21-22 ルナヘンドリックス

1999年11月5日生まれ

シニア6シーズン目

シーズン獲得賞金:$65,000

世界ランキング:8位

シーズンランキング:6位

シーズンベストスコア 219.05(11位) グランプリトリノ

ショートプログラムシーズンベスト 76.25 ヨーロッパ選手権

フリーシーズンベスト 145.53 グランプリトリノ

ショートプログラム楽曲:カルーソ

フリープログラム楽曲:The Mystic's Dream

スピンレベル4率 40/42=95.3%

ステップレベル4率 13/14=92.9%

スピンオールレベル4 5/7

スピンステップオールレベル4  5/7

ジャンプ要素回転不足率 4/70=5.71%

ジャンプ回転不足なし 3/7

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/7

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Finlandia Trophy 4 212.07 68.82 143.25
GP Grand Prix Torino 3 219.05 73.52 145.53
NC Belgian Championships 1 221.04 71.49 149.55
GP Rostelecom Cup 5 203.69 64.44 139.25
EC Europe Championships 4 207.97 76.25 131.72
OG Olympic Games 8 206.79 70.09 136.70
WC World Championships 2 217.70 75.00 142.70

今シーズンはシニア6年目。すっかりベテラン扱いな立ち位置で上位の選手の中ではただ一人の1990年代の生まれの選手となっています。

シーズン初戦はフィンランディア杯。チャレンジャーシリーズにも関わらず異様なハイレベルの試合で200点台が7人いたなかで212点出しながらロシア勢の後塵を拝して4位でした。続いてグランプリシリーズ。トリノではシーズンベストとなる219.05を出して3位表彰台。ランキングの低さやケガなどもあってグランプリシリーズには縁が薄かったのですが、これで初表彰台となりました。ファイナルを賭けたロステレコム杯は5位に終わります。その間にベルギー選手権を軽く勝っておきました。

当然代表には選ばれてシーズン後半のチャンピオンシップ3つ。ヨーロッパ選手権ではショート2位でロシア勢の一角を崩すか! と期待されたのですがフリーは伸びずに4位に終わります。

オリンピックではショートでジャンプがクリーンに決まらず7位スタート。第3グループに入ったフリーはサルコウが1回転になるという痛いミスもあって結局総合8位。ロシア勢の一角を崩す可能性のある選手、として期待されたのですが結局入賞ラインで終わりました。

シーズン最後の世界選手権。事前にケガ情報が入っていたのであまり期待感はなかったのですが、今度はショートから素晴らしい出来で2位スタート。フリーの4分足が持つか? という心配の中の演技は大きなミスなくまとめベルギー勢初の世界選手権2位表彰台となりました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Finlandia Trophy 4 212.07 109.30 102.77 62.17 5.45 25.98 15.70
Grand Prix Torino 3 219.05 115.26 103.79 63.01 12.60 24.98 14.67
Belgian Championships 1 221.04 113.78 108.26 63.44 8.02 26.27 16.05
Rostelecom Cup 5 203.69 101.24 102.45 57.80 3.17 25.16 15.11
Europe Championships 4 207.97 105.93 104.04 61.26 3.51 25.48 15.68
Olympic Games 8 206.79 102.28 104.51 58.72 3.08 25.44 15.04
World Championships 2 217.70 111.18 106.52 62.17 7.25 26.09 15.67

今シーズンは国際大会には6試合登場。技術点は100点ちょっとに落ち込むこともありますがいい時は110点台半ばまで出ます。PCSはもっと出る印象ですが国際大会では106.52の世界選手権が最高というのはちょっと意外。基本は100点台前半にとどまります。ただ106.52まで出ればロシア勢除けば2番目、ロシア勢入れても6番目という高い評価になっています。

