四大陸選手権 月への階段

四大陸選手権、男子は宇野選手の逆転優勝で幕を閉じました

大逆転大逆転と煽られている部分もありますが、普通に滑れば逆転するでしょ、というメンバーと点差だったようにも見えました。

女子に続いて、男子も上位選手について点数傾向なんかを振り返ってみたいと思います

 

 

優勝、宇野選手

 

Event StN TSS TES PCS Deduction
Skate Canada 11 88.87 46.63 43.24 1.00
NHK Trophy 11 92.49 48.91 44.58 1.00
Grand Prix Final 6 91.67 46.88 44.79 0.00
Four Continents Championships 22 91.76 46.94 44.82 0.00

 

ショートプログラム、失敗して4位、みたいな取り上げられ方をしていましたが、実際には今シーズンは大体こんなもの、という出来でした。全日本やチャレンジャーシリーズでは100点を超える点数を出していましたが、グランプリシリーズ以降の国際大会では90点前後の得点が並びます。3S-3Tという要素が入っていたりとか、出来栄え以前に今一つな構成だったりもしましたが、ショートがこれくらいな点数なのはいつものこと、になっています。

出場選手がもう一レベル上がる世界選手権では、さすがに同じ展開は効かないのでショートからしっかり滑らないといけない、ということになります

 

Event StN TSS TES PCS Deduction
Skate Canada 11 188.38 101.74 88.64 2.00
NHK Trophy 11 183.96 94.18 89.78 0.00
Grand Prix Final 6 183.43 93.29 90.14 0.00
Four Continents Championships 19 197.36 104.48 92.88 0.00

 

フリーはここまで180点台が並んでいたところから、今シーズン初めて190点台後半まで伸ばしてきました。気持ちの入った演技、という言葉が、様々な場面で解説者によって使われることがありますが、本来はこういう演技に対して使うべき言葉なんだろうな、と思わされる演技でした。

これまでの試合ではフリーの四回転は四本だったところ、今回は三本。この三本ともすべてが加点の付くジャンプになりました。これまでは四本入れても少なくともどれか一本は回転不足+減点でしたので、結果的に四回転が一本減っても完成度でカバーできています

また、PCSが92.88 気持ちとしてはもっと出てもいいんじゃないか、という気にさせてくれる演技でしたが、残りが5人もいるとちょっと抑えざるを得ない、という部分もありつつ、一方、そもそも92.88でも今シーズングランプリシリーズ以降でこれをより高いPCSを出したのは、ハビエルフェルナンデス選手のヨーロッパ選手権の引退演技のみ、ということですので、十分すぎるくらいにハイレベルだったんだな、ということも言えます。

 

 

二位はボーヤンジン選手

今シーズンはかなり調子を落としていましたが、今大会はショートもフリーもシーズンベストでした。

 

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lz   11.50   -2.46 9.04 -2.111
2 4T+2T   10.80   1.49 12.29 1.556
3 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.667
4 3A   8.80 x 2.29 11.09 2.889
5 CSSp4   3.00   0.77 3.77 2.556
6 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.333
7 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
  TES   44.70   5.15 49.85  
1 4Lz   11.50   -2.14 9.36 -1.889
2 4T+2T   10.80   0.81 11.61 0.889
3 3A+1Eu+3S   12.80   1.60 14.40 1.889
4 FCSp3   2.80   0.64 3.44 2.333
5 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.556
6 4T   9.50   1.76 11.26 1.889
7 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.111
8 3Lz+3T   11.11 x 0.67 11.78 1.111
9 3F   5.83 x 0.76 6.59 1.444
10 CSSp4   3.00   0.64 3.64 2.111
11 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.778
12 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.222
  TES   86.54   10.50 97.04  

ショートもフリーも、減点要素は一つ、単独の四回転ルッツのみです。基礎点の高いジャンプなので、多少GOEでマイナスがあっても四回転一本分の点数が普通に入るので、全体としてきちんと高得点が出ました。

本人比でGOEが一番良かったのがショートはステップ、フリーはコレオ、というところは、ボーヤンジン選手のイメージからするとかなり意外な感じです。かつてのジャンプ先行の状況から、かなりトータルパッケージとしてのレベルが上がってきたんだなあ、と感じさせられる部分でもあります

 

三位はヴィンセントゾー選手

やはりショートもフリーもシーズンベストでの3位でした

 

