グランプリシリーズ21 女子シングル エントリー

グランプリシリーズのエントリーが6月末に発表されました

ちょっと時間たってますが今回はそのお話

まずは女子シングルについて全6試合のエントリーを、19-20および20-21の2シーズンのベストスコア(ISU非公認含むが国際大会のみ)を並べてみて行こうと思います。

 

●Skate America

    19-20 20-21
Alexandra TRUSOVA (RUS) 241.02 217.20
Kaori SAKAMOTO (JPN) 202.79 229.51
Young YOU (KOR) 223.23 181.73
Bradie TENNELL (USA) 222.97 211.07
Kseniia SINITSYNA (RUS) 215.58  
Yuhana YOKOI (JPN) 214.56 176.49
Satoko MIYAHARA (JPN) 211.18 172.30
Daria USACHEVA (RUS) 207.74  
Yelim KIM (KOR) 202.76 191.78
Ekaterina KURAKOVA (POL) 201.47 52.28
Amber GLENN (USA) 190.83 190.09
TBA (USA)    

初戦はスケートアメリカ。ここは200点経験のない選手が1人だけ、というすごいレベルに最初からなっています。ショート70点超えてるのにフリー前半グループ、なんていう光景が表れるかもしれません。

優勝候補筆頭は当然トゥルソワ選手になるわけですが、あの四回転山積み構成はどうしても安定しない。ということで他の選手にも逆転の目は結構あります

ここ2シーズンで見ると2番目のスコアを持っているのは坂本花織選手ということになります。宮原選手はここ2シーズンあまり結果を残せておらず、211.18を持っていながらスコア7番手。この試合でどこまでスコアを出せるか、というのがオリンピック代表を争う試金石となるでしょうか。横井ゆは菜選手はスコア的にはその上の214点台がありますが、200点を超えたのはこのB級大会での一度だけ。オリンピックを目指すにはまず、この試合で宮原選手に勝ちたいところかと思います。

ロシア勢は昨シーズン、コロナと関係なく、ケガで試合に出られなかったシニツィナ選手が今の力がどれくらいあるか? また、5強を食うならこの人、とも言われるウサチェワ選手がどこまでいくか? 注目です。

表彰台争いは、アメリカのテネル選手なんかもいますし、当たれば強い実績を持つユヨン選手もいて、高いレベルで混戦でしょうか。誰がどれくらい調整うまく進んでいるのか、というのが見える試合かと思います。

 

●Skate Canada Int.

    19-20 20-21
Alena KOSTORNAIA (RUS) 247.59 220.78
Rika KIHIRA (JPN) 232.34 205.70
Kamila VALIEVA (RUS) 227.30  
Elizaveta TUKTAMYSHEVA (RUS) 221.15 226.58
Karen CHEN (USA) 201.06 208.63
Alysa LIU (USA) 208.10  
Wakaba HIGUCHI (JPN) 207.46 200.98
Haein LEE (KOR) 203.40 193.44
Alexia PAGANINI (SUI) 192.88 168.85
Madeline SCHIZAS (CAN) 175.56 185.78
Alison SCHUMACHER (CAN) 174.02 171.17
Emily BAUSBACK (CAN) 172.48 55.74

2戦目はスケートカナダ。地元勢が弱い分、初戦ほど200点超えがメンバーに並ぶ形にはなっていませんが、これもこれで豪華メンバー。4回転実績のある選手が少なくとも2人、紀平選手を足していいなら3人。トリプルアクセルも4人、樋口新葉選手入れると5人います。

コストルナヤ選手、今シーズンはどうか? 昨シーズンの不調から回復しているか? あるいは8月24日に誕生日を迎えての18歳の壁に突き当たってしまうのか?

そして、ワリエワ選手のグランプリデビュー戦。その実力が本物か? なんてことは疑う点はないとは思うのですが、その実力がシニアに上がる年まで持つかどうか? たまに、15歳まで持たない、という選手もいるのでそうではないことをこの試合で確認できたらと思います。ロシアからもう一人はトゥクタミシェワ選手。オリンピック代表を目指すにはまずコストルナヤ選手に勝ちたい。

アリッサリュウ選手のグランプリデビューもこの試合になりました。ワリエワ選手とグランプリシリーズでまで当たります。アリッサリュウ選手もアメリカ3枠の中に入るにはカレンチェン選手が大きなライバルです。昨シーズンは成長期にあたったのかあまり結果が出せていなかったようですが、16歳になるこのシーズンはどうでしょう? ジュニア時代がピークの選手になってしまうのか、アメリカ的に20代になってから活躍し続ける選手になっていくのか。北京オリンピックという近い視点だけでなく、長い目でみても今シーズンのアリッサリュウ選手は気になります

