全日本ジュニアが終わって、フィギュアスケート全日本選手権のメンバーが確定しました。また、NHK杯が終わったことで今シーズンは全日本選手権前の主要大会は終了しました
この段階で、全日本選手権のプレビューをしようと思います
まず、エントリー選手の今シーズンのベストスコアを並べました。地方のローカル大会や国体の予選などは含めていません。全日本につながるブロック大会、全日本ジュニアと国際大会であったNHK杯および国内メンバーだけでしたがジャパンオープンまでを含めてみています。国体予選などを含めればここに乗っているスコアより高い点を出している選手もいます
〇今シーズンのベストスコア
Name | Total | Event | |
1 | 坂本花織 | 229.51 | NHK Trophy |
2 | 樋口新葉 | 203.24 | 東日本選手権 |
3 | 松生理乃 | 198.97 | NHK Trophy |
4 | 三原舞依 | 194.87 | 西日本選手権 |
5 | 吉田陽菜 | 189.49 | 全日本ジュニア |
6 | 河辺愛菜 | 188.48 | 近畿選手権 |
7 | 新田谷凜 | 187.82 | 西日本選手権 |
8 | 山下真瑚 | 186.13 | NHK Trophy |
9 | 白岩優奈 | 185.29 | 西日本選手権 |
10 | 横井ゆは菜 | 176.49 | NHK Trophy |
11 | 本郷理華 | 176.07 | 中部選手権 |
12 | 吉岡詩果 | 174.12 | 東日本選手権 |
13 | 永井優香 | 171.19 | 東京選手権 |
14 | 住吉りをん | 170.37 | 全日本ジュニア |
15 | 竹野比奈 | 168.30 | 西日本選手権 |
16 | 渡辺倫果 | 167.19 | 東日本選手権 |
17 | 滝野莉子 | 165.36 | 近畿選手権 |
18 | 松原星 | 163.12 | 東日本選手権 |
19 | 本田真凜 | 162.57 | NHK Trophy |
20 | 川畑和愛 | 162.24 | NHK Trophy |
21 | 松田悠良 | 162.20 | 中部選手権 |
22 | 浦松千聖 | 162.14 | NHK Trophy |
23 | 鈴木なつ | 159.32 | 全日本ジュニア |
24 | 佐藤伊吹 | 155.28 | 東京選手権 |
25 | 廣谷帆香 | 153.42 | 東日本選手権 |
26 | 千葉百音 | 152.47 | 全日本ジュニア |
27 | 青木祐奈 | 152.45 | 東日本選手権 |
28 | 大矢里佳 | 152.03 | 東京選手権 |
紀平梨花選手、宮原知子選手は試合出場がありませんのでそれを除いた全28選手分になります
坂本選手がNHK杯で出した229.51は圧倒的です。これより高いスコアを出したことのある日本人選手は紀平梨花選手のみです。
二番手は昨シーズン表彰台に乗った樋口新葉選手。ここまでが200点越え。樋口選手は今シーズンノーミス演技は出来ていませんが、それでも東日本、NHK杯と二試合続けて200点には乗せてきています。世界選手権の代表権争いのある意味中心的な存在になるんでしょうか。紀平選手が初戦とはいえある程度の点を出し、坂本選手が好調で220点台を全日本でも出すようだと、この樋口選手が三番手に来て、樋口選手の上に行ければ代表になれる、誰も行けなければ樋口選手、という基準の位置になるかもしれません。
三番手がジュニアの松生理乃選手。世界ジュニア内定、した翌日にだったでしょうか、世界ジュニア中止発表。中止するならグランプリファイナルであって世界ジュニアは何とかやろうとしてほしかったのですが、中止決定。ジュニア組の全日本表彰台、というのは昨年の川畑選手をはじめ、結構高確率であるのですが、今シーズンは松生選手がそれに挑戦する形になります。
三原選手は復活途上ながら4番手。PCSがまだあまりもらえないなあ、という印象なのですが、そこが伸びれば200点に乗って表彰台争いして、まさかの復活シーズンに世界選手権代表、という目もあったりするんでしょうか
