四大陸選手権あるいは日米韓三か国対抗戦

女子シングルは、普通に三強が表彰台に乗り、普通に二連覇するという、なんだか大方の予想通りの展開だったのではないかと思われます

その下も、順当に9位まで、日米韓の各選手が並びました

 

紀平選手の連覇ばかりが強調されていて、あまり触れられていないような気がしますが、これで女子シングルは日本勢の5年連続優勝です。宮原知子-三原舞依-坂本花織-紀平梨花-紀平梨花で5連覇。全米選手権がたいてい近すぎる時期にあるので、アメリカ勢があまりここに調子を合わせてこなく、ほかはあまり強くない、ということで日本が勝ちまくりたまにアメリカも勝つ、というのが四大陸の構図でした

ちょっと意外なのは、カナダ勢の優勝というのが一度もないんですね。ケイトリンオズモンドさんは表彰台にも乗っていない。ジョアニーロシェットさんも最高位が2位。デールマン選手が不調に陥ってしまったので、最近はカナダ勢も勝負に絡んでこなくなりました、

代わりに台頭してきたのが韓国勢。パクソヨン-チェダビン時代は表彰台には絡んできませんでしたが、旗頭ユヨン選手がシニアに上がって、一気に200点ランカーが増えて日米と渡り合う勢力になってきました。

 

という流れで今大会は8位までが200点に乗っています。表彰台に乗るにはヨーロッパ選手権の方が大変ですが、4位以下、上位に入るには四大陸の方が大変という構図。

見ている分にはヨーロッパ選手権より四大陸の方が楽しめます。

 

表彰台は今シーズン結果を出している3人がしっかり並びましたが、順番はどうでしょう。

ユヨン選手、いい演技でした。ただ、表現面では紀平選手、ブレイディテネル選手とやや差を感じる部分もありました。そういう観点で見ると、PCSはそこまでいくかなあ、と見るかあるいは、あとの二人がもう少し出てもよいかなあ、と見るか。まあ、大会は興業でもあるので、僅差なら地元が上に出るというのは、ある程度はあってもおかしくはないんでしょう。フリーのトリプルアクセルは美しかった。

今の時点だとまだトリプルアクセルはショートフリーで1本づつ。PCSも地元力があっても今回の表彰台3人の中では一段落ちる。ステップでレベル4率はあまり高くない、というあたりの課題がまだ直近あって、今の段階ではコーチも同じになりましたし、上位互換で紀平梨花選手がいるという感じになっているのですが、その辺は時間の問題として克服していって、そう遠くない時期に230点台までは届いてくるんだろうな、と想像されます。

 

ブレイディテネル選手はチャンピオンシップ初表彰台。19歳までジュニアで滑っていたという選手なので、シニアデビューは坂本花織選手が同期なのですがすでに22歳。日本なら宮原知子選手や新田谷凜選手と同じ年です。アメリカは二十歳過ぎてから延びる選手が結構いて、ロシアとの大きな傾向の違いを感じます。今シーズンは210点台をグランプリシリーズ3戦で出して、四大陸は220点台についに乗せてきました。フリー冒頭のルッツトーがしっかり決まれば2位まで来たのですけど、もったいなかったかな。ただ、構成的にそろそろ限界点なので、230点台に乗せての勝負、というのはちょっと厳しそうです。世界選手権ではシーズンベスト6番手として臨むことになるのですが、シーズンベスト7番手のマライアベル選手と合わせて次シーズンの3枠可能性が結構出てきましたかね。ユヨン選手や宮原知子選手あたりとの関係でアメリカ三枠なるか、というのが決まってきそうです。

 

四位は樋口新葉選手。二シーズンぶりのチャンピオンシップ復帰はまずまずの結果なんでしょうか。207.46のシーズンベスト。これで、まずは来期のグランプリ枠2枠を確実にしましたかね。実はまだ今シーズンは181.32しかもっていなかったので、そのベストのままだとちょっと心配がありました。ショートフリーの技術点演技構成点、すべてでシーズンベスト。現行ルールになってからの二シーズンでの自己ベストでもあります。ただ、旧ルールとはいえ210点台を何度も出している選手ですので、まだ完全復活というところまでは行っていないように感じます。

