グランプリファイナル19 女子シングル

グランプリファイナル、今年の女子シングルはエテリ三人衆表彰台そろい踏みという、絵にかいたような展開で幕を閉じました。今回は、そのグランプリファイナル、女子シングルを振り返ります。

 

 

Pl Name Nation Total SP TSS FS TSS
1 Alena KOSTORNAIA RUS 247.59 85.45 162.14
2 Anna SHCHERBAKOVA RUS 240.92 78.27 162.65
3 Alexandra TRUSOVA RUS 233.18 71.45 161.73
4 Rika KIHIRA JPN 216.47 70.71 145.76
5 Bradie TENNELL USA 212.18 72.20 139.98
6 Alina ZAGITOVA RUS 205.23 79.60 125.63

順位、得点はこうなっています。この結果をいろいろと分解し、以下に各種散布図で表したものを用意しました。6選手のグランプリシリーズ2戦と、ファイナル、合わせて三試合分のスコアが反映されています。

各選手のグランプリシリーズ2戦は○、グランプリファイナルの成績を◇で表しています。

 

 ●ショートプログラム/フリー スコア

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まずは、ショートプログラムとフリーの点の入り方

優勝したコストルナヤ選手、2位に入ったシェルバコワ選手は、ショートフリー共にグランプリシリーズよりも高い点を出しました。一方、3位のトゥルソワ選手はショートで点が伸びず、4位の紀平選手はショートもフリーもグランプリシリーズ2戦より点を落としてしまっています。

ザギトワ選手は、2本そろわないなあ、という感じですね。グランプリシリーズではフリーで150点を超すスコアを出す試合もありましたので、ファイナルもショートの高得点にそのフリーがセットでついてくれば表彰台まではあったのですが、結果はああいうことになりました。

 

 ●技術点/演技構成点

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 ショートフリー合わせての技術点と演技構成点

やはり優勝したコストルナヤ選手、二位のシェルバコワ選手は、グランプリ2戦より技術点も演技構成点も向上させることが出来ています。

紀平選手、ザギトワ選手は、技術点も演技構成点もグランプリ2戦よりファイナルの方が悪かった、という構図です。それでもザギトワ選手は演技構成点は2番目の高さではありました。

コストルナヤ選手は技術点も演技構成点もトップです。トゥルソワ選手は技術点が3番手で演技構成点が6番目、ということで優勝争いには絡めませんでした。

 

 ●ジャンプ+減点/PCS+スピンステップ

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これは、ジャンプで得た得点から減点分を引いたものを横軸に取り、演技構成点にスピンとステップの得点までを足したものを縦軸に取ったものです。

トゥルソワ選手は、グランプリシリーズの一番いい試合よりは、ジャンプで取る点を減らしましたが、それでも全体トップは保ちました。コストルナヤ選手が二番目

シェルバコワ選手が演技構成点、スピン、ステップといった、ジャンプ以外で得た得点がザギトワ選手と匹敵するところまで来ていますし、紀平選手を凌駕しました。高難度ジャンプを飛べたことが上位二人の勝因であり、四回転が入らなかったことが紀平選手の敗因、みたいなことになっていますが、実態として、ジャンプ以外の要素だけの合計を見ても、紀平選手は今回、コストルナヤ選手だけでなく、シェルバコワ選手にも負けていたという現実があります。

 

 ●ジャンプと加点

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続いて、ジャンプ要素。横軸は加点の獲得度合いであり、縦軸は基礎点です。

加点を一番得ていたのは圧倒的にコストルナヤ選手でした。基礎点では紀平選手とほぼ変わらないのですが、GOEで20点以上の差がついています。紀平選手は、ルッツなしを四回転サルコウで基礎点としてはコストルナヤ選手との差は補えたのですが、全体的に質が良くなく、GOEは最下位でした。四回転サルコウに転倒したから、というだけの理由でもなく、ほかのジャンプもグランプリシリーズ2戦と比べて出来栄えが悪かったです。基礎点でシェルバコワ選手、トゥルソワ選手に劣っても、加点は上に行く、というのが勝つための最低条件であり、シリーズ2戦では、その面ではしっかり点が出ていたのですが、今回はそこで差がついてしまいました

ザギトワ選手は、回転不足が目立ったこともあり、基礎点がテネル選手よりも下となって最下位になっています。ジャンプの基礎点段階でシェルバコワ選手、トゥルソワ選手と比べて30点低い、ということになるのはやはり苦しいです

 

●スピンと加点

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スピンは今回、シェルバコワ選手が最高点でした。ザギトワ選手が2番手でコストルナヤ選手は3番手です。

紀平選手が実はスピンが伸びず全体最下位。今回はレベルの取り損ねもあり基礎点からシリーズ2戦より低くなっていますが、加点は、シリーズの2戦を見ても上位と差があります。シリーズの振り返りの時にも見ましたが、このレベルで戦うときには、スピンは紀平選手の弱点です。今回のファイナルでは、スピンで得た得点がシェルバコワ選手より3.1点低くなっていました。コストルナヤ選手と比べても1.50負けています。

 

 ●ステップと加点

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ここでいうステップにはコレオシークエンスを含めます。

ステップが今回シェルバコワ選手が最高点だったことが、実は一番の驚きだったりしました。シェルバコワ選手はシリーズ2戦で、この上位6名の中ではステップのスコアは最下位でした。レベル4を取るのもたまにしかない、という選手だったのですが、今回はショートフリー共にレベル4であり、かつ、加点も大きく得ていました。彼女が240点まで到達したのは、ここ数週間でのスピンとステップのレベルアップ、ということが非常に大きく効いていて、この直近だけ見るとジャンプよりもそちらの影響が大きいです。

コストルナヤ選手は今回ステップでレベルの取りこぼしがありました。ただ、それでも、加点だけ見れば全体最高点です。こういう取りこぼしがまだある、というところを見ると、まだ得点の加増は可能、という見方もできます。四回転無しでも250点までは可能と見てよさそうです。

紀平選手、テネル選手、ザギトワ選手もきっちりレベル4は揃えましたが、シリーズの一番いい出来にはそれぞれ及ばなかったようです。

トゥルソワ選手はレベル4がとれず、ステップの得点は他の5人からだいぶ離されました。トゥルソワ選手はスピン4位、ステップ6位でPCSも6位ですから、ジャンプへの依存度がやはり極めて高い選手といえます。