ジュニアの吉田陽菜選手が5番手。吉田選手もジュニアからの表彰台の芽がある選手でしょうか。世界ジュニアの代表も確定的だったのですが世界ジュニアが中止。シーズン後半、全中を目標にする、というレベルの選手ではないのですが、そういう試合しか残っていないので、中盤の山場のこの全日本で大爆発200点を期待しています
180点台は吉田選手含め5人。今シーズンシニアに上がった河辺愛菜選手は、トリプルアクセルがまだ今シーズン決まっていないのですが、今シーズン中に確率を上げて来シーズンはショートフリーで三本入れてオリンピック代表権争いに参戦、というのを目指したいところでしょうか
国内組の新田谷凜選手が今シーズンもしっかり結果を出しています。一度くらいグランプリシリーズ出てほしいんですけどね。今シーズン世界がまともだったらチャレンジャーシリーズで国際大会に復帰は出来たはずなのに大変残念でした
山下真瑚選手、白岩優奈選手も存在感を見せて来シーズンのオリンピック代表争いにつないでほしいです。
昨シーズン非公認ですが214点まで出した横井ゆは菜選手が今シーズンは伸びていません。1強+4or5 の一人になると思っていたんですけどねえ・・・
復帰の本郷理華選手は11番手。国際試合に復帰するにはトップ10に入りたいところでしょうか。
引退表明の永井優香選手は13番手。永井選手も世界がまともならチャレンジャーシリーズで国際大会復帰の芽があったのですけれど。それがなくなったにしても最後の全日本でいい演技が見たい選手。東日本以降、どうも不振なようなのが心配です。
160点台が8人 この辺は一歩間違えるとショート落ち、ということもあり得る位置なんですが、昨シーズン表彰台の川畑和愛選手がこんなところにいます。170点台くらいまではコンスタントに出す選手でしたけど、ミスが出ると150点台ということもあったので、まだ2試合だとこれくらいの位置になってしまうこともあるでしょうか
グランプリ組の本田真凜選手もここにいます。いつもは悪いながらも170点台後半まで出していましたが、今シーズンはケガで出遅れています。それでも徐々に点は伸ばしてきてはいますが全日本でどこまで出せるでしょうか?
〇ショートプログラムのシーズンベスト
Name | TSS | Event | |
1 | 坂本花織 | 75.60 | NHK Trophy |
2 | 樋口新葉 | 70.71 | 東日本選手権 |
3 | 松生理乃 | 69.06 | 全日本ジュニア |
4 | 山下真瑚 | 67.56 | NHK Trophy |
5 | 横井ゆは菜 | 65.18 | NHK Trophy |
6 | 三原舞依 | 64.50 | 西日本選手権 |
7 | 白岩優奈 | 64.06 | 西日本選手権 |
8 | 河辺愛菜 | 63.62 | NHK Trophy |
9 | 浦松千聖 | 62.98 | 西日本選手権 |
10 | 吉田陽菜 | 62.25 | 西日本選手権 |
11 | 新田谷凜 | 61.95 | 西日本選手権 |
12 | 永井優香 | 61.08 | 東京選手権 |
13 | 滝野莉子 | 60.46 | 近畿選手権 |
14 | 本郷理華 | 60.29 | 中部選手権 |
15 | 吉岡詩果 | 60.23 | 東日本選手権 |
16 | 松原星 | 59.99 | 東日本選手権 |
17 | 住吉りをん | 59.96 | 全日本ジュニア |
18 | 川畑和愛 | 59.83 | NHK Trophy |
19 | 千葉百音 | 59.55 | 東日本選手権 |
20 | 本田真凜 | 58.30 | NHK Trophy |
21 | 竹野比奈 | 56.61 | 西日本選手権 |
22 | 廣谷帆香 | 55.46 | 東日本選手権 |
23 | 渡辺倫果 | 55.42 | 東日本選手権 |
24 | 松田悠良 | 55.08 | 西日本選手権 |
