フィギュアスケート19 ジュニアグランプリ終了1 女子シングル

19-20シーズンのジュニアグランプリシリーズが終了しました。残すは、12月に行われるジュニアグランプリファイナルを待つばかりです。今回は、ジュニアグランプリシリーズの全体の結果を振り返ってみたいと思います。まずは女子シングルです。

 

Event Pl Name Nation Total SP FS
RUS 1 Kamila VALIEVA RUS 221.95 73.56 148.39
Egna 1 Kseniia SINITSYNA RUS 215.58 74.65 140.93
LakePlacid 1 Alysa LIU USA 208.10 69.30 138.80
RUS 2 Kseniia SINITSYNA RUS 204.25 73.04 131.21
Croatia 1 Haein LEE KOR 203.40 69.29 134.11
Baltic Cup 1 Alysa LIU USA 203.10 64.11 138.99
Courchevel 1 Kamila VALIEVA RUS 200.71 62.31 138.40
RUS 3 Viktoria VASILIEVA RUS 198.79 67.04 131.75
Riga 1 Haein LEE KOR 197.63 66.93 130.70
Croatia 2 Daria USACHEVA RUS 197.19 71.09 126.10
Baltic Cup 2 Viktoria VASILIEVA RUS 196.47 67.52 128.95
Baltic Cup 3 Anastasia TARAKANOVA RUS 194.74 68.14 126.60
Riga 2 Daria USACHEVA RUS 194.40 69.04 125.36
Riga 3 Rino MATSUIKE JPN 193.03 66.41 126.62
Courchevel 2 Seoyeong WI KOR 191.07 65.75 125.32
Riga 4 Maiia KHROMYKH RUS 190.73 68.93 121.80
LakePlacid 2 Yeonjeong PARK KOR 186.58 64.35 122.23
Croatia 3 Anna FROLOVA RUS 181.96 67.93 114.03
RUS 4 Nana ARAKI JPN 181.80 59.05 122.75
Baltic Cup 4 Seoyeong WI KOR 180.68 63.81 116.87
Courchevel 3 Maiia KHROMYKH RUS 179.32 67.72 111.60
LakePlacid 3 Anastasia TARAKANOVA RUS 179.29 58.43 120.86
LakePlacid 4 Seoyeon JI KOR 179.23 67.23 112.00
Baltic Cup 5 Tomoe KAWABATA JPN 177.86 67.70 110.16
Baltic Cup 6 Seoyeon JI KOR 177.45 61.92 115.53
Egna 2 Anna FROLOVA RUS 176.21 61.43 114.78
Riga 5 Ekaterina KURAKOVA POL 175.97 58.65 117.32
Egna 3 Alessia TORNAGHI ITA 175.93 56.67 119.26
Courchevel 4 Nana ARAKI JPN 175.13 58.83 116.30
Baltic Cup 7 Ekaterina KURAKOVA POL 172.59 60.54 112.05
Courchevel 5 Tomoe KAWABATA JPN 171.67 57.75 113.92
RUS 5 Chisato URAMATSU JPN 171.32 63.59 107.73
Croatia 4 Mana KAWABE JPN 163.73 53.12 110.61
LakePlacid 5 Mana KAWABE JPN 163.04 53.78 109.26
Croatia 5 Chisato URAMATSU JPN 161.07 57.90 103.17
Riga 8 Rion SUMIYOSHI JPN 161.06 56.74 104.32
Baltic Cup 9 Moa IWANO JPN 157.51 54.32 103.19
LakePlacid 14 Azusa TANAKA JPN 125.74 51.37 74.37

170点以上プラス日本人選手を並べました。

今シーズンは200点オーバーが4人で7回もありました。昨シーズンはロシアの三天才が騒がれていましたが、ジュニアグランプリシリーズの段階では、その3人で4回、200点をクリアしただけで、トゥルソワ選手以外の二人は、一試合は200点に届いていないんですね。それが今回は200点オーバーを2試合とも出した選手が3人います。

 

