キムイェリム KIM Yelim 19-20

2003年1月23日生まれ

シニア1シーズン目

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シーズン獲得賞金:$3,000

世界ランキング:19位

シーズンランキング:13位

シーズンベストスコア 202.76(20位) 四大陸選手権

ショートプログラムシーズンベスト 68.10 四大陸選手権

フリーシーズンベスト 134.66 四大陸選手権

ショートプログラム楽曲: Black Swan

フリープログラム楽曲: Love Story

スピンレベル4率 22/24=91.7%

ステップレベル4率 1/8=12.5%

スピンオールレベル4 3/4

スピンステップオールレベル4 0/4

ジャンプ回転不足率  11/40=27.5%

ジャンプ回転不足なし試合 0/4

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 0/4

 

 ●キムイェリム選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Lombardia Trophy 4 182.60 65.65 37.17 28.48 116.95 58.23 58.72
CS Nebelhorn Trophy 2 186.27 67.06 35.46 31.60 119.21 58.25 60.96
GP Skate Canada 7 176.93 61.23 30.91 30.32 115.70 55.95 60.75
4CC Four Continents 6 202.76 68.10 37.15 30.95 134.66 70.32 64.34

 

昨シーズンにはシニアに上がれる年齢だったキムイェリム選手ですが、昨シーズンはジュニアグランプリシリーズに出つつチャレンジャーシリーズに四大陸というシニアの大会にも出場していました。そういう意味ではシニア2年目としてもいいのかと思いますが、ジュニアグランプリファイナルに出ていた選手をシニアと呼ぶのは違和感があるので、今シーズンをシニア1シーズン目として記載しておきます。

 

今シーズンはチャレンジャーシリーズ2試合で180点台のスコアを並べました。昨シーズンンジュニアグランプリシリーズ2試合で190点台だったことを考えると、やや低めではありますが、シーズン序盤としてはまずまずといったところ。

グランプリシリーズは1枠しかもらえなかったのですが、そんなスケートカナダでは176.93と伸びませんでした。

今一つだったシーズン序盤でしたが、年明けすぐの韓国選手権で200点近いスコアで表彰台に上ります。これによって四大陸選手権及び世界選手権の切符を獲得。

四大陸選手権では202.76とパーソナルベストをマークして200点ランカーの仲間入り。6位入賞を果たします。

初の出場となる予定だった世界選手権は中止。シーズンを終えました。

 

 ●キムイェリム選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Lombardia Trophy 4 182.60 95.40 87.20 61.24 21.90 12.26
CS Nebelhorn Trophy 2 186.27 93.71 92.56 58.88 22.75 12.08
GP Skate Canada 7 176.93 86.86 91.07 55.39 21.05 10.42
4CC Four Continents 6 202.76 107.47 95.29 71.92 23.13 12.42

要素別では、基本的に技術点の方が高く出ます。四大陸では100点台後半まで伸ばしました。一方、PCSはシーズン開幕当初は80点台。徐々に伸ばしていきましたが、四大陸選手権でもショートフリー合わせて95点台止まり。各要素平均8.0に少し欠ける程度となっています。

四大陸選手権がトータルスコアが最もよかったわけですが、PCSもジャンプもスピンもステップも、すべての要素でシーズンベストだったことも見えます。

スピンは伸ばして23点台、ステップは12点台、というあたりは、まだちょっとロシア勢とは戦える水準ではないですが、日本の中堅選手よりは上の位置にいます。

 

 ●キムイェリム選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Lombardia Trophy 4 56.66 56.72 56.01 54.77 55.49 55.26
Nebelhorn Trophy 2 57.65 54.10 58.24 57.59 54.67 58.78
Skate Canada 7 55.12 53.19 54.32 51.96 47.17 57.80
Four Continents 6 62.14 60.48 65.61 58.85 56.21 60.57

偏差値に直すと、200点に乗った四大陸でトータルスコアの偏差値が62と60台に乗っています。

やはりそういったときに偏差値が伸びるのはジャンプのGOE スコアを上げていくにはここが重要というのが誰を見ても見えてきます。スピンは偏差値50台。ステップも基本は50台です。

 

キムイェリムスケート偏差値

レーダーチャートは、いい時は全部いいけど、悪い時は全部悪い、みたいな動きをしてますでしょうか。

偏りとしては左下が凹む形、ステップが低めで、スピンもあまり伸びていないです。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy 1 3Lz+3T   10.10   1.06 11.16 1.714
Lombardia Trophy 2 2A   3.30   0.59 3.89 1.714
Lombardia Trophy 3 FCSp4   3.20   0.26 3.46 0.857
Lombardia Trophy 4 3F   5.83 x 0.85 6.68 1.429
Lombardia Trophy 5 CCoSp4   3.50   0.63 4.13 1.857
Lombardia Trophy 6 StSq4   3.90   0.70 4.60 1.714
Lombardia Trophy 7 SSp4   2.50   0.75 3.25 2.857
Lombardia Trophy   TES   32.33   4.84 37.17  