Event   Name Elements  BaseValue GOE Scores
Skate America SP Vincent ZHOU 4Lz<+3T 12.83 -1.36 11.47
Skate America FS Vincent ZHOU 4Lz+3T< 14.65 -0.66 13.99
GP Helsinki SP Boyang JIN 4Lz+3T< 14.65 -5.75 8.90
NHK Trophy SP Vincent ZHOU 4Lz<+3T 12.83 -1.23 11.6
Europe Championships SP Alexander SAMARIN 4Lz+3T 15.7 3.94 19.64
Four Continents Championships SP Vincent ZHOU 4Lz+3T 15.7 3.78 19.48
Four Continents Championships FS Vincent ZHOU 4Lz+3T< 14.65 0.49 15.14

今シーズンここまで4Lz-3Tというフィギュアスケートの歴史上最難度最高得点のコンビネーションジャンプを飛ぼうとしている選手は3人いますが、どの大会でもチャレンジしてきているのはこの選手だけです。そして、回転不足なしでのGOEがプラス、すなわち成功ジャンプとして4Lz-3Tを今シーズン跳んだ二人目の選手になりました。単独要素で19.48というのは今大会の最高得点になります

 

ただ、まだまだジャンプ先行な感じがあって、ショートは100点越えの得点は出しましたが、PCSは全体六位。フリーもPCSは全体六位でした。PCSがもう少し出れば2位まで入ってくることができたと思うのですが、今後は、ジャンプと、その他の要素・構成とのバランスというのが課題になってくるのかと思います。

 

 

四位はキーガンメッシング選手

 

Event   Pl TSS TES PCS Deduction
Skate Canada SP 1 95.05 52.81 42.24 0.00
Skate Canada FS 2 170.12 83.90 87.22 1.00
Rostelecom Cup SP 7 73.83 33.87 40.96 1.00
Rostelecom Cup FS 6 146.92 68.70 80.22 2.00
Grand Prix Final SP 6 79.56 37.56 42.00 0.00
Grand Prix Final FS 5 156.49 74.93 83.56 2.00
Four Continents Championships SP 5 88.18 45.75 42.43 0.00
Four Continents Championships FS 3 179.43 91.09 88.34 0.00

ショートもフリーも転倒なく高いレベルで滑って四位に入ってきています。本当は表彰台に乗りたかった部分はあるかとおもいますが、少なくともフリーはこれ以上は無理、というベストな演技だったのだろうと思います。

三位との差は4.61

今大会ではショートプログラムの三つすべてとフリーでも一つ、スピンのレベルが3でした。またフリーのステップもレベル3. さらにはフリーでは三連続ジャンプが入っていないので、その辺をすべてしっかりレベルを取っていれば、3位表彰台もあった点差ではありますが、ちょっとそこまではおそらく望みすぎで、いい演技をしたな、で終わってよいのだろうと思います。

 

 

五位にはジェイソンブラウン選手が入りました

三位との点差は13.33ポイント

 

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3F   5.30   2.12 7.42 4.000
2 3A< 6.00   -2.91 3.09 -4.667
3 FSSp4   3.00   0.34 3.34 1.333
4 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
5 3Lz+3T   11.11 x 2.19 13.30 3.667
6 CCSp4   3.20   1.42 4.62 4.444
7 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
  TES   36.01   5.78 41.79  
1 4S< 7.28   -3.54 3.74 -4.778
2 3A+3T   12.20   2.51 14.71 3.111
3 3S   4.30   1.23 5.53 2.889
4 FCSp4   3.20   1.23 4.43 3.778
5 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.222
6 3Lo   4.90   0.70 5.60 1.333
7 3A< 6.60 x -1.71 4.89 -2.667
8 3F+3T   10.45 x 1.29 11.74 2.444
9 3Lz+2Lo+2Lo   10.23 x 1.77 12.00 2.889
10 FCCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
11 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.889
12 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
  TES   73.06   9.40 82.46  

上位との差はとにかく高難度ジャンプですね。4回転はまだ仕方ないにしても、ショートフリーで三本飛んだトリプルアクセルのうち2本が回転不足というのではちょっと辛いです。

4回転サルコウは回転不足で得られた点数は3.74  4回転ではなく3回転のサルコウにしていたら、という仮定は、三回転サルコウが2回になってしまうのであり得なくて、この構成の場合は4Sなしだとダブルアクセルになるので、その基礎点3.3と加点がいくらかになる、と考えると、4回転なしの構成にした場合とそう差がない点数になります。点数的にはチャレンジして悪くない選択だった、ということになるでしょうか。正直なところ、出来ない四回転を入れて苦しんでいる姿、というのはあまり見たくなくて、3A以下の構成でも美しい滑りをするジェイソンブラウン選手を見ていたい、という気もするのですが、世界の舞台に出てくるためには4回転の一本もないとつらいのも確かなので、仕方ないんでしょうか。四回転サルコウの早い完成を願っております。

