22-23 キム・チェヨン

2006年12月8日生まれ

ジュニア3シーズン目

シーズン獲得賞金:$21,500

世界ランキング:21位

シーズンランキング:11位

シーズンベストスコア 205.51(12位) フィンランディア杯

ショートプログラムシーズンベスト 71.39 4大陸選手権

フリーシーズンベスト 139.45 世界選手権

ショートプログラム楽曲:Everybody Knows

フリープログラム楽曲:Poeta

スピンレベル4率 39/42 = 92.9%(国際大会:33/36 = 91.7%)

ステップレベル4率 8/11 = 72.7%(国際大会:7/9 = 77.8%)

スピンオールレベル4 5/7(国際大会:4/6)

スピンステップオールレベル4  3/7(国際大会:3/6)

ジャンプ要素回転不足率 4/70=5.71%(国際大会:3/60=5.00%)

ジャンプ回転不足なし 3/7(国際大会:3/6)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/7(国際大会1/6)

 

○22-23シーズンの戦績

J/S Grade Event Pl Total SP FS
J JGP JGP Gdansk 3 195.46 67.61 127.85
S CS Finlandia Trophy 2 205.51 67.84 137.67
J JGP JGP Egna 2 203.94 70.29 133.65
J JGPF JGP Final 3 190.36 66.71 123.65
S NC Korean Championships 4 200.60 70.69 129.91
S 4CC Four Continents 4 202.39 71.39 131.00
S WC World Championships 6 203.51 64.06 139.45

キムチェヨン選手は2006年12月生まれ。今シーズンの間に16歳になりました。イザボーレビト選手と同世代で、ぎりぎり今シーズンからシニアに上がれる逃げ切り世代ですが、シーズン前半ジュニアグランプリシリーズを中心に戦いました。

初戦はジュニアグランプリのグダンスク。この試合は日本の島田麻央選手、千葉百音選手がいました。ショートは全要素全ジャッジプラス2以上で67.61で3位につけると、フリーはシークエンスアクセルでアンダーローテーションがついて127.85 ショートフリー共にパーソナルベストを更新してトータルは195.46まで出しましたが結局3位でした。

翌週にはチャレンジャーシリーズのフィンランディア杯に出場します。この試合は韓国からキムイェリム選手にイ・ヘイン選手、ジョージアのグバノワ選手が出場していて、こうやって振り返ると4大陸とヨーロッパ選手権のチャンピオンになった選手がいたわけですが、ショートは前週をわずかに上回る67.84で3位スタート。フリーはq1つ付いただけでほぼノーミスで137.67まで出してトータル205.51と200点選手の仲間入りを果たして、キムイェリム選手に次いでの2位。シニアの国際大会デビュー戦で結果を出しました。

翌週はジュニアグランプリのエーニャに出場ということで3週連続の試合。帰国するのがめんどくさかったんでしょうか? という感じでヨーロッパを転戦してましたが、ファイナル進出が懸かる大事な試合です。吉田陽菜選手、千葉百音選手、グルゲニゼ選手との直接対決で2位以内ならファイナルが見えます。なかなか厳しい条件なのですが、ここでショートプログラム、初の技術点40点越えで70.29と70点に乗せて首位に立ちます。2位とは3.40差、3位とは6.22差、かなりの差を付けました。フリーは最終滑走。2位に入るには120.24が必要、優勝するには138.03が求められます。3連戦3戦目のフリー。さすがに疲れもあったでしょうか、qが1つに!が2つと細かいところではほころびもありましたがそれでも技術点を70点まで乗せて133.65を出しトータル203.94 2戦連続で200点に乗せて2位。ファイナル進出を決めました。

 

ジュニアグランプリファイナルは日韓3vs3決戦です。2番滑走で登場してきて66.71 6人終わって3位。表彰台圏内で折り返します。フリーは2人残して122.53で首位に立って表彰台確定できるという場面。序盤良かったのですが後半のジャンプが!,q,<とてこづって、際どい勝負になります。結果123.65 何とかPCS差で押し切って最終順位は3位。ジュニアグランプリファイナルのメダルを手に入れました。

 