25 | 鈴木なつ | 54.78 | 全日本ジュニア |
26 | 大矢里佳 | 54.30 | 東日本選手権 |
27 | 佐藤伊吹 | 52.40 | 東京選手権 |
28 | 青木祐奈 | 48.73 | 東京選手権 |
ショートプログラムは上位24人しかフリーに進めません。紀平選手、宮原選手がカウントされていないことを考えると、ベストスコアのボーダーラインは55.46になっています。ショート24位のスコアは昨シーズンの全日本では50.35 一昨年は49.59 どちらも50点を出してフリーに進めなかった選手はいないのですが、今シーズンは1人を除いて50点以上のシーズンベストを持った状態での全日本となります
トップは坂本選手の75.60 名前がある中では圧倒的ではあるのですが、紀平選手がしっかり決めてくるとまだ届かない、という領域です。やはりショートのトリプルアクセル有り無しの差は大きい。スピン2つとステップがレベル3でしたので、これがレベル4になると77点は超えてくる計算です
樋口選手も70点に乗せています。これはダブルアクセルを飛んでのスコア。トリプルアクセル転倒だったNHK杯では69.71でした。トリプルアクセルをクリーンに決めれば坂本選手との差がほとんどなくなります
70点に近いところまで持ってきたのがジュニアの松生理乃選手。フリー最終グループが見えてます
その下になると70点がちょっと遠いんですね。フリー最終グループにはいるボーダーラインは65点は超えそうですが、70点は下回って67~8点になるのか、それとも全日本に合わせてくる選手が多く70点を超えてくるのか。昨シーズンは65.92 一昨年は66.27がショート6位のラインでした
河辺愛菜選手、吉田陽菜選手といったトリプルアクセル持ちがショートで決めてくると、スコアが一気に伸びてきます
ショート60点台のシーズンベストを持った選手が15人います。フリーで後半グループに入る12位は昨年59.52 一昨年59.99 60点出せばフリー後半でフジテレビ地上波で放映される、という形でした。今シーズンはここのボーダーがもう少し上がって、ショートで60点出しても前半グループにされる、ということが起きるかもしれません
〇フリーのシーズンベスト
Name | TSS | Event | |
1 | 坂本花織 | 153.91 | NHK Trophy |
2 | 松生理乃 | 133.23 | NHK Trophy |
3 | 樋口新葉 | 132.53 | 東日本選手権 |
4 | 三原舞依 | 131.32 | NHK Trophy |
5 | 河辺愛菜 | 130.56 | 近畿選手権 |
6 | 吉田陽菜 | 127.44 | 全日本ジュニア |
7 | 山下真瑚 | 126.94 | Japan Open |
8 | 新田谷凜 | 125.87 | 西日本選手権 |
9 | 白岩優奈 | 121.23 | 西日本選手権 |
10 | 横井ゆは菜 | 116.43 | 西日本選手権 |
11 | 本郷理華 | 115.78 | 中部選手権 |
12 | 吉岡詩果 | 113.89 | 東日本選手権 |
13 | 川畑和愛 | 112.63 | Japan Open |
14 | 渡辺倫果 | 111.77 | 東日本選手権 |
15 | 竹野比奈 | 111.69 | 西日本選手権 |
16 | 住吉りをん | 110.41 | 全日本ジュニア |
17 | 永井優香 | 110.11 | 東京選手権 |
18 | 松田悠良 | 108.34 | 中部選手権 |
19 | 青木祐奈 | 106.53 | 東日本選手権 |
20 | 浦松千聖 | 105.69 | NHK Trophy |
21 | 滝野莉子 | 104.90 | 近畿選手権 |
22 | 鈴木なつ | 104.54 | 全日本ジュニア |
23 | 本田真凜 | 104.27 | NHK Trophy |
24 | 松原星 | 103.13 | 東日本選手権 |
25 | 佐藤伊吹 | 102.88 | 東京選手権 |