ジャンプの基礎点は60点前後で一番良くてグランプリトリノの63.01 これは極めて平凡と言えるスコアです。ジャンプの難易度で稼ぐ選手ではありません。

ジャンプの加点は全試合でプラスでした。グランプリトリノの12.60は全体9位にあたるスコアです。

スピンは25点台から26点台まで出ます。世界選手権の26.09が最高で全体7位にあたります。

ステップ系要素はフィンランディア杯の15.70が最高。全体4番目にあたる高いスコアです。

どの要素もオリンピックの時は低めでしたが、世界選手権は本人比でシーズン最高か2番目あたりのスコアになっていて、ケガがあったことで逆にいい形で結果を出せた形になっていました。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Finlandia Trophy 4 64.22 58.76 61.54 66.57 69.05 65.07
Grand Prix Torino 3 66.12 59.39 73.54 63.46 64.95 65.75
Belgian Championships 1 66.66 59.71 65.85 67.47 70.45 68.73
Rostelecom Cup 5 61.95 55.50 57.71 64.02 66.71 64.86
Europe Championships 4 63.11 58.08 58.28 65.01 68.98 65.92
Olympic Games 8 62.79 56.18 57.56 64.89 66.43 66.23
World Championships 2 65.75 58.76 64.56 66.91 68.94 67.57

偏差値で見るとトータルスコアは60台前半から中盤あたりになります。

ジャンプの基礎点は偏差値60に届きません。上位選手の中では平凡な構成ということになります。加点の方はいい出来の時には偏差値70を超えていきます。これが毎試合出るようになると強いです。

スピンは60台半ば、ステップ系要素は60台後半です。ステップは得意ということになるかと思います。

PCSは60台半ばから後半。TESよりPCSの方が偏差値高めではありますが、極端にPCSに寄っているというほどではないです。

ヘンドリックス要素別偏差値レーダーチャート

偏差値をレーダーチャートで見るとこんな形になります。左側に膨らむ形。出来のいい時は右下も伸びます。青のオリンピックのラインが全体的に内側に寄ってしまっているのは残念な構図です。オレンジのグランプリトリノの時はジャンプの出来は良かったのですが、スピンステップPCSはそれほど高い評価をもらえなかったようでした。世界選手権の赤いラインが、右上こそ凹んでいるものの、バランスよく全体うまくいったという形なようです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

ヨーロッパ選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
2 2A   3.30   0.90 4.20 2.667
3 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
4 3F   5.83 x 1.51 7.34 2.778
5 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.778
6 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.333
  TES   32.53   9.12 41.65  

ショートの基礎点最高は32.53でした。セカンド3回転を入れて1.1倍を単独フリップにするとこうなります。割とよくあるパターンです。トリプルアクセル組とは少し差がありますが、トリプルアクセル無しでセカンドループも無しの最高が33.01ですので、そことはほとんど差がなく出来栄え勝負という位置づけになります。

 

ロステレコム杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   -0.76 9.34 -1.111
2 3Lo< 3.92   -0.78 3.14 -2.000
3 3F   5.30   1.36 6.66 2.556
4 2A   3.30   0.80 4.10 2.333
5 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.222
6 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
7 3Lz+2T   7.92 x 1.10 9.02 1.889
8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.61 9.74 1.222
9 3S   4.73 x 0.61 5.34 1.333
10 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.667
11 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.444
12 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
  TES   61.00   9.22 70.22  

フリーの最高基礎点は61.00でした。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。苦手のループも入れて基礎点を高めることを狙いましたが回転不足で基礎点から削られる形となっています。通常時はトリプルループではなくダブルアクセルを入れていて基礎点は60.38になります。トリプルアクセル無しでも基礎点63点台までは出ますので、本来はその辺まで出したいわけですが、高難度ジャンプの無い相手ならこれくらいの基礎点でも出来栄え差で十分に逆転できます。実際、世界選手権は59.54の基礎点ながらフリーの順位も2位で逃げ切りました。

 

