ジュニアグランプリシリーズ 女子シングルレビュー1

 

シニアのグランプリシリーズに先駆けて、ジュニアのグランプリシリーズが10月上旬まで行われていました

全7試合終了し、ファイナルへの進出者も決定しています

今回は、そのまとめ

女子シングル編です

 

まず、180点以上のスコアと、日本勢の得点を並べてみます

末尾のカッコつき数字は、ジュニアグランプリシリーズの中で何試合目か? という意味の数字です。1試合目なら(1) 7試合目なら(7) という具合になります

 

 

Alexandra TRUSOVA(RUS) 221.44(74.74(44.06,30.68)) 146.70(86.26,61.44)) 優勝(3)

Alexandra TRUSOVA(RUS) 221.00(74.19(44.18,30.01)) 146.81(85.27,61.54)) 優勝(7)

 

Anna SHCHERBAKOVA(RUS) 205.39(73.18(43.40,29.78) 132.21(73.25,58.96)) 優勝(1)

Alena KOSTORNAIA(RUS) 203.50(71.08(41.05,30.03) 132.42(71.16,61.26)) 優勝(2)

 

Alena KOSTORNAIA(RUS) 198.38(70.24(39.47,30.77) 128.14(68.22,60.92) 優勝(5)

Yelim KIM(KOR) 196.34(69.45(40.68,28.77) 126.89(70.40,57.49)) 2位(5)

Anna SHCHERBAKOVA(RUS) 195.56(65.07(36.26,29.81) 130.49(71.87,59.62)) 優勝(4)

Yelim KIM(KOR) 191.89(61.63(34.55,27.08) 130.26(72.39,57.87)) 2位(3)

Alena KANYSHEVA(RUS) 191.84(67.77(39.66,28.11) 124.07(67.55,56.52)) 2位(2)

Anastasia TARAKANOVA(RUS) 190.69(64.56(36.30,28.26) 126.13(68.01,58.12)) 2位(4)

Anastasia TARAKANOVA(RUS) 190.05(63.98(35.89,28.09) 126.07(69.49,56.58)) 優勝(6)

 

Anna TARUSINA(RUS) 188.24(65.74(38.20,27.54) 122.50(65.46,57.04)) 2位(6)

Kseniia SINITSYNA(RUS) 187.91(67.12(39.87,27.25) 120.79(66.96,55.83)) 3位(3)

Alena KANYSHEVA(RUS) 187.55(67.75(39.22,28.53)) 119.80(61.77,58.03)) 2位(7)

Anna TARUSINA(RUS) 186.68(67.14(39.82,27.32) 119.54(63.31,56.23)) 2位(1)

横井ゆは菜(JPN) 184.09(57.62(32.99,25.63)) 126.47(71.32,55.15)) 3位(7)

Young YOU(KOR) 183.98(64.45(36.17,28.28) 119.53(65.89,54.64)) 3位(1)

Viktoria VASILIEVA(RUS) 182.87(64.53(37.76,26.77) 118.34(65.69,52.65) 3位(5)

Haein LEE(KOR) 180.48(63.01(36.89,26.12) 117.47(64.58,52.89)) 3位(6)

 

荒木菜那 176.50(60.93(36.19,24.74) 115.21(62.75,52.46)) 5位(5)

吉岡詩果 175.19(59.95(34.24,25.71) 115.24(64.96,50.28)) 6位(5)

住吉りをん 174.96(55.07(32.12,24.95) 119.89(64.97,54.92)) 3位(4)

川畑和愛 173.84(58.89(31.98,26.91) 114.95(60.37,54.58)) 5位(1)

横井ゆは菜 173.15(51.65(28.28,24.37) 121.50(66.41,55.09)) 6位(1)

住吉りをん 171.65(59.80(33.78,26.02) 111.85(58.19,53.66)) 4位(6)

川畑和愛 167.49(66.85(38.64,28.21) 100.64(46.77,55.87)) 5位(6)

荒木菜那 165.80(63.06(37.23,25.83)) 102.74(51.02,53.72)) 5位(7)

吉岡詩果 165.42(56.11(32.55,23.56) 113.71(63.02,50.69)) 3位(2)

 

青木祐奈 154.24(54.81(28.58,26.23) 99.43(47.78,51.65)) 7位(4)

岩野桃亜 153.94(53.49(27.04,26.45) 100.45(49.81,51.64)) 5位(3)

滝野莉子 147.07(50.00(25.92,25.08) 97.07(48.6,49.61)) 7位(2)

横井きな結 126.98(45.68(23.59,22.09) 81.30(37.50,44.80)) 14位(3)

 

 

