21-22 坂本花織

2000年4月9日生まれ

シニア5シーズン目

シーズン獲得賞金:$85,000

世界ランキング:3位

シーズンランキング:3位

シーズンベストスコア 236.09(4位) 世界選手権

ショートプログラムシーズンベスト 80.32 世界選手権

フリーシーズンベスト 155.57 世界選手権

ショートプログラム楽曲:グラディエーター より

フリープログラム楽曲:「Woman」より No More Fight Left In Me/Tris

スピンレベル4率 45/57=78.9% (国際試合:30/33= 90.9%)

ステップレベル4率 15/19=78.9% (国際試合:9/11=81.8%)

スピンオールレベル4 3/8 (国際試合2/5)

スピンステップオールレベル4  2/8(国際試合1/5)

ジャンプ要素回転不足率 1/101=0.99% (国際試合:1/57=1.75%)

ジャンプ回転不足なし 7/8(国際試合4/5)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 2/8(国際試合2/5)

 

○21-22シーズン試合結果

Grade Event Pl Total SP FS
DL げんさんサマーカップ 1 217.24 73.74 143.50
Others Japan Open 4 133.26   133.26
RT 近畿選手権 1 192.14 72.02 120.12
CS Asian Open Figure 2 202.28 76.70 125.58
GP Skate America 4 215.93 71.16 144.77
GP NHK Trophy 1 223.34 76.56 146.78
NC 全日本選手権 1 234.06 79.23 154.83
CC 日本学生氷上選手権 1 156.73   156.73
OG OlympicGames Team 2 148.66   148.66
OG Olympic Games 3 233.13 79.84 153.29
WC World Championships 1 236.09 80.32 155.77

今シーズンは素晴らしいシーズンになりました。

坂本花織選手の21-22シーズンは8月のげんさんサマーカップで始まります。怪我の状態がよくない紀平梨花選手を除くと日本の上位選手がほとんど集まった試合でしたが、217.24で圧勝。強さを見せつけます。10月に入って本格シーズンインなのですが、ここで少し心配な姿を見せました。ジャパンオープン、日本人6人のみの試合になりましたがここでまさかの6人中4位。翌週近畿選手権ではフリーで大崩れして200点に届かず。翌週に国際大会アジアンオープンフィギュアに飛んでまたフリーで大崩れ、200点にはのせましたが三原舞依選手に敗れ2位となります。このころは、フリー全然わからない、難しい、と言い続けていたように記憶しています。

少し光が見えたのが10月4連戦の最後となるスケートアメリカ。ショートでコンビネーションにミスが出たものの課題のフリーで大きなミスなく140点台に乗せてきます。細かいミスがなければ表彰台に乗ることができたという点では残念でしたが国内の選考会は問題なく通過できそうというのがこのあたりで見えました。

11月に入ってNHK杯。トゥルソワ選手欠場など波乱のあった試合でしたがショートフリーで目立ったミスなく220点台に乗せグランプリ実質初優勝。非ロシア勢としてただ一人のファイナル進出を決めます。ただ、ファイナルはコロナオミクロン株により中止となりました。

代表選考では圧倒的に有利な立場で臨んだ全日本選手権。ここでも圧倒的強さを見せ圧勝。国内参考記録ながら230点台まで持ってきました。

そしてオリンピック。団体戦は滑る前にほぼ順位が確定していましたがフリーで滑って銅メダルに貢献します。そして個人戦。ショートはPCSでついに平均9点台に乗せ3位スタート。フリーもノーミスで150点に乗せ233.13 いろいろなことがあったオリンピックですが、結果的にロシア勢を押しのけて銅メダルに輝くことになりました。

さらにいろいろなことがあっての世界選手権。本命という立場で臨むことになりましたが、そのプレッシャーをものともせず236.09までスコアを伸ばし圧勝。世界タイトルを手に入れました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
げんさんサマーカップ 217.24 114.43 102.81 64.98 13.66 23.08 12.71
Japan Open 133.26 65.04 69.22 41.00 6.24 8.38 9.42
近畿選手権 192.14 93.00 100.14 55.50 5.19 18.31 14.00
Asian Open Figure 202.28 100.53 102.75 54.84 7.63 23.41 14.65
Skate America 215.93 111.06 104.87 61.42 12.61 22.54 14.49
NHK Trophy 223.34 115.71 107.63 65.27 10.79 25.29 14.36
全日本選手権 234.06 123.01 111.05 65.27 16.76 25.26 15.72
日本学生氷上選手権 156.73 81.26 75.47 44.19 12.94 13.04 11.09
OlympicGames Team 148.66 76.93 71.73 45.62 9.12 13.14 9.05
Olympic Games 233.13 122.12 111.01 65.27 16.38 24.74 15.73

今シーズン、見た目は11試合に出ていますが、JapanOpenと学生選手権はフリーのみの試合、オリンピックもチームイベントはフリーのみ出場ということで、ショートフリーとしっかりそろったのは8試合になります。

