21-22 アリサリュウ

2005年8月8日生まれ

シニア1シーズン目

シーズン獲得賞金:$38,000

世界ランキング:6位

シーズンランキング:2位

シーズンベストスコア 219.24(10位) ロンバルディア

ショートプログラムシーズンベスト 74.31 ロンバルディア

フリーシーズンベスト 144.93 ロンバルディア

ショートプログラム楽曲:ジプシーダンス

フリープログラム楽曲:バイオリン協奏曲

スピンレベル4率 42/45=93.3%

ステップレベル4率 10/15=66.7%

スピンオールレベル4 5/7

スピンステップオールレベル4  1/7

ジャンプ要素回転不足率 14/73=19.2%

ジャンプ回転不足なし 1/7

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/7

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC Cranberry Cup 1 205.74 71.42 134.32
CS Lombardia Trophy 1 219.24 74.31 144.93
CS Nebelhorn Trophy 1 207.40 70.86 136.54
GP Skate Canada 5 206.53 73.63 132.90
GP NHK Trophy 4 202.90 67.72 135.18
NC US Championships   71.42 71.42  
OG Olympic Games 7 208.95 69.50 139.45
WC World Championships 3 211.19 71.91 139.28

今シーズンシニアデビュー。8月のクランベリーカップから出てきました。まずは200点台に乗せ、やはり有力な代表候補だな、という姿を見せてくれました。9月に2戦。ロンバルディア杯が結果的にシーズンベストとなりました。219.24 これがシーズンベスト全体100位にあたるスコアになりました。当然チャレンジャーシリーズ初優勝となります。続いてネーベルホルン杯。これはアメリカ3枠目確保のための重要な試合。その役割を課せられますが、特に問題なくこれも優勝。しっかりと3枠目を取ってきました。

グランプリ2戦は少し伸びなかったでしょうか。200点台半ばで210点にまでは届かないスコアで5位と4位。表彰台に届きませんでした。8月9月に一度ピークを持ってきて10月11月に一度調子を落としてシーズン後半に盛り上げていく、ということであればいいのですが、いまいち伸びてないなあ、と言った感じでした。

そして新年あけて問題の全米選手権。ブレイディテネル選手が欠場となって、これでアメリカは3人ほぼ決まりかな、という雰囲気でした。ショートは3位で折り返し。順番はわからないけどやっぱり3人ね、と思っていたらここでまさかのコロナ離脱。心配されましたがそれまでの実績もあり、4番手以下も伸びなかったことで無事に代表に選出されました。

そんな形の代表選出だったこともあってか、オリンピックでは団体戦の出場は無し。個人戦のみの出場となります。ショートはダブルアクセルで確実にいって8位スタート。フリーはトリプルアクセル投入で逆転を狙いましたがダウングレード扱いとなりスコアが伸びず結局7位に終わりました。

世界選手権では表彰台を狙う立場として登場。ショートはやはりダブルアクセルで確実にいき、今度は全要素全ジャッジプラス評価となり5位で折り返します。フリーのトリプルアクセルは今度はアンダーローテーションで踏みとどまります。コンビネーションをすべて1.1倍に入れる構成で追い上げトータル211.19 演技を終えた時点でトップに立ち、最終的に3位に残ってワールドの表彰台に立ちました。

いい形でシニアデビューシーズンを終え、来シーズン以降、割と先週寿命の長いアメリカで、2度目、3度目のオリンピックを目指すものと思っていたのですが、スターズオンアイスで日本滞在中に、まさかの、インスタで引退宣言。かなり驚き、残念ではありますが、しかたないのでしょうか。聡明そうですので、今後のご活躍を期待します。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Cranberry Cup 1 205.74 110.80 95.94 66.11 5.46 25.24 13.99
Lombardia Trophy 1 219.24 116.88 102.36 68.29 8.51 25.05 15.03
Nebelhorn Trophy 1 207.40 108.64 98.76 63.91 4.58 25.16 14.99
Skate Canada 5 206.53 106.91 100.62 68.07 -0.82 25.86 13.80
NHK Trophy 4 202.90 104.04 99.86 72.35 -6.82 25.07 13.44
US Championships   71.42 39.71 32.71 22.81 -0.18 11.95 5.13
Olympic Games 7 208.95 108.80 100.15 65.64 4.72 24.26 14.18
World Championships 3 211.19 111.74 99.45 68.83 5.96 24.75 12.20

今シーズンは国際大会7試合に出場しました。技術点は110点前後。ロンバルディア杯で116点台まで出していますがこれが最高でした。PCSは100点前後。これもロンバルディア杯の102.36が最高値。もう2,3シーズン続けてればこれがコンスタントに108点前後まで伸びて行ったと思うのですけどね。100点程度だと上位で戦うにはやや弱いです。

ジャンプの基礎点はオリンピックで65.64世界選手権では68.83でした。トリプルアクセル持ちですが、今シーズンはしっかり決められなかったことで、思ったほどは伸ばせなかったようです。基礎点的にはNHK杯の72.35もありますが、しっかりきまらず基礎点活かしきれなかったです。