期せずして、180点以上と日本勢を並べることで、各大会の上位3位以内はすべてそろい、4位以下は日本勢の記録のみ、という形になりました。

 

優勝は7/7でロシア勢。ロシア勢の全勝でした。

2位は5/7がロシア、2/7が韓国となり、ロシア勢のパーフェクトゲームは韓国のキムイェリムにより封じられました。グランプリファイナルへの進出は5/6がロシア勢で、残りの1枠が、この韓国のキムイェリムになっています。

 

3位表彰台は2/7がロシア、2/7が韓国 3/7が日本

日本勢は3位表彰台に乗るのがやっと、という結果でした。

全7試合で、表彰台に乗ったのはロシア、韓国、日本の三つの国籍の選手のみです

ちょっと、競技としてこれはいかがなものか、という状態になってきている感は否めません

 

それはそれとして、全体を振り返ります

 

ジュニアの大会でありながら、200点オーバーが3選手4回もありました

いずれもロシア勢ですが、中でもトゥルソワ選手は、220点オーバーを2試合続けました。

シニアのチャレンジャーシリーズでも、220点を超えるスコアを出したのはザギトワ選手ただ一人です

ショートの技術点は2試合で44.06に44.18 フリーの技術点は86.26と85.27

いずれもザキトワ選手のそれを上回り、ここまでの今シーズンのベストスコアです。フリーは、コレオシークエンスがジュニアにはないので、要素が一つ少ないにもかかわらず技術点がシニアのトップ選手のさらに上を行ったわけです

これはひとえに四回転のおかげ、ということになります

 

四回転は初戦となったカウナスでの試合では冒頭に四回転ルッツが回転不足で減点、次に四回転トーループを単独で転倒、三つ目のジャンプが4T-3Tのコンビネーションで、これがGOE加点付き、ジャッジによっては+4もつく素晴らしいジャンプになりました。

四回転3本のプログラムで、きっちりすべてがきめられなかったことで少し考えなおしたのか、二戦目は冒頭の四回転ルッツだけにして、GOE±0になっています

失敗はありつつも、二試合とも四回転決めてるんですよね。恐ろしい

 

ここまで行ってしまうと誰も勝負ができないか? というと、そうでもなくて、ショートフリーでトリプルアクセル3本入れられる選手なら、まだかろうじて勝負可能だと思います

理由は、トゥルソワ選手にトリプルアクセルがないからです

ショートプログラムでは、シニアに上がっても、アクセルジャンプを必ず飛ばなくてはいけない、というルールがあります。

そのため、たとえ四回転ルッツが飛べようとも、トリプルアクセルが飛べなければ、ショートプログラムではダブルアクセルが組み込まれます。

ダブルアクセルトリプルアクセルの基礎点の差は4.7あります

四回転ルッツと三回転ルッツの差は5.6

四回転ルッツが飛べること、の方が優位ではありますが、どうにもならないほどの差ではありません。

フリーでも、四回転ルッツが一本入るだけなら、トリプルアクセル2本入れられれば問題なし。四回転ルッツと四回転トーループで2本入ってくると、少々差は開きますが、やはりどうにもならない、というほどまでの差ではないです

つまり、ショートフリーで合計四回転三本までなら、トリプルアクセル三本備えた紀平梨花選手で何とか勝負になる、ということです

トゥルソワ選手は、四回転ジャンプ以外の得点能力も極めて高いので、その辺でもしっかり互角に戦う、という前提が必要ではありますけどね

その域にまで入ってくると、逆にトリプルアクセル以上のジャンプがないザギトワ選手では苦しくて、紀平選手しかチャンスがない、ということになるわけです

(なお、ジュニアではそもそもショートプログラムで四回転もトリプルアクセルも、ルール上飛べないので、上記の仮定の話は、シニアルールでの勝負に場合、という前提です)

 

今シリーズでは、もう一人、シェルバコワ選手が2戦目のリッチモンドの試合で四回転ルッツに挑みましたが、これは回転不足の転倒となりました。

 

シェルバコワ選手は、四回転を飛んだことがある、という選手ですが、四回転の安定度という点ではトゥルソワ選手に二歩くらい譲るようです

トゥルソワ選手は過去にはサルコウでも四回転を飛んでいるので、これで3種類の四回転を飛んだことになります。体力的な面もあるので、一つのプログラムで3種類入れられるか? となると苦しいのだろうとは思いますけど、万が一これが一つのプログラムでそろったら、だれも太刀打ちできません・・・

 

