全米選手権22 男子は波乱含みも代表は実績順に

女子もコロナでだいぶ人数減りましたが、男子は最終的にさらに少ない13人になってしまいました。ただ、代表争いに絡む選手の離脱はなく、上位には予想された顔ぶれが残りました。ただ、順番は予想されたものとは異なるかもしれません。

 

○男子シングル結果

Pl Name Total SP FS
1 Nathan Chen 328.01 115.39 212.62
2 Ilia Malinin 302.48 103.46 199.02
3 Vincent Zhou 290.16 112.78 177.38
4 Jason Brown 289.78 100.84 188.94
5 Camden Pulkinen 260.41 90.16 170.25
6 Jimmy Ma 226.98 91.62 135.36
7 Liam Kapeikis 221.31 73.77 147.54
8 Dinh Tran 215.72 71.18 144.54
9 Ryan Dunk 191.36 65.66 125.70
10 Paul Yeung 183.74 60.01 123.73
11 Artur Dmitriev 183.01 62.40 120.61
12 Mitchell Friess 171.19 66.07 105.12
13 Sebastien Payannet 162.28 48.52 113.76
  Yaroslav Paniot 88.68 88.68  

優勝は大方の予想通りのネイサンチェン選手でした。ショートは見たことないスコア。フリーは2転倒ながら210点超え。スコアとしては圧勝。一方で不安も残す結果とも言えます

2位にはジュニアのマリニン選手が入りました。健闘するとは予想されていましたが、ここまで来るのは予想外。ショートは100点超え。フリーも200点に迫るスコアを出しています。

ヴィンセントジョウ選手が3位に残りました。ショートはネイサンチェン選手に迫るスコアでしたがフリーは大崩れ。最近は減ってきたと思ったのですが、こういう大崩れがまた出てしまいましたが何とか3位に踏みとどまった形です。

ジェイソンブラウン選手は僅差の4位。4回転無しでショート100点超えという全米選手権特有なスコアを出してのフリーでしたが逆転表彰台はならず。それでも僅差で続いたこともありオリンピック代表には選出されました。

 

○総合上位6人のショートプログラム構成

  Nathan Chen Ilia Malinin Vincent Zhou Jason Brown Camden Pulkinen Jimmy Ma
1 4F 4Lz 4Lz+3T 3F 4T 4T+3T
2 3A 4T+3T 4Sq 3A 3A 3Lz
3 CCSp4 CCSp4 FCSp4 FSSp4 FCSp3 FCSp4
4 4Lz+3T 3A 3A 3Lz+3T 3Lz+3T 3A
5 StSq4 FSSp4 CSSp4 StSq4 CSSp3 CCoSp4
6 FSSp4 StSq4 StSq4 CCoSp4 StSq4 StSq4
7 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCSp4 CCoSp4 CSSp4
Base 49.87 47.60 47.80 38.01 41.41 42.00
GOE 17.06 14.46 17.02 13.68 7.44 10.13
PCS 48.46 41.40 47.96 49.15 41.31 39.49
Total 115.39 103.46 112.78 100.84 90.16 91.62

ネイサンチェン選手のショートプログラムは1.1倍ボーナスタイムに4Lz+3T、単独ジャンプは4回転のフリップという現行ルールのほぼ最高難度の構成です。これより上は4回転ルッツの後ろに3回転のループを付けるしかない。この構成をミスなく滑り115.39というすごいスコアを出しました。まあ、全米選手権でスコアそのものを云々言っても仕方ない部分はありますが、この構成をミスなく滑ったのは事実です。

マリニン選手、ヴィンセントジョウ選手も4回転ルッツを飛びました。4回転のルッツを飛ぶ選手が3人もいるのが日本とアメリカの違いではあります。

そんな中、4回転無しの基礎点38.01の構成で100点を超えたのがジェイソンブラウン選手。冒頭のトリプルフリップに、ステップシークエンスと最後のスピン、3つの要素で9人のジャッジのうち8人が+5を付け、獲得スコアは満点。演技構成点ではインタープリテーションを全ジャッジ満点で10.00を獲得。すごいスコアがつきました。

