21-22 エリザベータトゥクタミシェワ

1996年12月17日生まれ

シニア11シーズン目

シーズン獲得賞金:$26,000

世界ランキング:5位

シーズンランキング:24位

シーズンベストスコア 233.30(5位) フィンランディア杯

ショートプログラムシーズンベスト 81.53 フィンランディア杯

フリーシーズンベスト 151.77 フィンランディア杯

ショートプログラム楽曲:Drumming Song

フリープログラム楽曲:You Don't Love Meほか

スピンレベル4率 21/24=87.5%

ステップレベル4率 6/8=75.0%

スピンオールレベル4 2/4

スピンステップオールレベル4  2/4

ジャンプ要素回転不足率 1/40=2.50%

ジャンプ回転不足なし 3/4

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 2/4

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total >SP FS
CS Finlandia Trophy 2 233.30 81.53 151.77
GP Skate Canada 2 232.88 81.24 151.64
GP Rostelecom Cup 2 229.23 80.10 149.13
NC Russian Nationals 7 224.40 71.28 153.12

今シーズンは4試合。シーズン後半がなくなってしまったのはともかくとして、従来は前半から多数の試合に出るスタイルだったのですが、コロナの影響もあったでしょうか、チャレンジャーシリーズやB級大会への出場が少なかったです。

初戦はフィンランディ杯。ショートは全要素全ジャッジプラス評価で81.53のパーソナルベスト。幸先良いスタートを切ります。フリーも大きなミスなく150点台に乗せ、トータルスコア233.30 オリンピック代表争いにおいて存在感を見せます。

グランプリシリーズ2戦。スケートカナダフィンランディア杯と同じような出来で同じようなスコアとなりました。同じように上にワリエワ選手がいましたが順調です。2戦目のロステレコム杯はフリー2本目のトリプルアクセルでステップアウト、トータルスコアがやや下がりましたがそれでも229点台。またもワリエワ選手がいて3戦2位ではありますが、オリンピック代表を争うロシアシニア勢のなかではシーズンベスト3位でナショナル選手権に臨むことになります。

このロシア選手権でショートに失敗します。トリプルアクセルで転倒。コンビネーションは2つ目が2回転になり71.28の7位。シーズン唯一の70点台がここで出てしまいます。フリーの逆襲も153.12まででトータル7位に終わります。1,2,3位と表彰台には順当にシニア勢が入り、その3人がヨーロッパ選手権で結果を出したため、オリンピックへの3回目の挑戦も悲願叶わず終わりました。3月の国内イベントでは240点台後半まで出していて、その演技ならロシア選手権でも2位ないしは3位にまでは入れてオリンピックの芽があったのですが、勝負所で結果が出せませんでした。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Finlandia Trophy 2 233.30 124.44 108.86 74.30 11.17 25.05 13.92
Skate Canada 2 232.88 126.06 106.82 74.83 11.38 24.37 15.48
Rostelecom Cup 2 229.23 123.25 105.98 77.42 7.81 23.44 14.58
Russian Nationals 7 224.40 116.23 109.17 70.33 8.38 22.15 15.37

トータルスコアは最高で233.30 最低で224.40 出来不出来の差は極めて小さかったです

技術点は120点台中盤が標準。今シーズン5位の技術点です。PCSは100点台中盤から後半。108.86は今シーズン4位、ロシア勢では3番目という評価です。

ジャンプの基礎点は70点台でロステレコム杯の77.42が最高。これは今シーズン7番目。トリプルアクセル3本入るとここまで出せます。

ジャンプの加点がシーズン最初は二桁ありました。ジャンプで合わせて86点台あります。

スピンはシーズン下るごとに下がってしまってますが、最初は25点台まで出ていました。

ステップ系要素は15点台が出せます。スケートカナダの15.48は今シーズン7位の高評価です。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Finlandia Trophy 2 69.99 67.82 71.14 63.67 61.97 69.13
Skate Canada 2 69.87 68.21 71.49 61.56 68.18 67.77
Rostelecom Cup 2 68.88 70.15 65.50 58.66 64.60 67.21
Russian Nationals 7 67.57 64.85 66.46 54.64 67.74 69.34

偏差値に直すとトータルスコアは70にわずかに届かないくらいです。

ジャンプの基礎点は一番いい時で70に乗ります。加点の方は70前後でやはりいい時は70になる。

一方、スピンは偏差値60前後。本人比では苦手側な要素になっています。

ステップは偏差値65前後あり、PCSは60台後半と高い評価です。

 