トップスコアは221.95のワリエワ選手。これは昨シーズンのトゥルソワ選手のジュニアグランプリシリーズ段階でのベストスコア221.44をわずかではありますが上回ります。

ロシア二番手はシニツィナ選手。ショートプログラムのスコアは74.65を出してワリエワ選手を上回りました。今シーズンのロシア女子はこの二人がトップにいます。三枚目のカードはちょっと薄いでしょうか。

 

今シーズンはロシア以外からも200点オーバーがでました。昨シーズン、全米選手権最年少優勝を果たしたアリサリュウ選手が全体三番手の208.10のスコアを出しています。彼女も二試合二百点オーバー。ロシア勢のジュニアグランプリシリーズの連勝記録を18で止めました。アメリカ勢がジュニアグランプリシリーズで表彰台に乗ったのは15年のビビアンリー選手以来4シーズンぶり、優勝は13-14シーズンのポリーナエドモンズ選手とカレンチェン選手以来6シーズンぶりです。

韓国からイ・ヘイン選手も200点オーバーの203.40を出し、2戦2勝でファイナル進出です。2010年バンクーバーオリンピックを見て親に言われてあるいは自分の意志でスケートを始めました、という世代がジュニアに上がってくるような時期になってきて、韓国勢の層が厚めになってきています。ここにシーズンはジュニア女子の成績では日本を上回るようになってきました。

 

というわけで、日本勢のトップは全体14番目のスコアの松生理乃選手の139.03となっています。ちょっと寂しいですが、ジュニアグランプリシリーズで190点台を出すのは、16-17シーズンの紀平梨花選手以来3シーズンぶりではあります(17-18シーズンのファイナルでは紀平選手が出してます)。ちょっとジュニアの厚みが薄くなっている今日この頃。

松生選手は3戦目に3位表彰台でしたので、エントリーしていた7戦目次第でファイナルへの目もあったのですが欠場しました。どうやらケガの影響のためなようですが、非常に残念でした。

 

今シーズン表彰台に乗った日本勢は、この松生選手一人です。昨シーズンの全日本ジュニアにいの荒木菜那選手は日本勢二番目の181.80のスコアを出していますが、2戦とも4位。全日本ジュニア3位の川畑和愛選手は2戦とも5位。表彰台が近くて遠い、という位置です。

今年の世界ジュニアの日本の枠は二つなのですが、順当にいくと、ケガさえ治れば松生選手が当確で、二枠目を荒木選手と川畑選手、高校三年生の二人で争う、という形になりそうでしょうか。

 

この三人の下に、浦松千聖選手が171.32を持っていて、2戦して5位二回、河辺愛菜選手も2戦出場して4位と5位ですが、ベストスコアは163.73でした。日本勢は4位と5位が今シーズンは多いです。昨シーズンは何とか3位表彰台、というのが多かったのですが、そこから一段落ちてしまった、という印象です。

 

また、ロシア勢も実は少し力を落とし始めているのかな? という感じはあります。トップは変わらないのですが、層がいくらか薄くなった。昨シーズンは7試合に延べ14選手が出場して優勝7つ、全員が表彰台を確保、一番悪くても182.87というスコアでした。それが今シーズンは7試合で3勝にとどまり、表彰台落ちも1つありで、最低点は176.21 180点割れが3例ありました。もちろんまだまだ強いのですが、誰が出ても勝つんでしょ、という状態からは少し変わってきた印象です。

 

今回170点以上のスコアは32例ありましたが、該当国は、ロシア、米国、韓国、日本、ポーランド、イタリアの六か国のみでした。180点以上だと、ポーランドとイタリアが外れて4か国のみです。上位選手の国籍の幅が狭いのがフィギュアスケートの泣き所。卓球中国化してしまうと、競技としての世界的な人気が落ちて行ってしまうので、もう少し上位選手の幅が出てきてくれたらと思います。女子シングルなら、中国と、ロシア以外のヨーロッパ勢ですね。

 

