96 64.08 64.64
World Championships 5 62.28 59.60 53.09 63.92 65.87 64.67

偏差値で見ると、スケートアメリカでトータルスコアが60台後半まで出ました。そのスケートアメリカのジャンプの基礎点は偏差値70近いです。一方で、回転不足などがかさむと偏差値60に満たない水準になることもあります。

ジャンプの加点は4大陸で偏差値60台に乗っていますが、ほかの国際試合は50台、あるいは50を切ることもあります。

スピンはオリンピック、世界選手権で偏差値60台に乗せてきました。ステップも偏差値60台半ばまで来ています。PCSは60台前半で、オリンピック、世界選手権で64まで出しています。

トリプルアクセルのイメージの強いユヨン選手ですが、オリンピック、世界選手権ではジャンプよりもほかの要素の偏差値の方が高い、という結果になってきています。

21-22シーズン ユヨン要素別偏差値レーダーチャートレーダーチャートこういう形です。右下が凹みがち。ただ、スピンステップも常に高いわけでもなくそちらが凹んでいることもあります。すべての要素がよかった試合、というのがなかったとも言えるでしょうか。

 

●シーズン最高の基礎点構成

スケートアメリカ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -4.00 4.00 -4.889
2 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
3 FCSp4   3.20   0.73 3.93 2.222
4 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.111
5 3F   5.83 x 1.06 6.89 1.889
6 StSq4   3.90   1.06 4.96 2.778
7 CCoSp3   3.00   0.90 3.90 3.000
  TES   36.73   2.29 39.02  

スケートアメリカで36.73という基礎点を出しました。スピンのレベル3がありますが、これがレベル4に出来ていれば37.23まであります。その上はコンビネーションを1.1倍にすると37.71まで上がります。ユヨン選手より上の基礎点は、この37.23と37.71を出した4人しかいませんでした。

 

スケートアメリカ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Aq q 8.00   -0.91 7.09 -1.111
2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.222
3 3Lo   4.90   1.33 6.23 2.667
4 2A   3.30   0.90 4.20 2.667
5 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.444
6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.556
7 LSp3   2.40   0.69 3.09 2.889
8 2A+3Tq q 8.25 x -0.72 7.53 -1.778
9 3F! ! 5.83 x 0.45 6.28 0.778
10 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
12 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
  TES   68.45   8.64 77.09  

フリーもスケートアメリカで最高基礎点を出しています。68.45はロシア勢以外では今シーズン最高の基礎点です。ロシア勢でもシニアではこの上は5人だけでした。

2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。3連続では3回転のサルコウを入れています。レイバックスピンのレベルを4にすればあと0.3基礎点は上がりますが、それ以上は、トリプルアクセル2本目を持ってくることが求められそうです。ただ、トリプルアクセル2本目を持ってくると、セカンドトーループを1つ2回転にしないといけないので、思ったほど基礎点は伸びず、+1.8ほどにしかなりません。それでも基礎点70点に乗ってきます。

 

○平均GOE3.200以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate America FS 12 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
World Championships SP 1 2A   3.30   1.23 4.53 3.667
Skate America FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.556
World Championships SP 4 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
World Championships SP 6 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
Skate America FS 11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
World Championships SP 7 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Cranberry Cup FS 11 ChSq1   3.00   1.83 4.83 3.400
World Championships FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.333
World Championships FS 11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.333
World Championships FS 12 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
NHK Trophy SP 7 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
NHK Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.222
Olympic Games FS 11 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.222
World Championships SP 3 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.222
Cranberry Cup FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.77 13.54 3.200

ユヨン選手はジャンプ、スピン、ステップ、それぞれ平均GOEで+3を超える評価を得ています。1つの試合で全部が揃わないのですが、どの要素もうまくいけば高い評価を得られる、という形です。

不思議なもので、ジャンプで高評価が目立つのが3連続ジャンプ。単独ジャンプの方が高い評価を得やすそうなものですが、後半の、それもサルコウ付きの3連続で高評価を得て得点源としています。

 

トリプルアクセルを含む要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Cranberry Cup FS 1 3Aq   8.00   -4.00 4.00 -5.000
Cranberry Cup FS 2 3A<+2T 7.70   -0.85 6.85 -1.000
Autumn Classic SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Autumn Classic FS 1 3A< 6.40   -2.43 3.97 -3.714
Autumn Classic FS 2 3A<<+2T <<  4.60   -1.12 3.48 -3.429
Skate America SP 1 3A   8.00   -4.00 4.00 -4.889
Skate America FS 1 3Aq q 8.00   -0.91 7.09 -1.111
NHK Trophy SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
NHK Trophy FS 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Korean Championships SP 1 3A   8.00   1.12 9.12 1.286
Korean Championships FS 1 3A< 6.40   -0.64 5.76 -1.000
Four Continents FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000
Olympic Games SP 1 3A<< <<  3.30   -0.99 2.31 -3.000
Olympic Games FS 1 3A< 6.40   -1.10 5.30 -1.556
World Championships FS 1 3A< 6.40   -1.65 4.75 -2.556

トリプルアクセルを今シーズンは毎試合毎試合試みました。結果的に基礎点が8.00しっかり入ったのは16回のうち4回。その4回のうち着氷できたのは2回です。アンダーローテーションが8回で半分あり、そのうち4回は転倒です。アンダーローテーションでも立てればダブルアクセル比で損はない、とすると、たった4回分は要素としては成功ではないものの、スコア獲得作戦としては成功だったと捉えられそうです。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Autumn Classic SP 4 3Lzq+3T< 10.19 x -1.65 8.54 -2.714
Skate America SP 2 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
Skate America FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.222
NHK Trophy SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.17 9.93 -0.333
NHK Trophy FS 2 3Lz+3T< 9.26   -0.42 8.84 -0.778
Korean Championships SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.24 9.86 -0.571
Korean Championships FS 2 3Lz+3T   10.10   1.30 11.40 2.286
Four Continents SP 2 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
Four Continents FS 2 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.778
Olympic Games SP 2 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.667
Olympic Games FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.222
World Championships SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   0.25 10.35 0.444
World Championships FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   0.42 10.52 0.667

3回転-3回転がシーズン前半は今一つでしたが中盤以降は加点がもらえることが多くなりました。オリンピックフリーはややマイナスですが、それでも大崩れなくスコアを取っています。シーズン通じて3-3の転倒がありませんでした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.77 13.54 3.200
Autumn Classic FS 6 3Lzq+1Eu+3S q 11.77 x -0.12 11.65 -0.286
Skate America FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.556
NHK Trophy FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 X 1.69 13.46 2.889
Korean Championships FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.42 13.19 2.286
Four Continents FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.77 13.54 3.000
Olympic Games FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.60 13.37 2.556
World Championships FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.333

3連続ジャンプは高評価です。オータムクラシックだけよくなかったですが、他は平均GOEで+2以上、多くは+3を超える評価でした。3回転2つ入った3連続で+3.000以上を並べているのは他にワリエワ選手くらいです。質の高い3連続でした。

 

濱田組エース状態になって2シーズン目。今シーズンはすべての試合で上位に顔を出しました。ただ、すべての試合で、ちょっと惜しい、という結果だったように感じます。代名詞のトリプルアクセル。これがことごとく決まりませんでした。

シニア3シーズン目。シェルバコワ選手たちエテリ組3人とシニア同期です。韓国勢の選手寿命は、長いか短いか、いまいちまだわかりませんが、ロシア勢よりは少なくとも長いでしょうから、高校3年生にあたる来シーズンはまだ普通に顔を出してくることでしょう。

世界で一番女子にトリプルアクセルを飛ばせるノウハウが集まる場所。そこで練習を積んで、トリプルアクセルを取り戻せば、ほかのジャンプは揃っているのでコンスタントにトップ争いに顔を出せるのではないかと思います。

 

 

 

 

21-22 ルナヘンドリックス

1999年11月5日生まれ

シニア6シーズン目

シーズン獲得賞金:$65,000

世界ランキング:8位

シーズンランキング:6位

シーズンベストスコア 219.05(11位) グランプリトリノ

ショートプログラムシーズンベスト 76.25 ヨーロッパ選手権

フリーシーズンベスト 145.53 グランプリトリノ

ショートプログラム楽曲:カルーソ

フリープログラム楽曲:The Mystic's Dream

スピンレベル4率 40/42=95.3%

ステップレベル4率 13/14=92.9%

スピンオールレベル4 5/7

スピンステップオールレベル4  5/7

ジャンプ要素回転不足率 4/70=5.71%

ジャンプ回転不足なし 3/7

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/7

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Finlandia Trophy 4 212.07 68.82 143.25
GP Grand Prix Torino 3 219.05 73.52 145.53
NC Belgian Championships 1 221.04 71.49 149.55
GP Rostelecom Cup 5 203.69 64.44 139.25
EC Europe Championships 4 207.97 76.25 131.72
OG Olympic Games 8 206.79 70.09 136.70
WC World Championships 2 217.70 75.00 142.70

今シーズンはシニア6年目。すっかりベテラン扱いな立ち位置で上位の選手の中ではただ一人の1990年代の生まれの選手となっています。

シーズン初戦はフィンランディア杯。チャレンジャーシリーズにも関わらず異様なハイレベルの試合で200点台が7人いたなかで212点出しながらロシア勢の後塵を拝して4位でした。続いてグランプリシリーズ。トリノではシーズンベストとなる219.05を出して3位表彰台。ランキングの低さやケガなどもあってグランプリシリーズには縁が薄かったのですが、これで初表彰台となりました。ファイナルを賭けたロステレコム杯は5位に終わります。その間にベルギー選手権を軽く勝っておきました。

当然代表には選ばれてシーズン後半のチャンピオンシップ3つ。ヨーロッパ選手権ではショート2位でロシア勢の一角を崩すか! と期待されたのですがフリーは伸びずに4位に終わります。

オリンピックではショートでジャンプがクリーンに決まらず7位スタート。第3グループに入ったフリーはサルコウが1回転になるという痛いミスもあって結局総合8位。ロシア勢の一角を崩す可能性のある選手、として期待されたのですが結局入賞ラインで終わりました。

シーズン最後の世界選手権。事前にケガ情報が入っていたのであまり期待感はなかったのですが、今度はショートから素晴らしい出来で2位スタート。フリーの4分足が持つか? という心配の中の演技は大きなミスなくまとめベルギー勢初の世界選手権2位表彰台となりました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Finlandia Trophy 4 212.07 109.30 102.77 62.17 5.45 25.98 15.70
Grand Prix Torino 3 219.05 115.26 103.79 63.01 12.60 24.98 14.67
Belgian Championships 1 221.04 113.78 108.26 63.44 8.02 26.27 16.05
Rostelecom Cup 5 203.69 101.24 102.45 57.80 3.17 25.16 15.11
Europe Championships 4 207.97 105.93 104.04 61.26 3.51 25.48 15.68
Olympic Games 8 206.79 102.28 104.51 58.72 3.08 25.44 15.04
World Championships 2 217.70 111.18 106.52 62.17 7.25 26.09 15.67

今シーズンは国際大会には6試合登場。技術点は100点ちょっとに落ち込むこともありますがいい時は110点台半ばまで出ます。PCSはもっと出る印象ですが国際大会では106.52の世界選手権が最高というのはちょっと意外。基本は100点台前半にとどまります。ただ106.52まで出ればロシア勢除けば2番目、ロシア勢入れても6番目という高い評価になっています。

ジャンプの基礎点は60点前後で一番良くてグランプリトリノの63.01 これは極めて平凡と言えるスコアです。ジャンプの難易度で稼ぐ選手ではありません。

ジャンプの加点は全試合でプラスでした。グランプリトリノの12.60は全体9位にあたるスコアです。

スピンは25点台から26点台まで出ます。世界選手権の26.09が最高で全体7位にあたります。

ステップ系要素はフィンランディア杯の15.70が最高。全体4番目にあたる高いスコアです。

どの要素もオリンピックの時は低めでしたが、世界選手権は本人比でシーズン最高か2番目あたりのスコアになっていて、ケガがあったことで逆にいい形で結果を出せた形になっていました。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Finlandia Trophy 4 64.22 58.76 61.54 66.57 69.05 65.07
Grand Prix Torino 3 66.12 59.39 73.54 63.46 64.95 65.75
Belgian Championships 1 66.66 59.71 65.85 67.47 70.45 68.73
Rostelecom Cup 5 61.95 55.50 57.71 64.02 66.71 64.86
Europe Championships 4 63.11 58.08 58.28 65.01 68.98 65.92
Olympic Games 8 62.79 56.18 57.56 64.89 66.43 66.23
World Championships 2 65.75 58.76 64.56 66.91 68.94 67.57