21-22シーズン トゥクタミシェワ要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートは下が凹む形です。スピンが伸びない。ステップPCSはジャンプに近いくらいの偏差値があります。

ロシア選手権だけ内側に凹んでいるのが残念な感じです。多くの選手は国際大会よりナショナル選手権で高い点、高い偏差値になって来るのですが、合わせることができませんでした。

 

●シーズン最高の基礎点構成

スケートカナダ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   1.71 9.71 2.000
2 3Lz+3T   10.10   1.10 11.20 1.778
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.111
4 3F   5.83 x 1.67 7.50 3.111
5 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.556
6 LSp4   2.70   0.77 3.47 2.889
7 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
  TES   37.23   8.50 45.73  

ショートの基礎点はトリプルアクセルありで1.1倍には単独ジャンプを入れて37.23になっています。これより上は1.1倍にコンビネーションを入れたワリエワトゥルソワ両選手だけです。

 

ロステレコム杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A+2T   9.30   1.26 10.56 1.667
2 3A   8.00   -2.40 5.60 -2.889
3 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
4 3F   5.30   0.45 5.75 0.889
5 FCSp4   3.20   0.69 3.89 2.222
6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.86 9.77 2.111
8 3Lz   6.49 x 1.69 8.18 2.778
9 3Lo   5.39 x 1.12 6.51 2.333
10 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.889
11 LSp4   2.70   0.58 3.28 2.222
12 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.222
  TES   69.79   8.90 78.69  

フリーは69.79まで基礎点を出しました。これより上の基礎点を今シーズン出したのは4回転組しかいません。トリプルアクセル組の最高峰。

2回飛ぶジャンプはトリプルアクセルトリプルルッツ。フリーでは3回転-3回転を入れないことも多いのですがこの試合では入れていました。以前は3-3はトーループ2本で組み込むことがショートから多かったのですが、ここ数年はルッツからになってきています。トリプルアクセルの確率が上がっているだけでなく、3-3も難度を上げることが出来てきていて、技術面の進歩が見られます。3連続も3つ目サルコウで基礎点を上げることが出来ていて、トリプルアクセルまででこれ以上基礎点を上げるのはなかなか難しい、というところまで来ています。

1.1倍の構成がやや弱いのでここにコンビネーションを持って来たりすると基礎点70点まで来ますが、もうこの辺まで来ると誤差な感じで、次は4回転をマスターしたい、という段階に来ています。

 

○平均GOE3.200以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 3 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
Finlandia Trophy FS 6 StSq3   3.30   1.38 4.68 4.000
Skate Canada FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Russian Nationals FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Finlandia Trophy SP 5 StSq3   3.30   1.27 4.57 3.875
Finlandia Trophy SP 6 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.875
Finlandia Trophy FS 12 CCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.750
Finlandia Trophy SP 7 CCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.625
Skate Canada SP 5 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.556
Russian Nationals FS 3 3Lz   5.90   2.11 8.01 3.556
Skate Canada FS 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
Skate Canada FS 12 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.444
Russian Nationals FS 5 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.444
Russian Nationals FS 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
Finlandia Trophy FS 5 FCSp4   3.20   1.07 4.27 3.375
Finlandia Trophy FS 10 ChSq1   3.00   1.67 4.67 3.375
Russian Nationals SP 4 3F   5.83 x 1.74 7.57 3.333
Rostelecom Cup SP 3 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.222
Russian Nationals SP 3 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.222
Russian Nationals SP 5 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.222
Russian Nationals FS 11 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.222

評価が高いのはスピンが一番上にいますが、要素数考えるとコレオとステップの評価が高い傾向があります。ステップはレベル3になってしまって基礎点の方が取り切れなかったりするのですがGOEは高いことが多いです。

ジャンプで高い評価なのはロシア選手権くらいしか入ってきていません。今の時点でもジャンプの加点はかなり稼げてはいるのですが、ロシアのトップ、世界のトップという中ではもう少し平均GOEで+3を超えていくようなジャンプを揃えたいところなのだろうと思います。そうすると4回転無くても240点は見えてきて、オリンピックも見えたのだけどなああ、といったところです。

 