というすごいメンバーの中に初戦から入れられたのが紀平梨花選手です。少し前のグランプリファイナルの方がまだ楽だったんじゃないか? みたいな上位のメンバー。優勝どころか表彰台も簡単ではありません。

樋口新葉選手もとんでもないところに混ぜられて、トリプルアクセルチャレンジどころではないことになってますが、オリンピックを目指すにはまず、順位ではなくてスコアですかね。

 

 ●Cup of China

    19-20 20-21
Anna SHCHERBAKOVA (RUS) 240.92 241.65
Bradie TENNELL (USA) 222.97 211.07
Satoko MIYAHARA (JPN) 211.18 172.30
Loena HENDRICKX (BEL)   208.44
Yelim KIM (KOR) 202.76 191.78
Eunsoo LIM (KOR) 200.59  
Maiia KHROMYKH (RUS) 198.24  
Mai MIHARA (JPN)   194.73
Sofia SAMODUROVA (RUS) 187.16 184.81
Hongyi CHEN (CHN) 175.77 186.53
Shan LIN (CHN)   182.11
Yi ZHU (CHN) 155.41  

 第三戦は地元勢が弱い中国杯。ここは順当にいけばシェルバコワ選手が勝つのだと思いますが、調子はどうですかね?

宮原選手も全盛期の力を見せれば2位、あるいはトップを伺う位置にいるのですが、どこまで戻っているでしょう?

三原舞依選手がエントリーしています。今シーズンは入れないかな? と思っていたのですが、1試合のみながら入れてなにより。グランプリシリーズは4位の多い選手で、この試合も4位になりかねないメンバー構成なのですが、宮原選手に勝って、オリンピック代表候補に名乗りを上げたいところかと思います。

 

 ●NHK Trophy

    19-20 20-21
Alexandra TRUSOVA (RUS) 241.02 217.20
Rika KIHIRA (JPN) 232.34 205.70
Kaori SAKAMOTO (JPN) 202.79 229.51
Young YOU (KOR) 223.23 181.73
Alysa LIU (USA) 208.10  
Daria USACHEVA (RUS) 207.74  
Eunsoo LIM (KOR) 200.59  
Olga MIKUTINA (AUT) 172.99 198.77
Seoyeong WI (KOR) 193.30  
Amber GLENN (USA) 190.83 190.09
Nicole SCHOTT (GER) 182.71 172.80
TBA (JPN)    

第四戦はNHK杯。地元枠はまだ未定です。

ここにトゥルソワ選手が来襲します。迎え撃つのが紀平坂本日本の二枚看板。普通二枚看板が地元の試合に並ぶことはないのですが、世界選手権で紀平選手が7位とグランプリのシード落ちしたことでこの形になりました。

ウサチェワ選手、アリッサリュウ選手、シニアデビューの二人も強敵です。

ただ、ロシアが唯一二枠の試合がこのNHK杯になっていて、その分少し楽になっています。

 

 ●Internationaux de France

    19-20 20-21
Alena KOSTORNAIA (RUS) 247.59 220.78
Anna SHCHERBAKOVA (RUS) 240.92 241.65
Kseniia SINITSYNA (RUS) 215.58  
Mariah BELL (USA) 212.89 212.73
Karen CHEN (USA) 201.06 208.63
Wakaba HIGUCHI (JPN) 207.46 200.98
Haein LEE (KOR) 203.40 193.44
Ekaterina RYABOVA (AZE) 187.77 189.46
Starr ANDREWS (USA) 181.18 171.70
Mae Berenice MEITE (FRA) 172.08 166.01
Maia MAZZARA (FRA) 170.06 155.42
Lea SERNA (FRA) 166.02 152.91

第五戦のフランスも地元が弱い。

ここはスコア上位をロシアが固めています。シニツィナ選手とコストルナヤ選手、どちらが上か? というのが見どころでしょうか。

アメリカからマライアベル選手がここでようやくグランプリ初戦です。カレンチェン選手とアメリカ3枠争いも熾烈なところ。

樋口新葉選手が日本からはただ一人エントリー。初戦のメンバーを見るとファイナル行は厳しいと思うので、全日本前の最終戦がこれになる可能性が高いです。ここで表彰台に乗って勢いを付けたいところかと思います。