 

○総合上位6人のフリーの構成

  Nathan Chen Ilia Malinin Vincent Zhou Jason Brown Camden Pulkinen Jimmy Ma
1 4F+3T 4Lz 4Lz 4Sq 4T+3T 4T
2 4F 4T 4F 3A+2T 4T 4T+REP
3 4S 3A 4S 3A 3A+1Eu+2S 3Lo
4 CCSp4 4S 4Tq CCoSp4 2Lo 3A+2T
5 4Lz FCCoSp3 ChSq1 3Lo StSq3 FCSp4
6 StSq4 StSq4 4Lz+REP 3F+3T FCCoSp4 StSq3
7 4T+1Eu+3F 4T+1Eu+3S 3A+1Eu+3S 3Lz+1Eu+3S 3A+2T 3A
8 3A 3Lz+2Lo FCSp4 ChSq1 FSSp3 3Lz
9 3Lz+3T 3Lz+3T CSSp4 3F 3F 3F
10 CCoSp4 FSSp4 3Aq FCCoSp4 3Lz ChSq1
11 ChSq1 ChSq1 StSq4 StSq4 ChSq1 CSSp4
12 FCCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCSp2 CCoSp4 CCoSp4
Base 101.24 90.30 90.04 76.15 73.15 67.47
GOE 22.32 25.14 -0.50 17.73 14.74 -4.31
PCS 91.06 83.58 88.84 96.06 82.36 74.20
Total 212.62 199.02 177.38 188.94 170.25 135.36

フリーはネイサンチェン選手とヴィンセントジョウ選手の二人は4回転種類5本構成です。すべての要素を回転不足なくつけたネイサンチェン選手が基礎点100点超えとなっています。ヴィンセントジョウ選手は回転不足減点はありませんが、コンビネーションが1つしかつかなかったことで90.04まで基礎点を落としました。

マリニン選手は回転3種類4本でコンビネーションをすべて1.1倍に入れる構成で90.30の基礎点。これをセカンドループが2回転になった以外はほぼ想定通りに滑りました。結果として加点はネイサンチェン選手超え。2位表彰台に繋げました。

ジェイソンブラウン選手は冒頭に4回転に挑んだもののこれは転倒。他は大きなミスなくまとめ、ステップとコレオでは全ジャッジ満点をつけ、基礎点は76.15ながら加点で稼いでヴィンセントジョウ選手を技術点だけでも上回っています。ただ、最終的に表彰台に届かなかったのは、最後の要素のスピンがレベル2になったこと。これがしっかりレベル4あるいはレベル3でも取れていれば表彰台でした。

 

○フリーまで滑った13選手の要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Nathan Chen 328.01 139.52 120.41 29.10 27.93 13.05
2 Ilia Malinin 302.48 124.98 107.90 30.59 24.90 14.11
3 Vincent Zhou 290.16 136.80 107.64 5.15 25.78 15.79
4 Jason Brown 289.78 145.21 84.36 16.71 27.30 17.20
5 Camden Pulkinen 260.41 123.67 85.86 14.40 22.55 13.93
6 Jimmy Ma 226.98 113.69 79.87 0.21 22.36 12.85
7 Liam Kapeikis 221.31 110.68 71.81 8.59 17.18 13.05
8 Dinh Tran 215.72 108.17 72.32 -0.93 22.84 13.32
9 Ryan Dunk 191.36 96.51 71.19 -6.94 21.84 10.76
10 Paul Yeung 183.74 96.39 60.42 -5.78 22.26 11.45
11 Artur Dmitriev 183.01 91.21 75.71 -14.09 21.17 9.01
12 Mitchell Friess 171.19 95.37 54.61 -4.38 19.03 10.56
13 Sebastien Payannet 162.28 95.06 34.69 1.09 18.89 12.55

