グランプリシリーズ19 女子シングル ファイナル進出者

グランプリシリーズの6戦が終わり、ファイナル進出者が確定しました。

コストルナヤ、トゥルソワ、シェルバコワ、紀平梨花ザギトワ、テネルで6人

ロシア4、日本1、米国1

大方の予想からそれほど外れない枠内のメンバーで決まった感じでしょうか。

6人中初のファイナルが4人。2年連続1人、3年連続1人

テネル選手以外全員10台で、テネル選手含め、全員がシニア3年目以内です。

時代は、変わりました・・・

 

今回は、この6人の、グランプリシリーズの得点の中身を見ていきたいと思います

 

各試合の総合結果

Event Pl Name Nation SP FS Total
Skate Canada 1 Alexandra TRUSOVA RUS 74.40 166.62 241.02
NHK Trophy 1 Alena KOSTORNAIA RUS 85.04 154.96 240.00
Internationaux de France 1 Alena KOSTORNAIA RUS 76.55 159.45 236.00
Rostelecom Cup 1 Alexandra TRUSOVA RUS 74.21 160.26 234.47
NHK Trophy 2 Rika KIHIRA JPN 79.89 151.95 231.84
Skate Canada 2 Rika KIHIRA JPN 81.35 148.98 230.33
Skate America 1 Anna SHCHERBAKOVA RUS 67.60 160.16 227.76
Cup of China 1 Anna SHCHERBAKOVA RUS 73.51 152.53 226.04
NHK Trophy 3 Alina ZAGITOVA RUS 66.84 151.15 217.99
Skate America 2 Bradie TENNELL USA 75.10 141.04 216.14
Internationaux de France 2 Alina ZAGITOVA RUS 74.24 141.82 216.06
Skate Canada 4 Bradie TENNELL USA 72.92 138.39 211.31

 

まずは単純に総合結果。6人それぞれの2試合分を掲載します。

最高点はトゥルソワ選手のスケートカナダで241.02 230点以上はトゥルソワ選手、コストルナヤ選手に紀平梨花選手の3人で6試合です。シェルバコワ選手は2戦2勝ですが、スコア的には紀平梨花選手に劣る形です。2位が2回なので印象的に4番目に思われていますが、紀平梨花選手の今シーズンのスコアは3番手になります。順当にいけば表彰台、という意味です。

トリプルアクセル以上のジャンプがないザギトワ選手、テネル選手の二人は、上位4人から一歩下がって210点台のスコアでした。

それにしても、フリーは普通に150点台が並ぶ時代になりました。何とも恐ろしい時代です

 

 ショート/フリー スコア対比

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横軸にショートプログラムのスコア、縦軸にフリープログラムのスコアを取って、各選手のスコアをプロットしました。

重なって見えづらい部分もありますが、赤:トゥルソワ 水:コストルナヤ 黄:シェルバコワ 橙:紀平梨花 紫:テネル 桃:ザギトワ となっています。

右上へ行くほど合計スコアが高スコアです。右下へ行くのはショートプログラム型、左上によっているのはフリー型の選手、ということになります。

おおよそ、ショートプログラムの2倍のフリー、というのが標準的とすると、ショートプログラム型なのが紀平選手とテネル選手。フリー型はトゥルソワ選手とシェルバコワ選手になります。コストルナヤ選手は、ショートのトリプルアクセルが回転不足なときはフリー型、フリーのトリプルアクセルが回転不足の時がショート型、という分類でした。トリプルアクセル次第なようです。ザギトワ選手も回転不足の取られ方次第でショートによるかフリーによるか決まるようです

 

 技術点/演技構成点 対比

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次は、ショートフリー、通算して、TESを横軸に、PCSを縦軸に取りました。やはり右上に行くほど合計点は高く、右下によると技術点型、左上に行くと演技構成点型の選手となります。

典型的な技術点タイプがトゥルソワ選手です。シェルバコワ選手も技術点型ですがトゥルソワ選手ほど極端ではありません。

ザギトワ選手は完全に演技構成点型になっています。テネル選手も演技構成点型。

バランス型がコストルナヤ選手と紀平梨花選手という構図ですが、紀平選手はやや演技構成点よりですかね。4回転が入らないまでも、ルッツがショートフリーで3本入った時点で、ちょうどバランス型になるような位置に見えます。

この分布は、自分が好きな選手がどの辺に位置するか、という傾向が見えそうなものに感じます。

 

 ジャンプとそれ以外のスコア対比

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これは似たものですが、横軸はジャンプに減点分を加えたもの、縦軸にはPCSとスピンステップを加えたものです。技術点の中でもどれだけジャンプに依存しているか、というのがよりはっきり出ます。減点を加えたのは、減点の原因は多くの場合ジャンプの転倒によるためです(ステップで転倒したりすることもありますが)。

 