国際大会は10月のアジアンオープンフィギュアから。国際大会5戦は順調にスコアを上げて行ったという流れの今シーズンでした。

TESは全日本以降123点前後の点が入っています。これはロシア勢以外ではトップのスコアです。PCSはオリンピックで110点に乗せ、世界選手権では112.74まで伸ばしました。今シーズン2位の高い評価です。

ジャンプの基礎点は65.27という試合が何度も見られます。これは本人比で最高の構成を基礎点が削られることなくなんどもこなしたということの証左です。ただ65.27というのはそれほど高いスコアでもなく、ロシア勢以外でも多数の選手がこれより上の基礎点を持っています。評価が高いのはジャンプの加点の方。オリンピックでは16.38まで稼ぎました。これより上はワリエワ選手とオリンピックのシェルバコワ選手だけです。

スピンは25点台までは何度も出していて最高は世界選手権の25.85 これは全体で10位のスコアになります。

ステップ系要素は世界選手権では16.15という高い評価を得ました。今シーズンではこれはフィンランディア杯のワリエワ選手の16.16に次ぐ2番目のスコア。主要大会だけで見ればトップです。非常に高い評価を得ました。

 

○要素別偏差値

Event Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
げんさんサマーカップ 65.63 60.86 75.32 57.54 57.15 65.10
近畿選手権 58.82 53.78 61.10 42.69 62.29 63.32
Asian Open Figure 61.57 53.29 65.20 58.57 64.88 65.06
Skate America 65.27 58.20 73.56 55.86 64.24 66.47
NHK Trophy 67.28 61.07 70.50 64.42 63.72 68.31
全日本選手権 70.19 61.07 80.53 64.33 69.13 70.59
Olympic Games 69.94 61.07 79.89 62.71 69.17 70.57
World Championships 70.74 61.07 79.38 66.17 70.85 71.72

偏差値で並べるとこういった形になります。フリーのみの試合は除外してあります。

トータルスコアは最後の世界選手権で偏差値70超えとなりました。フリーで大崩れしたアジアンオープンフィギュアで61.57と60を少し超えた程度になります。

それと比べるとジャンプの基礎点は61.07と低めの水準です。やはりジャンプの基礎点はそれほど高い評価にはなりません。一方で加点の方はコンスタントに偏差値70超え。オリンピックでは79.89と偏差値80近い驚異的な領域に達しました。

スピンはシーズン序盤はそこまで頭が回らなかったのか偏差値50台でしたがNHK杯以降は60台半ばまで出しています。

ステップ系要素は世界選手権で偏差値70超え、PCSも70を超える高い水準にまで来ています。

 

21-22シーズン 坂本花織要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートで表すとこんな形に。右上が凹んで右下が伸びる形。伸ばすとしたらジャンプの基礎点。それはつまり高難度ジャンプの投入、ということになるでしょうか。

全日本、オリンピック、世界選手権の3試合は、チャートがほとんど重なる形になっています。強いて言えばスピンにばらつきがあるでしょうか。ジャンプ、ステップ、PCS、安定して高い評価を得ていたことがわかります。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○世界選手権ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.65 4.95 4.889
2 3Lz   5.90   1.69 7.59 2.889
3 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
5 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.222
6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
  TES   32.95   10.30 43.25  

ショートプログラムの基礎点最高32.95でした。コンビネーションを後半に入れて基礎点を稼ぎ、また、苦手だったルッツも攻勢に入れることで基礎点を伸ばしてきました。スピンステップは当然すべてレベル4でこのスコアになります。

これ以上基礎点から上げるには、セカンドループという手に出るか、トリプルアクセル投入ということになります。

 

○世界選手権フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.60 4.90 4.667
2 3Lz! ! 5.90   1.10 7.00 1.889
3 3F+2T   6.60   1.74 8.34 3.333
4 3S   4.30   1.47 5.77 3.444
5 FSSp4   3.00   0.94 3.94 3.111
6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333
7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556
8 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
9 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
11 3Lo   5.39 x 1.47 6.86 3.000
12 FCCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
  TES   62.52   17.58 80.10  

フリーの基礎点は62.52が最高でした。これは割と平凡な基礎点です。ロシア勢以外でもこれより上の基礎点の選手は多数おり、日本人選手でも国際大会で見れば8番目になります。

2本飛ぶジャンプはフリップとトーループ。ルッツは1本構成。ルッツ2本構成にすれば基礎点63点台にはなりますが、それでもそれほど高い構成にはなりません。

それよりもなによりも加点の高さが驚異的、というのが坂本選手です。

 

○平均GOE4.000以上(国際大会+全日本選手権)