ジャンプの加点はロンバルディア杯の8.51が最高。トリプルアクセルを構成に入れて決めきれない、となると加点合計もあまり伸びてきません。NHK杯のように大きなマイナスになってしまうこともあります。当然ですがジャンプの出来で全体が大きく左右されています。

スピンは25点前後・スケートカナダの25.86が最高。これくらい来ると上位の方に来ます。

ステップはロンバルディア杯の15.03が最高。15に乗ってくると 上位選手としてカウントされるくらいの位置です。ただ、世界選手権の12.20は、上位2人、坂本選手、ヘンドリックス選手とかなりの差が付けられています。

 

○要素別偏差値

Event Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Cranberry Cup 62.51 61.70 61.55 64.27 62.25 60.52
Lombardia Trophy 66.17 63.33 66.67 63.67 66.39 64.80
Nebelhorn Trophy 62.96 60.06 60.08 64.02 66.23 62.40
Skate Canada 62.72 63.16 51.01 66.20 61.49 63.64
NHK Trophy 61.74 66.36 40.93 63.74 60.06 63.13
Olympic Games 63.38 61.35 60.31 61.21 63.00 63.32
World Championships 63.99 63.73 62.39 62.74 55.12 62.86

トータルスコアは偏差値60台。ロンバルディア杯では偏差値60後半まで伸びました。通常時は60台前半くらいです。

ジャンプの基礎点も60台前半。そこに60台のジャンプの加点が入ればいいのですが、出来が悪いと偏差値50あるいは40台になってしまいます。

スピンは安定して偏差値60台前半。スケートカナダでは60台後半まで出ました。ステップもいい時は60台後半まで出ます。PCSも60台。これは後半までは出ませんでした。

全体的に偏差値60台前半、いい時は後半まで出る、ということで、バランスよくどの要素もある程度高い水準にある、ということのようです。

 

アリサリュウ選手の要素別偏差値レーダーチャート

偏差値をレーダーチャートで見るとこんな形になります。NHK杯スケートカナダのようにジャンプで苦しむといびつな形になりますが、そうではない場合、特にオリンピックなんかでは全体がバランスの取れた形になっています。バランスよく穴がないところにトリプルアクセルを乗せてノーミスで滑る、といったところを見てみたかったのですが、それはもう叶わぬ夢なようです。

 

 

●シーズン最高の基礎点構成

スケートカナダ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A< 6.40   -1.10 5.30 -1.778
2 3F! ! 5.30   0.15 5.45 0.222
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.111
4 3Lz+3T   11.11 x 1.10 12.21 1.889
5 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
6 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
  TES   36.11   4.29 40.40  

ショートの基礎点最高は36.11でした。トリプルアクセル投入でアンダーローテーションが入っています。3-3が1.1倍に入っているのも大きい。トリプルアクセルの回転が足りていればショートでこれ以上の基礎点はない、という構成になります。この時は回転不足で基礎点削られていますが、着氷していてGOEもわずかなマイナスでしたので、ダブルアクセルでは稼ぐことのできない5.30を得ており、トリプルアクセル投入の価値があった、という形でした。

36.11は今シーズン8位、ロシア勢以外では5位の高い基礎点です。

 

NHK杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Aq q 8.00   -1.14 6.86 -1.333
2 3S   4.30   0.80 5.10 1.889
3 3Lo   4.90   0.98 5.88 1.889
4 2A+3Tq q 7.50   -0.36 7.14 -0.889
5 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.889
7 3Lzq+1Eu+3F< 11.70 X -1.94 9.76 -3.333
8 3Lz   6.49 X 0.59 7.08 1.000
9 3F!q+2Aq+SEQ ! 7.57 X -1.82 5.75 -3.000
10 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111
11 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
12 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
  TES   66.46   2.14 68.60  

NHK杯トリプルアクセルをqで基礎点満額もらって着氷したこともあり、合計の基礎点が最高となりました。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。3連続で3つ目にフリップを入れセカンド3回転は1つで、余るダブルアクセルをシークエンスで使っています。ステップレベル4取れれば基礎点は67.06と67点台に乗ります。66.46としてロシア勢以外では今シーズン4位の高い基礎点です。

 

○平均GOE3.600以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate Canada FS 12 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.444
US Championships SP 7 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.333
Nebelhorn Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.222
Cranberry Cup FS 12 LSp4   2.70   1.17 3.87 4.200
Skate Canada SP 7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
NHK Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
Lombardia Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
NHK Trophy SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Olympic Games SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Nebelhorn Trophy SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 3.889
Lombardia Trophy SP 7 LSp3   2.40   0.91 3.31 3.857
Olympic Games FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.778
Skate Canada FS 11 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667

アリサリュウ選手が高い評価を受ける要素はスピンでした。ショートフリーそれぞれ最後の要素であるレイバックスピン。最高評価はスケートカナダの+4.444でした。基本的に+4以上をもらう、というのがアリサリュウ選手のレイバックスピンです。

