アジアンオープンフィギュア 普通にワンツー

チャレンジャーシリーズ5戦目のアジアンオープンフィギュア。ペアやアイスダンスのエントリーが少なく、チャレンジャーシリーズとして成立しているかは怪しいのですが、男女のシングルは日本からのトップ選手のエントリーがありました。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 KAGIYAMA Yuma JPN 277.78 97.80 179.98
2 SATO Shun JPN 256.16 90.77 165.39
3 JIN Boyang CHN 224.09 85.02 139.07
4 VASILJEVS Deniss LAT 217.68 84.75 132.93
5 BRITSCHGI Lukas SUI 217.04 69.07 147.97
6 CHA Junhwan KOR 214.24 74.47 139.77
7 LEE Sihyeong KOR 209.64 66.09 143.55
8 PENG Zhiming CHN 167.68 55.16 112.52
9 CHEN Yudong CHN 148.35 66.37 81.98
10 YUEN Lap Kan HKG 147.88 48.62 99.26

鍵山優真選手が優勝。スコアはげんさんサマーカップや関東選手権の時よりは伸ばしてきての277.78 世界フィギュアでは291.77まで出ましたのでそれには届きませんが、昨年のNHK杯や全日本くらいのスコアになってきています。270点台というのが鍵山選手の標準スコアになっています

佐藤駿選手が二位。256.16はジュニアグランプリファイナルで優勝した時のスコアを上回るパーソナルベスト相当です。まだ鍵山選手とは差がありますが、PCSの差が詰まってきていますので、あとはジャンプが決まるか決まらないかで届くかも、というくらいまで来ています。

ボーヤンジン選手が3位。旧ルールですが300点実績のある選手。北京オリンピックに合わせてきてほしい選手なのですが、体調が芳しくないというような話も聞きますし心配です。中国は1枠になってしまっているので、このスコアですとハンヤン選手が代表になってボーヤンジン選手は代表から外れる、というケースも考えられます。ただ、ハンヤン選手もグランプリ中国杯にエントリーしていたのが、中国杯が中止になってトリノに移ったらエントリーから消えていたり動きが不透明。北京オリンピックに向けて中国フィギュアが強化されていくかと思っていたのですが、結局強いのはペアだけですか・・・、となってしまっています。

バシリエフス選手が4位。ランビエール先生門下で日本でも人気の選手でしょうか。オリンピック出場は固いのですけど、いまいち最近はスコアが伸びてきていないです。旧ルール最後の18年世界選手権の254.86が超えられていない。もう一声欲しいのですが、今回はジャンプがことごとく決まりませんでした。

3シーズン前のグランプリファイナル銅メダリスト、チャジュンファン選手が6位。ここ2シーズンは前半悪くて後半上げてくるという流れなので今シーズンも年明けてからオリンピックでは上位に入って来るとか、そんな動きになるんでしょうか。狙った試合では結果を出す、というオーサーチームのありがちな流れなので、この試合は、本当に下見に来ただけ、という感じもします。でもカナダにいたら中国との往復は大変そうなので、韓国にいたんでしょうか? その辺はよくわかっていません。

 

○鍵山優真選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4S   9.70   1.94 11.64 1.75
2 4T+2T   10.80   2.22 13.02 2.25
3 CCSp4   3.20   1.07 4.27 3.38
4 3A   8.80 x 2.67 11.47 3.38
5 FSSp4   3.00   0.80 3.80 2.63
6 StSq4   3.90   1.43 5.33 3.63
7 CCoSp4   3.50   1.11 4.61 3.13
  TES   42.90   11.24 54.14  

全要素プラス評価入りました。四回転サルコウだけ1番ジャッジが-1付けていますが、他は全要素全ジャッジでプラスです。

ノーミス、に見えますが本当は2つ目の要素のコンビネーションはセカンドジャンプを三回転にしたかったのだろうと思います。関東選手権ではセカンド三回転がついていました。そこまでつくとショートで100点に届きます。

 

○佐藤駿選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lze e 9.20   -1.07 8.13 -1.125
2 4T+3T   13.70   2.38 16.08 2.375
3 CSSp4   3.00   0.70 3.70 2.375
4 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.625
5 3A   8.80 x 1.73 10.53 2.250
6 FCSp3   2.80   0.47 3.27 1.750
7 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.375
  TES   44.30   5.91 50.21  