偏差値で見るとトータルスコアは60台前半から中盤あたりになります。

ジャンプの基礎点は偏差値60に届きません。上位選手の中では平凡な構成ということになります。加点の方はいい出来の時には偏差値70を超えていきます。これが毎試合出るようになると強いです。

スピンは60台半ば、ステップ系要素は60台後半です。ステップは得意ということになるかと思います。

PCSは60台半ばから後半。TESよりPCSの方が偏差値高めではありますが、極端にPCSに寄っているというほどではないです。

ヘンドリックス要素別偏差値レーダーチャート

偏差値をレーダーチャートで見るとこんな形になります。左側に膨らむ形。出来のいい時は右下も伸びます。青のオリンピックのラインが全体的に内側に寄ってしまっているのは残念な構図です。オレンジのグランプリトリノの時はジャンプの出来は良かったのですが、スピンステップPCSはそれほど高い評価をもらえなかったようでした。世界選手権の赤いラインが、右上こそ凹んでいるものの、バランスよく全体うまくいったという形なようです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

ヨーロッパ選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
2 2A   3.30   0.90 4.20 2.667
3 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
4 3F   5.83 x 1.51 7.34 2.778
5 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.778
6 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.333
  TES   32.53   9.12 41.65  

ショートの基礎点最高は32.53でした。セカンド3回転を入れて1.1倍を単独フリップにするとこうなります。割とよくあるパターンです。トリプルアクセル組とは少し差がありますが、トリプルアクセル無しでセカンドループも無しの最高が33.01ですので、そことはほとんど差がなく出来栄え勝負という位置づけになります。

 

ロステレコム杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   -0.76 9.34 -1.111
2 3Lo< 3.92   -0.78 3.14 -2.000
3 3F   5.30   1.36 6.66 2.556
4 2A   3.30   0.80 4.10 2.333
5 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.222
6 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
7 3Lz+2T   7.92 x 1.10 9.02 1.889
8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.61 9.74 1.222
9 3S   4.73 x 0.61 5.34 1.333
10 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.667
11 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.444
12 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
  TES   61.00   9.22 70.22  

フリーの最高基礎点は61.00でした。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。苦手のループも入れて基礎点を高めることを狙いましたが回転不足で基礎点から削られる形となっています。通常時はトリプルループではなくダブルアクセルを入れていて基礎点は60.38になります。トリプルアクセル無しでも基礎点63点台までは出ますので、本来はその辺まで出したいわけですが、高難度ジャンプの無い相手ならこれくらいの基礎点でも出来栄え差で十分に逆転できます。実際、世界選手権は59.54の基礎点ながらフリーの順位も2位で逃げ切りました。

 

○平均GOE4.000以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Olympic Games FS 10 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
Finlandia Trophy FS 10 LSp4   2.70   1.22 3.92 4.500
Belgian Championships FS 5 CCoSp4   3.50   1.52 5.02 4.400
Europe Championships SP 7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.333
Belgian Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.52 5.02 4.200
Belgian Championships SP 6 StSq4   3.90   1.69 5.59 4.200
Finlandia Trophy SP 6 StSq4   3.90   1.63 5.53 4.125
Finlandia Trophy FS 6 StSq4   3.90   1.69 5.59 4.125
Europe Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
Olympic Games FS 11 ChSq1   3.00   2.07 5.07 4.111
World Championships FS 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Finlandia Trophy SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Belgian Championships FS 11 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Europe Championships FS 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000

ヘンドリックス選手はやはりスピンステップで評価の高い選手です。平均GOEが+4.000以上の評価を受けた要素が多数あります。スピンではレイバックスピン、ついで足替えのコンビネーションスピンで高評価。足替えのコンビネーションスピンはレベル4で基礎点3.5あり、高いGOEがつくとスピン一つで5点入っています。

ステップも評価が高い選手です。世界選手権でも+4.111の高評価を得ました。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 1 3Lz+3T< 9.26   -2.85 6.41 -4.750
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.67 11.77 3.000
Grand Prix Torino SP 1 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.778
Grand Prix Torino FS 1 3Lz+3T   10.10   1.94 12.04 3.222
Belgian Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
Belgian Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   2.16 12.26 3.600
Rostelecom Cup SP 1 3Lz+3T   10.10   -0.34 9.76 -0.556
Rostelecom Cup FS 1 3Lz+3T   10.10   -0.76 9.34 -1.111
Europe Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
Europe Championships FS 1 3Lz!+3T ! 10.10   -2.95 7.15 -4.889
Olympic Games SP 1 3Lz+3T   10.10   0.67 10.77 1.111
Olympic Games FS 1 3Lz!q+3T ! 10.10   -1.18 8.92 -2.000
World Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   0.76 10.86 1.111
World Championships FS 1 3Lz+3T< 9.26   -0.34 8.92 -0.667

3回転-3回転はショートフリーの冒頭にルッツから入れています。GOEがプラスになったのは8/14 ベルギー選手権除くと6/12で5割ほどです。ショートフリー両方で3-3をしっかり決める、という試合がなかなかありません。それができると安定して220点が見えてきそうな気もします。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.88 10.01 1.750
Grand Prix Torino FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.14 10.27 2.222
Belgian Championships FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.06 10.19 2.200
Rostelecom Cup FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.61 9.74 1.222
Europe Championships FS 9 3S+2T+2Lo   8.03 x -0.61 7.42 -1.222
Olympic Games FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.91 10.04 1.778
World Championships FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.83 9.96 1.667

3連続ジャンプはフリップ起点で2回転を2つ付ける形が基本です。ヨーロッパ選手権では転倒があってリカバリーでサルコウ起点の3連続になりました。

3連続は3-3より成功率が高く、7試合で6回GOEプラスをもらっています。

 

18歳の時点で200点まで到達していたので、ロシア勢に対抗できるヨーロッパ勢が出てきた、という期待感があったのですが、その後ケガで苦しんで今一つ伸びてきませんでした。グランプリシリーズも今シーズン初表彰台どころか、実はまだ今シーズンが2試合目3試合目でした。力があってもツキがないというか怪我無く滑ることが出来ずになかなかトップで活躍できませんでしたが、今シーズンは、また怪我か、の後の世界選手権でついに2位表彰台までたどり着きました。

高難度ジャンプがないのでロシア勢と戦うのはちょっと苦しいのですが、それでも、フィギュアスケートってそれだけじゃない、というのを見せてくれる選手だと思います。ロシア以外のヨーロッパ勢というのは割と現役を長く続ける傾向があるように感じます。まだ22歳。もう一回くらいはオリンピックも出てくるでしょうか。

来シーズンはヨーロッパ選手権を勝つチャンス? グランプリシリーズでも日本勢の良きライバルとして活躍を期待しています。

 

21-22 アリサリュウ

2005年8月8日生まれ

シニア1シーズン目

シーズン獲得賞金:$38,000

世界ランキング:6位

シーズンランキング:2位

シーズンベストスコア 219.24(10位) ロンバルディア

ショートプログラムシーズンベスト 74.31 ロンバルディア

フリーシーズンベスト 144.93 ロンバルディア

ショートプログラム楽曲:ジプシーダンス

フリープログラム楽曲:バイオリン協奏曲

スピンレベル4率 42/45=93.3%

ステップレベル4率 10/15=66.7%

スピンオールレベル4 5/7

スピンステップオールレベル4  1/7

ジャンプ要素回転不足率 14/73=19.2%

ジャンプ回転不足なし 1/7

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/7

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC Cranberry Cup 1 205.74 71.42 134.32
CS Lombardia Trophy 1 219.24 74.31 144.93
CS Nebelhorn Trophy 1 207.40 70.86 136.54
GP Skate Canada 5 206.53 73.63 132.90
GP NHK Trophy 4 202.90 67.72 135.18
NC US Championships   71.42 71.42  
OG Olympic Games 7 208.95 69.50 139.45
WC World Championships 3 211.19 71.91 139.28

今シーズンシニアデビュー。8月のクランベリーカップから出てきました。まずは200点台に乗せ、やはり有力な代表候補だな、という姿を見せてくれました。9月に2戦。ロンバルディア杯が結果的にシーズンベストとなりました。219.24 これがシーズンベスト全体100位にあたるスコアになりました。当然チャレンジャーシリーズ初優勝となります。続いてネーベルホルン杯。これはアメリカ3枠目確保のための重要な試合。その役割を課せられますが、特に問題なくこれも優勝。しっかりと3枠目を取ってきました。

グランプリ2戦は少し伸びなかったでしょうか。200点台半ばで210点にまでは届かないスコアで5位と4位。表彰台に届きませんでした。8月9月に一度ピークを持ってきて10月11月に一度調子を落としてシーズン後半に盛り上げていく、ということであればいいのですが、いまいち伸びてないなあ、と言った感じでした。

そして新年あけて問題の全米選手権。ブレイディテネル選手が欠場となって、これでアメリカは3人ほぼ決まりかな、という雰囲気でした。ショートは3位で折り返し。順番はわからないけどやっぱり3人ね、と思っていたらここでまさかのコロナ離脱。心配されましたがそれまでの実績もあり、4番手以下も伸びなかったことで無事に代表に選出されました。

そんな形の代表選出だったこともあってか、オリンピックでは団体戦の出場は無し。個人戦のみの出場となります。ショートはダブルアクセルで確実にいって8位スタート。フリーはトリプルアクセル投入で逆転を狙いましたがダウングレード扱いとなりスコアが伸びず結局7位に終わりました。

世界選手権では表彰台を狙う立場として登場。ショートはやはりダブルアクセルで確実にいき、今度は全要素全ジャッジプラス評価となり5位で折り返します。フリーのトリプルアクセルは今度はアンダーローテーションで踏みとどまります。コンビネーションをすべて1.1倍に入れる構成で追い上げトータル211.19 演技を終えた時点でトップに立ち、最終的に3位に残ってワールドの表彰台に立ちました。

いい形でシニアデビューシーズンを終え、来シーズン以降、割と先週寿命の長いアメリカで、2度目、3度目のオリンピックを目指すものと思っていたのですが、スターズオンアイスで日本滞在中に、まさかの、インスタで引退宣言。かなり驚き、残念ではありますが、しかたないのでしょうか。聡明そうですので、今後のご活躍を期待します。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Cranberry Cup 1 205.74 110.80 95.94 66.11 5.46 25.24 13.99
Lombardia Trophy 1 219.24 116.88 102.36 68.29 8.51 25.05 15.03
Nebelhorn Trophy 1 207.40 108.64 98.76 63.91 4.58 25.16 14.99
Skate Canada 5 206.53 106.91 100.62 68.07 -0.82 25.86 13.80
NHK Trophy 4 202.90 104.04 99.86 72.35 -6.82 25.07 13.44
US Championships   71.42 39.71 32.71 22.81 -0.18 11.95 5.13
Olympic Games 7 208.95 108.80 100.15 65.64 4.72 24.26 14.18
World Championships 3 211.19 111.74 99.45 68.83 5.96 24.75 12.20

今シーズンは国際大会7試合に出場しました。技術点は110点前後。ロンバルディア杯で116点台まで出していますがこれが最高でした。PCSは100点前後。これもロンバルディア杯の102.36が最高値。もう2,3シーズン続けてればこれがコンスタントに108点前後まで伸びて行ったと思うのですけどね。100点程度だと上位で戦うにはやや弱いです。

