全日本選手権終了後、全米選手権とかロシアカップファイナルとか、各国の国内大会は行われてきましたが、国際大会はほとんど行われず(いくつかやってたものもあるにはありましたが)
というまま、一気に世界選手権を迎えるという、異例中の異例の展開をしている今シーズン。
ようやく、そんな、久しぶりの本格的な国際大会が迫ってきました
すでに二週間は切ってますし、選手たちは入国を済ませているでしょうか。これ、今からケガとか起きた場合、補欠は入国できるの? などなど疑問もあるのですが、普通に大会は行われ、今からエントリー変更もない、として話を進めます
今シーズンは、似非グランプリシリーズがあるにはありましたが、それには参加していない選手もおり、シーズンベストスコアを並べて比較、みたいなこともできません。国内選手権の記録でも持ってくれば可能ではありますが、基準差があまりにもありすぎるのでそれもやりたくないです。まあ、グランプリシリーズの方も、全員ロシア人ジャッジのロステレコム杯と、全員日本人ジャッジのNHK杯で比較とか、そんなことしたくないですし
というわけで今回はスコア並べるようなことはせずに、雑多に見どころかな、と思うところを見ていきたいと思います
まずは女子シングルです
●誰が勝っても初優勝 にはならず
昨シーズンのメンバーだと、誰が勝っても初優勝、という大会だったのですが、今シーズンはメンバーが入れ替わって誰が勝っても初優勝とはなりませんでした。ロシアからトゥクタミシェワ選手が代表に入りました。いろいろありまして、ロシアではなくてFSR(Figure
Skating Russia)らしいですが、めんどくさいのでロシア扱いで話は続けます
トゥクタミシェワ選手は2015年大会の優勝者。それ以来6年ぶりの代表入りです。ロシアの代表は基本的に、一度外れたら二度と復活できない、という構図がしばらく続いていたのですが、奇跡的ともいえる復活です。本人は順位を気にせず楽しみたい、みたいなことを言っているようですが、たぶん本音なんだろうなあ、という気がします。
●優勝争いは三人?
優勝争いはロシアからシェルバコワ選手、トゥルソワ選手、それに日本から紀平梨花選手の三人までかな、と感じます。240点を超える基礎点構成を組めるのはこの3人までしかいません。
トゥルソワ選手がノーミスしたら誰も勝てないでしょう。ただ、ノーミス率はあまり高くない、というか、たぶんゼロです、本当のノーミス率は。それでも軽い一つや二つのミスなら勝ち。ルッツ二本にサルコウにトーループ、4回転四本飛ばれたら女子では太刀打ちできません。それが当たるかどうか? その前にその構成を組める調子かどうか?
四回転と安定感を兼ね揃えているのは今のところシェルバコワ選手なようです。ロシア選手権ではフリー183.79のお化けスコア。スコアそのものはともかくとしても、四回転のルッツとフリップ、どちらもしっかり着氷したのは紛れもない事実です。
ロシアの両選手は今シーズンロシア国内大会で240点台をポンポン出してきています。ただ、それはあくまで国内参考記録。国際大会基準で見れば230点台にまでは降りてくる、という見方もできます
ロシアの両選手に対抗する紀平選手は今シーズンまだ全日本の一試合のみです。この一試合で四回転サルコウを初の成功。全体の構成としてはまだフル構成ではなく、いくらか取りこぼしのある中で234.24というスコアでした。230点台は二シーズン前は1試合だけでしたが、昨シーズンは4試合で出していて、高い確率で出せるスコア。そこに四回転サルコウを乗せたことで240点までは見えています。トゥルソワ、シェルバコワ、両選手がノーミスしたら届かないですが、ほどほど程度の演技なら届く可能性がある領域かと思います。
まずは三人の中でただ一人、完成したトリプルアクセルを持っているので、ショートでリードを奪いたいところ。ISU公認で80点を超えているのは、エントリー選手全体で紀平選手のみです。