○平均GOE4.000以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Olympic Games FS 10 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
Finlandia Trophy FS 10 LSp4   2.70   1.22 3.92 4.500
Belgian Championships FS 5 CCoSp4   3.50   1.52 5.02 4.400
Europe Championships SP 7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.333
Belgian Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.52 5.02 4.200
Belgian Championships SP 6 StSq4   3.90   1.69 5.59 4.200
Finlandia Trophy SP 6 StSq4   3.90   1.63 5.53 4.125
Finlandia Trophy FS 6 StSq4   3.90   1.69 5.59 4.125
Europe Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
Olympic Games FS 11 ChSq1   3.00   2.07 5.07 4.111
World Championships FS 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Finlandia Trophy SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Belgian Championships FS 11 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Europe Championships FS 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000

ヘンドリックス選手はやはりスピンステップで評価の高い選手です。平均GOEが+4.000以上の評価を受けた要素が多数あります。スピンではレイバックスピン、ついで足替えのコンビネーションスピンで高評価。足替えのコンビネーションスピンはレベル4で基礎点3.5あり、高いGOEがつくとスピン一つで5点入っています。

ステップも評価が高い選手です。世界選手権でも+4.111の高評価を得ました。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 1 3Lz+3T< 9.26   -2.85 6.41 -4.750
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.67 11.77 3.000
Grand Prix Torino SP 1 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.778
Grand Prix Torino FS 1 3Lz+3T   10.10   1.94 12.04 3.222
Belgian Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
Belgian Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   2.16 12.26 3.600
Rostelecom Cup SP 1 3Lz+3T   10.10   -0.34 9.76 -0.556
Rostelecom Cup FS 1 3Lz+3T   10.10   -0.76 9.34 -1.111
Europe Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
Europe Championships FS 1 3Lz!+3T ! 10.10   -2.95 7.15 -4.889
Olympic Games SP 1 3Lz+3T   10.10   0.67 10.77 1.111
Olympic Games FS 1 3Lz!q+3T ! 10.10   -1.18 8.92 -2.000
World Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   0.76 10.86 1.111
World Championships FS 1 3Lz+3T< 9.26   -0.34 8.92 -0.667

3回転-3回転はショートフリーの冒頭にルッツから入れています。GOEがプラスになったのは8/14 ベルギー選手権除くと6/12で5割ほどです。ショートフリー両方で3-3をしっかり決める、という試合がなかなかありません。それができると安定して220点が見えてきそうな気もします。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.88 10.01 1.750
Grand Prix Torino FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.14 10.27 2.222
Belgian Championships FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.06 10.19 2.200
Rostelecom Cup FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.61 9.74 1.222
Europe Championships FS 9 3S+2T+2Lo   8.03 x -0.61 7.42 -1.222
Olympic Games FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.91 10.04 1.778
World Championships FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.83 9.96 1.667

3連続ジャンプはフリップ起点で2回転を2つ付ける形が基本です。ヨーロッパ選手権では転倒があってリカバリーでサルコウ起点の3連続になりました。

3連続は3-3より成功率が高く、7試合で6回GOEプラスをもらっています。

 

18歳の時点で200点まで到達していたので、ロシア勢に対抗できるヨーロッパ勢が出てきた、という期待感があったのですが、その後ケガで苦しんで今一つ伸びてきませんでした。グランプリシリーズも今シーズン初表彰台どころか、実はまだ今シーズンが2試合目3試合目でした。力があってもツキがないというか怪我無く滑ることが出来ずになかなかトップで活躍できませんでしたが、今シーズンは、また怪我か、の後の世界選手権でついに2位表彰台までたどり着きました。

高難度ジャンプがないのでロシア勢と戦うのはちょっと苦しいのですが、それでも、フィギュアスケートってそれだけじゃない、というのを見せてくれる選手だと思います。ロシア以外のヨーロッパ勢というのは割と現役を長く続ける傾向があるように感じます。まだ22歳。もう一回くらいはオリンピックも出てくるでしょうか。

来シーズンはヨーロッパ選手権を勝つチャンス? グランプリシリーズでも日本勢の良きライバルとして活躍を期待しています。