グランプリファイナル、今年の男子シングルはネイサンチェン選手の圧勝でした。
前回の女子シングルに続いて、今回は男子シングル、ファイナルの結果を振り返ります。
Pl |
Name |
Nation |
Total |
SP TSS |
FS TSS |
1 |
Nathan CHEN |
USA |
335.30 |
110.38 |
224.92 |
2 |
JPN |
291.43 |
97.43 |
194.00 |
|
3 |
Kevin AYMOZ |
FRA |
275.63 |
96.71 |
178.92 |
4 |
Alexander SAMARIN |
RUS |
248.83 |
81.32 |
167.51 |
5 |
Boyang JIN |
CHN |
241.44 |
80.67 |
160.77 |
6 |
Dmitri ALIEV |
RUS |
220.04 |
88.78 |
131.26 |
全体のスコアはこんな感じ。ネイサンチェン選手と羽生選手の差の方が、羽生選手とケビンエイモズ選手の差よりも大きくなっています。印象ではそういう感じではなかったんですけどね。採点としての点差はそうなっています。
以下、ファイナル出場6選手の、グランプリシリーズ2戦の結果を交えながら見ていきます。
散布図が並びますが、○はグランプリシリーズ2戦の結果で、◇がファイナルの結果です。各選手、色で分けられています。
●ショート/フリー スコア
まずは、ショートプログラムとフリーの点の入り方
ネイサンチェン選手はグランプリ2戦と比べて、ショートフリー共にはるかに高い点数を出しました。一方、羽生選手は、ショートフリー共にグランプリ2戦と比べて点数は下がってしまっています。今回の点差は大きかったですが、グランプリシリーズで高得点を出したスケートカナダのスコアは322.59 ファイナルのネイサンチェン選手との差は12.71ほどになります。それでも4回転ジャンプ1本分差があると見るか、たったそれだけの差になると見るか。
抜けてる二人の下の三位表彰台争いも激戦かな、と思っていましたが、ケビンエイモズ選手だけが、ショートフリー共にシリーズ2戦より高いスコアを出して表彰台に乗りました。他の三人はグランプリシリーズの方がスコアが高い、という結果です。やはりファイナルで結果を出すには、シリーズ2戦よりも高いスコアが必要になってきます。
●技術点/演技構成点
次はショートフリー合わせての技術点と演技構成点。
ネイサンチェン選手のTESが飛びぬけています。羽生選手はPCSはそれほど遜色ありません。2.06というわずかな差なのですが、TESで41.81という大差がついています。
三位に入ったケビンエイモズ選手はPCS寄りな選手のイメージですが、結果的にTESもPCSも全体三番手でした。四回転を並べる選手たちが今一つな中、ジャンプもしっかり決めたため、4位以下と総合点で大差がついていますし、4位以下の選手たちのグランプリシリーズのスコアを総合はもちろん技術点でも超えることができました。今シーズン、これより上のスコアは、ネイサンチェン選手と羽生選手の二人しかいません。この出来なら、世界選手権の表彰台争いもできるのですが、ファイナルで3位になった選手は、意外とそのシーズンの世界選手権、あるいはオリンピックで結果が出ない、という傾向もあったりします。
●ジャンプ-減点/演技構成点+スピン+ステップ
これは、ジャンプで得た得点から減点分を引いたものを横軸に取り、演技構成点にスピンとステップの得点までを足したものを縦軸に取ったものです。
羽生選手とネイサンチェン選手は、ジャンプだけで40.74の差がついた、という結果になりました。一方で、羽生選手とエイモズ選手は、ジャンプの点差が7.15と意外に僅差です。
羽生選手のフリーの構成はとてつもないもので、やはり体力的には厳しかったようで、最後のジャンプ3つが予定通りいきませんでした。3連続の三つ目のトリプルフリップは回転不足。コンビネーションの二つ目のトーループが2回転に。そして最後のトリプルアクセルシークエンスがシングルアクセル単独に。この三つで基礎点だけで18点近く下がったいますし、加点も得られなかったので、パーフェクトにできた時と比べて25点ほど低かった計算になります。
それでも3位の選手よりはっきり上のスコアになるのをすごいと見るか、フリー完璧でも総合ではネイサンチェン選手に全然届かなかったのねと見るか。成功したジャンプのGOEもネイサンチェン選手の方が上に行っていたので、今の段階では出来栄えでも羽生選手の方が負けている、という現状はあります。
●ジャンプ 基礎点と加点
続いて、ジャンプ要素。横軸は加点の獲得度合いであり、縦軸は基礎点です。
基礎点も加点もネイサンチェン選手が当たり前に一番高いです。羽生選手は基礎点で見るとボーヤンジン選手とあまり変わりません。ボーヤンジン選手は、ジャンプがうまくいかずにGOEはトータルでマイナスですが、回転不足はショートの1本だけで、あとは周りきっての転倒、というようなものが多かったため、基礎点は高く残りました。
表彰台に乗ったエイモズ選手は、ショートフリーで4回転合計3本。本数は一番少なく、そのうちの一本も回転不足があったので、基礎点はそれほど高いわけではないのですが加点はかなり得ていました。グランプリ2戦は、ジャンプは危なっかしくてGOEはプラスマイナス0付近になっていたところから、今回は加点を12.64と大きく得ていました。
●スピンの基礎点と加点
スピンもわずかながらネイサンチェン選手が基礎点加点ともにトップです。羽生選手がどちらも二番目で、エイモズ選手が加点で3番目。5選手がすべてレベル4を並べる、というハイレベルな中で、アリエフ選手はスピンがしっかり決められませんでした。元々スピンではあまり点が取れない選手でしたが、今回はいつにもましてうまくいかず、という形になっています。
●ステップの基礎点と加点
ステップはレベル4をそろえたのがエイモズ選手だけ。加点も高めで合計もエイモズ選手がトップでした。加点だけ見ればネイサンチェン選手がトップ。羽生選手はどの要素を取ってもネイサンチェン選手に勝てなかった、ということになります。
今回は、ネイサンチェン選手の強さがとにかく目立つ試合でしたが、三位に入ったケビンエイモズ選手の、各要素での出来栄えの高さ、というのも、要素別のいろいろなものを見ていくと浮かび上がってくるものではありました。
羽生選手は、結局、すべての要素でネイサンチェン選手に負けてしまっていたという現実は確かにあったのですが、シーズン中盤の通過点として考えれば、フリーのあの構成があれくらいできた、というのは一つの収穫だったのだろうと思います。再戦は世界選手権なのか、あるいは、二人して四大陸選手権に出てくる、という構図があるか。ないかな。羽生選手は今回は出るんじゃないかという気がしたりもしますが、ネイサンチェン選手が出てきそうな気は・・・、しないですかね。
以上、グランプリファイナルの振り返りでした。