ジャンプの基礎点はオリンピックで65.64世界選手権では68.83でした。トリプルアクセル持ちですが、今シーズンはしっかり決められなかったことで、思ったほどは伸ばせなかったようです。基礎点的にはNHK杯の72.35もありますが、しっかりきまらず基礎点活かしきれなかったです。

ジャンプの加点はロンバルディア杯の8.51が最高。トリプルアクセルを構成に入れて決めきれない、となると加点合計もあまり伸びてきません。NHK杯のように大きなマイナスになってしまうこともあります。当然ですがジャンプの出来で全体が大きく左右されています。

スピンは25点前後・スケートカナダの25.86が最高。これくらい来ると上位の方に来ます。

ステップはロンバルディア杯の15.03が最高。15に乗ってくると 上位選手としてカウントされるくらいの位置です。ただ、世界選手権の12.20は、上位2人、坂本選手、ヘンドリックス選手とかなりの差が付けられています。

 

○要素別偏差値

Event Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Cranberry Cup 62.51 61.70 61.55 64.27 62.25 60.52
Lombardia Trophy 66.17 63.33 66.67 63.67 66.39 64.80
Nebelhorn Trophy 62.96 60.06 60.08 64.02 66.23 62.40
Skate Canada 62.72 63.16 51.01 66.20 61.49 63.64
NHK Trophy 61.74 66.36 40.93 63.74 60.06 63.13
Olympic Games 63.38 61.35 60.31 61.21 63.00 63.32
World Championships 63.99 63.73 62.39 62.74 55.12 62.86

トータルスコアは偏差値60台。ロンバルディア杯では偏差値60後半まで伸びました。通常時は60台前半くらいです。

ジャンプの基礎点も60台前半。そこに60台のジャンプの加点が入ればいいのですが、出来が悪いと偏差値50あるいは40台になってしまいます。

スピンは安定して偏差値60台前半。スケートカナダでは60台後半まで出ました。ステップもいい時は60台後半まで出ます。PCSも60台。これは後半までは出ませんでした。

全体的に偏差値60台前半、いい時は後半まで出る、ということで、バランスよくどの要素もある程度高い水準にある、ということのようです。

 

アリサリュウ選手の要素別偏差値レーダーチャート

偏差値をレーダーチャートで見るとこんな形になります。NHK杯スケートカナダのようにジャンプで苦しむといびつな形になりますが、そうではない場合、特にオリンピックなんかでは全体がバランスの取れた形になっています。バランスよく穴がないところにトリプルアクセルを乗せてノーミスで滑る、といったところを見てみたかったのですが、それはもう叶わぬ夢なようです。

 

 

●シーズン最高の基礎点構成

スケートカナダ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A< 6.40   -1.10 5.30 -1.778
2 3F! ! 5.30   0.15 5.45 0.222
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.111
4 3Lz+3T   11.11 x 1.10 12.21 1.889
5 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
6 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
  TES   36.11   4.29 40.40  

ショートの基礎点最高は36.11でした。トリプルアクセル投入でアンダーローテーションが入っています。3-3が1.1倍に入っているのも大きい。トリプルアクセルの回転が足りていればショートでこれ以上の基礎点はない、という構成になります。この時は回転不足で基礎点削られていますが、着氷していてGOEもわずかなマイナスでしたので、ダブルアクセルでは稼ぐことのできない5.30を得ており、トリプルアクセル投入の価値があった、という形でした。

36.11は今シーズン8位、ロシア勢以外では5位の高い基礎点です。

 

NHK杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Aq q 8.00   -1.14 6.86 -1.333
2 3S   4.30   0.80 5.10 1.889
3 3Lo   4.90   0.98 5.88 1.889
4 2A+3Tq q 7.50   -0.36 7.14 -0.889
5 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.889
7 3Lzq+1Eu+3F< 11.70 X -1.94 9.76 -3.333
8 3Lz   6.49 X 0.59 7.08 1.000
9 3F!q+2Aq+SEQ ! 7.57 X -1.82 5.75 -3.000
10 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111
11 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
12 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
  TES   66.46   2.14 68.60  

NHK杯トリプルアクセルをqで基礎点満額もらって着氷したこともあり、合計の基礎点が最高となりました。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。3連続で3つ目にフリップを入れセカンド3回転は1つで、余るダブルアクセルをシークエンスで使っています。ステップレベル4取れれば基礎点は67.06と67点台に乗ります。66.46としてロシア勢以外では今シーズン4位の高い基礎点です。

 

○平均GOE3.600以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate Canada FS 12 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.444
US Championships SP 7 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.333
Nebelhorn Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.222
Cranberry Cup FS 12 LSp4   2.70   1.17 3.87 4.200
Skate Canada SP 7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
NHK Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
Lombardia Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
NHK Trophy SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Olympic Games SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Nebelhorn Trophy SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 3.889
Lombardia Trophy SP 7 LSp3   2.40   0.91 3.31 3.857
Olympic Games FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.778
Skate Canada FS 11 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667

アリサリュウ選手が高い評価を受ける要素はスピンでした。ショートフリーそれぞれ最後の要素であるレイバックスピン。最高評価はスケートカナダの+4.444でした。基本的に+4以上をもらう、というのがアリサリュウ選手のレイバックスピンです。

 

トリプルアクセルを含む要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
NHK Trophy FS 1 3Aq q 8.00   -1.14 6.86 -1.333
World Championships FS 1 3A< 6.40   -0.64 5.76 -0.889
Lombardia Trophy FS 1 3A< 6.40   -0.77 5.63 -1.286
Skate Canada SP 1 3A< 6.40   -1.10 5.30 -1.778
NHK Trophy SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
US Championships SP 1 3A< F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Olympic Games FS 1 3A<< <<  3.30   -1.08 2.22 -3.333
Cranberry Cup FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000
Skate Canada FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000

今シーズンアリサリュウ選手は4回転の実戦投入はありませんでした。トリプルアクセルを毎試合試みてきたのですが、これが結局うまくいかなかった・・。基礎点満額もらえたのが結局NHK杯のフリーのみです。他は主要大会ではほとんどアンダーローテーションで基礎点8割、オリンピックではダウングレード扱いです。アンダーローテーションで着氷、くらいまで行けばダブルアクセルより点が出るのですが、アンダーローテーションで転倒、あるいはダウングレードとなると飛び損になります。ダブルアクセル比でおつりが来たのは結局4回という結果になりました。もう少し決めたいところだったと思います。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup SP 4 3Lz+3T   11.11 x 0.98 12.09 1.600
Cranberry Cup FS 7 3Lz+3Tq   11.11 x -0.39 10.72 -0.600
Lombardia Trophy SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.53 12.64 2.571
Lombardia Trophy FS 7 3Lz+3T< 10.19 x -0.71 9.48 -1.286
Nebelhorn Trophy SP 4 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.08 11.03 -0.222
Nebelhorn Trophy FS 7 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.25 10.86 -0.222
Skate Canada SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.10 12.21 1.889
Skate Canada FS 8 3Lz+3T< 10.19 x -1.10 9.09 -1.778
NHK Trophy SP 4 3Lzq+3T< 10.19 X -2.02 8.17 -3.444
US Championships SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.43 12.54 2.556
Olympic Games SP 4 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.34 10.77 -0.667
Olympic Games FS 6 3Lz+3T   10.10   1.10 11.20 1.889
World Championships SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.18 12.29 1.889
World Championships FS 6 3Lz+3T< 10.19 x -1.01 9.18 -1.556

アリサリュウ選手は3回転3回転を後半1.1倍ボーナスに入れてくる構成です。着氷率は高く転倒はしないのですが加点を稼ぐところまではなかなかいかないという形になっています。また、ルッツは常に回転十分ですがセカンドのトーループの回転が微妙、ということが多いです。

また、これだけルッツを並べても!は一つも付きません。アリサリュウ選手はフリップの方がやや苦手でルッツの方はきれいに飛ぶことが出来ています。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup FS 4 2A+1Eu+3S   8.10   0.86 8.96 2.000
Lombardia Trophy FS 4 2A+1Eu+3S   8.10   1.12 9.22 2.571
Nebelhorn Trophy FS 4 2A+1Eu+3S   8.10   0.86 8.96 2.000
Skate Canada FS 7 3Lz+1Eu+3F< 11.70 x -0.67 11.03 -1.222
NHK Trophy FS 7 3Lzq+1Eu+3F< 11.70 X -1.94 9.76 -3.333
Olympic Games FS 7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.667
World Championships FS 7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.778

3連続ジャンプをシーズン序盤は前半にダブルアクセル起点で入れていたのですが、グランプリシリーズからは1.1倍にルッツ起点で入れる形に難度を上げました。ただ、グランプリシリーズでは3つめにフリップを入れたものの回転不足になるということで、オリンピック、世界選手権ではサルコウに変えて見事に成功しています。この3連続ジャンプの入れ方のシーズン中の変遷は、最終的にうまくいったいい試行錯誤だったんだなあ、というのが見て取れます。

 

今シーズンシニアデビュー。そして、まさかの引退。いやあ、引退するかあ・・・。

これからの選手だと思ったんですけどね・確かにジュニアどころかノービスの時代から全米選手権で優勝したりしてますので、キャリア的には十分なのかもしれませんが、ロシアと違ってアメリカならこれからも長くトップに居続けることができたのではないか、と思うので残念です。今季のプログラムはショートのジプシーダンスにフリーのバイオリン協奏曲。本人の雰囲気にあっていてとてもよかったと思いました。この先こういった明るい、元気な、というイメージに合ったプログラムだけでなく、しっとりとしたタイプのものを演じていくような云云かんぬんと期待していたいのですが、引退宣言・・・。

いやあ、引退かあ・・・。

仕方ないんでしょうけど、まだ16歳。高校2年生相当。大学受験に向けて部活を引退、にしてもまだ早いみたいな時期です。将来設計とかあるんですかね、いろいろと。

とにかく残念なのですが、見送るしかないのでしょうきっと。おつかれさまでした。

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21-22 坂本花織

2000年4月9日生まれ

シニア5シーズン目

シーズン獲得賞金:$85,000

世界ランキング:3位

シーズンランキング:3位

シーズンベストスコア 236.09(4位) 世界選手権

ショートプログラムシーズンベスト 80.32 世界選手権

フリーシーズンベスト 155.57 世界選手権

ショートプログラム楽曲:グラディエーター より

フリープログラム楽曲:「Woman」より No More Fight Left In Me/Tris

スピンレベル4率 45/57=78.9% (国際試合:30/33= 90.9%)

ステップレベル4率 15/19=78.9% (国際試合:9/11=81.8%)

スピンオールレベル4 3/8 (国際試合2/5)

スピンステップオールレベル4  2/8(国際試合1/5)

ジャンプ要素回転不足率 1/101=0.99% (国際試合:1/57=1.75%)

ジャンプ回転不足なし 7/8(国際試合4/5)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 2/8(国際試合2/5)

 

○21-22シーズン試合結果

Grade Event Pl Total SP FS
DL げんさんサマーカップ 1 217.24 73.74 143.50
Others Japan Open 4 133.26   133.26
RT 近畿選手権 1 192.14 72.02 120.12
CS Asian Open Figure 2 202.28 76.70 125.58
GP Skate America 4 215.93 71.16 144.77
GP NHK Trophy 1 223.34 76.56 146.78
NC 全日本選手権 1 234.06 79.23 154.83
CC 日本学生氷上選手権 1 156.73   156.73
OG OlympicGames Team 2 148.66   148.66
OG Olympic Games 3 233.13 79.84 153.29
WC World Championships 1 236.09 80.32 155.77

今シーズンは素晴らしいシーズンになりました。

坂本花織選手の21-22シーズンは8月のげんさんサマーカップで始まります。怪我の状態がよくない紀平梨花選手を除くと日本の上位選手がほとんど集まった試合でしたが、217.24で圧勝。強さを見せつけます。10月に入って本格シーズンインなのですが、ここで少し心配な姿を見せました。ジャパンオープン、日本人6人のみの試合になりましたがここでまさかの6人中4位。翌週近畿選手権ではフリーで大崩れして200点に届かず。翌週に国際大会アジアンオープンフィギュアに飛んでまたフリーで大崩れ、200点にはのせましたが三原舞依選手に敗れ2位となります。このころは、フリー全然わからない、難しい、と言い続けていたように記憶しています。

