関東サマートロフィー 佐藤駿選手 四回転フリップ降りる

8/28-29の日程で二年ぶりとなる関東サマートロフィーが開催されました。この大会もやはり縮小版でノービス部門はなし、ジュニアとシニアのみとなりました。

また、例年はジュニアやノービスの方が面白いメンバーが出ていて、シニアはチャレンジャーシリーズが近づいてきていることもありあまり上位選手はいなかったりするのですが、今回はシニアの方が濃いメンバーのエントリーがありました。

 

○男子シングル(シニア)

Pl Name 所属 Total SP TSS FS TSS
1 佐藤駿 フジ・コーポレーション 233.91 74.31 159.60
2 三浦佳生 目黒日本大学高等学校 177.79 60.41 117.38
3 佐藤由基 日本大学 129.53 38.75 90.78

男子シングルでは鍵山優真選手がエントリーしていて、久しぶりにローカル大会で鍵山佐藤三浦三人そろい踏みという光景が見られそうだったのですが直前に鍵山選手が棄権。非常に残念でした。

佐藤駿選手が233.91のスコアで優勝。こういっては難ですが、スコアとしては本人比で見て平凡です。今大会は佐藤駿選手にとって今シーズンの初戦になる形。まだ、今自分に出来るのは、できそうなのはどのレベルなのか? を試す段階で具体的なスコアがどうこう言う時期でもないと思っていいのでしょうか。権利としてはチャレンジャーシリーズにエントリー出来るはずですが、今のところ世の中の情勢はじめいろいろなことが不透明過ぎてそのあたりどうなるかさっぱりわかりません。次戦はチャレンジャーシリーズのどれかか、関東選手権か、はたまたジャパンオープンなんてこともあるのか?

三浦佳生選手は平凡というよりはっきりと悪いスコア177.79で2位。ショートの時点で靴に問題が出たとかで、フリーも棄権しようかどうしようかという状態だったようですし、これもスコアがどうのこうのいう試合ではなかったのだろうと思います。

 

○女子シングル(シニア) フリー進出6人まで

Pl Name 所属 Total SP TSS FS TSS
1 吉岡詩果 山梨学院大学 168.78 59.86 108.92
2 増田未夢 東洋大学 122.34 40.59 81.75
3 鈴木珠里 日本体育大学 112.25 37.18 75.07
4 廣田彩乃 専修大学 104.72 43.22 61.50
5 綾部花音 大東文化大学 97.99 35.34 62.65
6 中本有咲 山梨学院大学 97.25 34.38 62.87

女子シングルは大学一年生になった吉岡詩果選手が168.78のスコアで優勝。高校までは千葉で活躍していた選手が、大学進学で都内を通り越して山梨学院大学を選ぶのは意外な感じがしました。過去のベストスコアはおそらく昨年のインターハイの175.60 スコアは吉岡選手にとってはまずまずというものだと思います。東日本は今シーズンは全日本出場枠が少なくなって厳しい戦いがあるはずですが、このスコアなら勝負になります。というか、昨シーズンの全日本で東日本最上位は吉岡選手でしたから当然ではあるのですが(樋口選手川畑選手は一昨年に表彰台でシード扱い)。東日本は枠が少ないので、今回はちょっとうまくいかないと、このレベルの選手でもすぐに全日本に進めなくなる心配も逆にあったりもします。

この大会は東日本の上位選手では青木祐奈選手もエントリーしていましたが、体調不良ということで棄権しました。先週の東京夏季フィギュアでは63.47と好スコアを出していたので、それほど問題はないと思いますが、今体調不良と聞くと、コロナ? コロナ? とすぐ心配になってしまう、というのはあります。

 

○佐藤駿選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Fq q 11.00   -4.03 6.97 -3.600
2 4T+3T   13.70   0.95 14.65 0.800
3 CSSp4   3.00   0.70 3.70 2.200
4 StSq2   2.60   0.52 3.12 2.000
5 3A   8.80 X -4.00 4.80 -5.000
6 FCSp3   2.80   0.28 3.08 1.000
7 CCoSp2   2.50   0.33 2.83 1.600
  TES   44.4   -5.25 39.15  

佐藤駿選手はショートプログラムに四回転フリップを投入して来ました。これを転倒はせず着氷。qマーク付きのステップアウトだったため、GOEは大きくマイナスとなり出来のいいトリプルフリップの方がいい点になる程度しかもらえませんでしたが、基礎点マンガぐで降りたのは事実。これで4種類目の4回転が今シーズン中に本格装備可能、というところまで来たということかと思います。実践初投入のジャンプでステップアウトはいいとして、トリプルアクセル転倒はいただけませんでした。これと、スピンステップでレベルが取れないことの二つが70点台前半で終わった要因かと思われます。

 

○佐藤駿選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lz! ! 11.50   -5.75 5.75 -5.000
2 3Lo   4.90   -1.31 3.59 -2.400
3 4T+3T   13.70   2.22 15.92 2.400
4 FCCoSp4   3.50   0.70 4.20 1.800
5 4T   9.50   2.53 12.03 2.600
6 3A+1Eu+2S   10.78 X 1.33 12.11 1.600
7 FSSp3   2.60   0.69 3.29 2.400
8 3F!+2T ! 7.26 X 0.35 7.61 0.600
9 3A   8.80 X 1.60 10.40 2.000
10 StSq2   2.60   0.69 3.29 2.600
11 ChSq1   3.00   0.33 3.33 0.800
12 CCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.600
  TES   81.64   3.96 85.60  

