だいぶ時間が空いてしまいましたが、前回に続いて全日本選手権のプレビューです
今回は男子になります
まず、エントリー選手の今シーズンのベストスコアを並べました。地方のローカル大会や国体の予選などは含めていません。全日本につながるブロック大会、全日本ジュニアと国際大会であったNHK杯および国内メンバーだけでしたがジャパンオープンまでを含めてみています。国体予選などを含めればここに乗っているスコアより高い点を出している選手もいます
〇今シーズンのベストスコア
Name | Total | Event | |
1 | 鍵山優真 | 287.21 | 関東選手権 |
2 | 佐藤駿 | 229.18 | 東日本選手権 |
3 | 友野一希 | 226.62 | NHK Trophy |
4 | 山本草太 | 221.22 | 西日本選手権 |
5 | 三浦佳生 | 220.55 | 東日本選手権 |
6 | 本田ルーカス剛史 | 217.56 | NHK Trophy |
7 | 田中刑事 | 215.52 | NHK Trophy |
8 | 木科雄登 | 207.78 | 西日本選手権 |
9 | 三宅星南 | 203.53 | 全日本ジュニア |
10 | 山隈太一朗 | 203.36 | 東日本選手権 |
11 | 須本光希 | 202.14 | 西日本選手権 |
12 | 日野龍樹 | 199.45 | 西日本選手権 |
13 | 大島光翔 | 198.84 | 全日本ジュニア |
14 | 森口澄士 | 190.69 | 西日本選手権 |
15 | 櫛田一樹 | 189.79 | 近畿選手権 |
16 | 中村俊介 | 182.23 | 全日本ジュニア |
17 | 本田太一 | 180.58 | 近畿選手権 |
18 | 小林建斗 | 180.56 | 東日本選手権 |
19 | 山田耕新 | 171.00 | 西日本選手権 |
20 | 小林諒真 | 169.55 | 東日本選手権 |
21 | 中野紘輔 | 168.87 | 中四国九州選手権 |
22 | 杉山匠海 | 167.62 | 中四国九州選手権 |
23 | 長谷川一輝 | 164.58 | 東日本選手権 |
24 | 國方勇樹 | 159.93 | 東日本選手権 |
25 | 唐川常人 | 155.51 | 東京選手権 |
26 | 石塚玲雄 | 153.92 | 東日本選手権 |
27 | 古家龍磨 | 147.87 | 西日本選手権 |
エントリー選手の中で、羽生結弦選手、宇野昌磨選手、そして島田高志郎選手は今シーズン試合出場がありませんので、それを除いた全27選手分になります。
鍵山優真選手の287.21は突出したスコアです。これに次ぐスコアとしてNHK杯で275.87も出しています。このままいくと二年連続表彰台が濃厚、という水準。今シーズンに限らず、羽生選手宇野選手以外で287.21はおろか、275.87も、出せた選手は他にいません。ISU非公認ですが日本男子歴代3位のスコアです
2番手も今シーズンシニアに上がった佐藤駿選手ですが、遠く離れた229.18です。昨シーズンジュニアグランプリファイナルに勝った時のスコアが255.11 これにコレオを付ける程度だと鍵山選手には全然届きませんが、ショートから四回転二本でノーミス、まで行ければNHK杯の275.87程度は出せます。高難度ジャンプが要素に入っているけれど、まだ確度がそれほど高くはない、という中で全日本はどうか? 今シーズン、世界選手権の代表に選ばれるためには、鍵山優真選手に勝つことは必要条件です
シニアで世界選手権出場経験のある友野選手が3番手、ジュニア時代活躍しながらシニアに上がる時期にケガをして以降苦しんでいる山本選手が4番手。このあたりはしっかり決まれば250点は出てくるのだけど、ノーミス演技が出来ていない、という状態。現実的には四大陸選手権の枠やユニバーシアードへ、という位置なんですが今シーズンはどちらも開催自体がされず。来シーズンのオリンピック代表レースのためにはインパクトを与えつつ自信が持てる演技、点数が欲しいところなのだと思うのですがどうなるでしょう?