少し光が見えたのが10月4連戦の最後となるスケートアメリカ。ショートでコンビネーションにミスが出たものの課題のフリーで大きなミスなく140点台に乗せてきます。細かいミスがなければ表彰台に乗ることができたという点では残念でしたが国内の選考会は問題なく通過できそうというのがこのあたりで見えました。

11月に入ってNHK杯。トゥルソワ選手欠場など波乱のあった試合でしたがショートフリーで目立ったミスなく220点台に乗せグランプリ実質初優勝。非ロシア勢としてただ一人のファイナル進出を決めます。ただ、ファイナルはコロナオミクロン株により中止となりました。

代表選考では圧倒的に有利な立場で臨んだ全日本選手権。ここでも圧倒的強さを見せ圧勝。国内参考記録ながら230点台まで持ってきました。

そしてオリンピック。団体戦は滑る前にほぼ順位が確定していましたがフリーで滑って銅メダルに貢献します。そして個人戦。ショートはPCSでついに平均9点台に乗せ3位スタート。フリーもノーミスで150点に乗せ233.13 いろいろなことがあったオリンピックですが、結果的にロシア勢を押しのけて銅メダルに輝くことになりました。

さらにいろいろなことがあっての世界選手権。本命という立場で臨むことになりましたが、そのプレッシャーをものともせず236.09までスコアを伸ばし圧勝。世界タイトルを手に入れました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
げんさんサマーカップ 217.24 114.43 102.81 64.98 13.66 23.08 12.71
Japan Open 133.26 65.04 69.22 41.00 6.24 8.38 9.42
近畿選手権 192.14 93.00 100.14 55.50 5.19 18.31 14.00
Asian Open Figure 202.28 100.53 102.75 54.84 7.63 23.41 14.65
Skate America 215.93 111.06 104.87 61.42 12.61 22.54 14.49
NHK Trophy 223.34 115.71 107.63 65.27 10.79 25.29 14.36
全日本選手権 234.06 123.01 111.05 65.27 16.76 25.26 15.72
日本学生氷上選手権 156.73 81.26 75.47 44.19 12.94 13.04 11.09
OlympicGames Team 148.66 76.93 71.73 45.62 9.12 13.14 9.05
Olympic Games 233.13 122.12 111.01 65.27 16.38 24.74 15.73

今シーズン、見た目は11試合に出ていますが、JapanOpenと学生選手権はフリーのみの試合、オリンピックもチームイベントはフリーのみ出場ということで、ショートフリーとしっかりそろったのは8試合になります。

国際大会は10月のアジアンオープンフィギュアから。国際大会5戦は順調にスコアを上げて行ったという流れの今シーズンでした。

TESは全日本以降123点前後の点が入っています。これはロシア勢以外ではトップのスコアです。PCSはオリンピックで110点に乗せ、世界選手権では112.74まで伸ばしました。今シーズン2位の高い評価です。

ジャンプの基礎点は65.27という試合が何度も見られます。これは本人比で最高の構成を基礎点が削られることなくなんどもこなしたということの証左です。ただ65.27というのはそれほど高いスコアでもなく、ロシア勢以外でも多数の選手がこれより上の基礎点を持っています。評価が高いのはジャンプの加点の方。オリンピックでは16.38まで稼ぎました。これより上はワリエワ選手とオリンピックのシェルバコワ選手だけです。

スピンは25点台までは何度も出していて最高は世界選手権の25.85 これは全体で10位のスコアになります。

ステップ系要素は世界選手権では16.15という高い評価を得ました。今シーズンではこれはフィンランディア杯のワリエワ選手の16.16に次ぐ2番目のスコア。主要大会だけで見ればトップです。非常に高い評価を得ました。

 

○要素別偏差値

Event Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
げんさんサマーカップ 65.63 60.86 75.32 57.54 57.15 65.10
近畿選手権 58.82 53.78 61.10 42.69 62.29 63.32
Asian Open Figure 61.57 53.29 65.20 58.57 64.88 65.06
Skate America 65.27 58.20 73.56 55.86 64.24 66.47
NHK Trophy 67.28 61.07 70.50 64.42 63.72 68.31
全日本選手権 70.19 61.07 80.53 64.33 69.13 70.59
Olympic Games 69.94 61.07 79.89 62.71 69.17 70.57
World Championships 70.74 61.07 79.38 66.17 70.85 71.72

偏差値で並べるとこういった形になります。フリーのみの試合は除外してあります。

トータルスコアは最後の世界選手権で偏差値70超えとなりました。フリーで大崩れしたアジアンオープンフィギュアで61.57と60を少し超えた程度になります。

それと比べるとジャンプの基礎点は61.07と低めの水準です。やはりジャンプの基礎点はそれほど高い評価にはなりません。一方で加点の方はコンスタントに偏差値70超え。オリンピックでは79.89と偏差値80近い驚異的な領域に達しました。

スピンはシーズン序盤はそこまで頭が回らなかったのか偏差値50台でしたがNHK杯以降は60台半ばまで出しています。

ステップ系要素は世界選手権で偏差値70超え、PCSも70を超える高い水準にまで来ています。

 

21-22シーズン 坂本花織要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートで表すとこんな形に。右上が凹んで右下が伸びる形。伸ばすとしたらジャンプの基礎点。それはつまり高難度ジャンプの投入、ということになるでしょうか。

全日本、オリンピック、世界選手権の3試合は、チャートがほとんど重なる形になっています。強いて言えばスピンにばらつきがあるでしょうか。ジャンプ、ステップ、PCS、安定して高い評価を得ていたことがわかります。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○世界選手権ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.65 4.95 4.889
2 3Lz   5.90   1.69 7.59 2.889
3 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
5 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.222
6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
  TES   32.95   10.30 43.25  

ショートプログラムの基礎点最高32.95でした。コンビネーションを後半に入れて基礎点を稼ぎ、また、苦手だったルッツも攻勢に入れることで基礎点を伸ばしてきました。スピンステップは当然すべてレベル4でこのスコアになります。

これ以上基礎点から上げるには、セカンドループという手に出るか、トリプルアクセル投入ということになります。

 

○世界選手権フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.60 4.90 4.667
2 3Lz! ! 5.90   1.10 7.00 1.889
3 3F+2T   6.60   1.74 8.34 3.333
4 3S   4.30   1.47 5.77 3.444
5 FSSp4   3.00   0.94 3.94 3.111
6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333
7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556
8 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
9 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
11 3Lo   5.39 x 1.47 6.86 3.000
12 FCCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
  TES   62.52   17.58 80.10  

フリーの基礎点は62.52が最高でした。これは割と平凡な基礎点です。ロシア勢以外でもこれより上の基礎点の選手は多数おり、日本人選手でも国際大会で見れば8番目になります。

2本飛ぶジャンプはフリップとトーループ。ルッツは1本構成。ルッツ2本構成にすれば基礎点63点台にはなりますが、それでもそれほど高い構成にはなりません。

それよりもなによりも加点の高さが驚異的、というのが坂本選手です。

 

○平均GOE4.000以上(国際大会+全日本選手権)

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
World Championships SP 1 2A   3.30   1.65 4.95 4.889
World Championships FS 1 2A   3.30   1.60 4.90 4.667
全日本選手権 SP 1 2A   3.30   1.51 4.81 4.556
全日本選手権 FS 1 2A   3.30   1.51 4.81 4.556
Olympic Games SP 1 2A   3.30   1.51 4.81 4.556
NHK Trophy SP 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.444
Olympic Games FS 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.444
Asian Open Figure SP 1 2A   3.30   1.43 4.73 4.375
全日本選手権 FS 6 3F+3T   10.45 X 2.35 12.80 4.333
World Championships SP 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Asian Open Figure FS 1 2A   3.30   1.38 4.68 4.250
全日本選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 2.20 12.65 4.222
全日本選手権 SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.111
全日本選手権 FS 11 3Lo   5.39 X 2.03 7.42 4.111
OlympicGames Team FS 11 3Lo   5.39 x 2.03 7.42 4.111
Olympic Games FS 11 3Lo   5.39 x 2.03 7.42 4.111
World Championships FS 8 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Skate America SP 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
NHK Trophy SP 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.000
World Championships SP 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
World Championships FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000

坂本選手は一つ一つの要素の評価が高いです。特に評価が高いのはショートフリーそれぞれ冒頭に飛ぶダブルアクセル。世界選手権のショートでは満点扱いとなりました。全体的にジャンプで高評価がつきます。フリー最後のトリプルループというのも定評ある要素でしたが今シーズンも高い評価を受けています。ステップ、コレオも平均4.0超えがいくつも見られます。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Asian Open Figure SP 4 3F+3T   10.45 x 1.68 12.13 3.125
Asian Open Figure FS 6 3F+3T   10.45 x 0.97 11.42 1.750
Skate America SP 4 2F+3T   6.60 x 0.54 7.14 1.222
Skate America FS 6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333
NHK Trophy SP 4 3F+3T   10.45 X 1.74 12.19 3.222
NHK Trophy FS 6 3F+3T   10.45 X 2.12 12.57 3.889
全日本選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 2.20 12.65 4.222
全日本選手権 FS 6 3F+3T   10.45 X 2.35 12.80 4.333
OlympicGames Team FS 6 3F+3T   10.45 x 1.67 12.12 3.222
Olympic Games SP 4 3F+3T   10.45 x 2.04 12.49 3.778
Olympic Games FS 6 3F+3T   10.45 x 2.04 12.49 3.778
World Championships SP 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
World Championships FS 6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333

ショートフリーで1回づつ3F+3Tを飛ぶのが坂本選手の構成です。今シーズンはスケートアメリカで1つ目のフリップが2回転になるミスがありましたが、それ以外はすべて成功。それもNHK杯以降では平均GOEが+3.000を超える高い評価を受けています。3回転-3回転をここまで高い評価を受けるのはなかなか難しいです。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Skate America FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111
NHK Trophy FS 7 2A+3Tq+2T q 9.68 X 0.12 9.80 0.333
全日本選手権 FS 7 2A+3T+2T   9.68 X 1.32 11.00 3.111
OlympicGames Team FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.26 10.94 3.000
Olympic Games FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.26 10.94 3.111
World Championships FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556

3連続ジャンプも高評価です。ダブルアクセル起点で比較的難易度は抑えめではありますが、それでもほとんど平均GOEが+3.000を超えています。

 

○平均GOEマイナスの要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Asian Open Figure FS 4 3S< 3.44   -0.97 2.47 -2.750
Asian Open Figure FS 7 2A   3.63 x -1.65 1.98 -4.875

今シーズン通じて国際大会でGOEがマイナスの要素はアジアンオープンフィギュアでの2つのジャンプしかありませんでした。つまり、グランプリシリーズ以上のグレードの試合で、ショートフリー通じてマイナス要素が1つもなかったということになります。驚異的な安定感でした。苦手のルッツも!のオンパレードではありましたが、eは一度もつかず、すべてGOEはプラスを保ちました。

 

今シーズン素晴らしい成果を残した坂本花織選手。シーズン序盤は新しいプログラムに、と言うべきか、ブノアリショーさんのプログラムにというべきか、とにかく苦労していたようですが、それを乗り越えると一気に安定軌道へ乗りました。シーズンが終わって22歳になりました。次のオリンピックは25歳で迎えます。日本の女子では3回オリンピックに出るというのは至難の業。いまだかつて一人もいません。近年では村主章枝さんも安藤美姫さんも、浅田真央さんも3回目には手が届きませんでした。

ロシア勢がいなければ、今の完成度勝負でも十分強いです。これに対抗できるのは復活した紀平梨花選手くらいなもの。しかしながらロシア勢が帰ってきたときに迎え撃つには高難度ジャンプが欲しい、というのが中野先生の考えなようです。中野組の泣き所は、女子で高難度ジャンプを飛ぶ選手がまだいないこと。関大にも名古屋にも、東京にも、トリプルアクセルの女子の手本ができ始めていますが、神戸にはいません。そこがネックかと思いますが、今シーズン神戸に壷井達也選手がやってきました。男子ではありますが、トリプルアクセルはもちろん4回転も装備している選手。これが2年前にトリプルアクセル跳ばせたいと中野先生が言っていたころとの大きな違いかと思います。目の前に男子ではあるけれど参考になるジャンプがある。毎日見ることができる。

来期は高難度ジャンプへの挑戦、復活する?紀平梨花選手との勝負、帰って来るかロシア勢?それがないならファイナルも取って2冠を目指すか? また見どころの多いシーズンとなりそうです。

 

21-22 選手別 凡例

次回から、選手別に21-22シーズンを振り返ってみようと思っています

それにあたって、改めてそれぞれの表記を凡例としてここに並べておきます。

19-20シーズンにもやっていまして、その時と同じ部分が多いですが、多少アレンジされている部分もあるので、一応改めて並べています。各選手のそれぞれを見て、なんだかわからなくなったらここに戻って確認していただけたらと思います

 

シーズン獲得賞金:ISU公式試合で獲得した賞金の総額です。

世界ランキング:ISUの22年5月時点での世界ランキングです

シーズンランキング:ISUの22年5月時点での21-22シーズンのランキングです

シーズンベストスコア:国際試合でのベストスコア。International Competition いわゆる国際B級試合も含めるので、ISUのシーズンベストスコアとは異なります。また、ここで記す順位も同様で、ISUシーズンベストスコア順位とは異なります。

 

スピンレベル4率:出場全試合のスピン要素のうち、レベル4を何回獲ったかの確率です。

ステップレベル4率:スピンと同様にステップでレベル4をどれだけ取ったか?

