フィギュアスケート21-22シーズン国際大会の開幕戦としてクランベリーカップ(Cranberry Cup International)が8/12~15の日程で、アメリカ、マサチューセッツ州ノーウッドにて開催されました。
○女子シングル(シニア) 上位15位まで
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | Alysa LIU | USA | 205.74 | 71.42 | 134.32 |
2 | Young YOU | KOR | 182.88 | 59.74 | 123.14 |
3 | Mariah BELL | USA | 179.42 | 67.07 | 112.35 |
4 | Audrey SHIN | USA | 174.73 | 62.18 | 112.55 |
5 | Madeline SCHIZAS | CAN | 173.34 | 59.70 | 113.64 |
6 | Paige RYDBERG | USA | 170.51 | 63.75 | 106.76 |
7 | Sierra VENETTA | USA | 159.72 | 50.75 | 108.97 |
8 | Marilena KITROMILIS | CYP | 159.39 | 57.93 | 101.46 |
9 | Shan Ashley LIN | CHN | 157.85 | 52.28 | 105.57 |
10 | Emilea ZINGAS | CYP | 154.38 | 48.85 | 105.53 |
11 | Heidi MUNGER | USA | 144.18 | 56.31 | 87.87 |
12 | Kailani CRAINE | AUS | 142.10 | 50.95 | 91.15 |
13 | Gracie GOLD | USA | 138.69 | 44.94 | 93.75 |
14 | Finley HAWK | USA | 135.20 | 40.76 | 94.44 |
15 | Rena IKENISHI | USA | 132.72 | 42.81 | 89.91 |
この試合はアリサリュウ選手のシニアデビュー戦となりました。ショートプログラム、ジプシーダンスの軽快な音楽に乗せてトリプルアクセル、かと思いきやダブルアクセルでしたが70点越えの順調なスタート。フリーもトリプルアクセルは不発でしたがトータルスコアは200点に乗せました。ジュニア時代の実績を考えるとまずまず、くらいのスコアでしょうか。大会直前に16歳になった彼女。身長も伸び、かつての、表彰台に上れずテネル、ベル両選手にひっぱりあげられていた小さなアリサはもういません。しっかりシニアの選手でPCSもあたりまえのようにショートフリー共にトップでした。プログラムの成熟が進めばさらにPCSは伸びていくと思われます。ただ、まあ、それ以前に詳しくは掘り下げませんが、今大会のジャッジのPCS ばらばら過ぎてあまり参考にならない感じもします。
2位に入ったのは韓国のユヨン選手。ショートは60点に届かず沈んでいましたがフリーで巻き返しての2位。ただ、182.88は二シーズン前の実績からすると寂しいスコアです。オリンピックが2枠の韓国では、おそらく200点前後の勝負になってくると思われるのですが、このスコアではちょっと足りない。シーズン序盤なので、この先どこまで戻していくか、というところだと思います。彼女もシニア3シーズン目。シニア1シーズン目が最高成績というロシア型若手で終わってしまうか、もう少しピーク長く滑っていくアジア型選手としてやっていけるか、今シーズンが勝負所なのかもしれません。
心配なのは3位のマライアベル選手。シーズンの序盤も序盤なので、まだ気にしても仕方ないのかもしれませんが、ショートの67.07はともかくフリーの112.35は本人比ではなかなかひどいスコアです。ジャンプが今一つ決まりませんでした。気づけば25歳のベテラン。オリンピックではアメリカはおそらく3枠(3枠目はネーベルホルン杯での確保が必要)。昨シーズンの世界選手権がカレンチェン選手、ブレイディテネル選手で、そこにアリサリュウ選手が上がってきた。マライアベル選手の席はありやナシや? その勝負は少なくとも200点台、場合によっては210~220点の勝負になってくると思うのですが、全米選手権に合わせていくことができるでしょうか?
5位には世界選手権で活躍したマデリンシザース選手が入りました。カナダの代表争いはどうなるでしょう?