その下がジュニア勢。四回転持ちの中学生三浦選手が5番手で、全日本ジュニアに勝ちNHK杯も表彰台に乗った本田ルーカス剛史選手が6番手。この二人は確実に世界ジュニアへ・・・って、世界ジュニアもあっさり中止されてしまいました・・・。
オリンピアン田中刑事選手が7番手。ケガ明けというかケガからの回復途上で全然参考にならないスコア、ではありますが、鍵山優真選手の今シーズンのスコアは田中刑事選手が出したことのない領域なのも事実。5期連続の世界選手権代表選手はなるでしょうか?
上位に絡んでくるのはこの辺までの選手でしょうかねえ。
〇ショートプログラムのベストスコア
Name | TSS | Event | |
1 | 鍵山優真 | 98.46 | 関東選手権 |
2 | 友野一希 | 86.47 | 近畿選手権 |
3 | 佐藤駿 | 81.84 | 東日本選手権 |
4 | 山本草太 | 80.77 | 中部選手権 |
5 | 本田ルーカス剛史 | 80.35 | 全日本ジュニア |
6 | 田中刑事 | 77.00 | 西日本選手権 |
7 | 三宅星南 | 75.55 | 西日本選手権 |
8 | 木科雄登 | 75.39 | 西日本選手権 |
9 | 櫛田一樹 | 73.77 | 近畿選手権 |
10 | 三浦佳生 | 72.49 | 東日本選手権 |
11 | 日野龍樹 | 71.75 | 西日本選手権 |
12 | 須本光希 | 68.64 | 近畿選手権 |
13 | 森口澄士 | 68.55 | 西日本選手権 |
14 | 大島光翔 | 68.06 | 全日本ジュニア |
15 | 中村俊介 | 66.58 | 全日本ジュニア |
16 | 山隈太一朗 | 66.35 | 東日本選手権 |
17 | 本田太一 | 66.34 | 近畿選手権 |
18 | 中野紘輔 | 63.62 | 中四国九州選手権 |
19 | 小林諒真 | 62.93 | 東日本選手権 |
20 | 小林建斗 | 61.65 | 東日本選手権 |
21 | 石塚玲雄 | 58.69 | 東京選手権 |
22 | 長谷川一輝 | 58.52 | 東京選手権 |
23 | 杉山匠海 | 58.44 | 西日本選手権 |
24 | 山田耕新 | 56.03 | 西日本選手権 |
25 | 唐川常人 | 54.53 | 東京選手権 |
26 | 古家龍磨 | 50.78 | 中四国九州選手権 |
27 | 國方勇樹 | 50.53 | 東京選手権 |
ショートプログラムは上位24人しかフリーに進めません。羽生選手宇野選手、それに島田選手がカウントされていないことを考えると、シーズンベストから見るボーダーラインは58.69となってきます。女子の55.46とあまり変わらなかったりします。この辺に、競技人口の厚みの違いが表れています
トップは鍵山選手の98.46 日本人3人目の100点突破なるか? というところまで来ています。この時はステップがレベル2だったのですが、これをレベル4に出来れば100点越えでした。NHK杯のショートでは、このステップレベル4を出せていたのですが、トリプルアクセルが抜けて零点。ノーミスなら技術点は57~58点出るので、もう少し試合経験積んでシニアジャッジがシニア点を演技構成点で出してくれれば100点が自然に出るだろう、というところにすでにいます。
友野選手は4回転を二本降りた近畿選手権で86.47 この時はコンビネーションの二つ目が二回転で、スピン二つがレベル2 すべてが揃えば90点台前半までは出ますが、なかなかすべてを揃えられる成功率が備わっていない状態です。
佐藤駿選手が三番手で81.84 四回転ルッツが要素として入っているので基礎点は最も高いのですが、ジャンプが全部そろわない。また、演技構成点は良くて7点台半ば、NHK杯だと平均7点を切るくらいになって来るので、ちょっと苦しい。演技構成点がこの水準だと、四回転ルッツ持ちのノーミスでも100点に届かせるのは極めて難しいです。そういう見方をすると、鍵山選手の方が一歩先へ行っている、と言えるのかもしれません
5番手までが80点台。フリー最終グループ入りは80点は必要そうに見えます。三浦選手の中学生最終グループ入りが見たい気もしますが、ここでショート一発ノーミス演技でそこまでもってきてくれたりしますでしょうか?