スピンステップオールレベル4:スピンとステップ、ショートフリー合計8要素ですべてレベル4であった試合がどれだけあったか

ジャンプ回転不足率:ジャンプ要素で回転不足だった割合はどれだけか? ジャンプ要素の数として数えるので、コンビネーションジャンプも要素として1つです。コンビネーションジャンプの中で二つ以上回転不足があっても、回転不足要素数1として数えます。また、3回転のつもりが1回転になった、というような、いわゆる“抜ける”という状態は、1回転で回転が足りている場合は回転不足と数えません。また、ダウングレードは含みますがqは含まないものとします。基礎点から削られたものをカウントしています。

 

ジャンプ回転不足なし試合:ジャンプ要素で上記定義の回転不足が一つもなかった試合の数、割合

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし:そのままの意味で、ショートフリー通じて、スピンとステップがすべてレベル4で、ジャンプに回転不足がなかった試合の数、割合

 

 

以下、試合結果、要素別などを記します

これまでも、あまり説明なく使っていましたが、今回簡単に説明しておきます

 

Grade:大会のグレード GP,CS,JGP・・・など

GP:グランプリシリーズ

CS:チャレンジャーシリーズ

JGP:ジュニアグランプリシリーズ

GPF:グランプリファイナル(中止でしたが)

JGPF:ジュニアグランプリファイナル(これも中止・・)

EC:ヨーロッパ選手権

4CC:四大陸選手権

WJ:世界ジュニア

WC:世界選手権

OG:オリンピック

IC:インターナショナルコンペティション(国際B級大会)

Others:それら以外の国際試合(ユースオリンピックなど ジャパンオープンもここ)

NC:ナショナルチャンピオンシップ(全日本はじめ各国選手権)

NJ:ナショナルジュニア(全日本ジュニア)

NN:ナショナルノービス(全日本ノービス)

RT:地方選手権(中部選手権や西日本選手権など)

DL:国内ローカル大会

CC:日本学生氷上選手権

NG:国民体育大会

IH:インターハイ

IJ:全国中学スケート大会

 

 

Event:大会の名称。国際大会では英語で示します。スペースの関係で省略していることも多いです

 

Pl:その大会の順位

Total:トータルスコア

SP:ショートプログラム

FS:フリープログラム

TSS:トータルセグメントスコア(ショートならショート、フリーならフリーの合計点)

TES:技術点

PCS:演技構成点

 

Jump:ジャンプで得た得点。ショートフリーの合計

J Base:ジャンプの基礎点の合計

J GOE:ジャンプの加点の合計

Spin:スピンで得た得点。ショートフリーの合計

Step:ステップとコレオシークエンスで得た得点。ショートフリーの合計

 

各要素の偏差値:21-22シーズンのグランプリシリーズ、チャレンジャーシリーズ、ヨーロッパ選手権四大陸選手権において、ショートフリーを両方とも滑った選手を母集団として、各要素で平均、標準偏差を計算させ、それを元にして、各選手のそれぞれの要素での偏差値計算をさせたもの。したがって、国際B級試合や国内試合など、偏差値計算用の平均、標準偏差の母集団に含まれないものを計算していることもあり、本来の偏差値の考え方とは少し異なっていることがあります。

 

偏差値欄のJump、Spin

ショートフリー合わせての、ジャンプ、スピン、それぞれで得た得点から上記条件で計算させた偏差値

偏差値欄のStep

ショートフリー合わせてのステップ系要素について得た得点から、上記条件で計算させた偏差値。ステップ系要素とはステップとコレオシークエンスを合わせたもの。ジュニアカテゴリーにはコレオシークエンスがないため、ステップで得たGOEの平均(-5~+5の評価の平均)を、コレオシークエンスでも得るもの、と仮定した補正を加えて計算させています。

偏差値グラフのJamp Base

ショートフリー合わせてのジャンプの基礎点について、上記条件で計算させた偏差値

偏差値グラフのJamp GOE

ショートフリー合わせて、ジャンプで得た加点減点の合計について、上記条件で計算させた偏差値

 

要素別欄のBaseValue:各要素の基礎点。1.1倍時のジャンプは1.1倍された形で表記されます。Baseとさらに略すこともあります。

要素別のElements欄の左側の数字:要素の順番を示します。たまに、13番目の要素とか、あり得ない数字が出ることもありますが、記録上、予定の要素が入らず飛ばされ、予定されていない要素が入った時などに、そういう形になることがあります。

GOE:その要素で得た加点あるいは減点です

Score:基礎点と上記GOEを合わせた得点です

AvGOE:ここには-5~+5で表される各ジャッジの各要素の評価のジャッジ全員の平均を計算したものが記されます。得点計算には、一番高い評価と一番低い評価を切り捨てて通常は計算されますが、ここではそれをせず、全ジャッジの平均を記しています。文中でGOE平均、と記している場合は、こちらのことを指しています。

宮原知子

主な戦績を記します

基本的に国内は全日本レベルの大会のみです。国際大会はチャレンジャーシリーズ以上の格のものを載せてあります。

Season Event Pl Total SP FS
07-08 全日本ノービスB 1 66.03   66.03
08-09 全日本ノービスB 1 63.38   63.38
09-10 全日本ノービスA 4 75.25   75.25
09-10 全日本ジュニア 4 130.99 48.32 82.67
10-11 全日本ノービスA 2 83.96   83.96
10-11 全日本ジュニア 4 140.23 43.74 96.49
11-12 全日本ジュニア 1 172.17 56.76 115.41
11-12 全日本選手権 6 163.85 47.06 116.79
12-13 World Junior 4 157.78 52.97 104.81
12-13 全日本ジュニア 1 172.68 61.31 111.37
12-13 JGP Final 5 157.74 49.60 108.14
12-13 全日本選手権 3 180.55 60.19 120.36
12-13 World Junior 7 147.42 52.16 95.26
13-14 NHK Trophy 5 170.21 58.39 111.82
13-14 Rostelecom Cup 5 165.76 56.57 109.19
13-14 全日本選手権 4 191.58 66.52 125.06
13-14 Four Continents 2 186.53 60.27 126.26
13-14 World Junior 4 177.69 63.57 114.12
14-15 Lombardia Trophy 1 183.90 58.12 125.78
14-15 Skate Canada 3 181.75 60.22 121.53
14-15 NHK Trophy 3 179.02 60.69 118.33
14-15 全日本選手権 1 195.60 64.48 131.12
14-15 Four Continents 2 181.59 64.84 116.75
14-15 World Championships 2 193.60 67.02 126.58
15-16 US International 1 183.64 63.48 120.16
15-16 Skate America 3 188.07 65.12 122.95
15-16 NHK Trophy 1 203.11 69.53 133.58
15-16 Grand Prix Final 2 208.85 68.76 140.09
15-16 全日本選手権 1 212.83 73.24 139.59
15-16 Four Continents 1 214.91 72.48 142.43
15-16 World Championships 5 210.61 70.72 139.89
16-17 US International 1 206.75 70.09 136.66
16-17 Skate Canada 3 192.08 65.24 126.84
16-17 NHK Trophy 2 198.00 64.20 133.80
16-17 Grand Prix Final 2 218.33 74.64 143.69
16-17 全日本選手権 1 214.87 76.49 138.38
17-18 NHK Trophy 5 191.80 65.05 126.75
17-18 Skate America 1 214.03 70.72 143.31
17-18 Grand Prix Final 5 213.49 74.61 138.88
17-18 全日本選手権 1 220.39 73.23 147.16
17-18 Four Continents 3 207.02 71.74 135.28
17-18 Olympic Team SP 4 68.95 68.95  
17-18 Olympic Games 4 222.38 75.94 146.44
17-18 World Championships 3 210.08 74.36 135.72
18-19 US International 1 201.23 67.53 133.70
18-19 Skate America 1 219.71 73.86 145.85
18-19 NHK Trophy 2 219.47 76.08 143.39
18-19 Grand Prix Final 6 201.31 67.52 133.79
18-19 全日本選手権 3 223.34 76.76 146.58
18-19 World Championships 6 215.95 70.60 145.35
19-20 US International 1 204.30 74.16 130.14
19-20 Cup of China 2 211.18 68.91 142.27
19-20 Rostelecom Cup 4 192.42 63.09 129.33
19-20 全日本選手権 4 191.43 70.11 121.32
20-21 全日本選手権 3 209.75 66.48 143.27
20-21 World Championships 19 172.30 59.99 112.31
21-22 Skate America 7 200.51 66.36 134.15
21-22 Grand Prix Torino 5 209.57 70.85 138.72
21-22 全日本選手権 5 206.51 73.76 132.75

濱田先生は、子供のころから覚えが悪い、それを努力で何とかしてきた、と言っていた記憶がありますが、宮原知子さんは子供のころから抜きんでた存在でした。全日本ノービスBで2連覇。これは女子では浅田真央さんと宮原知子さんの2人だけです。全日本ジュニアはノービスからの推薦出場の2回は4位、ジュニアに上がってからは2連覇を果たしました。最初から世代トップの位置にいた、という選手です。

ジュニアグランプリシリーズは載せていませんが、4試合出て表彰台3回で優勝1回。ファイナルにも進出しています。世界ジュニアは3回出て4位7位4位。表彰台には届かず。この3回の優勝者は、リプニツカヤ、ラジオノワ、ラジオノワ。宮原さんはちょうど、ロシアに天才少女が生まれ始めた時代にトップで戦っていた選手、ということになります。宮原知子さんは1998年3月生まれ。ラジオノワさんは99年1月、リプニツカヤさんは98年6月、ポゴリラヤさんが98年4月のそれぞれ生まれ。そういった世代でした。

 

全日本にはジュニア1年目の2011年から出場。ショートで15位と大きく出遅れてのフリー。ほぼノーミスの演技で全体3位。技術点だけなら2位に6点以上の差をつけてトップのスコアで総合6位にまで順位をあげ、鮮烈な全日本デビューを果たします。結局11回出た全日本でこの6位が一番低い順位であり、フリー最終グループに入れなかったのもこの最初の1回だけでした。安定して日本のトップで滑り続けたことの証です。

 