トゥルソワ選手はジャンプだけで100点を超えた試合がありました。当然はっきりとジャンプ型の選手です。四回転二本持ちのシェルバコワ選手もジャンプ型。

ザギトワ選手は演技型、とでもいえますでしょうか。意外なのですが、今シーズンはジャンプで得た得点はテネル選手よりも低い、という形になっています。ザギトワ選手のいい方でもトゥルソワ選手の悪い方と比べてジャンプだけで27点ほど差があります。このジャンプの点差は強烈です。

紀平選手、コストルナヤ選手はやはりバランス型。コストルナヤ選手は四回転がないのですが、四回転二本持ちのシェルバコワ選手をジャンプの得点で上回ります。四回転二本が相手なら、それがたとえルッツであっても、トリプルアクセル3本でジャンプの点だけで見ても上回ることができるわけです。

 

 ジャンプ基礎点とGOE

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次は要素別で、ジャンプの基礎点を縦軸に、GOEによる加点分を横軸に取ったものです。

基礎点はやはりトゥルソワ選手が圧倒的に高く、シェルバコワ選手がそれに続きます。一方で、加点はコストルナヤ選手がトップに出ます。紀平選手もいい方の試合ではトゥルソワ選手やシェルバコワ選手のいい方の試合よりも、加点分は上回ります。ただ、同じトリプルアクセル3本構成のコストルナヤ選手と比べて、ルッツがない分基礎点で劣り、加点もやや劣るという形になっており、この辺がNHK杯で勝ちきれなかった要因の一つとしてありました。

ザギトワ選手、テネル選手はやはりジャンプの基礎点は他の選手と比べるとかなり厳しくなります。トゥルソワ選手と比べると基礎点にして30点程度の差になってしまいかなり苦しいです。今シーズンは回転不足が目立つため、基礎点からの減点が多くなってしまっています。また、ザギトワ選手が今シーズンはジャンプで加点を稼げていません。加点で勝負の選手がこの状態だとエテリ組妹分3人衆に歯が立たない感じです。ただ、この出来でも210点台後半を二試合並べてファイナルには進んできていますので、パーフェクトにしっかり演じたら、まだ一勝負可能なはずです。実際、昨シーズンはネーベルホルン杯で238.43 世界選手権で237.50まで出しているわけですから、ノーミスパーフェクト神演技で240点までなら到達可能で勝負可能なわけです。240点勝負までならまだチャンスは残ります。

 

 スピンの基礎点とGOE

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今度はスピンの基礎点とGOE

基礎点が2試合でずれている選手は、レベル4の取り損ねがあった、という意味にもなります。レベル4取り損ね無しは紀平選手とコストルナヤ選手の二人です。コストルナヤ選手は重なって見えにくいですが、基礎点19.1のGOEが7点当たりのところにザギトワ選手の一つと重なってしまっていますがあります。

すべてレベル4の時に一番基礎点が高くなる構成は、トゥルソワ選手、シェルバコワ選手、ザギトワ選手の3選手が持っています。紀平選手はスピンで基礎点にして0.8負けている、という現実が実はあったりするのと、GOEもあまり伸ばせていません。こういうところでコストルナヤ選手に1.5~2点負けてしまうのが、実はちょっと苦しい点だったりします。あまりこれまで目立っていなかったのですが、このレベルの選手たちので並べてしまうと見劣りするという、紀平選手の弱点です。

スピンの加点が一番取れていないのはトゥルソワ選手です。ここはある種伸びしろ。もう2から2.5点くらいは稼げるはずです。

最高点の組み合わせでかつ、GOEを最も取ったのはザギトワ選手なのはさすがですが、なんでレベル取りこぼす試合があるかなあ。昨シーズンは国際試合で36回のスピン要素のうち35回レベル4だったのですけれど。すべてをロシア選手権に合わせるための準備段階、だったりしますでしょうか。でも、そうだとしてもスピンのレベルを早々取りこぼすような選手じゃないはずなのですけれど

 

 

 ステップの基礎点とGOE

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最後にステップの基礎点とGOE ステップにはコレオシークエンスも含めます

ショートフリー、どちらもレベル4の場合、基礎点合計は10.8になります。

2試合ともしっかりステップレベル4をそろえたのはコストルナヤ選手とテネル選手。ここでもザギトワ選手が一つレベル3だったりしました。

シェルバコワ選手はレベル3が二つの試合と、レベル4と2の試合とが一つづつ。昨シーズン、ジュニア時代はすべてレベル3でしたし、実はステップのレベル4がほとんどとれていません。GOEも一番低い水準ですので、他のトップ選手と比べるとステップで3点4点負けていたりします。トゥルソワ選手はシェルバコワ選手ほどではなく、昨シーズンからレベル4率は5割以上はありますが、レベル4がデフォルトというほどの安定さはありません。

GOE最高点はスケートカナダの紀平選手。トゥルソワ選手に打ち勝つには、こういうところで勝っていくことが求められます。ステップのレベル4は、昨シーズンは14/16 今シーズンは6/7 基本的にはレベル4が取れますので、1点でも2点でも、勝っていきたいところです。

 

以上、女子シングル、ファイナル進出者6人のグランプリシリーズでの点の取り方でした