世界フィギュア21 振り返り7

今回は女子シングルのPCS内訳編です

ショートフリーどちらも見ようとするとなかなか大変でしたのでフリーだけを見ていくこととします

 

●フリーの各ジャッジの24人分の合計スコア

Components Scores J1 J2 J3 J4  
Total 合計 908.76 910.75 918.00 888.25 910.50  
Components J5 J6 J7 J8 J9 Ave
Total 合計 881.75 929.75 916.00 898.50 910.50 907.111

パッと見て、何を見ているのかわからないと思いますが、これは、フリーの演技をした24人に対し、各ジャッジが付けたPCSのスコアを24人分合計したもの、を表しています。

Scoresは実際についた点数の合計Aveは各選手に対してジャッジ9人が付けた平均点の4

人分の合計です。

大ざっぱに言えば、どのジャッジが全体と比べて点の付け方が甘く、どのジャッジが辛い、というのを見ているものになります。ScoresやAveに近い数字になっているジャッジは平均的というか普通、ということになります

 

一番数字が大きいJ6が全体に対して甘く、一番小さいJ5が一番厳しい、ということになります。その差は48.00 これが24人に付けた合計ですから、各選手に対して平均2.0の差がついている計算です。フリーのPCS係数は1.6ですから、点数としては3.20点分評価が違うことになります。3.20の違いがあれば、順位が入れ替わるところが多数ある、というのが今回の試合の結果なわけで、ジャッジ毎の差というのは結構あるな、という印象です

 

●各選手に対してのジャッジ間順位

Name Nation J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Alexandra TRUSOVA FSR 2 5 9 3 8 3 1 7 6
Anna SHCHERBAKOVA FSR 8 5 3 2 9 1 6 7 4
Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 7 5 9 2 5 1 4 7 3
Loena HENDRICKX BEL 9 8 2 5 1 3 4 6 6
Kaori SAKAMOTO JPN 3 1 9 4 7 4 2 7 4
Karen CHEN USA 7 4 5 9 8 2 5 1 2
Olga MIKUTINA AUT 5 9 2 6 8 1 6 4 3
Bradie TENNELL USA 8 3 9 5 4 1 2 5 7
Rika KIHIRA JPN 8 5 6 7 9 4 1 3 1
Ekaterina RYABOVA AZE 1 5 1 3 9 4 7 5 8
Haein LEE KOR 7 3 6 8 9 5 3 2 1
Eva-Lotta KIIBUS EST 2 1 9 6 5 6 4 8 2
Yelim KIM KOR 8 3 4 7 9 5 1 1 6
Madeline SCHIZAS CAN 2 4 7 8 9 1 5 6 3
Lindsay van ZUNDERT NED 1 3 9 4 8 7 2 4 4
Josefin TALJEGARD SWE 4 2 3 6 6 1 4 9 8
Nicole SCHOTT GER 3 5 9 1 1 3 7 8 6
Alexandra FEIGIN BUL 3 6 6 2 9 1 5 4 8
Satoko MIYAHARA JPN 4 7 5 5 3 9 1 1 7
Alina URUSHADZE GEO 2 5 4 2 9 1 6 7 7
Hongyi CHEN CHN 1 3 9 2 5 5 7 8 4
Eliska BREZINOVA CZE 7 4 9 1 6 2 5 8 2
Natasha McKAY GBR 5 1 9 4 2 3 7 5 7
Jenni SAARINEN FIN 8 4 6 4 9 2 3 7 1
合計   4 2 8 5 9 1 3 7 5

これも非常にわかりにくいことを見ていますが、各選手に対して、各ジャッジが付けた点数が、ジャッジ9人の中で何番目か、を表しています。合計は、先ほど示した、24人合計分に対してのもので、ようはそのジャッジは全体に対して甘い(合計で1位=J6)か辛い(合計で9位=J5)か、というのを表しています。

 

おもしろいものはいろいろあって、まず、全体に対して甘かったJ6なのですが、宮原選手に対してはジャッジ9人中9番目の点数、ということで一番厳しいスコアを出していました。J6は坂本選手にもジャッジ中4番目、紀平選手にも4番目と、全体に対して甘めなのと比べると日本選手には厳し目な方へ振れています。韓国のイ・ヘイン選手、キムイェリム選手、あるいは中国のホンイーチェン選手にもジャッジ中5番目、ということなので、アジア勢にとっては厳しいジャッジでした。まあ、オランダとかエストニアの選手にも7番目とか6番目とかつけてますので、アジア勢にだけ厳しいってことでもないですけど

 