フリーでは四回転ルッツ投入も転倒。四回転フリップも投入予定だったそうですが、ルッツ転倒の影響で3Loに変えたとのコメントはありました。四回転のトーループ2本は成功。トリプルアクセルも2本成功していますが、おそらく3連続の最後の2Sは3回転にしたかったのではないかと思います。昨シーズンの三連続はフリップ起点の三連続でしたので、実はここも難易度上がっています。ルッツ転倒、三回転ループもGOEマイナスで159.60

ジュニアグランプリファイナルで優勝した時の177.86がフリーのパーソナルベスト4回転のルッツとフリップが入ればその時点でそこまで届くはずです。あとは、確度を上げていくことなんでしょうか。また、種類として4回転が4種類あれば、4回転5本+トリプルアクセル2本という構成まで可能で、ある種の完成形になるわけですが、体力面でそこまでできるか? 実際、今回も後半は3F+2Tという緩めな要素を入れています。案外成功率が高いわけでもない4回転のサルコウも含め、4回転をどういう種類で入れていくのか? というのもポイントになっていくのだろうと思います。

 

○三浦佳生選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   2.13 10.13 2.600
2 4S   9.70   -4.85 4.85 -5.000
3 2T   1.30   0.00 1.30 0.200
4 FCSp4   3.20   0.21 3.41 0.600
5 3A+2T   9.30   -0.80 8.50 -1.400
6 ChSq1   3.00   0.50 3.50 1.000
7 2T* * 0.00 X 0.00 0.00  
8 3F   5.83 X 0.00 5.83 0.000
9 CSSp3   2.60   0.17 2.77 0.800
10 StSq2   2.60   0.43 3.03 1.600
11 2A+1Eu+2S   5.61 X 0.22 5.83 0.600
12 CCoSp3V   2.25   0.30 2.55 1.400
  TES   53.39   -1.69 51.70  

三浦佳生選手は今回は靴の問題が直前に発生したとのことなので、内容はほとんど参考にならないのだと思いますが一応出しておきます。げんさんサマーカップの時と前半のジャンプの構成は同じようにしていたと思います。リカバリーがいろいろ発生していますし、げんさんはジュニアのエントリーだったのでコレオがないなど、後半はちょっと変わってしまっていますが。

四回転はサルコウ一本にトーループ二本。トリプルアクセルも二本という構成。3種類目投入はまだ先でしょうか。ずいぶん前から四回転飛んでいますし、鍵山選手佐藤選手と並べられがちなので忘れてしまうのですが、まだ今年高校生になった16歳。2026年のミラノオリンピックでもまだ20歳。四回転3種類目はまだか? とか言う方がおかしいのであって、今シーズンは四回転二種類とスピンステップの要素のレベルを上げて世界ジュニアへチャレンジというので十分かと思われます。惜しむらくは、ジュニアグランプリシリーズへの派遣がコロナのせいでここ二シーズンまともに出来ていないことでしょうか。スーパースラムの達成可能性も持つ選手だと思うので、ジュニアグランプリも戦っていってほしいのですが、どんなにスケートの技量があっても、コロナには勝てないので、難しいんですかね。

 

○吉岡詩果選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3Lzq+3T q 10.10   -0.79 9.31 -1.400
2 3Lo   4.90   -2.45 2.45 -5.000
3 2A+3T+2T   8.80   0.70 9.50 1.800
4 CCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.400
5 3S< 3.44   -0.69 2.75 -2.200
6 StSq2   2.60   0.61 3.21 2.200
7 FSSp4   3.00   0.50 3.50 1.600
8 1F! ! 0.55 X -0.05 0.50 -1.000
9 3Lzq+2T q 7.92 X -0.98 6.94 -1.800
10 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.000
11 2Aq q 3.63 X -0.33 3.30 -1.000
12 LSp4   2.70   0.63 3.33 2.400
  TES   54.14   -0.75 53.39  

吉岡選手はトータルスコアで168点台まで出してまずまずに見えたのですが、実際にはフリーはqマーク満載で転倒もあり、それほど満足いく滑りではなかったようです。

二回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。冒頭にルッツトーがあり、ダブルアクセルからのセカンドトリプルも入れるという、割とよくあるセカンドジャンプの入れ方かと思われます。

フリーの自己ベスト相当のスコアは昨年の東日本選手権で出した113.89 今回の108.92は割とそこまで近いスコアなのですが、プロトコルを見てもそれほどいい出来には見えない。一つは、PCSの方が56.53もらって自己ベスト相当のスコアだったこと、もう一つはセカンド三回転が回転不足なく入って基礎点満額もらい、ステップすべてレベル4など、技術点の基礎点が昨年東日本より高かったこと、あたりの理由かと思われます。

転倒したループも、1回転になったフリップも、決して飛べないジャンプということではなく、全部確率の問題なので(フリップの! とeは確率ではなくほぼ固定だったりしますが)、練度を上げて行けば全日本180点台に乗ってシーズン後半の国際大会派遣~来シーズン強化指定選手入り~チャレンジャーシリーズ派遣、という道も見えてきます。もしかしたらその前に、ユニバーシアード狙いかもしれません。

 

この関東サマートロフィーを中心とした8月最終週の試合をもって国内のローカル大会はいったん終了。次は全日本につながる9月から始まる各地方選手権へ、あるいは一部のトップ選手はチャレンジャーシリーズへと舞台は移っていきます。