インドネシアのスケート少女サビカ
フィギュアスケート後進国のインドネシアから世界を目指しているけれど、世界ジュニアのミニマムスコアを取ることもできず、ジュニアグランプリシリーズに出場するのがやっと、というのがこれまでの現実でした
一応、インドネシアという国のトップではあるけれど、国際舞台では存在感はなく、したがって、国の中でも特に注目を浴びることもない、という存在でした。
東南アジアでは2年に1回、大変盛り上がる総合競技大会が行われます。東南アジア競技会:SEA Gamesです。世界的にはスポーツ全般にわたって、あまり競技力のある地域ではない東南アジアですが、だからこそ、東南アジアだけの競技会は非常に盛り上がるようです。
このSEA Gamesにインドネシアの代表として出場したサビカは、見事3位表彰台、銅メダルを獲得しました。
大会の性質から、グランプリシリーズなどと違い、スコアシートがなかなか出てこないので詳細は分からないのですが、ショート32.62 フリー68.18 総合100.80のスコアで3位に入っています。
優勝はシンガポールのクロエ選手。スコアは152.67
チャレンジャーシリーズあたりには出てくる選手で、以前は四大陸選手権にも出場していました。四大陸のミニマムスコアくらいまでは調子が良いと取れるけれど、世界選手権には届かない、という水準の選手です。日本なら全日本にまでは進んでくるかな、というくらいの位置。
東南アジアの水準というのはそれくらいといえばそれくらいではありますが、それでも、サビカは国際競技会で立派に表彰台に乗りました。国の代表としてしっかり結果を出した、ということになります。
表彰式の動画がありました。
何の変哲もない表彰式の映像です。そんなただの表彰式の映像が、アップして数日で、視聴回数15万回を超えています。フリーの通しの動画もあって、そちらは22万回を超える再生回数になっています。
サビカの今シーズンのジュニアグランプリシリーズの演技もyoutubeにはISUからアップされていますが、視聴回数はショートが3000回、フリーで2000回といったところです。SEA Gamesというのが、いかにこの地域の人たちにとって大きなイベントであるかがわかります。東南アジア地域に、フィギュアスケートのファン、というのがそこまでの規模でいる、とは考えにくいですからね。
サビカの演技はこの辺から。時折見切れてしまう、というあたりが撮影者のレベルもトップレベルと比べてだいぶあれな感じもします。彼女の演技はいつ見ても、ジャンプはまだまだなのですが、スピンになった瞬間に日本のジュニアのトップくらいのレベルにいきなり変わるんですよね。
演技冒頭がトリプルサルコウなのですが、回転は微妙に見えますが何とか降りました。次のダブルアクセルで転倒がありましたが、以降コンビネーションを三つすべて入れることもできて、パーソナルベスト相当のスコアとなりました。シニアルールで滑ったのは初めてなはずなので、ベストも何もないのですが、とにかく総合100点に初めて乗りました。
滑走順は最後から三人目で、得点が出てトップ。その時点で表彰台確定。得点発表の直後にはキスアンドクライで泣きじゃくっていました。4位は89.38なので、結果的に10点以上の差はあったのですが、今シーズンのジュニアグランプリシリーズでフリー59.88だった彼女にとっては、点が出るまで安心できるような差はありませんでした。
これまでは国際舞台で戦う、といっても最初から勝敗という面では圏外、というところにいた彼女ですから、このSEA Gamesというのはこれまでの人生で最高の舞台であり、最もプレッシャーがかかる場面であったはずです。そんな中で、ベストな演技が出来たことは、本当に素晴らしいと思います。
そんなビッグイベントで、彼女は国の代表として結果を出しました。
現地のウェブサイトでも大きく写真入りで、多数取り上げられています。
まだまだ世界のトップとは遠い遠い距離はありますが、国の代表としてメダルを取って帰ってきた、というのは彼女のスケーター人生の中で大きな成果であることは間違いありません。安藤美姫さん、おめでとうくらいつぶやいてほしいんですけど、特にコメントなくて、たぶん把握してませんね。
希望としては、これをきっかけに、ジャカルタでスポンサー的なものがついてくれたらと思います。彼女はインドネシアレベルで見れば、これまでの何の実績のない選手とは違う立場になりました。SEA Gamesのメダリスト、という実績を持つ選手です。そして、フィギュアスケートという競技は見栄えもします。高校生年代から世界で活躍できるからか、日本では塾のCMや広告で使われたりしていますね。現在なら紀平梨花選手、昔は村上佳菜子さんが、「こいつ、俺と同じ高校生なんだよな」とテレビ見ながら言われてるという絵柄の塾CMに出ていたでしょうか。インドネシアの進学塾のCM? そんなのあるかわかりませんけど、別に塾じゃなくていいんですけど、とにかく、金銭的な支援を得られるきっかけに、これがなってくれたらと思います。
SEA Gamesは地域大会なのでISUのベストスコアにはカウントされない大会なはずです。また、そもそもシニアルールでの試合ですので、ジュニアの大会のミニマムスコアにカウントはされません。ただ、トリプルサルコウを回転不足っぽいながらも降りるところまでは来ているので、あとは今回転倒したダブルアクセルも着氷して、ミスなく滑ることができれば、世界ジュニアのミニマムスコアが見えるところまで来ました。彼女の場合は今シーズンの国際大会への派遣がおそらくこれで終わりなので、世界ジュニアのチャンスはまた来シーズンになってしまうと思われますが、来シーズンこそ、届きそうなところまで来ました。
なお、同じチームのリズキーは男子シングルで出場しショート38.78 フリー76.70 トータル115.48の6位に終わりました。彼も初の100点突破となりました。ショートもフリーもベストスコア。フリーはシニアルールでコレオが加わる分点が伸びるのは当たり前にも見えますが、コレオ分除いて考えても従来のスコアをはるかに上回ります。
フリーの動画はこの辺から。
三回転が3本とダブルアクセル2本飛んで転倒無し。三回転は見切れていてわかりにくい部分もありましたが、二つは回転不足かな。それでもTES33.38 PCS43.32 スピンで点が取れないので、世界ジュニアのミニマムスコア42.00がまだ遠い、という現実があります。
男子シングルの優勝は、グランプリシリーズにも出場していたマレーシアのジュリアンジージェーイー選手が202.62と、一人200点に乗せて圧勝でした。
以上、SEA Gamesのサビカとリズキーでした。
サビカ選手、おめでとうございます。