ショートフリー通じて、スピンステップはすべてレベル4 スピンステップ+コレオで取った点数42.23は全体で宇野選手に次ぐ二番目でした。

 

 

  Name Nation Elements  BaseValue   GOE Scores  
SP Vincent ZHOU USA StSq4 3.90   1.39 5.29 3.556
SP Junhwan CHA KOR 4S 9.70   3.74 13.44 3.778
SP Junhwan CHA KOR StSq4 3.90   1.45 5.35 3.667
SP Shoma UNO JPN 3A 8.80 x 2.97 11.77 3.667
SP Shoma UNO JPN StSq4 3.90   1.62 5.52 4.111
SP Shoma UNO JPN CCoSp4 3.50   1.40 4.90 4.000
SP Keegan MESSING CAN FCSp3 2.80   1.00 3.80 3.556
SP Jason BROWN USA 3F 5.30   2.12 7.42 4.000
SP Jason BROWN USA 3Lz+3T 11.11 x 2.19 13.30 3.667
SP Jason BROWN USA CCSp4 3.20   1.42 4.62 4.444
SP Jason BROWN USA StSq4 3.90   1.62 5.52 4.111
FS Shoma UNO JPN ChSq1 3.00   1.79 4.79 3.556
FS Shoma UNO JPN StSq4 3.90   1.50 5.40 3.889
FS Shoma UNO JPN CCoSp4 3.50   1.40 4.90 4.000
FS Keegan MESSING CAN 3Lz 5.90   2.19 8.09 3.667
FS Keegan MESSING CAN FSSp4 3.00   1.16 4.16 3.889
FS Keegan MESSING CAN StSq3 3.30   1.18 4.48 3.556
FS Keegan MESSING CAN ChSq1 3.00   1.86 4.86 3.778
FS Keegan MESSING CAN CCoSp4 3.50   1.55 5.05 4.444
FS Jason BROWN USA FCSp4 3.20   1.23 4.43 3.778
FS Jason BROWN USA ChSq1 3.00   2.21 5.21 4.222
FS Jason BROWN USA FCCoSp4 3.50   1.25 4.75 3.556
FS Jason BROWN USA CCoSp4 3.50   1.35 4.85 3.778
FS Keiji TANAKA JPN ChSq1 3.00   1.79 4.79 3.556
FS Junhwan CHA KOR StSq4 3.90   1.39 5.29 3.556

 

最後に、今大会でGOEが+3.5以上付いた要素を並べます

件数が多い選手は、ジェイソンブラウン選手が4+4の8件、宇野選手が3+3の6件、キーガンメッシング選手が1+5で6件 この三選手です。

最高評価はジェイソンブラウン選手のショートでのCCSp4にキーガンメッシング選手のフリーのCCoSp4 やはりスピンは加点を稼ぎやすい傾向はあります

ステップの最高評価は、ショートプログラムの宇野選手とジェイソンブラウン選手でどちらも+4超えの4.222  コレオシークエンスもジェイソンブラン選手が+4.222 やはり踊ることにかけてはこの選手の右に出る者はいない、という形です

そして、ジャンプ要素でも実はジェイソンブラウン選手が最も高いGOEの要素としてもっていて、ショートの3Fが+4.000でした。コンビネーションジャンプとしてもジェイソンブラウン選手のショートでの3Lz-3Tで+3.667が最高。基礎点の高い4回転が入らないので、どうしても表彰台に絡んでくることができないジェイソンブラウン選手ですが、各要素の質の高さが光ります。

 

トリプルアクセルの最高評価はショートの宇野選手で+3.667 四回転の最高評価はショートのチャジュンファン選手の四回転サルコウで+3.778でした。

全体で、フリーでGOE+3.5以上ついたジャンプ要素はキーガンメッシング選手が冒頭に飛んだ3Lzのみ。やはりどうしてもフリーは時間が長いこともあり、一つ一つのジャンプで高いGOEを出すのは難しいようです

 

結局今回は、ある程度高い基礎点の構成を持ち、完成度高くGOEを稼ぎ、PCSもナンバーワンの宇野選手が、勝つべくして勝った、という形となった、というように見えました。