四回転ルッツ投入もeマークがついて基礎点から減点されました。回転不足ではなくてそっちで減点ですか! という感じですが、結構エッジで!マークがつくことが多いので、それほど驚くことではないんだろうとは思いますが、結構もったいないです。

佐藤駿選手はコンビネーションのセカンド三回転はしっかり着氷。そのため、ルッツで減点されても基礎点は鍵山優真選手より上です。ただ、加点の面で差があって、ルッツで引かれたのを除いても、スピンステップでGOEは+3まで出ないですし、ジャンプの加点も伸びておらず、その辺が鍵山優真選手との差として出ました。ただ、ルッツのeが取れれば、それだけで技術点は鍵山選手に追いつけます。

そんな部分はありますが、佐藤駿選手にとってショートプログラムの90.77というのは過去の国際大会で一番高かった20年のババリアンオープンでの82.18を大幅に上回るパーソナルベスト相当のスコアだったことは確かです。

 

○鍵山優真選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lo   10.50   -3.33 7.17 -3.250
2 4S< 7.76   -3.88 3.88 -5.000
3 4T+3T   13.70   2.69 16.39 2.750
4 3A+1Eu+3S   12.80   2.00 14.80 2.500
5 CSSp4   3.00   0.65 3.65 2.375
6 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000
7 4T   10.45 x -2.85 7.60 -3.000
8 3F+3Lo   11.22 x 1.68 12.90 3.125
9 3A   8.80 x 2.27 11.07 2.875
10 ChSq1   3.00   1.75 4.75 3.375
11 CCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.625
12 FCCoSp4   3.50   1.11 4.61 3.125
  TES   91.53   4.01 95.54  

冒頭の四回転ループは着氷しましたがGOEはマイナス。それは織り込み済みかもしれませんが、次の四回転サルコウが回転不足のうえで転倒となってそこが痛かったです。また、後半の四回転トーループもGOEで大きくマイナス。

そんな感じで出来はそれほど良くはなかったのですが、それでもフリーのスコアは179.98  ミスが複数あっても180点前後のスコアが出るし、180点前後のスコアが出ても驚かれもしないという、そんな選手に高校生のうちになってしまいました、というそっちがすごい。

サルコウがちゃんと回転足りて立てれば技術点100点まで到達します。フリーのベストは世界選手権の190.81 その時の技術点は102.39ですが、サルコウが成功ジャンプに出来ればそれだけでその技術点までは届く。後半のトーループも成功ジャンプに出来れば技術点は110点弱まで。そこまでくれば鍵山選手のPCSならフリー200点が見えます。そこに四回転ループが乗れば・・・。この構成で完成してほしいです。

ちょっと気になるのは後半のコンビネーション。昨シーズンはルッツループでしたが、今シーズンはフリップループにしています。トリプルルッツは余っているのでそちらで跳んだ方が基礎点は高い。それでもフリップに変えてきているというのは、本人にとって飛びやすさがだいぶ違うということかなあ、と思いました。それにしてもセカンドにトリプルループを付けて平均GOEが3を超えるというのはすごいです。

鍵山優真選手の次戦は11月1週目、グランプリシリーズの第3戦、トリノになると思われますが、カレンダー的にはその前の週に東日本選手権があるので、そこに出場する可能性もあるにはあります。

 

○佐藤駿選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lz! ! 11.50   -5.75 5.75 -5.000
2 4F! ! 11.00   -4.77 6.23 -4.250
3 4T+2T   10.80   2.22 13.02 2.375
4 FCCoSp2   2.50   0.29 2.79 1.125
5 4T   9.50   0.48 9.98 0.500
6 3A+2T   10.23 x 0.13 10.36 0.375
7 FSSp4   3.00   0.75 3.75 2.375
8 3F!+1Eu+3S ! 11.11 x -0.71 10.40 -1.250
9 3A   8.80 x 1.47 10.27 1.875
10 StSq4   3.90   0.98 4.88 2.500
11 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.375
12 CCoSp3   3.00   0.75 3.75 2.375
  TES   88.34   -2.99 85.35  