 

●Rostelecom Cup

    19-20 20-21
Kamila VALIEVA (RUS) 227.30  
Elizaveta TUKTAMYSHEVA (RUS) 221.15 226.58
Mariah BELL (USA) 212.89 212.73
Loena HENDRICKX (BEL)   208.44
Ekaterina KURAKOVA (POL) 201.47 52.28
Rino MATSUIKE (JPN) 193.03 198.97
Olga MIKUTINA (AUT) 172.99 198.77
Ekaterina RYABOVA (AZE) 187.77 189.46
Elizabet TURSYNBAEVA (KAZ) 186.09  
Eva-Lotta KIIBUS (EST) 181.24 186.00
Madeline SCHIZAS (CAN) 175.56 185.78
TBA (RUS)    

終戦がロシアです。

ロシアは上位選手が実力で枠を取って来るので、地元試合の3枠目は力が落ちて表彰台独占しづらいというパラドックスがあるのですが、誰が地元枠入るか未定です。

ここは非ロシアのヨーロッパを中心とした注目選手が集まっている形です。ベルギー、ポーランドオーストリアアゼルバイジャンカザフスタンエストニア、カナダ。このあたりの選手は露米日韓の選手たちよりスコアは落ちるのですが、逆にオリンピック出場は固い、という選手が多いです。

3シーズン前の世界選手権銀メダリストトゥルシンバエワ選手がエントリー。現在までの女子の四回転の最高年齢成功者なのですが、その記録を更新するような元気な姿を見せてもらえるでしょうか?

日本から松生理乃選手がグランプリデビュー戦ということになります。実際には、NHK杯地元枠をもらってデビュー戦は済ませている、という可能性が高いのではないかと思っていますがどうでしょう? このメンバーで表彰台に乗ってくると、オリンピックの有力候補となるかと思います。

 

全六試合で延べ72枠あるのですが、国別の枠数は地元枠のエントリー者未定まで含めて以下のようになっています。

ロシア17 日本12 米国12 韓国9 カナダ4 中国・フランス各3 ポーランド・ベルギー・オーストリアアゼルバイジャン各2 スイス・ドイツ・カザフスタンエストニア各1

一カ国で占められるマックスは18なのですが、ロシアでも18占められませんでした。まあ、実際にはザギトワさんやメドベージェワさんのように、その気になればISU内の序列でいえば枠に入るはずの人、というのがいますので、やはりロシアの占有率は高いです。ロシアのオリンピック代表は、2試合出る、シェルバコワ、トゥルソワ、コストルナヤ、トゥクタミシェワ、ワリエワ、シニツィナ、ウサチェワ7選手に絞られたと言えるでしょうか。今シーズンこそ、ロシア6人のグランプリファイナル、という可能性がかなりあるように感じています。

日本は12なので6枠も足りません。これまでの常連からは山下真瑚選手に本田真凜さんと白岩優奈選手が外れました。近年の実績からするとしかたないのですかね。山下選手と本田さんは、ランキング的にはまだそれなりの位置にいるので1試合は残るのではないかと思っていましたが。2試合入ったのは紀平梨花選手、坂本花織選手、宮原知子選手に樋口新葉選手の4人。三原舞依選手、横井ゆは菜選手、松生理乃選手の3人が1試合入りました。NHK杯地元枠はこれまでの傾向だと松生選手に回る可能性が高いと思ってますが、三原舞依選手っていう可能性もあるんでしょうか。それにしても、日本の中堅選手、全日本でトップ10級の選手がグランプリシリーズの枠が取れない、というのは非常に残念です。二層目の厚さが出るような強化、というのが求められている感じがします。また、過去のオリンピック代表は、そのシーズンにグランプリシリーズ2試合出ていないとなれない、という法則があるところからすると、代表候補はかなり絞られてきたでしょうか。

 

一方で、複数選手がグランプリシリーズに出場する国、というのが非常に限られています。カナダ、中国、フランスは地元枠で膨らんでいるだけ。エントリー数2以下の国は1人だけのエントリーです。ロシア、日本、米国、韓国の4カ国だけが複数選手を複数大会にエントリー出来ています。フィギュアスケートというスポーツの発展、という観点で見ると、あまり好ましい状態ではないように感じます。幅を広げるためには非ロシアのヨーロッパ勢の再生を、お金を引き出すには中国勢の台頭が必要なように見えます。

 

 

今年のグランプリシリーズは10月22日スタートです。