ロシア女子のプレビューは今回で終わりです。
並んだ数字がどれを見てもすごすぎるロシア女子でありました
○上位選手の各大会の要素別スコア
Event | Name | Total | PCS | J Base | J GOE | Spin | Step |
Rostelecom | VALIEVA | 272.71 | 113.72 | 90.08 | 25.00 | 28.02 | 15.89 |
Canada | VALIEVA | 265.08 | 110.89 | 93.38 | 16.44 | 28.64 | 15.73 |
Finlandia | VALIEVA | 249.24 | 107.73 | 87.08 | 11.72 | 28.55 | 16.16 |
Torino | SHCHERBAKOVA | 236.78 | 107.61 | 73.10 | 15.37 | 25.96 | 14.74 |
Finlandia | TUKTAMYSHEVA | 233.30 | 108.86 | 74.30 | 11.17 | 25.05 | 13.92 |
Canada | TUKTAMYSHEVA | 232.88 | 106.82 | 74.83 | 11.38 | 24.37 | 15.48 |
America | TRUSOVA | 232.37 | 104.48 | 75.62 | 14.40 | 24.64 | 13.23 |
France | SHCHERBAKOVA | 229.69 | 108.23 | 72.99 | 10.26 | 24.42 | 14.79 |
Rostelecom | TUKTAMYSHEVA | 229.23 | 105.98 | 77.42 | 7.81 | 23.44 | 14.58 |
Torino | KHROMYKH | 226.35 | 101.03 | 75.88 | 12.68 | 25.14 | 11.62 |
Budapest | KHROMYKH | 224.91 | 104.16 | 73.27 | 6.66 | 25.55 | 15.27 |
Budapest | SHCHERBAKOVA | 222.73 | 108.44 | 75.98 | -1.67 | 25.85 | 15.13 |
France | KOSTORNAIA | 221.85 | 105.32 | 71.23 | 8.56 | 24.88 | 12.86 |
Rostelecom | KHROMYKH | 219.69 | 103.40 | 72.30 | 5.15 | 25.37 | 14.47 |
Finlandia | KOSTORNAIA | 218.83 | 104.47 | 67.55 | 7.83 | 25.89 | 13.09 |
US | TRUSOVA | 216.80 | 98.32 | 92.12 | -10.38 | 24.60 | 14.14 |
Canada | KOSTORNAIA | 214.54 | 102.00 | 72.90 | 3.39 | 24.67 | 11.58 |
Warsaw | KHROMYKH | 194.02 | 96.04 | 66.32 | -2.74 | 24.66 | 11.74 |
なんとなくコストルナヤ選手まで入れています。
PCSはワリエワ選手が当然トップですが、シニアデビュー戦の107.73はトゥクタミシェワ選手やシェルバコワ選手が上回ることが出来ています。ロシア国内だとどこまで積まれるんでしょうPCS
ジャンプの基礎点はワリエワ選手のスケートカナダが最高点。トゥルソワ選手のUSインターナショナルが2番目です。トゥルソワ選手はこの試合四回転が一本二回転になっていますのでノーミスすればさすがにジャンプの基礎点はトゥルソワ選手に誰もかないません。この二人以外はジャンプの基礎点合計は70点台止まりです。トリプルアクセル3本投入のトゥクタミシェワ選手が四回転が1本2本のシェルバコワ選手やフロミフ選手よりやや上に基礎点はなっています。トゥクタミシェワ選手のジャンプ基礎点は悪い時でも74.30まである。シェルバコワ選手は73点前後が2試合ありますしフロミフ選手は60点台があります。トリプルアクセルより四回転の方が安定度も低いわけです。余談ですが、吉田陽菜選手は国内ローカル試合ながらジャンプの基礎点75.00を持っていてこのあたりの選手と互角です。トリプルアクセルが3本入る選手はトゥクタミシェワ選手同様、この領域で勝負できるポテンシャルがあるわけです。
ジャンプの加点もワリエワ選手が抜けていますが、他はいい時は10点台前半で大きな差は付いていません。一方、悪い時の差は結構大きく、トゥルソワ選手は-10まで行きますし、シェルバコワ選手やフロミフ選手もマイナスに振れることがありますが、トゥクタミシェワ選手は一番悪くて7.81 大きな落ち込みがありません。
スピンもワリエワ選手がとびぬけたトップ。28点台は男女を通じて他に誰もいないどころか27点台もいません。今回のメンバーでは他はほぼ25点台までは出してきますが、トゥルソワ選手は24点台に留まっています。
ステップ系要素も16点台まで出したワリエワ選手がトップ。これも他の選手は15点台まで出してくるのですがトゥルソワ選手は14点台止まりです。フロミフ選手は崩れると11点台まで落ち込むことがあり、ここまで落ちるとダブルアクセル1本分くらいの差が生じることになります。スピンステップで数点の差は出てくるので最後の際どい勝負はここがポイントになって決まる可能性もあります。
○上位選手の四回転要素