要素別で並べるとジェイソンブラウン選手のPCSが目立ちます。転倒のあったフリーでも96.06ついていてトータルで145点に達しました。PCSではマリニン選手はやはりシニア勢と比べて落ちます。

ジャンプの基礎点はネイサンチェン選手が120点まで出しました。ほぼ限界近い構成です。トリプルルッツをやめて4回転ループをもってくれば基礎点は上がりますが、そこまではきっと必要もないのでしょう。マリニン選手とヴィンセントジョウ選手も107点台。この二人のジャンプの基礎点も、日本勢の全日本での基礎点を超えています。ジェイソンブラウン選手はここは平凡で84.36にとどまります。

ジャンプの加点でマリニン選手が30点を超えてネイサンチェン選手を上回りました。なかなかすごい数字です。ジェイソンブラウン選手も加点幅の大きい4回転がきまっていないにも関わらず16.71という大きな加点を得ています。4回転サルコウ転倒の-4.85を加味してこのスコアですから、飛んでいるジャンプの評価の高さが見て取れます。

スピンはネイサンチェン選手が27点台後半。ジェイソンブラウン選手は27点台前半で2番手。最後のスピンをレベル4取れていれば28点台の領域に入るところでした。

ステップ系要素はジェイソンブラウン選手が17.20 これはつまり、ショートのステップ、フリーのコレオとステップ、すべて満点ということで、全日本の羽生結弦選手と同じです。ネイサンチェン選手はコレオでの転倒の影響でここでは平凡なスコアになっています。

 

○ドミトリエフ選手の不思議ジャンプ

    Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 2 3Lz+3F<< <<  7.70   -2.87 4.83 -4.778
FS 1 4A< 10.00   -5.00 5.00 -4.889

変わったことしている選手がいるので取り上げておきます。

アルトゥールドミトリエフ選手。まずは全米選手権に出ていることに驚きましたが、19-20シーズンまではロシア選手権に出ていたロシアの選手のはずでした。子供の頃にはアメリカに住んでいたようです。

ショートプログラム。ルッツとフリップのコンビネーション。なんだそれは? という感じですが、着氷足を逆にすれば可能な技です。今回はセカンドジャンプがうまく飛べませんでした。以前にも国際大会で飛んでいたことはあって、その時は成功したこともあります。

そしてフリーでは4回転アクセルに挑戦。回転不足ながら転倒はせずに降りました。全米選手権的にはダウングレードではなくアンダーローテーションという判定です。

92年9月生まれの29歳。国際舞台に復活できるかは微妙なところですが、4回転アクセルに挑んでいる選手はここにもいます。

 

 

オリンピック代表3枠はネイサンチェン選手、ヴィンセントジョウ選手、ジェイソンブラウン選手の3人に決まりました。大会開幕前の時点でシニアでしっかりと実績のある上位3人。マリニン選手は300点超えて代表になれませんでしたが、ジュニアグランプリを回っている選手なのでしかたないでしょうか。ただ、コロナが無ければ昨シーズンにジュニアグランプリで今シーズンはシニアのグランプリシリーズを回って、しっかりシニアの実績付きで全米選手権、という流れの可能性があったわけで、そういう点でちょっとついてなかったかな、とも思います。

世界選手権はジェイソンブラウン選手が外れてマリニン選手が入りました。マリニン選手はミニマムスコア取得が条件なのでもう一試合シニアの試合に出てスコアを取り、その後世界ジュニアを経て世界選手権という流れになるでしょうか。

オリンピックは実績のある3人。スコアの数字そのものは全米なのでちょっとあれですが、あの構成のショートをミスなく滑ったネイサンチェン選手はやはり強いです。あとはオリンピックに合わせられるのかどうか。団体戦、出てくるんでしょうか。前回の失敗は団体戦の疲れ云々とも聞きますが、今回も団体戦と男子シングルの日程は極めて近い。その辺も注目になるかと思います。