NHK杯 ファイナル決まる

グランプリ第四戦はNHK杯。欠場者続出、さらには6分間練習中の負傷など、とんでもない大会になってしまいましたが、そんな中でなんとか地元日本勢の健闘で大会自体は盛り上がりました。そして、グランプリも4戦まで来ましたので、ファイナル進出者も決まり始めてきています。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Shoma UNO JPN 290.15 102.58 187.57
2 Vincent ZHOU USA 260.69 99.51 161.18
3 Junhwan CHA KOR 259.60 95.92 163.68
4 Makar IGNATOV RUS 257.20 90.54 166.66
5 Matteo RIZZO ITA 255.84 84.78 171.06
6 Alexander SAMARIN RUS 255.65 84.32 171.33
7 Sota YAMAMOTO JPN 238.90 86.05 152.85
8 Kao MIURA JPN 232.89 76.62 156.27
9 Tomoki HIWATASHI USA 217.08 72.36 144.72
10 Nam NGUYEN CAN 208.39 64.28 144.11
11 Camden PULKINEN USA 193.18 55.53 137.65

男子は11選手出場。宇野選手が3年ぶりのグランプリシリーズ優勝を果たしました。ファイナル進出決定です。現行ルール扱いのパーソナルベストともなりました。ただ、旧ルールでは平昌オリンピックで306.90を出していますし、そのシーズン最初のロンバルディア杯で319.84というスコアを出したこともあります。

2位はフリーで崩れたヴィンセントジョウ選手。2戦1位2位でファイナル進出決定です。ただ、6位まで5.04差。もう少し崩れたら逆にファイナル無しがほぼ確定になる際どいところでした。今シーズンワーストスコア。崩れるときは大きく崩れてしまうんですよねジョウ選手。

3位には韓国のチャジュンファン選手入りました。3年ぶりのグランプリ表彰台。先週との2連戦で5位3位なのでファイナルはないです。韓国男子選手の中では実績が圧倒的ですのでオリンピック出場はほぼ固いと思われます。

ロシア勢が4位と6位。二人ともシーズンベストです。257.20のイグナトフ選手は今シーズンのロシア勢で3番目のスコア、255.65のサマリン選手で5番目です。ロシア男子の代表争いも日本とは別の厳しさがあります。

日本からは山本草太選手が7位。三浦佳生選手が8位。二人ともランキングポイントは確保しました。山本草太選手はフリーで回転不足三つ。転倒がなく大崩れはしなかったですが、もう少し欲しかったというのが本音、みたいな表情に見えました。三浦佳生選手はショートでコンビネーションが入らなかったのが痛手です。正直な感想としては、これくらいのスコア・順位なら、ジュニアグランプリファイナルのワイルドカードもらってそっちで活躍してもらった方がよかったなあ、と思ってしまいました。

 

宇野昌磨選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lo   10.50   3.30 13.80 3.111
2 4S   9.70   2.91 12.61 2.889
3 4T+2T   10.80   1.90 12.70 2.111
4 3A   8.00   2.40 10.40 3.000
5 FCSp4   3.20   0.73 3.93 2.333
6 ChSq1   3.00   0.79 3.79 1.667
7 2F   1.98 X 0.05 2.03 0.333
8 4T   10.45 X -0.95 9.50 -1.000
9 3A+1Eu+3F   15.18 X 1.14 16.32 1.333
10 FCCoSp4   3.50   0.75 4.25 2.222
11 CCoSp4V   2.63   0.60 3.23 2.222
12 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.333
  TES   82.24   14.75 96.99  

宇野昌磨選手は今回回転4種類5本構成。フリップが2回転になった以外の4本は降りました。ただ、2回目のトーループが単独になりコンビネーションが二つしか入っていません。

終盤疲れましたでしょうか、11番目の要素のスピンはV付き、最後のステップはレベル3と基礎点を取りこぼしました。

この構成で96.99入ってますが、その辺の取れなかったところを考慮すると、ノーミスで基礎点をあと16.21上げることができます(コンビネーションは2回目の4Tに3Tがつくとして)。基礎点上がると加点も増えるので、パーフェクトならあと20点くらい上がる計算です。ショートもセカンド3Tを付けられるとすると、ノーミスで一試合滑れば315点くらいが見える、ということになるでしょうか。オリンピック加点でPCSも伸びれば320点くらいにまでなる。上二人がパーフェクトに滑ったらそれでも届かないかなという水準ですが、ちょっとでも崩れると・・・、というところにいます、という立ち位置なように見えます。

 