Event | Name | Elements | BaseValue | Scores | |||
Rostelecom | VALIEVA | 4T+3T | 13.70 | 17.91 | 4.333 | ||
Rostelecom | VALIEVA | 4S | 9.70 | 13.58 | 4.111 | ||
Finlandia | VALIEVA | 4T+3T | 13.70 | 17.50 | 3.875 | ||
Canada | VALIEVA | 4S | 9.70 | 13.03 | 3.556 | ||
Finlandia | VALIEVA | 4T+1Eu+3S | 15.73 | x | 19.06 | 3.375 | |
Canada | VALIEVA | 4T+3T | 13.70 | 16.82 | 3.333 | ||
Canada | VALIEVA | 4T+1Eu+3S | 15.73 | x | 18.72 | 3.111 | |
Budapest | KHROMYKH | 4T+3T | 13.70 | 16.55 | 3.000 | ||
Torino | KHROMYKH | 4T | 9.50 | 12.21 | 2.889 | ||
Torino | SHCHERBAKOVA | 4F | 11.00 | 13.99 | 2.778 | ||
Rostelecom | KHROMYKH | 4T+2T | 10.80 | 13.38 | 2.667 | ||
Torino | KHROMYKH | 4T+2T | 10.80 | 13.24 | 2.556 | ||
US | TRUSOVA | 4S | 9.70 | 12.29 | 2.400 | ||
America | TRUSOVA | 4Lz | 11.50 | 13.80 | 2.111 | ||
Rostelecom | VALIEVA | 4T+1Eu+2S | 12.43 | x | 14.47 | 2.000 | |
Finlandia | VALIEVA | 4S | 9.70 | 11.48 | 1.875 | ||
France | SHCHERBAKOVA | 4F | 11.00 | 12.89 | 1.667 | ||
Rostelecom | KHROMYKH | 4T | 9.50 | 6.79 | -2.778 | ||
Budapest | KHROMYKH | 4T | 9.50 | 6.27 | -3.429 | ||
US | TRUSOVA | 4Lz+1Eu+3S< | < | 16.98 | x | 12.00 | -4.000 |
Warsaw | KHROMYKH | 4Tq | q | 9.50 | 5.51 | -4.143 | |
US | TRUSOVA | 4Lz< | < | 10.12 | x | 5.83 | -4.600 |
US | TRUSOVA | 4F | 11.00 | 5.50 | -5.000 | ||
Budapest | SHCHERBAKOVA | 4F!q | ! | 11.00 | 5.50 | -5.000 | |
Warsaw | KHROMYKH | 4T<<+REP | << | 2.94 | 0.84 | -5.000 |
上位5選手の今シーズンの四回転要素を並べるとこれだけの数になってしまいました。
要素の種類に依らずGOEの順に上から並べたのですが、ワリエワ選手の名前が上の方に続いてしまいました。4回転-3回転のコンビネーションで9人のジャッジのうち4人が+5を付けるというほとんど信じられない評価がついているジャンプもあります。4回転からの3連続でも平均GOEが+3を超える。とてつもない世界です。
それに次ぐのがフロミフ選手の四回転トーループの評価です。平均GOEで+3まで出たりしてなかなか評価が高い。しかしながらフロミフ選手の四回転はマイナス評価がつくことも結構あります。安定はしていないようです。
シェルバコワ選手は今シーズン入ったのはフリップが3回。ルッツはまだ飛べていません。一試合に四回転は一本までという情勢です。
トゥルソワ選手は四回転を多用したUSインターナショナルでは回転不足や転倒が目立ちました。スケートアメリカでは四回転一本。この決まった四回転の評価もワリエワ選手だけでなくフロミフ選手やシェルバコワ選手より低い扱いです。
○上位選手のトリプルアクセルを含む要素
Event | Name | Elements | BaseValue | Scores | |||
Rostelecom | VALIEVA | 3A | 8.00 | 11.31 | 4.222 | ||
Rostelecom | VALIEVA | 3A | 8.00 | 10.74 | 3.444 | ||
Canada | TUKTAMYSHEVA | 3A+2T | 9.30 | 10.90 | 2.000 | ||
Canada | VALIEVA | 3A | 8.00 | 9.60 | 2.000 | ||
Canada | TUKTAMYSHEVA | 3A | 8.00 | 9.71 | 2.000 | ||
Rostelecom | TUKTAMYSHEVA | 3A | 8.00 | 9.60 | 2.000 | ||
Finlandia | TUKTAMYSHEVA | 3A | 8.00 | 9.47 | 1.875 | ||
Finlandia | TUKTAMYSHEVA | 3A | 8.00 | 9.60 | 1.875 | ||
Canada | TUKTAMYSHEVA | 3A | 8.00 | 9.37 | 1.778 | ||