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
World Championships SP 1 2A   3.30   1.65 4.95 4.889
World Championships FS 1 2A   3.30   1.60 4.90 4.667
全日本選手権 SP 1 2A   3.30   1.51 4.81 4.556
全日本選手権 FS 1 2A   3.30   1.51 4.81 4.556
Olympic Games SP 1 2A   3.30   1.51 4.81 4.556
NHK Trophy SP 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.444
Olympic Games FS 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.444
Asian Open Figure SP 1 2A   3.30   1.43 4.73 4.375
全日本選手権 FS 6 3F+3T   10.45 X 2.35 12.80 4.333
World Championships SP 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Asian Open Figure FS 1 2A   3.30   1.38 4.68 4.250
全日本選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 2.20 12.65 4.222
全日本選手権 SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.111
全日本選手権 FS 11 3Lo   5.39 X 2.03 7.42 4.111
OlympicGames Team FS 11 3Lo   5.39 x 2.03 7.42 4.111
Olympic Games FS 11 3Lo   5.39 x 2.03 7.42 4.111
World Championships FS 8 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Skate America SP 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
NHK Trophy SP 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.000
World Championships SP 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
World Championships FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000

坂本選手は一つ一つの要素の評価が高いです。特に評価が高いのはショートフリーそれぞれ冒頭に飛ぶダブルアクセル。世界選手権のショートでは満点扱いとなりました。全体的にジャンプで高評価がつきます。フリー最後のトリプルループというのも定評ある要素でしたが今シーズンも高い評価を受けています。ステップ、コレオも平均4.0超えがいくつも見られます。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Asian Open Figure SP 4 3F+3T   10.45 x 1.68 12.13 3.125
Asian Open Figure FS 6 3F+3T   10.45 x 0.97 11.42 1.750
Skate America SP 4 2F+3T   6.60 x 0.54 7.14 1.222
Skate America FS 6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333
NHK Trophy SP 4 3F+3T   10.45 X 1.74 12.19 3.222
NHK Trophy FS 6 3F+3T   10.45 X 2.12 12.57 3.889
全日本選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 2.20 12.65 4.222
全日本選手権 FS 6 3F+3T   10.45 X 2.35 12.80 4.333
OlympicGames Team FS 6 3F+3T   10.45 x 1.67 12.12 3.222
Olympic Games SP 4 3F+3T   10.45 x 2.04 12.49 3.778
Olympic Games FS 6 3F+3T   10.45 x 2.04 12.49 3.778
World Championships SP 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
World Championships FS 6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333

ショートフリーで1回づつ3F+3Tを飛ぶのが坂本選手の構成です。今シーズンはスケートアメリカで1つ目のフリップが2回転になるミスがありましたが、それ以外はすべて成功。それもNHK杯以降では平均GOEが+3.000を超える高い評価を受けています。3回転-3回転をここまで高い評価を受けるのはなかなか難しいです。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Skate America FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111
NHK Trophy FS 7 2A+3Tq+2T q 9.68 X 0.12 9.80 0.333
全日本選手権 FS 7 2A+3T+2T   9.68 X 1.32 11.00 3.111
OlympicGames Team FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.26 10.94 3.000
Olympic Games FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.26 10.94 3.111
World Championships FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556

3連続ジャンプも高評価です。ダブルアクセル起点で比較的難易度は抑えめではありますが、それでもほとんど平均GOEが+3.000を超えています。

 

○平均GOEマイナスの要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Asian Open Figure FS 4 3S< 3.44   -0.97 2.47 -2.750
Asian Open Figure FS 7 2A   3.63 x -1.65 1.98 -4.875

今シーズン通じて国際大会でGOEがマイナスの要素はアジアンオープンフィギュアでの2つのジャンプしかありませんでした。つまり、グランプリシリーズ以上のグレードの試合で、ショートフリー通じてマイナス要素が1つもなかったということになります。驚異的な安定感でした。苦手のルッツも!のオンパレードではありましたが、eは一度もつかず、すべてGOEはプラスを保ちました。

 

今シーズン素晴らしい成果を残した坂本花織選手。シーズン序盤は新しいプログラムに、と言うべきか、ブノアリショーさんのプログラムにというべきか、とにかく苦労していたようですが、それを乗り越えると一気に安定軌道へ乗りました。シーズンが終わって22歳になりました。次のオリンピックは25歳で迎えます。日本の女子では3回オリンピックに出るというのは至難の業。いまだかつて一人もいません。近年では村主章枝さんも安藤美姫さんも、浅田真央さんも3回目には手が届きませんでした。

ロシア勢がいなければ、今の完成度勝負でも十分強いです。これに対抗できるのは復活した紀平梨花選手くらいなもの。しかしながらロシア勢が帰ってきたときに迎え撃つには高難度ジャンプが欲しい、というのが中野先生の考えなようです。中野組の泣き所は、女子で高難度ジャンプを飛ぶ選手がまだいないこと。関大にも名古屋にも、東京にも、トリプルアクセルの女子の手本ができ始めていますが、神戸にはいません。そこがネックかと思いますが、今シーズン神戸に壷井達也選手がやってきました。男子ではありますが、トリプルアクセルはもちろん4回転も装備している選手。これが2年前にトリプルアクセル跳ばせたいと中野先生が言っていたころとの大きな違いかと思います。目の前に男子ではあるけれど参考になるジャンプがある。毎日見ることができる。

来期は高難度ジャンプへの挑戦、復活する?紀平梨花選手との勝負、帰って来るかロシア勢?それがないならファイナルも取って2冠を目指すか? また見どころの多いシーズンとなりそうです。