世界フィギュア21 振り返り6

続いて、男子シングルの要素別スコアです

今回はショートもフリーも併せて、ジャンプ、スピン、ステップ系要素と見ていきます。

 

●ジャンプ

Pl

Name

Nation

Base

GOE

Jump

1

Nathan CHEN

USA

119.22

19.13

138.35

2

Yuma KAGIYAMA

JPN

105.16

16.27

121.43

3

Yuzuru HANYU

JPN

102.26

5.75

108.01

8

Evgeni SEMENENKO

FSR

95.63

9.83

105.46

4

Shoma UNO

JPN

105.21

-1.20

104.01

5

Mikhail KOLYADA

FSR

90.24

8.70

98.94

6

Keegan MESSING

CAN

87.68

10.69

98.37

12

Daniel GRASSL

ITA

101.27

-7.30

93.97

11

Matteo RIZZO

ITA

88.19

-0.22

87.97

14

Morisi KVITELASHVILI

GEO

97.34

-10.11

87.23

10

Junhwan CHA

KOR

84.16

1.19

85.35

15

Lukas BRITSCHGI

SUI

82.59

2.66

85.25

9

Kevin AYMOZ

FRA

88.46

-3.75

84.71

7

Jason BROWN

USA

78.18

5.48

83.66

13

Han YAN

CHN

73.70

2.50

76.20

この表は、ショートフリー合わせてのジャンプ要素で得た得点を記しています。Baseはジャンプの基礎点の合計、GOEは加点or減点の合計、Jumpが最終的にジャンプ要素で得た得点の合計です。総合15位までの選手を載せています

ジャンプの得点順に並べました。左端の数字は総合順位であってジャンプの順位ではありません。

男子シングルジャンプ要素

黄色:日本

赤色:米国

橙色:ロシア勢

緑色:イタリア

桃色:キーガンメッシング

黄緑:チャジュンファン

水色:ケビンエイモズ

この色付けはその4のTES/PCS編と同じです

 

ジャンプは基礎点もGOEもネイサンチェン選手がトップでした。基礎点2位は宇野昌磨選手。ショートフリー合わせて6本の四回転をqマークこそ二つ付きましたが、基礎点の下がる回転不足はなかったのでこの位置にいます。ただし、ショートで転倒がありましたし、フリーの前半もなんとか降りた、というジャンプが並んだことでGOEはマイナスになっています。

鍵山選手が基礎点3位でGOEは2位 ショートフリー合わせて四回転は5本と宇野選手より少ないのですが、ショートで4-3を飛んだこととフリーでルッツループを入れたことで、宇野選手とほぼ並ぶ基礎点を確保し、その上で完成度高くGOEを稼ぎました

羽生選手はショートフリーで四回転6本ながら、フリーでトリプルアクセルにコンビネーションが入らずリピート扱いになったものがあった結果、宇野選手鍵山選手より基礎点で劣る、という計算になりました。コンビネーションはいらずのリピートでの減点、というのは見た目の印象以上に痛い、というのを表す一コマかと思います。あそこでダブルトーループが入っていれば、なんならシングルトーループでも、単純計算では総合2位に残っていました。

 

GOEではキーガンメッシング選手が三位。それに続くのはセメネンコ選手とコリヤダ選手というロシア勢です。基礎点は四回転並べ立てる印象のグラスル選手とクビテラシビリ選手が上位4人の後に続いていますが、二人ともGOEはマイナスとなっています

 

男子は基礎点差もGOE差も女子と比べて大きくなる、というのはある種自然なことなのかもしれませんが、とにかくジャンプで非常に大きな差がついています。

また、ショートフリーで10個あるジャンプ要素の合計でGOEがマイナスになる、という選手も男子は多いです。厳しい男子の世界です

 

●スピン

Pl

Name

Nation

Base

GOE

Spin

3

Yuzuru HANYU

JPN

19.70

6.41

26.11

7

Jason BROWN

USA

19.03

6.63

25.66

6

Keegan MESSING

CAN

19.20

6.10

25.30

1

Nathan CHEN

USA

19.00

5.99

24.99

4

Shoma UNO

JPN

19.50

5.31

24.81

5

Mikhail KOLYADA

FSR

19.40

5.30

24.70

2

Yuma KAGIYAMA

JPN

19.40

5.18

24.58

9

Kevin AYMOZ

FRA

19.00

4.54

23.54

10

Junhwan CHA

KOR

19.40

4.08

23.48

11

Matteo RIZZO

ITA

19.40

3.66

23.06

12

Daniel GRASSL

ITA

19.70

2.87

22.57

14

Morisi KVITELASHVILI

GEO

19.50

2.17

21.67

13

Han YAN

CHN

18.10

3.38

21.48

15

Lukas BRITSCHGI

SUI

19.30

2.01

21.31

8

Evgeni SEMENENKO

FSR

19.00

2.11

21.11

続いてスピン。やはり総合15位までの選手を並べました。

ショートフリー合わせて6回のスピン要素の基礎点合計、GOE合計とその和を並べています

 