●トゥルシンバエワ選手がいない
二シーズン前に2位表彰台に乗ったもう一人の四回転実績者、トゥルシンバエワ選手がエントリーしていません。昨シーズンもケガでほぼ滑っていませんでしたが、今シーズンも姿を見せずに終わることになりました。これで、直近の世界選手権のメダリストが誰もいない、ということになっています。世界選手権のメダル所持者のエントリーは、前記のトゥクタミシェワ選手以外では宮原知子選手のみとなっています。
トゥルシンバエワ選手のいるいないは、各国三枠争いに大きな影響を与えるのですが、彼女の欠場によって、楽になる国、可能性が広がる国、というのが出てきています。
こっそり三枠持っていたカザフスタンですが、今大会はエントリーそのものが無し。オリンピックは一枠、というか、ネーベルホルン杯経由で枠取り争いしてからの一枠、で臨むことになります。
●三枠争いは、露、日に、米までチャンス、韓は苦しいか
今回の大会で三枠持っているのはロシアと日本の二カ国です。ロシアは次も当確でしょう。トゥルソワ選手は大崩れして二桁順位という可能性がゼロではないですが、シェルバコワ選手は多少崩れても表彰台には残りそうですし、トゥクタミシェワ選手も一桁順位は固い。
日本も高確率で3枠取れそうです。坂本花織選手の好調さがありがたい。紀平選手が標準ケースで表彰台、多少悪くて5位まで落ちてきても、坂本、宮原両選手のどちらかが8位にまで入れば3枠は確保できます。
米国もチャンスあります。今回はブレイディテネル選手とカレンチェン選手になりました。カレンチェン選手は前回のオリンピック枠取り試合で4位に入り、米国3枠確保に貢献した大功労者。5位8位、あるいは6位7位というくらいの位置を確保するには、少なくとも日本勢の誰かを蹴落とさないとならず、韓国勢も二人とも押し退けたいところですが、メンバー的にはチャンスがある。
韓国は少し苦しいでしょうか。昨シーズンならユヨン選手がいて、うまくいけば4位でもう一人9位、という芽があったのですが、今回はいない。今回は韓国選手権初優勝のキムイェリム選手と、シニアに上がったばかりのイ・ヘイン選手。二人とも世界選手権初出場で、韓国選手権のスコアは200点に届かず。少し厳しいかな、という印象です。
●カナダ、二枠は守れる?
前回のオリンピック枠取り試合ではオズモンド、デールマン二枚看板がダブル表彰台で三枠を楽々確保したカナダですが、今回は三枠の芽はほとんどありません。現在二枠を持っている数少ない国の一つですが、今回のエントリーはグランプリシリーズの出場経験もない、エミリーボースバック選手と、マデリーンシザス選手の二人です。デールマン選手は補欠。
2枠を確保するには片方が24位でもう片方が12位以内に入るか、13位15位となるか、あたりですが、170点台の力で12位以内に入って来るのはなかなか厳しいものがあります
●有力国以外の200点台
ベルギーのルナヘンドリックス選手が200点台の実績を持っています。過去の実績だけでなく、今シーズンも先日行われたチャレンジカップで204.68のスコアを出しました。チャレンジカップは紀平選手が二連覇していた、四大陸と世界選手権の間にある調整大会です。今シーズンも実はやってました。ロ日米の合計8選手は200点をはるかに超えるベストスコアを当然持っています。200点実績のある選手はその次、9番目あたりまでは入ってくる可能性があり、場合によっては上位三カ国で崩れた選手の上に出て、三枠獲得争いの妨害役になる、という可能性もあります。また、10位以内に入れば自分の国の出場枠を二つに出来ますのでそこも注目です
また、ポーランド代表のエカテリーナクラコワ選手も19-20シーズンに201.47の実績があります。クラコワ選手はかつてはロシアの選手でした。
というわけで、まずは女子シングルのプレビューでした