フリーの四回転ルッツはeまでいかず!で収まりましたが、こちらは転倒。不発に終わりました。四回転フリップも大きく減点。セカンド三回転も結局付けられず。トータルのGOEはマイナス。というわけで、本人的にはかなり不本意に終わったと思われるフリーなのですが、それでも技術点が85.35確保してフリーのスコアは165.39まで出ました。このスコアはジュニアグランプリファイナルで優勝した時の177.86に次ぐセカンドベスト相当のものになります。

構成が四回転四本にトリプルアクセル二本あって、それらが基礎点はすべて満額確保できていることで、だいぶベースが高くなっています。回転足りずにステップアウトで踏みとどまるより、回転足りて転んだ方がスコア的には良い、という構図です。

あとはセカンドの2回転をどこかで3回転にできれば、今の鍵山優真選手の基礎点にまでは並びます。そして、その構成でミス少なくできれば技術点100点までは届きます。

あと、今回、ステップでレベル4がつきました。確認できた範囲ですが、佐藤駿選手がステップでレベル4をもらうのは初めてのようです。

構成的には全日本の勝負で一発ありえて、オリンピックの芽はあるんだよなあ、と思わされるものでした。

佐藤駿選手は次週のスケートアメリカで連戦です。ネイサンチェン選手がいますので優勝はなかなか苦しいかと思いますが、宇野昌磨選手やヴィンセントジョー選手を向こうに回して表彰台を目指す新鋭、という立ち位置での勝負となります。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 MIHARA Mai JPN 203.58 67.83 135.75
2 SAKAMOTO Kaori JPN 202.28 76.70 125.58
3 SO Joanna HKG 155.65 53.50 102.15
4 TING Tzu-Han TPE 155.03 51.84 103.19
5 SAARINEN Jenni FIN 154.45 62.25 92.20
6 SCHOTT Nicole GER 148.08 52.84 95.24
7 ZHU Yi CHN 147.38 52.88 94.50
8 ISAEV Kristina GER 146.05 52.43 93.62
9 JIN Hengxin CHN 118.11 51.27 66.84

三原舞依選手の逆転優勝。国際大会での優勝は2019年3月、直後に世界選手権で銀メダルを取るトゥルシンバエワさんに勝ったユニバーシアード以来、ISUの公認大会では2017年2月の四大陸選手権以来の優勝です。

坂本花織選手が2位。まさかの2位ですが、最近フリーがうまくいっていません。プログラムがまだ全然馴染んでいない、という本人のコメントなので、ジャンプがどうとかそういう話以前に、このプログラムで今シーズンいけるのかどうか、というところなのでしょう。試合に出るより滑り込んだ方がいいんじゃ、という気もしますが、試合数こなすスタイルの選手でもありますし、どうするんでしょうこの先。

もう少し下見に来る選手がいるのかと思っていましたが、そうでもなく、トップレベルの選手は二人だけ。結局中野組の独壇場となりました。

内容と関係ないですが、名前の表記がファミリーネームが後ろ。中国もそうですが、アジアに多い形になっています

 

三原舞依選手のショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 2A   3.30   0.88 4.18 2.750
2 3Lz   5.90   0.20 6.10 0.375
3 FSSp4   3.00   0.60 3.60 1.875
4 3F!+3T ! 10.45 x -0.18 10.27 -0.375
5 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
6 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000
7 LSp4   2.70   0.72 3.42 2.625
  TES   32.15   3.91 36.06  

ジャンプ構成は坂本選手と全く同じ三原選手のショートの構成です。ステップがレベル3なことと、スピンの構成により基礎点は坂本選手に一歩譲ります。

コンビネーションのフリップで!マーク。ここは坂本選手と逆でフリップのエッジが怪しい。日本国内の試合でもよくついています。

 

○坂本花織選手のショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 2A   3.30   1.43 4.73 4.375
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 2.875
3 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
4 3F+3T   10.45 X 1.68 12.13 3.125
5 FCSp4   3.20   0.80 4.00 2.500
6 StSq4   3.90   1.43 5.33 3.625
7 LSp4   2.70   0.86 3.56 3.250
  TES   32.95   9.02 41.97  