トゥルソワ選手の今後の課題は、いつまでいまのままのジャンプの能力を持ち続けられるか? ということになってくるのだろうと思います

オリンピックと年齢の関係としては、メドベージェワ選手と同じで、オリンピックシーズンの次のシーズンに世界ジュニアを勝ち、次のシーズンにシニアに上がり、二シーズンはほぼ無敗で抜けて、さあオリンピックシーズンへ、そのころ17歳、怪我とかしないといいけれど、さらに下からすごいジュニアが上がってこなければいいけれど、というシナリオになります

 

トゥルソワが頭三つくらい抜け出てしまっているので、今シーズンはこのまま敵なしで行くんだろうな、というのはほとんど目に見えている感じです

彼女が負けるとしたら、フリー冒頭で四回転を飛ぼうとして回転不足で転倒、その後も意地になって四回転に挑んですべて回転不足で合計三回転倒、とでもなった時くらいでしょうか

 

二番手争いもロシア勢で200点超えを見せた、コストルナヤとシェルバコワの二人が軸なようですね

ただ、この辺になってくると、トゥルソワほどの圧倒的度合い、というのはないです

四回転が決まる確率が高い、というわけでもないですし、四回転ではないジャンプでも転倒することがあります。

二人のうちだと、コストルナヤの方がプレゼンテーションスコアを高く出せることもあって、やや優位なような印象です

昨シーズンの世界ジュニアでトゥルソワに次ぐ二位に入ったのもコストルナヤですしね

この二人は二戦して200点台と190点台、悪い方は200点に届いていないわけですが、4番手以下のロシア勢のいい方の点数は、彼女たちの悪い方の点数を下回りますので、二番手三番手はこの二人、と言い切っていいのでしょう

 

ロシア勢以外では韓国勢が気を吐きました

ロシア以外で唯一ファイナルに進んだのは韓国のキムイェリム

ジュニア三シーズン目で、年齢的にはシニアに上がることもできたのですが、今シーズンはジュニアで戦うようです

2戦とも190点台を並べての2位

フリーの技術点は二試合とも70点を超えていて、シェルバコワ、コストルナヤとも戦える水準です

きれいな滑りをしているのですが、ジュニア感がすごく出ていて、きれいな滑りだからこそ何か全体的に薄い、という印象になってしまう部分もあり、その辺がプログラムコンポーネントが伸びないところに効いているでしょうか

ただ、昨シーズンまでは、特に目立つ選手なわけでもなく、ロシア勢、日本勢の次の勢力の中の一人かな、くらいの位置づけだった選手が、ここにきて、ロシアに対抗できるジュニア選手は自分一人だけ、みたいな水準まで上がってきました

ファイナルで、もしかしたらシェルバコワ、コストルナヤのどちらかを抑えて表彰台に上がる可能性もあるし、世界ジュニアでそうなる可能性もあります

 

韓国勢で表彰台に乗ったのはあと二人

韓国選手権で最年少優勝を果たし、キムヨナ二世、天才、という扱いを受けてきたユヨン

昨シーズンは今一つ結果が出ませんでしたが、今シーズンはしっかり一つ表彰台に乗ってきています

ただ、そんなにもてはやすほどの天才性、というのは、正直なところ感じない、というのが実感です

ショートは60点台前半まで。フリーも110点台、という範疇なので、合計180点台まではのりますが、その辺が精いっぱいというところです

ショートフリー、それぞれで三回転-三回転を一回づつ、2試合合計で4回飛んだわけですが、しっかり決まったのは1回だけでした。

そのあたりが、まだまだ、と感じさせられる所以かもしれません

実際のところ、日本だと、ジュニア二シーズン目でこれくらいできる選手は、最近毎年いたので、あまり驚かないんですよね

世界ジュニアの枠が韓国は二つ。出てくることができるかどうか、というラインにいるように見えます。

出てきたら、日本勢と最終グループ入りや、来期の出場枠3枠を賭けての順位争いをする相手、ということになりそうです

 

もう一人表彰台に乗った韓国勢は、ジュニア一年目のイ・ヘイン

なんというか、キムヨナ風?

手の動かし方とか、そんなあたりが

この世代の韓国選手は、明らかに、キムヨナを見てスケート始めました、みたいなパターンが多いのでしょう

最初はそれで、マネから入ってもいいんだと思いますし、13歳ならまだそれもありだと思いますが、この先シニアに上がっていって、何かを表現する、ということをスケートの中でして行くのであれば、自分の滑りというのをしてほしいなあ、と思ったりしました

 

 

上位に来る選手の国籍が偏っている、というのは少し寂しいですね

 

長くなってきていますので、今回は海外選手、というかロシアと韓国だけになってますが、それだけで終わりにして、日本人選手については次回としたいと思います