Rostelecom | TUKTAMYSHEVA | 3A+2T | 9.30 | 10.56 | 1.667 | ||
Finlandia | TUKTAMYSHEVA | 3Aq+2T | q | 9.30 | 8.63 | -0.750 | |
Canada | KOSTORNAIA | 3Aq | q | 8.00 | 7.20 | -0.889 | |
Canada | VALIEVA | 3A | 8.00 | 6.51 | -1.667 | ||
Rostelecom | TUKTAMYSHEVA | 3A | 8.00 | 5.60 | -2.889 | ||
Canada | KOSTORNAIA | 3A< | < | 6.40 | 3.84 | -3.889 | |
Finlandia | KOSTORNAIA | 3A< | < | 6.40 | 3.31 | -4.625 | |
US | TRUSOVA | 3A | 8.00 | 4.00 | -4.800 | ||
France | KOSTORNAIA | 3Aq | q | 8.00 | 4.00 | -5.000 | |
Finlandia | VALIEVA | 3A< | < | 6.40 | 3.20 | -5.000 | |
Finlandia | VALIEVA | 3A<< | << | 3.30 | 1.65 | -5.000 |
トリプルアクセル要素をGOE順に並べるとこうなります。
これもワリエワ選手が最高評価。ロステレコム杯のフリーの方は9人のジャッジのうち二人は満点の+5残りの7人も+4という極めて高い評価を付けました。ワリエワ選手はフィンランディア杯では2回飛んで2回とも回転も足りず。スケートカナダではショートが成功でフリーは回転不足、ロステレコム杯はショートフリー共に成功、と徐々に完成度を上げていきました。
コンビネーションが入っているのはトゥクタミシェワ選手のみです。今シーズン9回飛んですべて回転は足りる基礎点満額をもらい、GOEプラスの成功ジャンプが7回あります。極めて高い成功率です。
トリプルアクセルの成功ジャンプを飛んだのはこの二人以外ではアカチエワ選手もいますが、年齢制限でロシア選手権には出られません。トリプルアクセル成功者という点ではロシアより日本の方が多いです。
GOEプラスの成功ジャンプに一番近かったのはコストルナヤ選手でした。トリプルアクセルを取り戻したコストルナヤ選手であれば今大会もチャンスがあったので見てみたかったのですが残念でした。
トゥルソワ選手もUSインターナショナルでトリプルアクセルに挑みましたが失敗しています。
ロシア選手権は実質的に4人で2枠を争うという構図になっているかと思います。
もう、ワリエワ選手は別の意味で蚊帳の外と見るしかない。ただ、ショートでトリプルアクセルが決まらず首位に立てない、という構図はあり得ると思います。そして、四回転というのは女子にとっては繊細なものかもしれない。わずかな歪で四回転が全く決まらなくなる、ということもあるかもしれない。でも、それは今ではないと思われます。4年前のザギトワ選手のように、緊張で張り詰めたシーズンの最後、世界選手権で崩れるということはあるかもしれませんけれど。
残りの2枠、シェルバコワ選手、トゥクタミシェワ選手、トゥルソワ選手の3選手がやはり有力。一番カギを握るのはトゥルソワ選手なのだろうと思います。ケガの状況はどうか? 本当に回復しているか? 回復しきっていて四回転四種類五本、という構成を組み込んでくる可能性もあるのでしょうけど、代表に選ばれることを目指すなら難易度を下げた構成にした方がいい。どんな選択をしてくるでしょう? 1試合で降りた四回転は19年ジャパンオープンの3種類4回が最高。昨シーズン世界選手権の逆襲のフリーは加点の付いた四回転は2本、19年のグランプリファイナルやスケートカナダでは3本まで加点がついたことはありました。おそらく3本まで決まれば代表圏内に入りそう。2本だと他のジャンプの結果次第、1本だと苦しい、ということになると思われます。ショートでトリプルアクセルを入れるかどうかもまた一つの鍵です。入れて成功が最高ですが、これまでの実績では成功したことがありません。入れて失敗よりは入れない構成の方が点が出る。ショートで何点出すかで四回転の必要本数も1本変わってきます。
シェルバコワ選手は出来栄えやスピンステップPCSでトゥルソワ選手に勝ります。そのため、四回転2本入れば代表圏内に入る、1本でも勝負になる、0だとさすがに厳しいかな、という印象。
この二人と違ってスコアが安定しているのがトゥクタミシェワ選手です。トリプルアクセルの成功率は女子の歴代の誰よりも高いです。そこにここ2シーズンで伸びたスピンステップPCSが乗って来る。国際大会では230点を少し超えたところに持ってきます。今回はロシアの国内加点も乗って240点まで来るでしょうか? それでもシェルバコワ選手とトゥルソワ選手がノーミスで来たらちょっと届かない。ショートで何点リードできるか?
フロミフ選手はノーミスが最低限必要で、その上二人以上のミス待ちです。ミスの度合いはトゥルソワ選手の次に多いのが自分自身というのがちょっと苦しいところ。
ヨーロッパ選手権の代表はロシア選手権で決まりますが、オリンピック代表は確定させないと言います。これ、トゥルソワ選手がヨーロッパ選手権の代表に入って、ヨーロッパ選手権で失敗して210点程度のスコアで終わった時、オリンピックの代表を誰にするんだ? という大論争が巻き起こる可能性があります。
ロシア選手権、女子シングルはショートプログラムが24日、フリーは25日に行われます。