こうやって見ると、NHK杯でシーズンベストを更新した選手がいなかったんですね。なんだかそれは残念な光景です。
〇フリーのベストスコア
Name | TSS | Event | |
1 | 鍵山優真 | 188.75 | 関東選手権 |
2 | 三浦佳生 | 148.06 | 東日本選手権 |
3 | 佐藤駿 | 147.34 | 東日本選手権 |
4 | 山本草太 | 144.15 | 西日本選手権 |
5 | 友野一希 | 143.35 | NHK Trophy |
6 | 田中刑事 | 138.95 | NHK Trophy |
7 | 本田ルーカス剛史 | 138.34 | NHK Trophy |
8 | 山隈太一朗 | 137.01 | 東日本選手権 |
9 | 須本光希 | 136.09 | 西日本選手権 |
10 | 木科雄登 | 132.39 | 西日本選手権 |
11 | 大島光翔 | 130.78 | 全日本ジュニア |
12 | 三宅星南 | 128.25 | 全日本ジュニア |
13 | 日野龍樹 | 127.70 | 西日本選手権 |
14 | 森口澄士 | 126.99 | 近畿選手権 |
15 | 小林建斗 | 118.91 | 東日本選手権 |
16 | 長谷川一輝 | 117.08 | 東日本選手権 |
17 | 本田太一 | 116.36 | 西日本選手権 |
18 | 櫛田一樹 | 116.02 | 近畿選手権 |
19 | 中村俊介 | 115.65 | 全日本ジュニア |
20 | 山田耕新 | 114.97 | 西日本選手権 |
21 | 杉山匠海 | 110.90 | 中四国九州選手権 |
22 | 國方勇樹 | 110.65 | 東日本選手権 |
23 | 中野紘輔 | 109.95 | 西日本選手権 |
24 | 小林諒真 | 106.62 | 東日本選手権 |
25 | 唐川常人 | 102.86 | 東日本選手権 |
26 | 石塚玲雄 | 98.64 | 東日本選手権 |
27 | 古家龍磨 | 98.47 | 西日本選手権 |
フリーも鍵山選手の188.75が飛びぬけたスコアです。NHK杯では188.61でした。関東選手権で決めていたルッツループがNHK杯でも決まっていれば190点まではありました。200点まで伸ばすには、演技構成点が8点を少し超えたあたりなものを9点前後までもっていく、というアプローチか、四回転のフリップかルッツを習得するか、どちらかになるでしょうか。
2番手が中学生の三浦選手。四回転を三本降りるのだけどトリプルアクセルが決まらない、という今シーズンがあります。また、演技構成点が6点台なのも苦しいところ。9点前後の選手とはPCSで25点ほど差がついてしまうので四回転三本分の差がそこで埋まってしまいます。その辺は、年齢を経ていけば解消されていくのかと思われますが、今シーズンの全日本、という時期には大きな差として残ります
140点台で続くのが佐藤駿選手、山本草太選手、友野一希選手。このあたりは、誰がノーミス演技してくるか、ということでしょうか。最終グループの早い方の演技順のこの辺の選手が170点から180点出して、トータル260点台くらいまで持っていけると鍵山選手にもプレッシャーが与えられるというか、表彰台争いがどうなるかわからない状態で進んでいくのでよいのですがどうなるでしょう。
男子の優勝争いは、ここに記載の選手よりは、今シーズン試合出場のない羽生結弦選手と宇野昌磨選手がメインになって来るのかと思われます。宇野選手にとっては五連覇がかかる試合で、全日本で五連覇となれば男子シングルでは、今は解説者としておなじみの佐野稔さんが1977年に成し遂げて以来となります。羽生選手が勝てば5年ぶりです。
コロナ由来でグランプリシリーズ欠場してるのに何で全日本出るの? でなくても代表にしてあげなよそれくらいの実績あるでしょ、と言われたりもしている羽生選手ですが、個人的な印象としては、本人が出たかったんじゃないかと思っています。最後の優勝が2015年。主要大会で、一番タイトルから離れているのが全日本になってます。去年も負けたし、今年こそ取りたい。獲っておきたい。そんな気持ちがあったりするんじゃないでしょうか。勝手な推測ですが。
最近は四日間開催だったような気がする全日本ですが、今回は試合としては三日間に圧縮されていて、ショートプログラムは男女同日開催です。スケジュール的には今回は女子メイン構成でしょうか。ショートもナイトセッションが女子シングルですし、男子は土曜日にフリーですが女子は最終日日曜日にフリーが来ます