トリプルアクセルを含む要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 1 3A   8.00   1.47 9.47 1.875
Finlandia Trophy FS 1 3Aq+2T q 9.30   -0.67 8.63 -0.750
Finlandia Trophy FS 2 3A   8.00   1.60 9.60 1.875
Skate Canada SP 1 3A   8.00   1.71 9.71 2.000
Skate Canada FS 1 3A+2T   9.30   1.60 10.90 2.000
Skate Canada FS 2 3A   8.00   1.37 9.37 1.778
Rostelecom Cup SP 1 3A   8.00   1.60 9.60 2.000
Rostelecom Cup FS 1 3A+2T   9.30   1.26 10.56 1.667
Rostelecom Cup FS 2 3A   8.00   -2.40 5.60 -2.889
Russian Nationals SP 1 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.000
Russian Nationals FS 1 3A+2T   9.30   2.29 11.59 2.889
Russian Nationals FS 2 3A< 6.40   -0.91 5.49 -1.333

トリプルアクセルは4試合で12回飛びました。つまり毎試合3本飛んでいたことになります。転倒は1度だけ、ロシア選手権のショート。回転不足で基礎点を削られたのも1度だけ、ロシア選手権のフリー。各試合のトリプルアクセル要素で取ったスコアは、27.70,29.98,25.76,21.08 ロシア選手権が残念過ぎます。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 2 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 2.875
Skate Canada SP 2 3Lz+3T   10.10   1.10 11.20 1.778
Rostelecom Cup SP 2 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.556
Rostelecom Cup FS 3 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000

3回転-3回転はショートでルッツから2つ目の要素に入れる、というのが基本形。フリーはダブルアクセルのシークエンスを好む選手なのですが、ロステレコムだけ3-3を入れました。載っている要素はすべて成功。しかし、ロシア選手権が乗っていません。ロシア選手権のショートは3-3入らず2つめが2回転になりました。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy FS 7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.86 9.77 2.000
Skate Canada FS 7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.68 9.59 1.667
Rostelecom Cup FS 7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.86 9.77 2.111
Russian Nationals FS 7 2A+1Eu+3S   8.91 x 1.04 9.95 2.556

3連続はダブルアクセル起点で3つ目サルコウ。基礎点はそれほど高くないですが、全体の構成を考えると、3つ目にサルコウを入れて、1つ目は簡単なジャンプにする、というやり方で合理的なのだろうと思います。4試合しっかり成功させました。

 

○回転不足要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Russian Nationals FS 2 3A< 6.40   -0.91 5.49 -1.333

4試合のジャンプ要素40のうち、回転不足はロシア選手権のフリー2つ目のトリプルアクセルのみでした。ジャンプの安定度はさすがなのですが、ロシア選手権が残念過ぎました。

なお、今シーズン、フリップ、ルッツ、いずれのジャンプにも!が1つもついていません。昔はフリップはたまにエッジでチェックがつくことがありましたが、ルッツは国際大会で何のマークもついたことがありません。本当にきれいなルッツを飛ぶ選手です。

 

 

昨シーズン世界選手権で2位に入り6シーズンぶりの表彰台に立っての今シーズン。オリンピックのチャンスが十分にあったのですが、一番大事なナショナル選手権にあわせることができませんでした。シーズン中盤まではワリエワ選手以外では一番順調なように見えたのですが、最終的にエテリ組に勝てず。オリンピックに縁のない選手です。

25歳になりました。この年齢になっても何とか持ちこたえている、というのではなく、ここ数シーズンはジャンプの精度が上がったり、PCSのスコアも上昇してきたり、しっかり進歩があります。

これが、遅咲きの最近トップに上がってきたような選手ならままあることなのですが、トゥクタミシェワ選手はロシアの天才少女列伝の皮切りとなった選手です。グランプリシリーズの出場回数は現役最多の20回(コロナ国内ルール除く)。ファイナル出場4回も宮原知子さんと並んで現役最多でしたし、本来ならこの数字が5回目になるはずでした。

ここまで積み重ねてきた戦歴。これが、ロシア国籍であるトゥクタミシェワ選手は先へつながらなくなります。オリンピックは4年後。その頃の世界情勢はどうなってるかわかりませんが、トゥクタミシェワ選手は29歳で迎えることになります。オリンピックには縁がないまま終わるのか、それとも、国内に逼塞しながらもそこまでつなげていくのでしょうか・・・。