USインターナショナル トゥルソワ登場

今シーズンはチャレンジャーシリーズから外れて、いわゆるB級大会、インターナショナルコンペティション扱いとなったUSインターナショナル。同スケジュールでカナダでチャレンジャーシリーズやってますから、アメリカローカルの格落ち試合になるかと思っていたのですが、まさかのトゥルソワ選手エントリーで、全く違った装いとなりました。

 

○女子シングル(シニア)

Pl Name Nation Total SP FS
1 Alexandra TRUSOVA RUS 216.80 74.75 142.05
2 Yeonjeong PARK KOR 212.40 71.07 141.33
3 Gabriella IZZO USA 182.76 63.93 118.83
4 Sierra VENETTA USA 177.40 61.60 115.80
5 Paige RYDBERG USA 154.03 58.24 95.79
6 Taylor MORRIS ISR 142.16 49.09 93.07
7 Maxine BAUTISTA USA 138.08 45.71 92.37
8 Tara PRASAD IND 129.19 44.66 84.53
9 Katherine ONA ECU 64.05 20.73 43.32

結果的に、チャレンジャーシリーズであるオータムクラシックの優勝スコアより、USインターナショナルの3位のスコアの方が高い、という現象が生じました。

優勝はトゥルソワ選手。当然なようで当然なスコアでもなく、216.80にとどまっています。ショートは今のところ織り込み済みとも思われるトリプルアクセルの転倒以外は良かったのですが、フリーが伸びず、本人比では平凡なスコアに終わりました。210点台だとロシア選手権では表彰台はおろか6番にも入れないかもしれないようなスコアです。

このトゥルソワ選手に迫ったのが韓国のパクヨンジョン選手。2006年1月19日生まれのワリエワ世代。今シーズンシニアデビューの15歳はこの試合がシニアデビュー戦。ショートではまさかの70点越えで2位につけてのフリー。パーソナルベスト122点台の選手がほぼミスのない演技でPCSではトゥルソワ選手を上回り、TESも76.40というハイスコアを出してきています。212.40は韓国歴代で3位。現役では2位のスコアです。ただし、B級大会なのでISU公認スコアにはなりません。昨シーズン韓国選手権8位の選手が一躍代表候補に躍り出てきました。

 

○アレクサンドラトゥルソワ選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   -4.00 4.00 -4.800
2 3F   5.30   1.77 7.07 3.400
3 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.200
4 3Lz+3T   11.11 x 1.97 13.08 3.400
5 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
6 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.800
7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000
  Total BV:   37.71   4.12 41.83  

ショートプログラムではトリプルアクセルを入れ後半にコンビネーションという、女子でこれ以上の基礎点を出すにはルッツループを入れるしか後はない、というハイレベル構成です。トリプルアクセルは転倒。これは今の時点では織り込み済みでしょうし、トリプルアクセルが完成しなかった場合は大事な試合ではダブルアクセルにするでしょう。他の要素はすべてGOEが+3以上でした。

 

○アレクサンドラトゥルソワ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4F   11.00   -5.50 5.50 -5.000
2 4S   9.70   2.59 12.29 2.400
3 2A+3T   7.50   1.12 8.62 2.600
4 2T   1.30   -0.04 1.26 -0.400
5 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.200
6 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.000
7 4Lz< < 10.12 x -4.29 5.83 -4.600
8 4Lz+1Eu+3S< < 16.98 x -4.98 12.00 -4.000
9 3Lz+3T   11.11 x 0.98 12.09 1.600
10 FCSp4   3.20   0.43 3.63 1.400
11 StSq4   3.90   0.78 4.68 2.200
12 FCCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.600
  Total BV:   84.81   -6.16 78.65  

フリーは4回転4種類5本構成。決まったのはサルコウ1本のみでした。サルコウは比較的成功率の低いジャンプだったと記憶していますが今回は意外にもこれのみが決まりました。

2回飛ぶジャンプが四回転ルッツと三回転のトーループという驚異の構成。しかもルッツは二つとも後半。最後のジャンプもコンビネーション。トリプルフリップも余っているのにダブルアクセルを入れているということは、本人の意思としては、三つ目の要素はトリプルアクセルを入れたいのだろうと思われます。これだけ失敗が並んでも基礎点84.81の鬼構成ですが、回転が全部足りた場合、ダブルアクセルのままでも基礎点から96.49というとてつもない構成で、トリプルアクセルが入れば基礎点100点に達します。

ただ、まだまだ確率は低い構成、というのが現実なのではないかと思われます。

当たれば大きい、誰も手の届かない領域の点数が出せるトゥルソワ選手ですが、ミスが出ると210点台までは落ちてくる。そしてそれは結構な確率で起こる。ロシア選手権、オリンピック、二試合でショートフリー共に大きなミスなく乗り越えないと金メダルはありません。それを実現できるかどうか? かなり難しい、というのが今の状況ですので、勝つことだけを目指すなら、トリプルアクセルの習得を目指すより、今の四回転構成の精度を上げることを目指す方がよい。ただ、トゥルソワ選手はそういう選手ではないようにも感じます。

 

○男子シングル(シニア)

Pl Name Nation Total SP FS
1 Michal BREZINA CZE 238.65 87.48 151.17
2 Jimmy MA USA 233.58 84.07 149.51
3 Eric SJOBERG USA 221.12 78.11 143.01
4 Camden PULKINEN USA 208.99 66.84 142.15
5 Donovan CARRILLO MEX 208.41 77.48 130.93
6 Maxim NAUMOV USA 207.39 69.99 137.40
7 Daniel SAMOHIN ISR 207.36 66.54 140.82
8 Mark GORODNITSKY ISR 186.82 64.24 122.58
9 Dinh TRAN USA 176.72 65.77 110.95
10 Christopher CALUZA PHI 175.64 62.03 113.61

男子シングルではベテランのブレジナ選手が優勝しました。ショートは80点台後半まで出していてフリーは150点に乗せました。今年の世界選手権では19位でオリンピック枠を確保しているチェコブレジナ選手。もし出場が叶えば4大会連続の出場となります。バンクーバーに出場して現在も現役を続けている男子シングル選手は、種目変わった高橋大輔選手とブレジナ選手だけです。高橋大輔選手は平昌に出ていませんので、4大会連続が可能なのはブレジナ選手のみとなります。今大会ではショートフリーともに四回転サルコウを決めました。

2位にはアメリカのジミーマー選手が入りました。233.58はパーソナルベスト。アメリカのオリンピック枠はネーベルホルン杯で取れれば3枠になりますが、上位の壁は厚い。昨シーズンの全米選手権は6位。ネイサンチェン、ジェイソンブラウン、ヴィンセントジョー、といった壁を超えないとオリンピックはありません。今大会ではショートフリーで三本の四回転トーループを決めましたが2種類目は入っていません。

平昌オリンピックに出場した経験のあるイスラエルのダニエルサモーヒン選手は207.36で8位。ショートフリーとも一つだけ入れた四回転のサルコウは転倒。近年はスコアも上がらず苦しんでいますが、復活はあるでしょうか?

 

まさかのトゥルソワ選手エントリーでいきなりレベルが上がったUSインターナショナルでした。おそらく今のコロナの状況で、カナダよりもアメリカの方が入出国が容易だったからこちらを選んだ、ということのような気はします。

ロシアの上位勢はチャレンジャーシリーズでは10月7日からのフィンランディア杯にエントリーしています。コストルナヤ、トゥクタミシェワ、ワリエワ三選手が入っていて、シェルバコワ選手はサブスティチュートです。チャレンジャーシリーズと言えど、同国籍選手は3人までのエントリーになります。