トリプルアクセルは6分間練習を見ている限りだと、これはいけるんじゃ、と思いましたが、そうは甘くなかったですね。でも、次は決まるんじゃ、と期待が持てる流れでした。決まればフリー140点台に乗りますし、トータルも210点台まで乗ります。ただ、トリプルアクセル決めても210点にのるくらい、というのはちょっと低い。

上位3人と比べて加点がいろいろと弱めでした。GOEが平均で+3を超えたのはショートフリー共にステップのみ。ステップで+3を超えるのは結構大変なので、その点はすごいのですが、ジャンプでもうちょっとGOEを稼がないと上位での勝負は難しい、という構図になっています。また、スピンの加点も、今回の日米韓9選手の中で一番下。ステップで加点は取れるのだけど、演技中盤に入るコレオでは加点があまり取れず。スピンなんかはすべてレベル4なだけでなく、構成的にも基礎点が高いものが入っていて、今大会全選手中最高点でした。基礎点は上位とそん色ないのだけど、加点差が大きくて、表彰台とは大差がついたという構図。

あのトリプルアクセルなら、来シーズンはショートフリー両方で使えて、オリンピックシーズンには合計3本、くらいにはたどり着けそうに感じましたので、それを装備したうえで加点を各要素で取れるとだいぶいいところで勝負できるところまで行けるんじゃないでしょうか。流れ的には昨シーズンのトゥルシンバエワ選手の四回転のような感じがするので、世界選手権で飛べるんじゃないかな

 

坂本花織選手が5位。まさかの四回転トーループ。国体の情報出てきたときはかなり驚きましたが、練習開始したのが今年になってから、というのもさらに驚かされました。あの展開の中で四回転トーループを冒頭に入れたあたりは、坂本選手にとってこの四大陸選手権は、あまり結果にこだわりのない試合だった、ということでしょうか。すでに持っているタイトルでもありますし、世界選手権への調整もないですし、来シーズンに四回転を入れるための布石として、飛べなくてもとにかく入れる、という感覚。紀平選手とは考え方がずいぶん違いますが、それはそれでありなんだろうと思います。ただ、四回転はフリーでしか使えない。抜けて単独のトリプルトーループになりやすい危険もある。女子の四回転トーループ装備は、あまりお得感がないんですよね。相当成功率を上げた上でフリー二本使いまでもっていかないと、トリプルアクセルと比べてはっきり劣る。先行き厳しいなあ・・・

本人も語ってましたが、四回転トーループで転倒した後、どう立て直すかだったのですけどうまくいかなかったですね。二本目のジャンプのトリプルフリップは、転倒の後のダメージが残ったままのジャンプにみえてうまくいかず。冒頭ジャンプが四つ要素として続くのですが、見ていると、冒頭に転倒する可能性の高いジャンプを入れている、というのを配慮した流れにたぶんなってないな、と感じました。間があまりないまま立て続けにジャンプ要素が入って来る。冒頭がダブルアクセルなら問題ないんでしょうけど、四回転トーループで派手に転んで、となるとつらそうでした。今シーズンは冒頭トリプルアクセル前提のプログラムだったと思うんですけど、なんか今更ながら容赦ない構成だなあ、という感じです

今回はショートフリーともに、得意のトリプルループもしっかり決まらず、全体的にジャンプが今一つでした。ジャンプの加点がトータルでマイナスになったのは日米韓の9人の中で坂本選手だけで、基礎点も合わせたジャンプで得た得点も9人中最低です。それでも5位にまで入ってきたのは総合力の高さの証ではあったのだろうと思います。ステップ系要素の加点は全体トップでしたし。フリーでは転倒があったにもかかわらず、トータルのPCSは全体3番目で残っています。

ノーミスマトリックス見たいんですけど、来シーズンどうでしょう?