26 | 大矢里佳 | 100.70 | 東京選手権 |
27 | 千葉百音 | 99.30 | 全日本ジュニア |
28 | 廣谷帆香 | 97.96 | 東日本選手権 |
フリーも坂本選手の153.91というスコアが圧倒的。宮原知子選手は18-19シーズン以降のルールでは146.58まで出したことがありますが150点を超えたことはありません。紀平選手は昨シーズンのチャレンジカップ156.38が最高。紀平選手の場合は150点を超えたことが9回あり、坂本選手のこの153.91くらいのスコアは普通に出せる、という領域ではありますが、そのあたりにまでトリプルアクセル無しで追いついた、というのがNHK杯の坂本選手でした。もう一度同じ滑りができるかどうか
その下2番手は、ジュニアの松生理乃選手になっています。130点台前半なので、宮原選手がしっかり滑って140点に乗せてくると表彰台までは厳しいですが、上位が崩れてくれば2年連続でジュニア勢の表彰台、という可能性をもっています
樋口選手はトリプルアクセル着氷でGOEマイナスだった東日本のスコアが132.53 昨シーズン復活の2位みたいな言われ方をしていますが、実際にはまだ、18-19シーズン以降のGOEプラスマイナス5範囲ルールでフリー140点を超えたことがありません。ジャンプの抜けがなくなれば140点台に入って上位がノーミスでも表彰台圏の争いができるのですが、どうでしょう?
三原舞依選手がNHK杯で131.32まで伸ばしてきています。まだPCSをあまり伸ばせてもらっておらず、5項目は7点台、NHK杯フリーのPCSは61.52でした。また、ステップがレベル2になっていたりと、ジャンプ以外のところでまだ点が伸びてきていなくて、そっちの方まではまだ手が回っていないのか体力が足りていないのか、そういったところが見られます。その辺が戻ってくれば140点復帰がありそうにも感じますが全日本に間に合うかどうか。
今シーズンは全日本後の国際大会が、もう、世界選手権以外はほぼ中止が発表されてしまってきています。(ユニバーシアードやグランプリファイナルは延期、という言葉を使っていますが)。
中位の選手達がどのあたりの大会の代表権なら取れるか、みたいな争いが楽しめないのですが、来シーズンの強化選手の枠とか、グランプリ未経験の選手がチャレンジャーシリーズに派遣してもらえる枠(強化選手と被りますが)、というのが一応かかってくるのが全日本の一桁くらいの位置です。新田谷選手、吉岡選手、また、せっかく去年表彰台に乗って特別強化選手になったのに今シーズン国際大会がほとんど死んでしまってチャレンジャーシリーズなどに出してもらえなかった川畑選手、といったところがその辺を目指す選手になるかと思います。昨シーズンポイントゼロで世界ランキングが下がってしまった白岩選手もその位置かな。
本田真凜選手はしぶとくポイントは稼いでいて世界ランクはまだ高く残っているので、来シーズンのルールが不透明ですがグランプリ1枠はもらえるのではないかと思うので、国際大会派遣云々というのはまだ無関係そう。むしろ山下真瑚選手の方がランク的には下です。昨シーズン全日本で結果が出ず、後半のB級大会派遣がなかったことが地味に効いてます。本郷理華選手も国際大会復帰を目指すにはトップ10まで戻ってきたいのですが、本人はどこまで考えているでしょうか。本郷選手クラスになると、グランプリ2枠復帰権、というのを世界選手権6位の実績により持っているので、それを行使する手もありますし。
初のフリー進出を目指す選手、強化選手入りしたい選手、世界のトップを目指す選手、これが最後のシーズンになる選手、女子シングルは層が厚く、各階層に選手がそろっているので、レベルによらず、それぞれの演技で目指すものが手に入れられるかどうか分かれてくる、というのを楽しむことができます。
今シーズンはシーズン後半の大きな試合は世界選手権だけになってしまい、全日本からつながる先がなく途切れてしまう部分はありますが、それでも、一人一人の選手の演技に期待してみたいと思います