全体に対して厳しいJ5は、ドイツのニコルショット選手、ベルギーのルナヘンドリックス選手にはジャッジ中1位のスコア、イギリスのマッケイ選手には2番目のスコアということで、割と非ロシアのヨーロッパ勢には高めなスコアになっていたのでしょうか。ついでと言っては何ですが、宮原選手にもジャッジ中3番目ですし、テネル選手にも4番目、ロシア勢でもトゥクタミシェワ選手には5番目とまあまあのスコア。なんとなく、若年齢高難度ジャンパーに何か言いたいことがありそうに見えるジャッジです。

 

 ●各選手に対しての各ジャッジのPCS

Name Nation Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Alexandra TRUSOVA FSR 41.46 43.50 41.75 38.50 42.00 39.75 42.00 44.50 40.00 40.75
Anna SHCHERBAKOVA FSR 45.53 44.75 45.50 46.00 46.50 43.25 47.00 45.25 45.00 45.75
Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 43.17 42.75 43.00 41.75 44.00 43.00 44.50 43.25 42.75 43.75
Loena HENDRICKX BEL 41.64 40.25 40.50 43.00 41.25 44.25 42.50 42.00 41.00 41.00
Kaori SAKAMOTO JPN 42.31 42.75 43.50 40.00 42.25 42.00 42.25 43.00 42.00 42.25
Karen CHEN USA 42.44 41.50 43.00 42.25 40.75 41.25 43.50 42.25 44.50 43.50
Olga MIKUTINA AUT 38.28 37.25 35.75 42.00 37.00 36.25 42.25 37.00 38.00 40.50
Bradie TENNELL USA 42.14 40.75 43.25 40.25 42.00 42.25 43.75 43.50 42.00 41.25
Rika KIHIRA JPN 43.15 41.75 43.25 42.75 42.25 41.50 43.50 44.25 44.00 44.25
Ekaterina RYABOVA AZE 35.40 36.50 35.50 36.50 36.25 30.00 36.00 35.00 35.50 33.25
Haein LEE KOR 39.65 39.00 40.50 39.25 38.00 37.75 39.50 40.50 40.75 41.00
Eva-Lotta KIIBUS EST 35.11 36.00 37.00 32.25 34.75 35.25 34.75 35.50 33.50 36.00
Yelim KIM KOR 40.57 39.25 41.75 40.75 39.50 38.00 40.50 42.50 42.50 40.25
Madeline SCHIZAS CAN 37.57 38.75 38.00 36.50 36.25 35.25 39.50 37.75 37.00 38.50
Lindsay van ZUNDERT NED 32.52 35.50 33.00 31.25 32.50 31.50 32.25 33.25 32.50 32.50
Josefin TALJEGARD SWE 36.68 36.75 37.75 37.25 36.50 36.50 39.00 36.75 33.75 35.25
Nicole SCHOTT GER 35.01 36.00 35.75 31.25 36.50 36.50 36.00 33.50 32.75 35.00
Alexandra FEIGIN BUL 32.47 33.75 31.50 31.50 34.00 28.75 34.25 32.50 32.75 31.25
Satoko MIYAHARA JPN 39.54 39.75 39.00 39.25 39.25 40.50 37.25 41.00 41.00 39.00
Alina URUSHADZE GEO 34.40 35.75 35.00 35.50 35.75 31.75 36.00 33.50 32.75 32.75
Hongyi CHEN CHN 32.82 35.00 33.75 28.75 34.00 32.75 32.75 32.00 31.25 33.25
Eliska BREZINOVA CZE 31.96 30.50 32.75 29.50 33.50 31.50 33.25 32.00 30.00 33.25
Natasha McKAY GBR 32.26 31.75 34.25 30.00 32.75 33.25 33.00 31.50 31.75 31.50
Jenni SAARINEN FIN 32.68 31.25 33.00 32.25 33.00 29.00 34.50 33.75 31.50 34.75

各ジャッジがフリーのPCSで各選手に何点付けたのかを並べました。5項目の合計です。係数1.6を掛ける前なので、50点満点の状態です

 

目が痛くなるような表ですが、ジャッジ間ばらつきが結構ありますね、というのは見えます。フリーのPCSトップはシェルバコワ選手で45.53がついていますが、ジャッジの中でJ6が47.00を付けている一方、J5が43.25と3.75の差があります。係数1.6を掛けると75.2~69.2まで差がある、ということになります。