全要素全ジャッジで+2以上の評価がついて技術点41.97 フリーが悪いのでトータルスコアが伸びてきませんが、技術的な面で調子が悪い、ということはなさそうです。

コンビネーションを1.1倍に入れて基礎点底上げ狙い。ルッツからにした方が基礎点はさらに上がりますが、そこはルッツが苦手ということでフリップからのコンビネーションになっています。

今シーズンここまで、ロシア勢以外の選手の中でショートは最高点、技術点としても同様です。オリンピックに出たとして、普通に最終グループでフリーを迎える位置にいます。

 

三原舞依選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3Lz+3T   10.10   1.67 11.77 2.750
2 2A   3.30   0.88 4.18 2.750
3 3F   5.30   1.24 6.54 2.375
4 3S   4.30   1.29 5.59 2.875
5 CCoSp4   3.50   1.11 4.61 3.125
6 2A+3T   8.25 x 0.49 8.74 1.250
7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 0.98 10.77 1.750
8 2Lo   1.87 x -0.43 1.44 -2.375
9 FSSp4   3.00   0.60 3.60 2.000
10 StSq4   3.90   1.04 4.94 2.625
11 ChSq1   3.00   1.42 4.42 2.875
12 FCCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
  TES   59.81   10.99 70.80  

映像情報がまだ全く入ってきていませんが、スピンステップオールレベル4 その辺きっちり滑って技術点で70点に到達しました。

2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。ジャンプは全体的に良くてノーミスで行けるか、という最後のジャンプが2回転になってしまっています。これが決まっていれば210点に近いところまで行けたのですが残念です。

次戦は国内ローカルに顔を出さなければ、11月1週目のトリノでのグランプリシリーズです。中国杯中止になってどうなるか? というところでしたが、久しぶりのヨーロッパでかえって良かったかもしれません。

 

○坂本花織選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 2A   3.30   1.38 4.68 4.250
2 3Lz   5.90   1.67 7.57 2.875
3 3F+2T   6.60   1.15 7.75 2.250
4 3S< 3.44   -0.97 2.47 -2.750
5 FSSp4   3.00   0.60 3.60 2.000
6 3F+3T   10.45 x 0.97 11.42 1.750
7 2A   3.63 x -1.65 1.98 -4.875
8 StSq4   3.90   1.17 5.07 2.875
9 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
10 ChSq1   3.00   1.25 4.25 2.375
11 2Lo   1.87 x 0.20 2.07 1.250
12 FCCoSp3   3.00   0.50 3.50 1.750
  TES   51.59   6.97 58.56  

坂本花織選手は序盤は良かったようですが、中盤からうまくいかなかったように見えます。

2回飛ぶジャンプはフリップだけになっているので、おそらくトリプルトーループを2回飛びたいのだろうと思います。3連続も入っていません。今シーズンのフリーでは、昔のプログラムで滑ったげんさんサマーカップ以外では3連続ジャンプを入れられていません。ダブルアクセルでミスが出るような選手ではないのですが・・。プレッシャーには強い選手な感じはするのですが、プレッシャーとは違う何か由来でのメンタルにはそれほど強くなく悩みこむ、というようなところはあるのかもしれないなあ、と思ったりもします。

今回は近畿選手権とは違って、スピンでレベル1Vとか、そこまでのやらかしはないですが、全体的にまとまらず。2試合連続の120点台です。まあ、全日本である程度合わせて、オリンピックにピークが来るようにすればいい、という立ち位置の選手なので、あれこれ心配する時期でもないのでしょうけど、最終的にフリーのプログラムに何を選ぶのか、このままいくのか、というのは気になるところです。

坂本花織選手の次戦は、4週連続の最終週となるスケートアメリカです

 

日本のトップ選手と、男子で一部東アジア圏からの参加はありましたが、欧米からの北京下見ツアーはなく、こじんまりとしたオリンピックの準備試合となりました

チャレンジャーシリーズにトップ選手が参加するのはこのアジアンオープンフィギュアでだいたい終了です。二週後のデニステンメモリアルがチャレンジャーシリーズの6戦目としてありますが、次週にはグランプリシリーズが始まりますので、グランプリレベルの選手の参加はなくなってきています。