ショートプログラムの基礎点最高は32.33 これは、トリプルアクセル無し組の中では割と上位の方には入ってきます。ルッツループ後半という、ダブルアクセル組最高峰だと33.78まで行きますが、そうではない選手は良くても32点台までです。32.33というスコアは、ブレイディテネル選手のショート基礎点最高と同じ、と言えば、高い側のスコアというのもわかるでしょうか。

ジャンプの種類としては、あとはルッツループの投入か、トリプルアクセル投入しか難易度は上げられません。コンビネーションの1.1倍化が基礎点上げる方法として他にはありますが。

あと、実はスピンの構成がちょっと弱いです。あまり要素に入れる人が多くないシットスピンが入っていて、これはレベル4でも基礎点2.50  ここをほとんどの選手が入れてくるレイバックスピンに替えられれば2.70に基礎点を上げられます。レイバックスピンは、技術の前に体の柔らかさが求められるので、頑張ったからといって習得できないケースもあるのですが、机上の計算としては、そんな数値が見えます。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents 1 3Lz+3T   10.10   1.87 11.97 3.250
Four Continents 2 2A+3T   7.50   1.47 8.97 3.375
Four Continents 3 3F! ! 5.30   0.80 6.10 1.375
Four Continents 4 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.000
Four Continents 5 FCSp4   3.20   0.59 3.79 1.750
Four Continents 6 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.250
Four Continents 7 2A   3.63 x 0.77 4.40 2.375
Four Continents 8 StSq3   3.30   0.77 4.07 2.375
Four Continents 9 3Lz< 5.19 x -0.71 4.48 -1.375
Four Continents 10 3S+2T+2Lo 8.03 x 0.72 8.75 1.625
Four Continents 11 CCoSp4   3.50   0.99 4.49 2.750
Four Continents 12 SSp4   2.50   0.75 3.25 3.000
Four Continents   TES   60.15   10.17 70.32  

フリーの最高基礎点は60.15  これは、トリプルアクセル無し組でももう少し上まで出せる基礎点です。

2本飛ぶジャンプはルッツとトーループ。これは高めの基礎点を持ちたいときによくやる組み合わせです。基礎点が下がる要素としては、ルッツが回転不足である、というのが一つはっきりあります。これで1.30基礎点が下がっています。あとはステップがレベル3であること。これをレベル4に出来れば0.6スコアが上がる。そこまで行くと、基礎点62.05で62までは乗ります。

あとは、1.1倍構成をもう少し強くすることもできれば基礎点を伸ばせます。単独ダブルアクセルが1.1倍ボーナスタイムにある、というのは、ちょっと構成として弱い部分になります。

 

●平均GOE+2.500以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents SP 7 SSp4   2.50   0.92 3.42 3.625
Skate Canada FS 12 SSp4   2.50   0.89 3.39 3.556
Nebelhorn Trophy SP 1 3Lz+3T   10.10   2.01 12.11 3.429
Four Continents FS 2 2A+3T   7.50   1.47 8.97 3.375
Nebelhorn Trophy SP 2 2A   3.30   1.06 4.36 3.286
Nebelhorn Trophy FS 12 SSp4   2.50   0.85 3.35 3.286
Four Continents FS 1 3Lz+3T   10.10   1.87 11.97 3.250
Nebelhorn Trophy SP 7 SSp4   2.50   0.75 3.25 3.000
Four Continents SP 5 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Four Continents FS 12 SSp4   2.50   0.75 3.25 3.000
Skate Canada SP 7 SSp3   2.10   0.63 2.73 2.889
Lombardia Trophy SP 7 SSp4   2.50   0.75 3.25 2.857
Nebelhorn Trophy SP 6 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.857
Nebelhorn Trophy FS 2 3Lo   4.90   1.47 6.37 2.857
Four Continents SP 4 3F   5.83 x 1.41 7.24 2.750
Four Continents FS 11 CCoSp4   3.50   0.99 4.49 2.750
Lombardia Trophy FS 12 SSp4   2.50   0.65 3.15 2.714
Nebelhorn Trophy FS 11 CCoSp4   3.50   0.91 4.41 2.571
Four Continents SP 6 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.500

評価の高い要素はスピンの特にシットスピンが目立ちます。次にジャンプも割と上の方に合って、それもコンビネーションジャンプがはいっています。早い要素順で、集中力と体力ある段階で飛ぶジャンプ、というところで加点が多くついているので、その質を後半まで保つことができれば、全体の点数が伸びていく理屈ですが、なかなか難しいんでしょうねきっと

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Nebelhorn Trophy FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 0.94 10.73 1.429
Skate Canada FS 9 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 0.51 10.30 0.889
Four Continents FS 10 3S+2T+2Lo   8.03 x 0.72 8.75 1.625

三連続ジャンプは要素順が一定しません。グランプリシリーズに入るあたりで構成を変えているのと、プログラムの予定通りの場所で3連続にならずに、リカバリーで入れているところとがあるためです

