世界フィギュア21 振り返り5

女子シングルの要素種別のスコアへ移ります

今回はショートもフリーも併せて、ジャンプ、スピン、ステップ系要素と見ていきます。

 

●ジャンプ

Pl

Name

Nation

Base

GOE

Jump

1

Anna SHCHERBAKOVA

FSR

77.06

8.08

85.14

2

Elizaveta TUKTAMYSHEVA

FSR

76.36

5.00

81.36

3

Alexandra TRUSOVA

FSR

85.92

-5.19

80.73

12

Ekaterina RYABOVA

AZE

65.06

6.54

71.60

5

Loena HENDRICKX

BEL

63.19

7.48

70.67

8

Olga MIKUTINA

AUT

61.77

8.57

70.34

6

Kaori SAKAMOTO

JPN

62.62

6.53

69.15

4

Karen CHEN

USA

62.78

4.90

67.68

7

Rika KIHIRA

JPN

62.55

2.68

65.23

14

Eva-Lotta KIIBUS

EST

61.25

2.79

64.04

10

Haein LEE

KOR

62.54

-0.48

62.06

13

Madeline SCHIZAS

CAN

56.50

5.34

61.84

11

Yelim KIM

KOR

58.73

0.63

59.36

9

Bradie TENNELL

USA

53.00

3.01

56.01

15

Josefin TALJEGARD

SWE

48.72

5.11

53.83

19

Satoko MIYAHARA

JPN

47.74

-8.71

39.03

 

この表は、ショートフリー合わせてのジャンプ要素で得た得点を記しています。Baseはジャンプの基礎点の合計、GOEは加点or減点の合計、Jumpが最終的にジャンプ要素で得た得点の合計です。総合順位で15位までと宮原知子選手を入れています。

ジャンプの合計点順に並んでいます。一番左側の数字は総合順位を表していて、ジャンプの順位ではありません

 

 

女子シングルジャンプ要素

橙色:ロシア勢

黄色:日本

赤色:米国

黄緑:韓国

桃色:ルナ・ヘンドリックス

水色:オルガ・ミクティナ

この色付けはその3のTES/PCS編と同じです

 

非常に特徴的なバブルチャートとなりました。

ロシアの三人ははっきりと基礎点が高い領域にいます。後は団子。宮原選手は基礎点、GOE共に低いという配置になっています。宮原選手はフリー進出24人中、ジャンプの基礎点は22位、GOEは24位ですので、こうなってしまうのでしょう・・・

 

基礎点トップはトゥルソワ選手。計算する前から誰もが想像した通りでしょうけれど。ジャンプだけで基礎点85.92あります。ただし、GOEはマイナスでフリー進出24人中23位です。結果として、ジャンプトータルのスコアとしては3番目となりました。超高難度ジャンプで基礎点を稼ぎ、多少失敗しても高いスコアを保つ、というスタイルです。

ジャンプトータルではシェルバコワ選手が一位、トゥクタミシェワ選手が二位でした。トリプルアクセルが三本入っていたトゥクタミシェワ選手よりも、四回転が一本のシェルバコワ選手の方が基礎点が高い。トゥクタミシェワ選手が三回転のフリップで回転不足だったせいではあるのですが、シェルバコワ選手は四回転以外でもショートフリーでルッツループを入れていたりと、細かく基礎点を上げていることの表れでもあります。

そんなシェルバコワ選手をGOEで上回ったのがオーストリアのオルガ・ミクティナ選手。はっきり言ってしまえば、今大会までほとんど無名の選手。非常に大きな驚きでした。無名選手が一度いい演技をしても、PCSには即反映されない傾向がありますが、ジャンプのGOEには即反映されるので、こういったことが起こる、というように感じています。ベルギーのルナヘンドリックス選手がGOEは3番手でした。

 

ジャンプの基礎点は60点台前半のところに来る選手が多いです。トリプルアクセル三本持ちなはずの紀平梨花選手が、今大会ではこの基礎点60点台のクラスターの中に埋もれてしまいました。同じトリプルアクセル三本組のトゥクタミシェワ選手とジャンプの基礎点で13.81もの差を付けられての全体8位。GOEに至っては13位。大きく崩れたなあ、というのが見て取れます。

 