翌12-13シーズン、ジュニアグランプリファイナルに進出し全日本では前シーズンの世界フィギュアで3位表彰台の鈴木明子さんを押しのけて表彰台に上るなど好調に進んだシーズンでしたが、最後の世界ジュニア。ショートではルッツにeがつき、コンビネーション含め3つの3回転すべてがアンダーローテーション。フリーではルッツ2つとフリップにeが付けられ7つ跳んだ3回転ジャンプのうち6つがアンダーローテーション。7位という順位もありますが、それ以上にこの回転不足の判定に、帰国後も体調を崩すくらいに悩み落ち込んだと聞きます。回転不足との戦い、というのが宮原さんの歴史の大きな部分を占めることになっていきます。

 

シニアに上がった13-14シーズンはソチオリンピックを賭けた勝負のシーズン。前年の全日本表彰台ですので有力候補の一人として挑んだシーズンでしたが、13年中には結果を出しきれませんでした。初参戦のグランプリシリーズは2戦とも5位。全日本では191.58とこの時点でのパーソナルベストを出しましたが当時の名古屋3強に届かず惜しくも4位。ソチオリンピックの出場は逃します。このとき15歳。ロシアでは15歳が最強とされますが、日本ではもう少し上の年齢、17から19歳あたりでオリンピックへ出ることが多く、15歳での出場は98年長野オリンピック荒川静香さんまで遡らないとありません。まだ少し早かった、という形でした。

その代わり、と言っていいのか、14年の四大陸選手権に派遣されます。フリーのポエタ。私視点では優勝でしたが、シニアの初チャンピオンシップは2位表彰台となります。そして、翌月ソチオリンピック終了。そこから宮原知子時代が始まります。

 

14,15,16,17 全日本4連覇。ソチオリンピック終了後、平昌オリンピック代表に決まる全日本選手権までの4年間、ショートフリー2本を滑る国内外のすべての試合で対日本人選手無敗。選手層の薄かった20世紀の日本フィギュア界ではありましたが、今世紀に入ってから4年間無敗というのは他にありません。文字通り、一時代を築きました。

 

14-15シーズンは飛躍の年。次の日本のエースは誰か? というのが問われたシーズン。グランプリシリーズ2試合で表彰台に上がります。そして全日本。ショート2位からのフリー最終滑走。本郷理華カルメンvs宮原知子ミスサイゴン。当時話題になりました濱田組伝家の宝刀、1.1倍ボーナスのダブルアクセル-トリプルトーループ2発。実はダブルアクセルでアンダーローテーション入っていたのですが、それでも技術点、演技構成点どちらもトップで逆転優勝を果たしました。

シーズン後半四大陸選手権では前年に続いて2位表彰台。そして世界選手権。何とか3枠維持を、と皆で祈っていたらどうしてどうして、ショートを3位で折り返すと、ゴールドワグナー、アメリカ勢がフリーで猛烈な追い上げを見せた後の20番滑走。中盤のルッツで転倒し心配されましたが、今度は2A+3T 2本を回転不足なくきっちり決めてこの時点で首位に立ちます。ミスサイゴンアメリカには負けない。そしてショート2位のラジオノワがスコア伸びず、失礼ながらまさかの銀メダルとなりました。上位選手控室、ソファで戯れるトゥクタミシェワラジオノワ二人を前に、ちょっと居心地悪そうに部活の県大会みたいな雰囲気で座っている宮原知子さんが印象的な試合でした。

 

ワールドメダリストとなっての15-16シーズンは浅田真央カムバックのシーズン。花試合ジャパンオープンではそれこそ浅田真央さんに花を持たせる形になりましたが、本当の直接対決はまずNHK杯で訪れました。復帰戦中国杯トリプルアクセル2本を決めて優勝した浅田真央vsグランプリシリーズ最高位がまだ3位の宮原知子。日本のエースはどちらか? やっぱり日本は浅田真央なのか? そう問われたこの直接対決で初の200点超えで2位以下に20点差をつけて圧勝。グランプリ初優勝で初のファイナル進出を果たします。グランプリファイナルではvs浅田真央2回戦。ここでは208点までスコアを伸ばし2位表彰台。さらに全日本ではただ一人210点にまで乗せ他を寄せ付けず2連覇を果たします。この隔週での3連戦で浅田真央さんに3連勝したところで、宮原知子時代が固まったように見えました。

そして、四大陸選手権初優勝。世界選手権は5位に終わりましたが、世界の宮原知子を印象付けるシーズンでした。

 

オリンピックへ向けて死角なし、という感じで入った16-17シーズンはグランプリファイナルで218点まで出しての2年連続2位、全日本は15点差付けての3連覇。さあ、世界選手権でメドベージェワさんへの挑戦権を持っているのは彼女、と見られている中でケガ、長期離脱に見舞われます。その上オリンピック枠は2に削られ試練が押し寄せます。

 

復帰までにはだいぶ時間がかかりました。濱田コーチは5年後の北京オリンピックを目指しましょうと口にしたと聞きます。9月10月のチャレンジャーシリーズには間に合わず、復帰は11月のNHK杯に。ここでは190点台で5位。まずまずの復帰戦を経て2週間後のスケートアメリカ。この試合で目覚めた二人、ブレイディテネル選手と坂本花織選手、この二人を両脇に従え、214.03のスコアでグランプリシリーズ2勝目を飾ります。この結果、ケガ明けにもかかわらず補欠繰上りながらグランプリファイナルにも進む形になりました。

そんな形で2週間おきの3連戦を経て、さらに2週間後に運命の全日本選手権。ケガ明けからの4連戦というのが心配されましたが、結果的には220.39 ついに220点に乗せて4連覇を果たし、念願のオリンピック代表の椅子に座りました。

夢の舞台平昌オリンピック。ショートはSAYURI、フリーは蝶々夫人。日本代表としてこのシーズンに和のプログラムを合わせてきたのでしょうか。どちらも素晴らしい出来でパーソナルベストを出しますが総合4位。あと一歩メダルには届きませんでした。

そのままの流れで世界選手権に出場。疲れもあったでしょうか、フリーはそれほどいい出来ではなかったですがそれでも3位、2度目のワールド表彰台に上がります。日本女子で世界選手権のメダルを複数手に入れたのは彼女で5人目です。

 

新しい4年が始まり、新しい時代が始まります。平昌オリンピックは、ある意味では日本の宮原知子時代の終焉でもありました。平昌選考会の全日本では2位に坂本花織選手、そして3位にはジュニアから紀平梨花選手が入ってきていました。次の北京オリンピックへ向けて、しばらく紀平梨花選手を筆頭とするこの3人の時代になっていきます。

18-19シーズンはまず初戦、USインターナショナルを楽勝し、スケートアメリカでは前年に続き坂本花織選手を2位に従え優勝。グランプリ3勝目を飾ります。そして帰国。日本のナンバーワンとしてNHK杯に臨むわけですが、ここで出てきたのがシニアのグランプリシリーズデビュー戦の紀平梨花選手でした。この年のNHK杯はトゥクタミシェワ選手を含め3人のハイレベルかつ僅差な歴史に残ると言える大会だったと思います。フリー、名作Beautiful Stormでトリプルアクセル2本を決めこのシーズン全体でも圧倒的最高点となる技術点で猛烈な追い上げを見せた紀平梨花選手を、最終滑走宮原知子ブエノスアイレスの冬で迎え撃つ形。トリプルアクセル2本には勝ち切れず、2位に終わりました。かつての浅田真央さんに勝って日本の女王交代を印象付けたNHK杯を思わせる形でもありました。

グランプリ2戦、優勝と2位で、結果的に最後になるグランプリファイナル進出。3vs3の日露決戦の一翼を担いました。なお、このグランプリファイナルのフリー最後の要素レイバックスピンで、9人の全ジャッジが+5評価を付ける満点評価を得ます。GOEがプラスマイナス5のルールになって以降、世界全体で初の全ジャッジ+5の満点評価を彼女が得ました。

5連覇を賭けた全日本はショートでトップに立ちながらフリーでフリップが2回転になるミスが痛く、結果3位に終わります。この試合も上位がハイレベルかつ僅差で全日本の歴史に残る名勝負でした。勝ったのは坂本花織選手。素直に紀平選手が独走することは許さない日本の層の厚さも垣間見えました。

世界選手権はショートで回転不足が出た出遅れが痛く6位に終わりました。

 

19-20シーズンから下り坂に入ってしまったかな、という印象でした。このシーズンはトゥルソワ、シェルバコワ、コストルナヤ、エテリ3人組がシニアに上がったシーズンです。また、このシーズンからカナダに渡りリーバーケル先生の指導を受けるようになりました。中国杯で2位に入りましたがロステレコム杯では4位でファイナル進出ならず。全日本はジュニアの川畑選手に上へ行かれて4位。6シーズンぶりに表彰台を逃します。それでも世界選手権の代表には選ばれたのですが、今度はコロナで世界選手権が中止に終わります。

翌20-21シーズンはコロナ真っ盛り、グランプリシリーズも地元民のみのローカル試合となりこの時点でカナダ在住だったのですが、スケートカナダは中止。出る試合がないまま全日本に臨むことになります。この試合は3位で表彰台復帰。この時期のいつものメンバー、紀平-坂本-宮原組で世界選手権に進みます。ただ、コロナによる試合感の欠落が響いてしまったでしょうか、この世界選手権では19位。シニアに上がってから見たこともないスコア、見たこともない悪い出来でした。

 

21-22 北京オリンピックシーズン。コロナは続きますが試合は開催されるようになってきました。グランプリ2戦は7位と5位。順位的にはいまいちですが、それでも2戦とも200点超え、2試合目のトリノでは209.57と全日本以前でこのシーズンの日本勢では3位のスコアを出しています。十分に北京オリンピックを狙える位置にいました。

運命の全日本。ショートは回転不足がありつつも4位で折り返します。フリーは結局q2つとアンダーローテーション3つ。回転不足に泣いてトータル206.51 3位表彰台までは3.14差。実績考えれば表彰台に乗っていれば間違いなく代表でしたから、わずかな差、特にルッツで回転不足の転倒が痛かったです。1つのジャンプが運命を分けた形になりました。

 

結果的にこの全日本が現役最後の試合となりました。

2022年3月26日引退表明。

 

○満点評価要素

Season Event     Elements  BaseValue GOE Scores AveGOE
15-16 NHK Trophy FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
15-16 Grand Prix Final FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
15-16 全日本選手権 FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 3.000
15-16 Four Continents FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
15-16 World Championships SP 2 LSp4 2.70 1.50 4.20 3.000
15-16 World Championships FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 3.000
16-17 Skate Canada SP 7 LSp4 2.70 1.50 4.20 3.000
16-17 Grand Prix Final SP 7 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
16-17 全日本選手権 SP 7 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
16-17 全日本選手権 FS 5 StSq4 3.90 2.10 6.00 3.000
16-17 全日本選手権 FS 6 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
17-18 NHK Trophy FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
17-18 Skate America FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
17-18 全日本選手権 FS 10 ChSq1 2.00 2.10 4.10 2.889
17-18 全日本選手権 FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 3.000
17-18 Olympic Games FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
17-18 World Championships FS 12 LSp4 2.70 1.50 4.20 2.889
18-19 NHK Trophy SP 7 LSp4 2.70 1.35 4.05 4.889
18-19 Grand Prix Final FS 12 LSp4 2.70 1.35 4.05 5.000
18-19 全日本選手権 FS 12 LSp4 2.70 1.35 4.05 5.000
20-21 全日本選手権 FS 11 StSq4 3.90 1.95 5.85 4.889

宮原知子さんはGOE±3時代に国際大会で9回、全日本で5回、満点評価を受け、±5時代になってからでも国際大会で2回、全日本で2回、満点評価を受けています。載せていませんがこれらの他にJapan OpenやTeam Challenge Cupでも満点要素はありました。特に定評があるのがレイバックスピン。一時期は満点取るのが普通、くらいの高い評価でした。他に、コレオシークエンス、ステップシークエンスでも全日本で満点があります。満点というのはなかなか出るものではありません。

 

