全日本選手権19女子シングル数値編1

さて、前回までで全日本選手権の文章並べた感想編を2回書きましたが、今回は数値編です。数字とグラフ、というか散布図ですけど、並びます

 

全日本選手権19女子シングルTESPCE

 まず、ショートフリー合わせての技術点、演技構成点を見たもの。上位八人は個別の色がついていて、9~24位は水色の小さい点になります。フリー進出選手のみがプロットされます

当たり前ですが、上位八人が右上に出るわけですけれど、紀平梨花選手は突出して右上です。まあ、大差で優勝したわけですからそりゃあそうだろう、という話ではあるのですけれど。技術点も演技構成点もトップです。

全体見ると、PCSの1.1倍がTESというくらいが標準的でしょうか。紀平選手はだいたいそのあたりで、トリプルアクセルという高難度ジャンプがありながらもバランスが取れていることが見て取れます。

二位樋口新葉選手はややPCS寄り、三位川畑和愛選手はややTES寄りです。上位三人はTESの得点上位三人と一致します。

一方、極端にPCSに寄ったのが三選手。宮原知子選手、坂本花織選手、本田真凜選手。本田選手はPCSだけなら五位でした。坂本選手はいつもは割とバランス型の位置に来るのですが、今回は技術点がひどすぎてこの位置に。宮原選手はもともとPCS寄りな選手ですが、今回はジャンプの回転不足が合計10個もあったりして、いつもよりさらにPCS寄りになりました。

逆にTESに寄ったのが今回7位と躍進した新田谷凜選手。技術点だけなら全体4位。PCSはあまりもらえませんでしたが、ジャンプを次々に決めた結果過去最高順位となっています。

 

全日本選手権19女子シングルジャンプ

次は、ジャンプの基礎点とGOEの稼ぎ方。

やはり右上に突出する紀平梨花選手。基礎点トップなうえにGOEもはっきりトップです。基礎点二番手は、ほとんど重なってしまって見えないですが新田谷凜選手。黒にほとんど隠れているところに緑もいて、これは樋口新葉選手です。回転不足が続出した今大会ですが、新田谷選手樋口選手、二人は、3回転3回転の後ろのトーループが一つ回転不足になっただけ、ということで基礎点が高く残りました。

GOE二番手は川畑和愛選手。川畑選手はショートでフリップがない、フリーのフリップがeマーク、ということでフリップが苦手な分基礎点で樋口選手新田谷選手に劣りましたが、ショートの3Lz-3Tで加点最高などGOEを稼いで3位表彰台の原動力となっています。

全日本レベルの大会だと、ジャンプのGOEは平均するとマイナスになります。プラスを出せた選手は10人だけです。上位の選手の中では宮原知子選手がGOE-4.03と最も低い値になっています。坂本花織選手、本田真凜選手もGOEマイナスです。この三選手は、ジャンプに関しては全選手の中で見て標準的、あるいは標準より下の水準に今大会はなってしまっていました。

基礎点60点以上のところにある小さい水色三つはジュニアの三選手で、河辺愛菜選手、浦松千聖選手、吉岡詩果選手です。川畑選手も含め、ジュニアの選手はしっかり基礎点の高い構成を組めていて、回転不足はそれほど出ていない、ということが見えます。ただ、その中でしっかり決めてGOEを稼げたのが川畑選手であり、それにより世界ジュニアの切符をつかんだ、というようにも見えます。

 

全日本選手権19女子シングルスピン

スピンは基礎点が最も高かったのは横井ゆは菜選手でした。横井選手はスピン6つのうち一つがレベル3だったのですが、フリーではレイバックスピンなしの高得点スピン構成なため、一つレベル3でも、レイバックスピン入りのオールレベル4の選手より基礎点が高くなっています。レイバックスピンはレベル4でも基礎点が2.7しか入らないので、やや不利になります

GOE最高点は宮原知子選手の+5.89 二番手に紀平梨花選手が+5.87で続きます。宮原選手は今シーズンスピンで今一つレベル4が揃っておらず、今大会もレベル4は三つだけで、3が二つに4Vが一つ。したがって基礎点は全体18番目だったりしましたが、加点はしっかりとりました。まあ、いつも通りレベル4を6つ揃えていれば、表彰台には乗っていたんですけどね・・・。

一方、坂本花織選手は基礎点がフリー通過24選手中24番目。レベル4は一つだけでレベル3が3つに3Vと2Vが一つづつ。これではちょっと点が出ません。加点は人並みには取ったのですが、宮原選手とはだいぶ差がある。世界選手権を逃した致命傷は、実はスピンで負っていた、ということなようです。スピンでレベル4を6つ取っていれば、トータルスコアで宮原選手の上にまでは出ることが出来ていました。

また、本田真凜選手がGOEで3番手なことも目を引きます。宮原紀平本田、旧浜田組三人でスピンのGOE上から3人、というのは偶然か必然か。まあ、それはともかく、ジャンプの出来が今一つでも、こういうところでしっかり点を取ってきているというのが、本田選手の成長と感じさせられます

一方、総合2位の樋口選手はスピンで点が伸びていません。特に一見ノーミスに見えたフリーで、スピンはレベル4が一つであとはレベル3と2Vとなり、基礎点からだいぶ削られました。その辺が210点まで届かなかった一つの要因で、世界選手権でユヨン選手やアメリカ勢との競り合いの中では上位に上がっていくには一つのポイントになってくるかもしれません。ジャンプが決まり始めたので、次にはトリプルアクセルと、こういった一つ一つの取りこぼしをなくすことへ目が行く段階に上がった感じになるのでしょうきっと。

水色の小さな点で横井選手に次ぐ基礎点18.7まで稼いだのは竹野比奈選手と磯部ひな乃選手という大学生二人です。竹野比奈選手はGOEも4.47稼いで旧浜田組3人に次いで全体で四番目でした。スピンが好き、スピンが得意、という言葉に嘘偽りない結果が見られています。

 

全日本選手権19女子シングルステップ

コレオシークエンスも含めたステップ系のスコアは、上位選手のGOEが高い、という形で、なるほど強い選手がこういうところで点を取るんだな、というのが見えますが、レベル4を並べた基礎点最高は樋口新葉選手と竹野比奈選手でした。竹野比奈選手はジャンプがあまり伸びず総合では14位でしたが、スピンステップでは上位に引けを取らないところを見せています。九州地元で活動を続けている竹野比奈選手ですが、失礼ながら関西中京といったスケートどころで指導を受けたら、ジャンプの精度も上がってグランプリレベルの選手に普通になっていけるのではないかと思ったりもします。

GOE最高はスピンに続いて宮原知子選手。レベル3が二つなので基礎点はあまり取れていないのですが、評価自体はやはり高い選手です。GOE2番手に紀平梨花選手、3番手に坂本花織選手、ということで昨シーズンの3強がステップは評価高い、というところを見せています。

本田真凜選手はここでもGOE5番手と上位に近い評価。スピンステップPCSと高評価ですので、やはり結局、あとはジャンプ、ということになります。

 

次回、各要素の個別の点数に移ります