こうやってバブルチャート作るともう一人、ブレイディテネル選手も、だいぶジャンプで崩れたんだなというのが見えます。アメリカ、何とか3枠確保しましたが、テネル選手が演技終わった瞬間は、これは戦犯になってしまうのでは・・・、といったことが感じられてしまう出来でした。

 

 ●スピン

Pl

Name

Nation

Base

GOE

Spin

9

Bradie TENNELL

USA

19.40

6.52

25.92

5

Loena HENDRICKX

BEL

18.90

6.64

25.54

4

Karen CHEN

USA

19.10

6.40

25.50

1

Anna SHCHERBAKOVA

FSR

18.70

6.77

25.47

3

Alexandra TRUSOVA

FSR

19.60

5.38

24.98

8

Olga MIKUTINA

AUT

19.60

5.07

24.67

19

Satoko MIYAHARA

JPN

18.80

5.60

24.40

2

Elizaveta TUKTAMYSHEVA

FSR

18.50

5.30

23.80

6

Kaori SAKAMOTO

JPN

18.53

5.22

23.75

11

Yelim KIM

KOR

18.40

4.90

23.30

7

Rika KIHIRA

JPN

18.40

4.74

23.14

10

Haein LEE

KOR

18.00

4.50

22.50

13

Madeline SCHIZAS

CAN

17.90

3.98

21.88

12

Ekaterina RYABOVA

AZE

19.10

2.28

21.38

14

Eva-Lotta KIIBUS

EST

18.90

2.45

21.35

15

Josefin TALJEGARD

SWE

18.50

3.90

22.40

 

続いてスピン。やはり総合スコア上位15人と宮原知子選手について、ショートフリー合計でスピンで得た基礎点、GOE、スピン合計を出しています。

 

女子シングルスピン要素

 スピンのスコアはブレイディテネル選手がトップでした。ジャンプがしっかり決まらず総合得点は思うように伸ばせませんでしたが、スピンはしっかり点を確保しました。

二位にルナヘンドリックス選手、三位にカレンチェン選手。総合順位とはかなり異なる結果が出ています。

ただ、それでも、シェルバコワ選手四位にトゥルソワ選手五位。日本勢より上にいる。日本勢はジャンプで獲得点が負けるのは仕方ないにしても、スピンでまで差をあけられてしまうのは辛いです。

日本勢では宮原選手がスピンは7位で最上位でした。宮原選手はショートフリー共にすべてレベル4なのですが、基礎点合計は18.80 基礎点トップのトゥルソワ選手やミクティナ選手とは0.80の差を付けられています。満点出した経験もある得意のレイバックスピンが基礎点2.70と低いのが効いています。満点も出せるのでレイバックスピンは捨てがたいのですが、満点出しても4.05までしか出ない。もう少し基礎点の高いスピンに組み替えればスピンで点が稼げるかもしれない。難しいところです。

 

紀平選手はフリーで一つレベル3になったことで基礎点も低めの18.40 GOEも伸びずスピンの得点は11位。基礎点もGOEも日本勢三人の中で一番下です。シェルバコワ選手とは2.33ポイントの差があります。今回紀平選手は調子が良くなかったわけですが、スピンで点が出ていないのはそこはあまり関係なくいつものこと。スピンでロシア勢に2~3

点負けてしまっているのが現状です

 

 ●ステップ系要素

Pl

Name

Nation

Base

GOE

Step

19

Satoko MIYAHARA

JPN

10.80

4.15

14.95

5

Loena HENDRICKX

BEL

10.80

4.14

14.94

10

Haein LEE

KOR

10.80

4.00

14.80

15

Josefin TALJEGARD

SWE

10.80

3.80

14.60

9

Bradie TENNELL

USA

10.80

3.49

14.29

4

Karen CHEN

USA

10.20

3.84

14.04

8

Olga MIKUTINA

AUT

10.80

3.11

13.91

7

Rika KIHIRA

JPN

10.20

3.70

13.90

1

Anna SHCHERBAKOVA

FSR

9.60

3.97

13.57

6

Kaori SAKAMOTO

JPN

9.60

3.36

12.96

2

Elizaveta TUKTAMYSHEVA

FSR

9.60

3.15

12.75

3

Alexandra TRUSOVA

FSR

9.60

3.07

12.67

11

Yelim KIM

KOR

9.60

3.05

12.65

13

Madeline SCHIZAS

CAN

9.60

2.06

11.66

14

Eva-Lotta KIIBUS

EST

9.60

1.92

11.52

12

Ekaterina RYABOVA

AZE

9.60

1.90

11.50

続いてステップ系要素。やはり総合スコア上位15人と宮原知子選手について、ショートフリー合計でステップとコレオシークエンスで得た基礎点、GOE、スピン合計を出しています。