男子シングルスピン要素

 スピントップは羽生結弦選手でした。ショートフリーすべてレベルであり、基礎点の高い組み合わせを選んでいるので、基礎点段階で19.70とトップです。GOEは2位でしたがトータルトップスコアでした。スピンは、男子よりも女子の方がスコアが高いことも多いのですが、今回は女子のトップブレイディテネル選手の25.92をしっかり上回って全体でもトップスコアでした。

ジェイソンブラウン選手は2位。フリーで一つ、Vがついてしまい基礎点で著しい減点。GOEは全体トップだったのですが、基礎点が19.02と伸びずトータル2位でした。

キーガンメッシング選手が3位 基礎点はショートで一つレベルだったのでそれほど高くなかったですがGOEが全体3位でトータル3位 ジャンプでもGOEが全体で3位でしたし、キーガンメッシング選手の今大会の出来の良さがこのあたりからも見て取れました。

 

宇野選手は見えづらいですがオレンジのコリヤダ選手の少し右側に見える黄色、鍵山選手はコリヤダ選手とほぼ重なってしまって見えない位置にいます。

 

スピンはハンヤン選手がだいぶ失敗していて基礎点が低いですが、それでもトップの羽生選手との基礎点差は1.60です。その他の選手は19.0は持っているので差は0.70以下しかありません。一方でGOEはトップのジェイソンブラウン選手が6.63もらっているのに対し、セメネンコ選手は2.11 その差4.42ポイントあります。基礎点ではあまり差がつかないですが、GOEでそれなりに差がついてくるのがスピンのようです

 

●ステップ系要素

Pl

Name

Nation

Base

GOE

Step

1

Nathan CHEN

USA

10.80

5.17

15.97

7

Jason BROWN

USA

10.80

4.86

15.66

9

Kevin AYMOZ

FRA

10.80

4.83

15.63

4

Shoma UNO

JPN

10.80

4.30

15.10

3

Yuzuru HANYU

JPN

10.20

4.48

14.68

5

Mikhail KOLYADA

FSR

10.80

3.76

14.56

2

Yuma KAGIYAMA

JPN

10.80

3.44

14.24

13

Han YAN

CHN

10.80

3.42

14.22

10

Junhwan CHA

KOR

10.80

3.07

13.87

6

Keegan MESSING

CAN

9.60

3.68

13.28

11

Matteo RIZZO

ITA

10.20

2.64

12.84

8

Evgeni SEMENENKO

FSR

10.80

1.94

12.74

15

Lukas BRITSCHGI

SUI

9.60

2.11

11.71

12

Daniel GRASSL

ITA

9.60

1.63

11.23

14

Morisi KVITELASHVILI

GEO

9.60

1.56

11.16

ステップ系要素はショートフリーで1回づつのステップの他に、フリーのコレオシークエンスも含めます。

 

男子シングルステップ系要素

 ステップレベル4をショートフリー揃えるとグラフ右側の基礎点10.80のところに来ます。片方レベル3だと基礎点10.20 両方レベル3だと基礎点9.60となります

 

ステップ系要素トップはネイサンチェン選手。二位にバブルチャートでは重なってしまって見えませんがジェイソンブラウン選手がいます。ケヴィンエイモズ選手が三位。二位三位にジャンプがそれほど得意でないので総合順位では表彰台レベルには来ませんが、特徴的な演技で定評のある選手、というのが入ってきています。

 

羽生選手はステップのスコアとしては5位。一つレベル3扱いになったことで得点は下がっていますが、GOEは宇野選手鍵山選手といった日本勢よりは稼いでいました。

 

男子は女子と比べてステップレベル4を並べる選手が多いです。

 

●総合得点やPCSとの相関係数

 

Jump base

Jump GOE

Spin base

Spin GOE

Step base

Step GOE

総合得点との相関

0.832

0.754

0.406

0.767

0.419

0.755

PCSとの相関

0.599

0.575

0.328

0.884

0.536

0.913

 

総合得点やPCSと各要素の基礎点及びGOEで得た点数の相関を見てみました

総合得点と一番相関が強いのはジャンプの基礎点。まあ、それはそうでしょう、という結果。この辺は女子とも変わりません。ただ、女子ではジャンプのGOEはそれほど相関が強くないという結果でしたが、男子ではジャンプのGOEはスピンやステップのGOEと同様に総合点との相関が強い、という結果になっています。男子では高難度ジャンプで基礎点を高くするだけではだめで、GOEをしっかり稼がないといけない、というのが見て取れます

スピンステップで基礎点はあまり影響がなくGOEの方が大事、というのは女子と同様の結果。基礎点ではもう差がつきにくい、というのがおそらくあるのかと思います。

 

PCSとの相関を見るとステップのGOEが一番相関が強いという結果です。0.9を超える相関というのは強い相関どころか、ほとんど同一というのに近くなってくる水準です。ジャンプのGOEとステップのGOEの総合得点との相関係数はほとんど同じなのですが、これはジャンプのGOEはTES経由で、ステップのGOEはPCS経由で総合得点に影響してくる、ということなように見えます。ステップ系要素として数えているのはショートで一つ、フリーで二つだけなので、要素数として占める割合は非常に小さいですし、TESに対して占める割合も小さい。しかしながら、ステップ系要素で使っている演技時間は要素数として占める割合と比べてかなり長いです。そのためPCSで評価する項目に対しての影響度が強くなる、ということはきっと言えるのでしょう。