一番差があるのはオーストリアのミクティナ選手とアゼルバイジャンのリャボワ選手です。ミクティナ選手はJ6が42.25をつけ、J2は35.75 係数掛けた後で見れば67.60と57.20、リャボワ選手はJ1とJ3が36.50を付け、J5は30.00でしたので、係数掛けた後は58.40と48.00ということで、同じ選手に対してジャッジ間でPCSのスコアが10.40も違う、という結果になりました。この二人の選手には共通点があって、無名に近い選手が今回の演技でほぼノーミスのいい演技をした、というものでした(リャボワ選手はシーズン前もフリーノーミスで世界選手権13位ですから、ホントの無名ではないですが、印象としてトップ選手の位置として扱われていませんこれまで)。

まあ、リャボワ選手は正直、PCSが出やすい演技では確かになかったような気はしますが、それにしてもここまでのばらつきは、プルシェンコさん吼えていいですよ、という気分にもなります

 

●各選手に対してジャッジが付けたPCS順位

Name Nation Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Alexandra TRUSOVA FSR 8 2 7 12 5 9 9 2 11 9
Anna SHCHERBAKOVA FSR 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1
Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 2 3 5 6 2 3 2 5 4 3
Loena HENDRICKX BEL 7 8 9 2 7 1 6 9 8 7
Kaori SAKAMOTO JPN 5 3 2 9 3 5 7 6 6 5
Karen CHEN USA 4 6 5 4 8 7 4 8 2 4
Olga MIKUTINA AUT 12 13 15 5 12 14 7 13 12 10
Bradie TENNELL USA 6 7 3 8 5 4 3 4 6 6
Rika KIHIRA JPN 3 5 3 3 3 6 4 3 3 2
Ekaterina RYABOVA AZE 15 15 17 14 15 22 15 16 14 18
Haein LEE KOR 10 11 9 10 11 11 11 11 10 7
Eva-Lotta KIIBUS EST 16 16 14 17 18 15 18 15 16 14
Yelim KIM KOR 9 10 7 7 9 10 10 7 5 11
Madeline SCHIZAS CAN 13 12 12 14 15 15 11 12 13 13
Lindsay van ZUNDERT NED 21 19 21 20 24 20 24 20 20 22
Josefin TALJEGARD SWE 14 14 13 13 13 12 13 14 15 15
Nicole SCHOTT GER 17 16 15 20 13 12 15 18 17 16
Alexandra FEIGIN BUL 22 21 24 19 19 24 20 21 17 24
Satoko MIYAHARA JPN 11 9 11 10 10 8 14 10 8 12
Alina URUSHADZE GEO 18 18 18 16 17 19 15 18 17 21
Hongyi CHEN CHN 19 20 20 24 19 18 23 22 23 18
Eliska BREZINOVA CZE 24 24 23 23 21 20 21 22 24 18
Natasha McKAY GBR 23 22 19 22 23 17 22 24 21 23
Jenni SAARINEN FIN 20 23 21 17 22 23 19 17 22 17

これは、各ジャッジがどの選手に何位と付けたか、というものです。実際には何位という順位をつけているわけではなく、それぞれに点数を付けているというのは当然なわけですが、その点数を順位に変換したもの、となります。

 

フリーのPCSトップはシェルバコワ選手でした。しかしながら、全ジャッジがシェルバコワ選手をトップとしたわけではなく、9人中1人だけは2位としています。J5が1位としたのはPCS順位は7位だったルナヘンドリックス選手。J5の順位付けはなかなか独特です。

 

PCS2位はトゥクタミシェワ選手、3位は紀平選手でしたが、ジャッジ9人中5人は紀平選手の方が上、としていました。単純な多数決なら紀平選手の方が上なのですが、勝ち負けではなく、点数の合計で見ますので、スコアとしてはトゥクタミシェワ選手が上になりました。

PCS4位のカレンチェン選手と5位の坂本花織選手の間でも同じようなことが起きていて、坂本選手の方が上としたジャッジが5人いました。坂本選手の評価はかなり割れていて、J2はシェルバコワ選手に次いで2位評価としている一方、J3は9位扱いです。そのせいで、カレンチェン選手より上のジャッジの人数が過半数なのに、PCS順位6位のテネル選手より下というジャッジも4人いて、同点も1人いるので、勝ち負けで見るとテネル選手とは同格、となっていたりもします。

 

ばらつきが最も極端なのはトゥルソワ選手でした。J2とJ7の二人は2位と評価しているのに対し、J8は11位、J3は12位という評価です。早い滑走順、転倒二つなどミスはあった、でもTESは出ていてこれを越せそうな選手はほとんどいない、という演技に対しての採点。難しかったんでしょうけれど、それにしても評価がずいぶん割れました。

 

こうやって眺めると、トータルスコアで1点2点の差なんてのは誤差で運のいい方が勝つ、なんなら10点くらいまでも運の良さでひっくり返るんじゃないか? みたいな感じに見える採点でした