○男子シングル要素別

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Shoma UNO JPN 290.15 136.61 97.21 19.22 24.27 12.84
2 Vincent ZHOU USA 260.69 128.88 93.16 -0.42 24.43 14.64
3 Junhwan CHA KOR 259.60 129.84 87.07 4.56 24.52 14.61
4 Makar IGNATOV RUS 257.20 112.90 103.02 12.33 19.41 9.54
5 Matteo RIZZO ITA 255.84 125.91 80.20 11.42 23.52 14.79
6 Alexander SAMARIN RUS 255.65 118.07 91.79 9.74 22.83 13.22
7 Sota YAMAMOTO JPN 238.90 116.46 87.26 0.61 24.08 10.49
8 Kao MIURA JPN 232.89 112.07 92.30 0.71 18.00 10.81
9 Tomoki HIWATASHI USA 217.08 112.28 76.61 -5.14 21.05 12.28
10 Nam NGUYEN CAN 208.39 110.61 65.68 0.36 21.70 10.04
11 Camden PULKINEN USA 193.18 107.49 68.24 -10.39 19.64 10.20

要素別でスコアを並べました。ショートフリー合計しています。

ジャンプの基礎点トップはイグナトフ選手でした。ショートフリー合わせて4回転を3種類で6本決めました。加点も稼いでジャンプで得たスコアは宇野選手に匹敵するのですが、ほかの要素の差が大きすぎました。ジュニア出は跳びまくっている印象の三浦佳生選手ですが、このレベルに混ざるとジャンプの基礎点は普通ですくらいになっています。ショートでコンビネーションが入れば宇野選手並みの基礎点になって基礎点は上の方と言えたのですが、まだそこまでは出来ていません。

ジャンプのGOEは宇野選手がやはり強いです。四回転の少ないリッツォ選手が勝てんはだいぶ稼ぎました。ヴィンセントジョウ選手はやはり今回はここが弱かったです。

スピンのトップはチャジュンファン選手。ブライアン組はこういうところできっちりとってきます。三浦佳生選手がスピンは最下位。スピンでレベル4が一つも獲れていません。失礼ながら、まだジャンプ先行の選手、という評価になってしまいます。

ステップトップはリッツォ選手でした。宇野選手、ショートフリー共にステップレベル3でここが稼げていませんでした。山本草太選手や三浦佳生選手もここが弱いです。

PCSは宇野選手が圧倒的に強いです。チャジュンファン選手が2番目にいます。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 223.34 76.56 146.78
2 Mana KAWABE JPN 205.44 73.88 131.56
3 Young YOU KOR 203.60 68.08 135.52
4 Alysa LIU USA 202.90 67.72 135.18
5 Eunsoo LIM KOR 186.68 65.23 121.45
6 Rino MATSUIKE JPN 186.17 63.34 122.83
7 Amber GLENN USA 175.83 63.43 112.40
8 Nicole SCHOTT GER 172.37 59.26 113.11
9 Seoyeong WI KOR 170.54 58.23 112.31

女子シングルは最終的に9人の出場にとどまりました。ロシア勢ゼロ。なかなか寂しい試合になってしまいましたが、ある意味ではチャンスもあり、そのチャンスを生かした日本勢という形にもなっています。

坂本花織選手が圧勝。危なげなく勝ちました。ISU公認スコアとなるグランプリとしてはこれが初優勝ということになります。ファイナル進出を1番乗りで決めました。これで2001年から続く日本女子のグランプリファイナル連続出場記録が継続されることになり、ファイナルがロシア選手権の縮小6人版になることが防がれました。世界ランキングが日本勢最上位の3位へ一旦浮上(トゥクタミシェワ選手にたぶんこの後抜かれて4位になります)、シーズンベストスコアもトップで、ただ一人のファイナル進出者となり、代表争いで頭三つくらい飛び出た位置にいます。また、223.34というスコアで、ウサチョワ選手やヘンドリックス選手を抜いて、トリプルアクセル以上が構成にない選手の中での今シーズントップスコアとなりました。

 

2位に入ったのは驚きの河辺愛菜選手。ショートでトリプルアクセルを含めた完璧な演技で2位発進。フリーのトリプルアクセルは決まらず、やっぱりそんなに甘くないかと思ったものの、その後はミスなくしっかりまとめて2位表彰台です。シニアデビューシーズンにコロナで大会が壊滅するという不運に見舞われ、2シーズン目にグランプリ枠回って来るかな? という心配な状態だった選手ですが、今回は紀平選手の代役というチャンスをこれ以上ない形で生かしました。205.44は今シーズンの日本勢で樋口選手を抜いて4番目のスコアです。代表選考の対象になるのは3番目までなのでそれに届いてはいないのですが、先に坂本選手あたりが条件満たして代表選出されれば繰り上がってきて選考対象となりますし、また、これくらいのスコアを出しておけば、全日本で表彰台に乗った時に、ちゃんとそのまま代表に選んでもらえる確率が高くなると思いますので、価値あるスコアだったと思います。

 

3位はユヨン選手。ちょっともったいない3位でした。2位ならファイナルの確率がかなり高まったのですが3位だと苦しい。濱田先生の指導も受けているようですが、その濱田門下の河辺愛菜選手にファイナルへの道を塞がれた感じがします。2戦で3位二つのユヨン選手は、ファイナル進出を争う相手はコストルナヤ選手とヘンドリックス選手になるのですが、フランス杯でコストルナヤ選手が2位に入るか206.04以上のスコアで3位になるかでユヨン選手の道はほぼつぶされます。コストルナヤ選手の調子次第ではあるのですが、フランス杯はメンバー的にやや楽ですので、だいぶ苦しくなったと思われます。ただ、200点を超えるスコアを連続して出してきているので、韓国代表でオリンピックに出る道はだいぶ広がってきているという印象です。