以下、要素別を少し見ていきます

まずは、トリプルアクセル以上の高難度ジャンプに挑んだ人

 

Event   Name Nation   Elements    BaseValue GOE Scores
LakePlacid FS Alysa LIU USA 2 4Lz   11.50 2.30 13.80
Baltic Cup FS Alysa LIU USA 2 4Lz   11.50 1.81 13.31
RUS FS Kamila VALIEVA RUS 1 4T+2T   10.80 2.99 13.79
Courchevel FS Kamila VALIEVA RUS 1 4T   9.50 2.99 12.49
RUS FS Kamila VALIEVA RUS 2 4T   9.50 -4.75 4.75
Baltic Cup SP Alysa LIU USA 1 3A+3T   12.20 1.26 13.46
LakePlacid FS Alysa LIU USA 1 3A+2T   9.30 1.26 10.56
Baltic Cup FS Alysa LIU USA 1 3A+2T   9.30 -1.14 8.16
Baltic Cup FS Alysa LIU USA 3 3A   8.00 1.14 9.14
Croatia FS Mana KAWABE JPN 1 3A< < 6.40 -2.65 3.75
LakePlacid FS Alysa LIU USA 3 3A<< << 3.30 -1.65 1.65

カミラワリエワ選手とアリサリュウ選手、二人の名前が並びます。四回転ルッツ+トリプルアクセル2本、というアリサリュウ選手の方が、四回転トーループ2本のワリエワ選手より基礎点は高くできるんですけど、今の段階ではトータルスコアはワリエワ選手の方が上です。

そんな中に、日本から河辺愛菜選手もトリプルアクセル挑戦者として名前が入っていますが、回転不足認定になりました。

 

 

セカンドトリプルループ

Event Name Nation   Elements    BaseValue GOE Scores
RUS Kate WANG USA 7 3Lz+3Lo   10.80 0.25 11.05
RUS Kseniia SINITSYNA RUS 6 3Lz+3Lo< < 10.80 -2.95 7.85
Riga Gabriella IZZO USA 1 3F+3Lo   10.20 0.08 10.28
Egna Kate WANG USA 1 3Lz+3Lo< < 9.82 -0.42 9.40

セカンドジャンプにトリプルループを入れた構成を3選手が4回試していました。今シーズンはショートプログラムの指定ジャンプがループのため、ショートプログラムでコンビネーションのセカンドジャンプにトリプルループを入れることはできません。したがって、この構成はフリーのみになります。

やはりセカンドループは難しいんですかね。試みた選手自体が少ないですし、回転が十分に足りたのは二人だけ、それでもついた加点はごくわずかです。

 

 

ステップレベル4で平均GOE3.0以上

Event   Name Nation   Elements  BaseValue GOE Scores
Egna SP Kseniia SINITSYNA RUS 5 StSq4 3.90 1.50 5.40
RUS SP Kseniia SINITSYNA RUS 5 StSq4 3.90 1.45 5.35
Croatia FS Haein LEE KOR 10 StSq4 3.90 1.45 5.35
Baltic Cup FS Viktoria VASILIEVA RUS 9 StSq4 3.90 1.39 5.29
Courchevel SP Kamila VALIEVA RUS 6 StSq4 3.90 1.34 5.24
Baltic Cup SP Viktoria VASILIEVA RUS 6 StSq4 3.90 1.34 5.24
Baltic Cup FS Moa IWANO JPN 9 StSq4 3.90 1.34 5.24
Courchevel FS Kamila VALIEVA RUS 6 StSq4 3.90 1.28 5.18
RUS FS Kamila VALIEVA RUS 6 StSq4 3.90 1.28 5.18
Baltic Cup SP Moa IWANO JPN 6 StSq4 3.90 1.28 5.18
Egna FS Kseniia SINITSYNA RUS 4 StSq4 3.90 1.28 5.18
RUS FS Kseniia SINITSYNA RUS 4 StSq4 3.90 1.23 5.13
Croatia SP Daria USACHEVA RUS 6 StSq4 3.90 1.23 5.13
Croatia SP Haein LEE KOR 6 StSq4 3.90 1.23 5.13