 

トリプルアクセルを含む要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
NHK Trophy FS 1 3Aq q 8.00   -1.14 6.86 -1.333
World Championships FS 1 3A< 6.40   -0.64 5.76 -0.889
Lombardia Trophy FS 1 3A< 6.40   -0.77 5.63 -1.286
Skate Canada SP 1 3A< 6.40   -1.10 5.30 -1.778
NHK Trophy SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
US Championships SP 1 3A< F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Olympic Games FS 1 3A<< <<  3.30   -1.08 2.22 -3.333
Cranberry Cup FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000
Skate Canada FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000

今シーズンアリサリュウ選手は4回転の実戦投入はありませんでした。トリプルアクセルを毎試合試みてきたのですが、これが結局うまくいかなかった・・。基礎点満額もらえたのが結局NHK杯のフリーのみです。他は主要大会ではほとんどアンダーローテーションで基礎点8割、オリンピックではダウングレード扱いです。アンダーローテーションで着氷、くらいまで行けばダブルアクセルより点が出るのですが、アンダーローテーションで転倒、あるいはダウングレードとなると飛び損になります。ダブルアクセル比でおつりが来たのは結局4回という結果になりました。もう少し決めたいところだったと思います。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup SP 4 3Lz+3T   11.11 x 0.98 12.09 1.600
Cranberry Cup FS 7 3Lz+3Tq   11.11 x -0.39 10.72 -0.600
Lombardia Trophy SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.53 12.64 2.571
Lombardia Trophy FS 7 3Lz+3T< 10.19 x -0.71 9.48 -1.286
Nebelhorn Trophy SP 4 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.08 11.03 -0.222
Nebelhorn Trophy FS 7 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.25 10.86 -0.222
Skate Canada SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.10 12.21 1.889
Skate Canada FS 8 3Lz+3T< 10.19 x -1.10 9.09 -1.778
NHK Trophy SP 4 3Lzq+3T< 10.19 X -2.02 8.17 -3.444
US Championships SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.43 12.54 2.556
Olympic Games SP 4 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.34 10.77 -0.667
Olympic Games FS 6 3Lz+3T   10.10   1.10 11.20 1.889
World Championships SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.18 12.29 1.889
World Championships FS 6 3Lz+3T< 10.19 x -1.01 9.18 -1.556

アリサリュウ選手は3回転3回転を後半1.1倍ボーナスに入れてくる構成です。着氷率は高く転倒はしないのですが加点を稼ぐところまではなかなかいかないという形になっています。また、ルッツは常に回転十分ですがセカンドのトーループの回転が微妙、ということが多いです。

また、これだけルッツを並べても!は一つも付きません。アリサリュウ選手はフリップの方がやや苦手でルッツの方はきれいに飛ぶことが出来ています。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup FS 4 2A+1Eu+3S   8.10   0.86 8.96 2.000
Lombardia Trophy FS 4 2A+1Eu+3S   8.10   1.12 9.22 2.571
Nebelhorn Trophy FS 4 2A+1Eu+3S   8.10   0.86 8.96 2.000
Skate Canada FS 7 3Lz+1Eu+3F< 11.70 x -0.67 11.03 -1.222
NHK Trophy FS 7 3Lzq+1Eu+3F< 11.70 X -1.94 9.76 -3.333
Olympic Games FS 7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.667
World Championships FS 7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.778

3連続ジャンプをシーズン序盤は前半にダブルアクセル起点で入れていたのですが、グランプリシリーズからは1.1倍にルッツ起点で入れる形に難度を上げました。ただ、グランプリシリーズでは3つめにフリップを入れたものの回転不足になるということで、オリンピック、世界選手権ではサルコウに変えて見事に成功しています。この3連続ジャンプの入れ方のシーズン中の変遷は、最終的にうまくいったいい試行錯誤だったんだなあ、というのが見て取れます。

 

今シーズンシニアデビュー。そして、まさかの引退。いやあ、引退するかあ・・・。

これからの選手だと思ったんですけどね・確かにジュニアどころかノービスの時代から全米選手権で優勝したりしてますので、キャリア的には十分なのかもしれませんが、ロシアと違ってアメリカならこれからも長くトップに居続けることができたのではないか、と思うので残念です。今季のプログラムはショートのジプシーダンスにフリーのバイオリン協奏曲。本人の雰囲気にあっていてとてもよかったと思いました。この先こういった明るい、元気な、というイメージに合ったプログラムだけでなく、しっとりとしたタイプのものを演じていくような云云かんぬんと期待していたいのですが、引退宣言・・・。

いやあ、引退かあ・・・。

仕方ないんでしょうけど、まだ16歳。高校2年生相当。大学受験に向けて部活を引退、にしてもまだ早いみたいな時期です。将来設計とかあるんですかね、いろいろと。

とにかく残念なのですが、見送るしかないのでしょうきっと。おつかれさまでした。

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