記録よりも記憶に残る選手、という印象が特に現役の後半にはついてきていましたが、実際には記録にもかなり残っている選手でした。一瞬のきらめきもありましたが、それだけでなく、長く日本のトップ、世界の上位で戦い続けた選手。オリンピック選考会に絡んだのは3回。あと1年生まれが早ければソチに、あと1年遅ければ北京に、それぞれ代表に選ばれてオリンピックに2回出ることが出来ていたかもしれない。そう感じさせられましたが、結局は平昌の1回に終わりました。これもめぐりあわせでしょうか。それにしても、この功労者に、団体戦でもいいからオリンピックのメダルを持たせてあげたかった。そう思います。

長い間お疲れさまでした。

 

 

グランプリシリーズ出場16回 歴代15位タイ 日本人歴代4位タイ

グランプリシリーズ優勝3回 歴代17位タイ 日本人歴代3位

グランプリシリーズ表彰台10回 歴代12位タイ 日本人歴代5位タイ

グランプリファイナル出場4回 歴代8位タイ 日本人歴代3位タイ

グランプリファイナル表彰台2回 歴代9位タイ 日本人歴代3位タイ

世界選手権表彰台2回 日本人5人目

全日本4連覇 歴代8人目 今世紀2人目

 

世界ジュニア22

世界選手権より後という異例のスケジュールで、シーズン締めくくりとして世界ジュニア選手権が行われました。正直な感想としては、男女とも日本勢は残念な結果に終わったと思います。

今回はその世界ジュニアの振り返りです。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Ilia MALININ USA 276.11 88.99 187.12
2 Mikhail SHAIDOROV KAZ 234.31 75.14 159.17
3 Tatsuya TSUBOI JPN 233.82 79.15 154.67
4 Wesley CHIU CAN 228.29 81.59 146.70
5 Stephen GOGOLEV CAN 224.49 78.75 145.74
6 Mihhail SELEVKO EST 218.68 81.26 137.42
7 Nikolaj MEMOLA ITA 212.94 71.42 141.52
8 Liam KAPEIKIS USA 210.94 79.83 131.11
9 Naoki ROSSI SUI 206.65 67.61 139.04
10 Andreas NORDEBACK SWE 206.13 76.20 129.93
11 Georgii RESHTENKO CZE 201.76 69.67 132.09
12 Arlet LEVANDI EST 200.10 65.31 134.79
13 Kao MIURA JPN 197.59 60.03 137.56
14 Lucas Tsuyoshi HONDA JPN 196.83 73.01 123.82
15 Raffaele Francesco ZICH ITA 195.34 65.19 130.15
16 Lev VINOKUR ISR 192.11 67.20 124.91
17 Corentin SPINAR FRA 176.24 64.10 112.14
18 Kai KOVAR USA 176.23 57.69 118.54
19 Younghyun CHA KOR 175.63 60.32 115.31
20 Edward APPLEBY GBR 173.96 64.05 109.91
21 Adam HAGARA SVK 172.76 64.72 108.04
22 Konstantin SUPATASHVILI GEO 169.66 59.38 110.28
23 Louis WEISSERT GER 154.75 56.75 98.00
24 Jakub LOFEK POL 151.48 56.54 94.94
25 Semen DANILIANTS ARM 56.34 56.34  
26 Makar SUNTSEV FIN 56.26 56.26  
27 Aleksandr VLASENKO HUN 53.54 53.54  
28 Ali Efe GUNES TUR 52.24 52.24  
29 Euken ALBERDI ESP 51.21 51.21  
30 Francois PITOT FRA 48.98 48.98  
31 Filip KAYMAKCHIEV BUL 47.08 47.08  
32 David SEDEJ SLO 45.48 45.48  
33 Kyrylo MARSAK UKR 44.71 44.71  

男子シングルの優勝はアメリカのマリニン選手でした。本命が本命らしく力を発揮して順当に優勝した、という形でした。276.11はジュニアの過去最高スコアです。

2位は41.80という大差がついてしまいましたがカザフスタンのシャイドロフ選手が入りました。4大陸選手権でも5位に入ったカザフスタン期待の若手。デニステンさんの後継者になれるかどうか。

壷井達也選手が3位表彰台です。19歳、神戸大学2年生になりました。大学2年生が世界ジュニアに出るというのも試合が4月になったことで生じた異例な出来事です。これで来シーズンのグランプリシリーズ1枠を確定させました。来シーズンはおそらくロシアの枠が丸々空くので、2枠もらえる可能性もあります。今大会に出場した日本勢の中で、唯一と言っていいでしょうか、この先につながる重要な試合でこの先につながる結果を残しました。

カナダ勢が4位5位と2人入ったのに対し、日本勢はショートで大崩れした三浦佳生選手が13位、フリーで崩れた本田ルーカス剛史選手が14位。この結果、来期の世界ジュニアの枠が2つになったというだけでなく、来期のジュニアグランプリシリーズの枠が7試合×1人づつ、となってしまいました。ジュニアグランプリシリーズは最大で7試合×2+地元枠1 7試合1人づつだと最大の半分にいきなりなってしまうわけで、世界ジュニアの枠が1つ増える減るよりそちらの方がジュニアの有望選手には影響が大きいと感じます。カナダ勢は220点台。この上まで本田選手、三浦選手が行けばよかったわけで、全く届かない水準ではありません。非常に残念でした。

 

○男子シングル上位15人 要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Ilia MALININ USA 276.11 123.71 100.19 17.30 25.43 9.48
2 Mikhail SHAIDOROV KAZ 234.31 106.92 93.00 7.52 19.93 6.94
3 Tatsuya TSUBOI JPN 233.82 112.53 81.06 9.58 23.38 7.27
4 Wesley CHIU CAN 228.29 113.69 86.59 -3.82 23.81 9.02
5 Stephen GOGOLEV CAN 224.49 112.22 75.85 6.45 21.91 9.06
6 Mihhail SELEVKO EST 218.68 115.17 68.87 3.17 24.23 9.24
7 Nikolaj MEMOLA ITA 212.94 103.98 78.58 1.03 21.69 8.66
8 Liam KAPEIKIS USA 210.94 110.66 67.19 3.40 22.40 8.29
9 Naoki ROSSI SUI 206.65 103.57 73.26 -1.64 23.94 8.52
10 Andreas NORDEBACK SWE 206.13 106.35 74.41 -5.02 21.66 8.73
11 Georgii RESHTENKO CZE 201.76 99.81 79.03 -5.75 20.31 8.36
12 Arlet LEVANDI EST 200.10 110.18 56.61 -0.50 23.55 10.26
13 Kao MIURA JPN 197.59 107.04 73.99 -5.00 16.57 5.99
14 Lucas Tsuyoshi HONDA JPN 196.83 107.81 62.89 -5.62 22.85 8.90
15 Raffaele Francesco ZICH ITA 195.34 98.04 62.75 3.59 21.85 9.11

要素別スコアを見るとマリニン選手の圧勝ぶりがよく見えます。ジャンプの基礎点はただ一人100点超え、ジャンプの加点もただ一人二桁、ここまではイメージ通りですが、スピンも25点台でトップです。ステップだけはかろうじて2位ですがPCSも断トツのトップでした。ただただ強かったです。

壷井選手はジャンプの基礎点で4番目。ジャンプのイメージのある選手ではないですが基礎点を削られたのが3連の最後のサルコウを2回転にした部分くらいで、あとはしっかり滑ったことで基礎点から高いスコアがありつつ、ジャンプの加点はマリニン選手に次ぐ2位です。4回転3本組み込んだシャイドロフ選手にはトータルでわずかに届きませんでしたが、ジュニアレベルとしてはバランスよく点を取っての3位表彰台。シニアで上位に行くには全体的にスコアを上げていく必要はありますが、まずはジュニア最後の試合で結果をだしました。

三浦佳生選手はショートではジャンプのミスがあり出来栄えが大きくマイナス、フリーでは4回転が回転不足や抜けで基礎点から削られました。得意のジャンプで基礎点が全体9位、その上でGOEがマイナスとなっていてフリー進出24人中16位。スピンはショートフリー通じてレベル4無しで24人中24位、ステップもレベル2と3で24人中22位。これではちょっと勝負になりません。

本田ルーカス剛史選手はスピンステップはレベルもある程度取れていたのでまずまずでしたが、ジャンプが4回転の無い構成なうえでトリプルアクセルが1つも決まらず、他の3回転も抜けがあり苦しい試合となりました。

 

○マリニン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lz   11.50   -0.82 10.68 -0.556
2 4T   9.50   2.99 12.49 3.222
3 3A   8.00   1.94 9.94 2.556
4 4S   9.70   2.77 12.47 2.889
5 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 2.889
6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.889
7 4T+1Eu+3S   15.73 x 2.44 18.17 2.667
8 3F+3T   10.45 x 1.06 11.51 2.000
9 3Lz+3T   11.11 x 1.26 12.37 2.000
10 FSSp4   3.00   0.81 3.81 2.556
11 CCoSp3   3.00   1.11 4.11 3.667
  TES   88.79   15.55 104.34  

マリニン選手のフリーは4回転4本構成。コンビネーションはすべて1.1倍に入れて2回転ジャンプがないという構成です。冒頭のルッツこそGOEマイナスがつきましたが他はすべてプラス評価でした。世界選手権ではフリー後半が伸びなかったのですが、世界選手権のショートとこのフリーが揃っていたら優勝まではいかないまでも2位表彰台までは来ていました。世界選手権では2本そろえられなかったわけで、北京オリンピックの代表には自分がふさわしかった、というのが証明できたかは怪しいですが、ミラノオリンピックの代表有力候補、というか金メダル有力候補というのは証明されたと思います。

 

○壷井達也選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Sq q 9.70   0.42 10.12 0.333
2 3A+2T   9.30   1.26 10.56 1.556
3 3A   8.00   2.06 10.06 2.556
4 CSSp3   2.60   0.59 3.19 2.222
5 3Lo   4.90   1.33 6.23 2.667
6 3F+3T   10.45 x 1.36 11.81 2.667
7 3Lz!+1Eu+2S ! 8.47 x -1.35 7.12 -2.333
8 3F   5.83 x 1.06 6.89 2.000
9 FCCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.222
10 StSq2   2.60   0.71 3.31 2.667
11 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.333
  TES   68.85   9.04 77.89  

壺井選手は4回転1本構成。サルコウをqながらしっかり降りました。3連続で3つ目に3回転入れたかったでしょうか。基礎点的にはそれほど高くない構成になっていますが、その中でしっかり結果を出した、という形になりました。中野組スタイル、ということでも、中野組丸一年な壺井選手はまだないでしょうが、この先4回転2種類3本まで持っていけるとグランプリ表彰台が争える選手になっていくんだろうと思います。中野組には男子の有力選手というのがおらず、トリプルアクセルや4回転を目で見て学ぶ機会が女子のトップ2人にとって少なかったと思うので、そういう点でも壺井選手が神戸にいるというのはすごく良いことのような気もします。神戸大学に進んだ選手が4年生終わった時にどんな進路を選ぶのかわかりませんが、ミラノオリンピックは大学院1年生のシーズンという計算になります。まだ上位と構成面でもだいぶ差はありますが、3年かけて追いつくことができるでしょうか?