ステップのレベル4は全体で34例ありましたが、その中でGOEが平均3.0以上の好スコアが14例ありました。

ここではロシアのシニツィナ選手が好スコアを並べています。ワリエワ選手はここでも名前が出てきますが、アリサリュウ選手は出てきません。アリッサリュウ選手のステップは平均GOEが+2台であることが多く、また四回中三回はレベル3でした。この辺でワリエワ選手との差が出ています。

日本からは岩野桃亜選手が、ショートとフリーどちらも高いGOEを得て名前を連ねています。トータルスコアは157.51と伸びず、9位に終わりましたが、ブノワリショーさんに振付したいと懇願された、といわれるだけあり、さすがのステップで高得点を出していました。ジャンプの回転さえ足りるようになれば、という感じの選手で、今回もショートで二つ、フリーで四つ、回転不足を出されています。

 

レベル4のスピンで平均GOE+4.00以上

Event   Name Nation   Elements  BaseValue GOE Scores
RUS SP Kamila VALIEVA RUS 5 CCoSp4 3.50 1.70 5.20
RUS FS Kamila VALIEVA RUS 11 CCoSp4 3.50 1.70 5.20
Courchevel SP Kamila VALIEVA RUS 5 CCoSp4 3.50 1.65 5.15
Riga FS Daria USACHEVA RUS 9 CCoSp4 3.50 1.45 4.95
Croatia SP Haein LEE KOR 7 CCoSp4 3.50 1.45 4.95
Croatia FS Haein LEE KOR 11 CCoSp4 3.50 1.45 4.95
Courchevel FS Kamila VALIEVA RUS 11 CCoSp4 3.50 1.40 4.90
LakePlacid SP Alysa LIU USA 6 CCoSp4 3.50 1.40 4.90
Croatia FS Daria USACHEVA RUS 9 CCoSp4 3.50 1.40 4.90
Courchevel FS Kamila VALIEVA RUS 5 FCSp4 3.20 1.42 4.62
RUS FS Kamila VALIEVA RUS 5 FCSp4 3.20 1.37 4.57
Courchevel FS Seoyeong WI KOR 11 LSp4 2.70 1.31 4.01
LakePlacid FS Alysa LIU USA 11 LSp4 2.70 1.31 4.01
RUS SP Kamila VALIEVA RUS 7 LSp4 2.70 1.27 3.97
Courchevel SP Seoyeong WI KOR 7 LSp4 2.70 1.23 3.93
Courchevel SP Kamila VALIEVA RUS 7 LSp4 2.70 1.23 3.93
LakePlacid SP Alysa LIU USA 7 LSp4 2.70 1.23 3.93
Croatia SP Daria USACHEVA RUS 7 LSp4 2.70 1.23 3.93
RUS FS Kseniia SINITSYNA RUS 11 LSp4 2.70 1.20 3.90
Egna SP Yeonjeong PARK KOR 7 LSp4 2.70 1.20 3.90
Riga SP Daria USACHEVA RUS 7 LSp4 2.70 1.16 3.86
Baltic Cup SP Alysa LIU USA 7 LSp4 2.70 1.08 3.78
Egna FS Yeonjeong PARK KOR 11 LSp4 2.70 1.08 3.78

平均GOE4.00以上でレベル4のスピンは23例ありました。ワリエワ選手の名前が8つあります。スピンは1試合6回で2試合で12回ですから、三分の二はレベル4は当然でGOEも+4以上つく、ということです。彼女はジャンプだけの選手ではない、というのがはっきりわかります。アリッサリュウ選手も4つあります。

日本人選手の名前が一つもありません。高難度ジャンプの習得はまだ出来ていないけれど、ほかで確実に点を取れるよ、スピンとかしっかり点を取るよ、というタイプの選手がいればよかったのですが、そうでもなく、日本のジュニアは全体的にどのパートも上位と比べて差があるよ、というのが見えてしまった、という感じがしています。