 

6位はキムイェリム選手。パーソナルベストで200点ランカーの仲間入り。フリーだけなら大きなミスなく4位でした。紀平選手と同じく昨シーズンシニアデビューの選手。ただ、グランプリシリーズは今シーズン初めて、それも1戦のみの出場でした。そこからの200点越え。そつなくこなしたなあ、という印象でした。ショートフリー合わせたPCSは全体8番目とあまり伸びていません。一方でジャンプで得た点数は表彰台3人に次ぐ四番目。スピンステップもレベル3が目立って、まだまだ伸びしろある中で200点に乗ったキムイェリム選手ですが、世界選手権では、各国3枠争いのカギを握る選手になりそうな立ち位置になってきたでしょうか。

韓国はユヨン選手が5位までくれば、もう一人が8位に入れば3枠。シーズンベストは、日米露の8人に及ばず全体10番目になるはずですが、宮原選手、樋口選手、あるいはマライアベル選手あたりの上まで行くチャンスはある。そこまでいくとアメリカ三枠が消えそうだし、日本も危うくなってくる一方で韓国が3枠になる。この選手の点が伸びないと、日本勢は3枠確保が楽になります。日米韓3枠争いのキーマンです

 

7位は復活カレンチェン選手。旧ルールのベストスコアは世界選手権4位の時の199.29で、200点に乗ったことはなかったのですが、今大会で200点ランカーの仲間入りしました。これで来シーズンのグランプリシリーズもちゃんと枠が確保できそう。

フリーで最終グループに入れなかったことも影響したのかと思いますが、PCSはもうちょっと出してあげて欲しかったなあ、という印象でした。コレオシークエンスの加点は坂本選手に次いで全体2位。アメリカの女子選手が多くやる、あのスパイラル、私の中ではアメリカンスパイラル、とかいう単語が頭の中にあるのですが、身長はそれほどないはずなのに、よく映えていたと思います。スピンで得た得点も全体で2番目。ジャンプの回転不足がショートフリー合わせて4つあったのが痛くて、そこがしっかり飛べていれば4位まではありました。

ブレイディマライア組で世界選手権3枠取ってくれば、来シーズンは序列的には世界選手権まで入っていける立ち位置の選手。来シーズンはさらに期待です

 

8位に、今シーズンの世界選手権枠を2つにしてきた韓国の功労者イムウンス選手が入りました。国内選手権で表彰台に乗れず、せっかく自分で増やした世界選手権の枠に自分が入れないという悲しい展開。今回も少し元気なかったでしょうか。3-3のコンビネーションなし。それでもセカンドトーループを入れるべく2A-3Tを試みるもそこで転倒しました。そんな関係でジャンプの基礎点は全体9番目と伸びず。一方、加点は、転倒が一つあるにもかかわらず全体で5番目と稼ぎました。そんなわけで3-3無しで200点まで届かせています。2シーズン連続の200点をマーク。技術点演技構成点、ともに100点台とバランスよく点が入っていたのですが、見た目の印象は、演技構成点側にもうちょっと寄っていてもおかしくないんじゃないかな、という感じを受けました。

アルトゥニアン先生のところを離れて自国に帰っていたんですね。まあ、いろいろあったようですし。昨シーズンのベストは世界選手権。今シーズンのベストは、世界選手権の出場権がないので、この四大陸選手権となるのですが、シーズンの一番大きな試合でベストスコアを出してくる、という選手です。来シーズン、韓国が世界選手権に3枠手に入れた場合には、この選手も含めて200点ランカーが3人出てくる可能性があります。展開次第では、日米露韓の四か国から3人づつ、という世界選手権がありえて、そうなった場合アメリカの三番手もそうですが、この選手も韓国の三番手として入ってくることができるので、次のシーズン、すなわちオリンピックの3枠争いが非常に激烈なことになります。

 

 

今回ちょっと不思議だったのが、女子のジャッジが8人しかいませんでした。割と通常はチャンピオンシップ大会はジャッジが9人で、今回も男子はジャッジ9人なのですが、女子はショートフリー共に8人だけ。なんででしょうね??

 

 

全体のレベルが高い、というか、日米韓のレベルが高い四大陸選手権でした