 

○女子シングル上位24人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Isabeau LEVITO USA 206.55 72.50 134.05
2 Jia SHIN KOR 206.01 69.38 136.63
3 Lindsay THORNGREN USA 199.42 66.14 133.28
4 Ahsun YUN KOR 195.87 66.28 129.59
5 Seoyeong WI KOR 186.72 66.09 120.63
6 Clare SEO USA 182.81 60.61 122.20
7 Kimmy REPOND SUI 177.10 60.82 116.28
8 Rion SUMIYOSHI JPN 174.58 60.62 113.96
9 Niina PETROKINA EST 173.49 65.90 107.59
10 Rinka WATANABE JPN 165.44 59.96 105.48
11 Nina PINZARRONE BEL 161.92 63.67 98.25
12 Linnea CEDER FIN 161.26 56.34 104.92
13 Anna PEZZETTA ITA 160.88 51.75 109.13
14 Lia PEREIRA CAN 158.86 58.69 100.17
15 Noelle STREULI POL 154.78 55.10 99.68
16 Lorine SCHILD FRA 154.57 54.58 99.99
17 Barbora VRANKOVA CZE 145.75 52.89 92.86
18 Emelie LING SWE 145.49 54.56 90.93
19 Mariia SENIUK ISR 144.50 52.20 92.30
20 Julia van DIJK NED 139.76 54.61 85.15
21 Justine MICLETTE CAN 137.34 55.41 81.93
22 Sofia Lexi Jacqueline FRANK PHI 137.00 53.86 83.14
23 Olesya RAY GER 132.32 52.02 80.30
24 Jogaile AGLINSKYTE LTU 129.65 51.76 77.89

女子は米韓勢で上位6位までを占める形となりました。表彰台は米韓で抑えるかな、という可能性は結構感じていましたが、上位6位まで2カ国で占めてしまうのはちょっと予想外でした。日本勢は8位と10位。もう少し上まで行くと思ったのですが残念です。

優勝スコアは206点台。パーソナルベストトップのレビト選手で男女ともアメリカの本命が勝った、という形になりました。2007年3月生まれの15歳。来シーズンはシニアに上がるでしょうか。

2位には韓国のシンジア選手。ジュニアグランプリシリーズでは180点前後のスコアでしたのでここまで出してくるのは驚きでした。フリーノーミス素晴らしい出来。こちらは2008年3月生まれの14歳なので来シーズンもジュニアに残ります。

3位表彰台をアメリカのソーングレン選手が確保。表彰台ラインは199.42 日本勢でも届かないことはないスコアでした。

4位5位も韓国勢で6位はアメリカ。この辺の選手は持てる力を存分に出してこの順位、という形。勝負強いなあという印象です。

問題は7位に入ったスイスのレポンド選手。日本勢は彼女に負けたことで世界ジュニアの国別ランクで4位となり、来シーズンのジュニアグランプリシリーズの枠が7試合×1人となりました。彼女に勝って国別ランク3位なら7試合×2になっていたところ。住吉選手、渡辺選手、いずれもこの177.10というのは問題なく届くはずのスコアでしたので非常に残念です。世界ジュニアの枠は3つで無くて2つでも、多少、国内の争いが厳しくなるな、という程度なのですが、ジュニアグランプリが7試合×2人から7試合×1人なると、ジュニアの上位選手の強化に著しく影響が出ます。ここは何としても7試合×2枠が欲しかった。男子と違って粒ぞろいで層の厚い女子のジュニア。来期は3シーズンぶりにジュニアグランプリに大量派遣できると期待していたのですが、これだと3人を2試合派遣してあと1人を1試合という、4人しか派遣できないという形になりそうです。残念。

 

○女子シングル上位12人 要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Isabeau LEVITO USA 206.55 95.38 67.09 8.86 26.23 9.99
2 Jia SHIN KOR 206.01 91.89 65.70 14.01 25.50 8.91
3 Lindsay THORNGREN USA 199.42 90.00 67.48 6.94 25.73 9.27
4 Ahsun YUN KOR 195.87 86.56 65.70 12.30 21.56 9.75
5 Seoyeong WI KOR 186.72 85.97 64.16 7.87 21.81 8.91
6 Clare SEO USA 182.81 83.49 64.71 2.88 23.33 8.40
7 Kimmy REPOND SUI 177.10 82.27 65.21 0.89 21.63 8.10
8 Rion SUMIYOSHI JPN 174.58 86.13 62.79 -6.84 24.06 9.44
9 Niina PETROKINA EST 173.49 84.49 50.74 8.02 22.41 8.83
10 Rinka WATANABE JPN 165.44 80.61 53.65 1.73 22.67 8.78
11 Nina PINZARRONE BEL 161.92 78.03 59.99 -6.70 23.98 8.62
12 Linnea CEDER FIN 161.26 77.30 55.84 3.78 16.61 7.73

優勝したレビト選手と2位にシンジア選手は0.44差 ジャンプは基礎点がレビト選手の方が上で下が出来栄えはシンジア選手が上でした。スピンステップPCSでレビト選手が上回り最終的に優勝しました。

ジャンプの基礎点はソーングレン選手がトップ。ショートでコンビネーションを1.1倍、フリーではセカンドループ投入で基礎点を稼ぎました。住吉選手は4回転トーループを基礎点満額もらいましたが、ショートでコンビネーションが入らないなど基礎点削られるミスが多くジャンプの基礎点は8位。渡辺倫果選手はトリプルアクセル回転不足があり、他のジャンプも抜けがあったりしてジャンプの基礎点が15位と伸びませんでした。ジャンプで稼ぐタイプの選手としてはちょっとこれだと厳しいです

ジャンプの加点は韓国勢が高く得ていました。トリプルアクセルを入れるユヨン選手はちょっと違いますが、それ以外の韓国女子は総じて正確に要素をこなすことで点を取っていく、というタイプに見えます。

スピンは上位3人が25点越え。25点を超えるとシニアでもトップ選手と並ぶクラスです。24点台に乗せた住吉選手が全体4番目でした。

ステップは9.99でレビト選手がトップ。ただフリーはレベル3でしたし、本人比で見てももう少し欲しかったのではないかと思います。住吉選手は全体3番目。スピンステップP`CSと割と上位にいましたのでジャンプさえしっかり決まれば表彰台争い出来たのですが・・、残念でした。

 

○レビト選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 2A   3.30   0.99 4.29 3.000
2 3T   4.20   1.08 5.28 2.556
3 3Lo   4.90   0.91 5.81 1.889
4 2A   3.30   0.85 4.15 2.556
5 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
6 3F!+3Lo ! 11.22 x 0.38 11.60 0.556
7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 0.93 12.70 1.556
8 3Lz+2T   7.92 x 0.76 8.68 1.222
9 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.444
10 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.667
11 FCCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
  TES   60.11   10.73 70.84  

ショートフリー通じて全要素プラス評価。ただフリーはセカンドループでGOE-1を付けたジャッジが1人いました。

コンビネーションがすべて1.1倍に入る構成。2回飛ぶジャンプがルッツとループ。フリップはショートフリー共に!マーク付きでした。上位の選手の中では単独の3回転トーループがあるという珍しい構成です。セカンドループを付けるならセカンドトーループにして他を組み替えた方が難易度下がって基礎点ほとんど変わらないのですがどういう狙いなんでしょう? 実際ジュニアグランプリシリーズではそういう構成になっていました。 4回転トーループを組み込むための布石なのか? ちょっと不思議な構成でした。

 

○住吉りをん選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Tq q 9.50   -4.75 4.75 -5.000
2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
3 3F   5.30   -2.20 3.10 -4.000
4 CCoSp4   3.50   0.75 4.25 2.111
5 2Lo   1.70   -0.34 1.36 -2.000
6 FCCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.333
7 StSq3   3.30   0.90 4.20 2.778
8 2A+3T   8.25 x 0.90 9.15 2.222
9 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.98 10.11 1.889
10 3S< 3.78 x -1.72 2.06 -4.889
11 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.333
  TES   60.76   -2.31 58.45  

冒頭4回転トーループはqがつきましたが基礎点は満額入りました。立てそうに見えたのですが残念。ここで基礎点満額入ったことで、フリー全体の基礎点は今大会で2番目となっています。ただ、単独のループが抜けて2回転になってしまったことで、4回転で基礎点稼いだ分がかなり帳消しになっています。

不思議なものでコンビネーション3本はすべてGOEプラスの成功ジャンプでありながら、単独ジャンプ4本は転倒、ステップアウト、抜け、と散々です。コンビネーション決まるのになぜでしょう? 集中力的な問題なのでしょうか? ループをちゃんと3回転で決めていたらそれだけで7位。最後のサルコウも回転足りてちゃんと飛べていたら6位、まで行けたのに非常に残念でした。ただ、より難しい方のことが出来ているので、比較的簡単な方をミスなくできれば来シーズンには200点くらいは見えています。ただ、シニアに上がってもおそらくグランプリシリーズの枠は回ってこないので、チャレンジャーシリーズで勝負して次の次のシーズンにはグランプリシリーズに出られるように、というのが現実的な目標かもしれません。あとは、NHK杯地元枠争いに勝てるかどうか、でしょうか。

 

○渡辺倫果選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
2 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.444
3 3Lo+2T   6.20   0.91 7.11 1.889
4 FCSp4   3.20   0.73 3.93 2.222
5 LSp4   2.70   0.54 3.24 2.111
6 1Lo   0.50   0.00 0.50 0.000
7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.74 9.65 1.667
8 2Lz   2.31 x -1.05 1.26 -5.000
9 3F   5.83 x 0.38 6.21 0.778
10 StSq3   3.30   0.52 3.82 1.667
11 CCoSp4   3.50   0.75 4.25 2.111
  TES   52.95   1.84 54.79  

トリプルアクセルは不発。回転不足で基礎点から削られました。結局今シーズン後半、国際大会に3試合出てトリプルアクセルを4回飛びましたがすべて回転不足の転倒となりました。全日本の再現は国際大会では残念ながらできずに終わりました。

渡辺倫果選手も不思議なのが、ショートフリー通じてコンビネーションジャンプはすべてしっかり決めてGOEプラスの評価を得ています。一方でトリプルアクセルを含め単独の3回転ジャンプがことごとくうまくいかない。ショートではフリップが抜けて零点。フリーでもループが1回転、ルッツは2回転になり転倒。最後の単独フリップはようやく決めましたが、コンビネーションすべて決めたのになぜ単独ジャンプが決まらないのか??? 不思議なものです。

ここまで単独ジャンプが決まらないと基礎点も50点台前半と落ち込んでしまいます。ショートも含めフリップ、ループ、ルッツという単独ジャンプ3本を大きな加点へ得なくともちゃんと3回転の基礎点満額もらってGOE0で6位までは問題なく行けたのですが、もったいなかったです。フリーもアクセル転倒までは織り込み済みでそのあとのコンビネーション2つ決まった時はなんとかなるか? と期待したのですが、単独ジャンプが・・・。

来シーズンはやはりシニアに上がりますが、グランプリ枠はないでしょう。全日本6位があるのでチャレンジャーシリーズコースは確保できていると思うので、そこで一発決めて200点に乗せて次の次のシーズンへの足掛かりをつかむ、というのが住吉選手と同じく現実的なコースになると思います。こういう19歳で初めて世界ジュニアに出た、というような選手がそのあと伸びていくというようなことがあるとフィギュア界も厚みが出てよいのですが、どうでしょうか。アメリカではテネル選手がそんな感じで、マライアベル選手に至っては世界ジュニアに出ることもできなかったのですが、20台になって伸びていきました。日本はロシアほどではないですが若いうちに頭角を現さないと淘汰されてしまう国。その前例に反する成長を期待したいと思います。

 

この世界ジュニアでフィギュアスケートの今シーズンは実質的に終了しました。日本的には画竜点睛を欠く結果に終わってしまった感じはします。男子はそれでも表彰台を確保。これで四大陸、オリンピック、世界選手権に世界ジュニア、今シーズンのチャンピオンシップでは顔触れを変えながらすべて表彰台を確保しています。

それにしても世界ジュニアというのは特殊な大会で、来シーズンの枠がこの試合で決まるのだけど、その枠を確保してきた選手は高確率で来シーズンはシニアに上がっていてジュニアの枠を使わない。その使わない人に取ってもらった枠が後輩たちの強化試合として使われる。枠を使う選手たちの力が枠どりに反映されないんですね。ちょっと不思議でありつつ、もうちょっといいやり方ないのかなあ、と思ったりします。男子のカザフスタン、女子のスイス、ジュニアグランプリシリーズで7試合×2枠もらってもそれを埋める選手が足りないでしょう・・・。日本に回してもらえないかなあ、と思いますが、結果を出せなかったのが悪いですね。残念。

 

コロナで延期になり、会場も確保できるか、開催できるか怪しい時期がしばらくあった中で、なんとか開催してくれたエストニアに、四大陸選手権も含め、感謝したいと思います。

そして、シーズン終了。まさか、も含め引退してしまった選手もいますが、そういった選手たちは今後の人生の幸福を、来シーズンも続けていく選手たちは、また、新たな姿を夏・秋に見せてくれることを願っています。