ただ、とんだ3連続はすべてGOEプラスの成功ジャンプとなっています。

 

●セカンド三回転

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 1 3Lz+3T   10.10   1.06 11.16 1.714
Lombardia Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.143
Lombardia Trophy FS 3 2A+3T   7.50   0.76 8.26 1.714
Nebelhorn Trophy SP 1 3Lz+3T   10.10   2.01 12.11 3.429
Skate Canada SP 1 3Lz!+3T ! 10.10   0.00 10.10 0.000
Skate Canada FS 2 2A+3T   7.50   0.96 8.46 2.333
Four Continents SP 1 3Lz!+3T ! 10.10   -0.10 10.00 -0.250
Four Continents FS 1 3Lz+3T   10.10   1.87 11.97 3.250
Four Continents FS 2 2A+3T   7.50   1.47 8.97 3.375

2連続のコンビネーションジャンプは、セカンド3回転が基本になっています。ショートは3Lz-3T フリーはそれともう一つ2A-3Tが入ります。これを飛ぶところまで行ければ成功率は高く、GOEマイナスは1つしかありませんが、実際には3回転を付けられず2回転になったり、二つ目のジャンプ自体を付けられなかった、ということもあります。

四大陸では、フリーの二つのセカンド三回転のコンビネーションが高評価だったことが、200点到達の一つの原動力となりました。

 

●単独のルッツフリップ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 4 3F   5.83 x 0.85 6.68 1.429
Lombardia Trophy FS 7 3Lz< 5.19 x -0.47 4.72 -1.000
Lombardia Trophy FS 9 3F!< 4.66 x -0.93 3.73 -2.143
Nebelhorn Trophy SP 4 3F!< 4.66 x -1.10 3.56 -2.714
Nebelhorn Trophy FS 1 3Lz!< 4.72   -1.13 3.59 -2.286
Nebelhorn Trophy FS 9 3F   5.83 x 1.06 6.89 2.000
Skate Canada FS 1 3Lz< 4.72   -0.81 3.91 -1.778
Skate Canada FS 3 3F<< <<  1.80   -0.90 0.90 -5.000
Four Continents SP 4 3F   5.83 x 1.41 7.24 2.750
Four Continents FS 3 3F! ! 5.30   0.80 6.10 1.375
Four Continents FS 9 3Lz< 5.19 x -0.71 4.48 -1.375

不思議なもので、ショートフリーでどちらも3Lz-3Tのコンビネーションを入れていて、それなりの成功率があるのに、単独の3Lzは回転不足が目立ちます。

目立ちますというか、4つある単独の3回転ルッツはすべて回転不足、あるいはダウングレードです。

単独のフリップも!がついたり回転不足だったりというのが目立ちます。この辺が安定してくると安定して200点を出す選手になってくるのかな、とも思われます。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy SP 6 StSq4   3.90   0.70 4.60 1.714
Lombardia Trophy FS 6 ChSq1   3.00   0.70 3.70 1.286
Lombardia Trophy FS 8 StSq3   3.30   0.66 3.96 1.857
Nebelhorn Trophy SP 6 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.857
Nebelhorn Trophy FS 6 ChSq1   3.00   0.90 3.90 1.714
Nebelhorn Trophy FS 8 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000
Skate Canada SP 6 StSq2   2.60   0.63 3.23 2.333
Skate Canada FS 6 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111
Skate Canada FS 8 StSq2   2.60   0.52 3.12 2.000
Four Continents SP 6 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.500
Four Continents FS 6 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.250
Four Continents FS 8 StSq3   3.30   0.77 4.07 2.375

ステップはまだ基本的にレベル3です。シーズン序盤は平均GOEが+1台だったのが、シーズン後半は+2台に上がってきています。

コレオシークエンスも同様で、シーズン後半の方が評価が上がってきています。

 

 

韓国の三番手、という位置づけでいいんでしょうか。今シーズンからシニアに本格参戦したキムイェリム選手。グランプリシリーズこそ1戦しかありませんでしたが、四大陸選手権では二シーズン続けて入賞。ポイントをしっかり稼いで、世界ランキングは10位台に上げてきて、ISUのシーズンベストスコアも20位以内に入ってきており、来シーズンのグランプリシリーズ2戦確保は確定的です。

世界選手権の切符を持っていただけに、中止は残念だろうと思いますが、それでも実り多いシーズンにはなったと言えると思います。

はっきり技術点寄りなユヨン選手、今シーズンは割とPCS寄りだったイムウンス選手の間で、バランス型くらいな位置にいるのがキムイェリム選手なのかな、とも感じました。これから2シーズンくらい、オリンピックシーズンに向けて、少しづつはっきりした個性が滑りに見えてくるようになってくるのかなと思われます。

 

来シーズンはおそらく、韓国のもう一人の200点スコアラー、イ・ヘイン選手もシニアに上がってくると思われます。そうなると、2枠の世界選手権の椅子の奪い合いは、かなり激化してくるわけですが、今度こそ、出場権確保ではなく、出場することができるでしょうか。