そして、グレイシーゴールド選手がこの試合に出場していました。残念ながら全盛時と比べるとやはり構成的に弱いですし、滑りの印象としても弱いのですが、それでも元気な姿を見せてくれています。138.69というのは昨シーズンのスケートアメリカのスコアを上回る得点です。オリンピック出場の芽があるか? というと現実的にはまったくない、と言わざるを得ないですが、それはたぶん本人もわかっていてそれでも滑っていてこういう試合に出てくる。そういうところまで戻ってきてくれたんだな、と言うだけで十分かなとも思います。
○女子シングルのトリプルアクセル以上の高難度要素
Name | Nation | Elements | BaseValue | GOE | Scores | |||||
FS | Young YOU | KOR | 2 | 3A<+2T | < | 7.70 | -0.85 | 6.85 | -1.000 | |
FS | Young YOU | KOR | 1 | 3Aq | 8.00 | -4.00 | 4.00 | -5.000 | ||
SP | Young YOU | KOR | 1 | 3A< | < | 6.40 | -3.20 | 3.20 | -5.000 | |
SP | Amber GLENN | USA | 1 | 3A< | < | 6.40 | -3.20 | 3.20 | -5.000 | |
FS | Alysa LIU | USA | 1 | 3A<< | << | 3.30 | -1.65 | 1.65 | -5.000 |
今大会でトリプルアクセルを要素に入れたのは3人が5回。ショートフリーで3本入れたユヨン選手でしたが成功ジャンプはなし。ショートでは回転不足で転倒。フリーもqマークの転倒と、コンビネーションは着氷したものの回転不足でした。3本飛んで1つも決まらないというのは少し心配です。
アリサリュウ選手はフリーで一本入れてダウングレードの転倒。元々トリプルアクセルはそれほど成功率は高くないのは確かではあります。また、四回転はそもそも全く組み込まれていませんでした。二つ目の要素がトリプルルッツなので、ここを調子が良ければ四回転にする、という設定なのだとは思いますが今回はどちらもなし。どちらもなしで200点には乗っているので、高難度ジャンプがないと全く勝負にならない、ということでもなさそうですが、ロシア勢に対抗するにはやはり四回転もトリプルアクセルも欲しいところです。
アンバーグレン選手は昨シーズンの全米選手権3位。今回はショートだけ滑ってフリーは滑りませんでした(だから全体順位には載っていない)。
○アリサリュウ選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | ||||
1 | 3A<< | << | 3.30 | -1.65 | 1.65 | -5.000 | |
2 | 3Lz | 5.90 | 1.18 | 7.08 | 1.800 | ||
3 | 3Lo | 4.90 | 0.82 | 5.72 | 1.800 | ||
4 | 2A+1Eu+3S | 8.10 | 0.86 | 8.96 | 2.000 | ||
5 | FCCoSp4 | 3.50 | 0.93 | 4.43 | 2.800 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.30 | 5.20 | 3.200 | ||
7 | 3Lz+3Tq | 11.11 | x | -0.39 | 10.72 | -0.600 | |
8 | 3F+2T | 7.26 | x | 0.53 | 7.79 | 1.200 | |
9 | 3F | 5.83 | x | 0.88 | 6.71 | 1.600 | |
10 | ChSq1 | 3.00 | 1.50 | 4.50 | 3.000 | ||
11 | CCoSp4 | 3.50 | 1.05 | 4.55 | 3.200 | ||
12 | LSp4 | 2.70 | 1.17 | 3.87 | 4.200 | ||
TES | 63.00 | 8.18 | 71.18 |
今回フリーはこういった構成でした。スピンステップはレベル4 二つ跳んだジャンプはルッツとフリップ。トリプルアクセルと四回転が決まってくると、技術点は80点を軽く超えるところまで行くのですが、シーズン中にそこまで持っていけるでしょうか?