 

アリサリュウ選手が4位。今回も200点は確保。フリーではトリプルアクセルをqながらも降りました。アメリカの選手で唯一今シーズン順調に来ているという風には見えるのですが、ロシアと対抗するにはまだ足りていない、という水準です。

 

日本からもう一人、松生理乃選手は6位でした。186.18は本人比では今一つですが、それでもグランプリのポイントは確保。今回はケガで調整がうまくいかなかったようでなかなか苦しい試合になってしまいました。2シーズン前はジュニアグランプリの初戦に190点台のスコアを出して驚かされたのですがその後ケガで伸びず。昨シーズンは1シーズン好調を維持したものの国際大会がまともに開かれず。今シーズングランプリ枠もらえたと思ったらケガで調整がうまくいかず。今一つ運がないですが、もう一試合グランプリはあります。現状、世界ランキングが日本勢の中では本田真凜選手の次で9番手、というなかなか苦しい位置にいるので、次戦もポイントを稼いで次へつなげていっていただけると来シーズン以降につながるように感じます。とは言いつつ、十分な練習ができれば全日本表彰台もある選手なので、来シーズンと言わず今シーズンまだチャンスがあるとも思います。

 

○今大会の女子のトリプルアクセル

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Mana KAWABE JPN 1 3A   8.00   2.06 10.06 2.556
FS Alysa LIU USA 1 3Aq q 8.00   -1.14 6.86 -1.333
SP Young YOU KOR 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
SP Alysa LIU USA 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
FS Young YOU KOR 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
SP Amber GLENN USA 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000

今大会では4選手がトリプルアクセルを構成に入れましたが、クリーンに決まったのはショートの河辺愛菜選手のみでした。フリーのアリサリュウ選手がqながら着氷で基礎点満額もらっていますので及第点くらいだと思われます。他は回転不足で基礎点から減点の上で転倒でした。なかなか難しいですトリプルアクセル

 

○女子シングル 要素別

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kaori SAKAMOTO JPN 223.34 107.63 65.27 10.79 25.29 14.36
2 Mana KAWABE JPN 205.44 96.93 69.67 6.28 21.07 12.49
3 Young YOU KOR 203.60 100.46 71.12 -1.71 23.10 12.63
4 Alysa LIU USA 202.90 99.86 72.35 -6.82 25.07 13.44
5 Eunsoo LIM KOR 186.68 96.16 51.28 6.25 21.37 11.62
6 Rino MATSUIKE JPN 186.17 92.98 58.26 1.35 23.10 10.48
7 Amber GLENN USA 175.83 91.85 53.39 -3.00 21.33 12.26
8 Nicole SCHOTT GER 172.37 87.60 52.10 2.03 21.09 9.55
9 Seoyeong WI KOR 170.54 84.32 60.76 -4.93 20.71 11.68

要素別を見るとジャンプの基礎点が坂本花織選手がそれほど高くないのがいつもの通りよくわかります。基礎点が高かったのはアリサリュウ選手。次にユヨン選手です。トリプルアクセルを決めた河辺愛菜選手が3番目。ただ、GOEで稼いだのが坂本花織選手でした。アリサリュウ選手はGOEのマイナスが最大。ユヨン選手もマイナスです。河辺愛菜選手はGOEが2番目でジャンプで稼いだ得点トータルは坂本花織選手より上でした。

スピンは坂本花織選手がトップ。今回は25点台に乗せてきました。スピンオールレベル4確保です。河辺愛菜選手はこの辺がトップとの差が大きく21点台になっています。

ステップも坂本花織選手がトップ。ただ、ショートではレベル3だったりしていますし、本当は15点台まで欲しいところだったりします。

PCSは坂本花織選手がやはりトップ。107.63というのは今シーズンではワリエワ選手、トゥクタミシェワ選手、シェルバコワ選手に次ぐ4番目の高スコアでした。

 

次週はフランス杯になります。日本からは男子では鍵山優真選手と佐藤駿選手が出場。ファイナルに進むためには佐藤駿選手は優勝が欲しく2位でも芽は残るけどかなり厳しくなります。鍵山選手は3位以内で確定、4位でも高確率でファイナル進出できます。海外勢ではキーガンメッシング選手、ケビンエイモズ選手、ジェイソンブラウン選手といったあたりが出場します。

女子は樋口新葉選手と横井ゆは菜選手がエントリー。直近の試合で200点が遠い、というようなスコアで終わっている二人ですがここでスコアを伸ばすことができるか? ロシアからはシェルバコワ選手、コストルナヤ選手にシニツィナ選手がエントリーです。アメリカからカレンチェン選手とマライアベル選手もいます。今シーズン抜けているのはシェルバコワ選手だけという風に見えますので、樋口選手などにも表彰台チャンスは十分にある試合かと思われます。