女子シングルステップ系要素

ステップ系要素のトップは宮原知子選手。総合19位の選手がステップ系要素のスコアでトップというのは前代未聞です。ジャンプは全く決まらず、いいとこなしに見えなくもなかったのですが、ステップ系要素は世界一を確保しています。昨シーズンもその前のシーズンも、ステップで得たスコアはシーズン最高点でしたので、やはり宮原選手のステップは世界一、というのが今シーズンもスコアで表された形です

 

ショートフリーでレベル4を揃えると基礎点は右端の10.80になります。片方レベル3だと真ん中の10.20 両方レベル3だと左の9.60のところになります

 

ロシア勢はステップが弱い。三人全員がショートフリー共にレベル3です。配点の低い要素なので、練習で割り振る時間がやや少なかったりするでしょうか。宮原選手がショートフリー合わせてステップ系要素で獲得した14.95というスコアをはるかに超える19.48というスコアを、トゥルソワ選手は4Lz+3Tの一つの要素だけで出してきます。

 

ヨーロッパ選手権はロシア選手権の小型版、等と言われてしまったりしますが、ロシア勢以外のヨーロッパ勢もジャンプ以外の要素では上位に来たりします。

ステップ系要素の二位はルナヘンドリックス選手。四位にはスウェーデンのヨセフィン・タレガルト選手。ジャンプ、スピン、ステップがすべて等価なら、全く違う順位がついてくるのだろうと思いますが、その場合全く違うスポーツにもなるんだろうな、とも思います。

 

日本勢はステップ系要素は基本的に強いはずなのですが、今回は紀平選手がフリーでステップレベル3になり、合計はかろうじてシェルバコワ選手より上でしたがあまり点は稼げず。坂本選手はショートフリー共にレベル3。実はルッツのe問題がそのままでも、ステップがショートフリーレベル4なら4位にまでは来ていました。まあ、割とステップではレベル4を揃えらえない選手ではあるのですが、もったいないところでした

 

 ●総合得点との相関係数

 

Jump base

Jump GOE

Spin base

Spin GOE

Step base

Step GOE

総合得点との相関

0.839

0.480

0.483

0.778

0.283

0.734

PCSとの相関

0.578

0.223

0.361

0.869

0.379

0.840

 総合得点と、各要素の基礎点及びGOEで得た点数の相関を見てみました

一番相関が強いのはジャンプの基礎点。これはわかる気がします。ただ、ジャンプは基礎点が大事で出来栄えの方のGOEは基礎点と比べると影響度がかなり低い、というのは意外ではありました。まあ、トゥルソワ選手みたいな選手がいることでこういう方向に数式が引っ張られている部分はあるかもしれません。ジャンプで大事なのは高難度ジャンプを入れて回転を回りきること、ということになるんでしょうか。

一方、スピンやステップは基礎点よりも出来栄えの方が総合点との相関が明らかに強いです。これは、基礎点ではもう差がつきにくい要素である、ということが言えるんでしょうか。レベルは多くの選手が4を取れるし悪くても3は取って来る。その中でどれだけ加点を出せるか。強い選手は加点もしっかり得られる、ということでしょうか。

それにしてもステップ系要素の基礎点は総合点との相関が低いです。ロシア勢がステップレベル3なあたりがこの辺に出ているのでしょう。

 

総合点ではなくPCSとの相関を見ると、ジャンプよりもスピンステップの方が相関が強い、という結果が出ています。一番相関が強いのはスピンのGOE ステップの方がPCSとの相関は強いかなと思っていたのでこれは意外でしたが、その差はそれほど大きくはないので試合ごとにおそらく変わっていくのかと思います。

一番相関が低いのはジャンプのGOE  ここは、トゥルソワ選手と宮原選手がかなり影響してますでしょうか。ジャンプの出来栄えとPCSの相関はわずかである、という結果でした。