○男子シングル(シニア)
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | Vincent ZHOU | USA | 288.26 | 102.53 | 185.73 |
2 | Jimmy MA | USA | 230.59 | 78.30 | 152.29 |
3 | Maxim NAUMOV | USA | 223.15 | 73.64 | 149.51 |
4 | Yaroslav PANIOT | USA | 210.84 | 76.68 | 134.16 |
5 | Daniel SAMOHIN | ISR | 210.46 | 76.42 | 134.04 |
6 | Alexei BYCHENKO | ISR | 207.98 | 77.35 | 130.63 |
7 | Tomoki HIWATASHI | USA | 205.17 | 71.44 | 133.73 |
8 | Camden PULKINEN | USA | 179.50 | 61.13 | 118.37 |
9 | Donovan CARRILLO | MEX | 170.08 | 63.70 | 106.38 |
10 | Christopher CALUZA | PHI | 167.90 | 62.59 | 105.31 |
11 | Mark GORODNITSKY | ISR | 166.09 | 55.23 | 110.86 |
12 | Harrison WONG | HKG | 147.38 | 49.12 | 98.26 |
13 | Adonis WONG | HKG | 112.81 | 39.90 | 72.91 |
男子シングルは13名が出場。ヴィンセントジョウ選手が圧勝しました。昨シーズンは世界選手権でまさかのショート落ち。おいおいおい大丈夫? と心配しましたが、あれはたまたまの一度だけの出来事、といった感じで今大会ではショートから100点越え。フリーも180点台のスコアを出し288.26 これは昨シーズンの世界選手権では4位相当のスコア。ちゃんと滑ればそういうメダル争いの位置にいますよ、というのを改めてちゃんと示してくれた形です。ネーベルホルン杯ではちゃんと責任取って自分で3枠目の確保に向かうのでしょうか?
イスラエルの二人、ダニエルサモーヒン選手とアレクセイビシェンコ選手もこの大会に出ていましたがスコア的には210点ほどとパッとしません。イスラエルのオリンピック枠は1つ。この二人で争うことになると思われるのですが、8月のシーズン初戦から僅差の勝負をしています。
○ヴィンセントジョウ選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | ||||
1 | 4Lz | 11.50 | -0.77 | 10.73 | -0.200 | ||
2 | 4F | 11.00 | 2.93 | 13.93 | 2.400 | ||
3 | 4S | 9.70 | 1.94 | 11.64 | 2.000 | ||
4 | 4T | 9.50 | 1.90 | 11.40 | 1.800 | ||
5 | ChSq1 | 3.00 | 1.17 | 4.17 | 2.200 | ||
6 | 4S<+3T | < | 13.16 | x | -1.55 | 11.61 | -2.000 |
7 | 3A+2T | 10.23 | x | 1.60 | 11.83 | 1.800 | |
8 | FCSp4 | 3.20 | 0.64 | 3.84 | 2.000 | ||
9 | CSSp3 | 2.60 | 0.52 | 3.12 | 2.000 | ||
10 | 3Aq+1Eu+3S | 14.08 | x | -2.13 | 11.95 | -2.600 | |
11 | StSq4 | 3.90 | 1.04 | 4.94 | 2.800 | ||
12 | CCoSp4 | 3.50 | 1.05 | 4.55 | 3.200 |
今回フリーでは4回転5本にトリプルアクセル2本でジャンプ要素7回すべてでスコアが10点以上となりました。ついでに言えばコンビネーションがすべて1.1倍に入っています。スピンが一つレベル3ですが後はレベル4 サルコウが一つ回転不足でしたが他は基礎点満額入っていて合計基礎点が95.37で技術点100点超え。構成的にはもうほぼ伸びしろはありません。後はGOEでどこまで稼げるかの世界です。
8月上旬、いつもだとまだだいぶ静かな時期なのですが、こんな時期から見どころたくさんな国際試合の開幕戦でした。