年が明けて韓国ナショナル。キムチェヨン選手は日本の千葉選手や吉田選手と同じような微妙な立場。グランプリシリーズはジュニアで回ったけれど、年齢的にはシニアでも行ける。結果次第でどこ派遣になるか? そんなショートプログラム。今回はジュニアの単独ループ指定をシニアルールでフリップに入れ替えて、全要素全ジャッジプラス2以上の評価を受け70.69の4位スタート。1位まで0.90差の僅差な一方で5位とは4.20差あります。上にはシンジア選手がいるのでシニア可能な選手の中では3番目。フリーは3人残して首位に立つには125.75で届く、というシチュエーションでやってきます。ミスの少ないキムチェヨン選手ですが、ここは冒頭コンビネーションでダブルqがつき、後半3つはファイナルと同じ!,q,<がつくなど細かい減点が目立ちましたがそれでも129.91までは出し、トータル200.60 首位に立って残り3人を待ちます。結果4位ですが、4大陸と世界選手権の切符が回ってきました。

 

4大陸選手権は日米韓3か国対抗戦。210点台のシーズンベストが3人、200点台が3人、シーズンベスト伸びてないけどイ・ヘイン選手とブレイディテネル選手もいるよ、という僅差の中に8から9人がいるという試合です。ここでショートプログラムを全要素全ジャッジ+2以上の滑りで71.39の3位で折り返します。そして2位のレビト選手がフリーを欠場。最終グループは5人で行われる異常事態に。最後から2人目に出てきて表彰台確定させるには133.60が必要、首位に立つには139.46が求められます。前半はいい滑りでしたがここ2試合でうまくいっていないのが後半のジャンプ。ここでフリップ2本が決まらず特に2本目はコンビネーションのリカバリー付けられず、痛恨の単独での転倒でリピート扱い。131.00と届かずこの時点で3位。最終滑走が上を行って結局4位に終わりました。

 

シーズンラストは世界選手権。ここではショートで冒頭ルッツにコンビネーション付けられず、リカバリーでフリップに付けたらアンダーローテーションということで64.06 極端に悪いわけではないですが12位スタートとなり、3位と9.40差、と苦しい展開になります。

フリーは第3グループの1番手として登場。ここで今シーズン最高のフリーを見せます。全要素プラス評価で139.45 この時点で首位に立ち、しばらく後続がスコア伸ばせずにぽつんと1人で上位選手待合ソファで座る姿を見せることになります。この順位を抜かれたのはようやく残り5人になってから、ということで最終順位は6位。フリーだけなら3位。4大陸選手権に続いて、チャンピオンシップの小さなメダル2つ目を手に入れる形となりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
JGP Gdansk 195.46 106.49 88.97 65.74 8.72 23.90 8.13
Finlandia Trophy 205.51 112.88 92.63 66.47 9.07 23.83 13.51
JGP Egna 203.94 111.36 92.58 66.47 9.36 25.83 9.70
JGP Final 190.36 101.87 88.49 65.30 3.18 24.40 8.99
Korean Championships 200.60 104.12 96.48 65.74 0.60 24.48 13.30
Four Continents 202.39 107.53 95.86 63.29 5.37 25.01 13.86
World Championships 203.51 111.39 92.12 66.41 6.97 24.12 13.89

トータルスコアは最低で190.36最高で205.51ですが、シニアジュニア差もあるので実際にはさらに差が小さいです。非常に安定しています。

技術点は112.39のフィンランディア杯が最高。今シーズン9位にあたるスコアです。

PCSは80点台もジュニアの試合では見られ、国際大会の最高は4大陸の95.86 1項目平均8点に少し欠けるところまでは来ています。

ジャンプの基礎点は4大陸の63.29が最低で、最高は66.47が2試合と安定しています。今シーズン11位の基礎点になります。

ジャンプの加点がナショナルで1番低いという意外な内訳になっています。ジュニアグランプリエーニャの9.36が最高で今シーズン10位です。

スピンは24点台くらいが標準で25点台も2試合。最高は25.83で今シーズン6位。ジャンプよりもスピンの方が上の順位を持っています。

ステップ系要素はシニアの試合では13点台でした。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
JGP Gdansk 63.34 65.19 74.04 62.92 57.81 57.69
Finlandia Trophy 66.66 65.90 74.76 62.69 62.49 60.35
JGP Egna 66.14 65.90 75.35 69.36 68.44 60.31
JGP Final 61.66 64.76 62.70 64.59 63.98 57.34
Korean Championships 65.04 65.19 57.42 64.86 61.55 63.15
Four Continents 65.63 62.80 67.18 66.62 64.07 62.70
World Championships 66.00 65.84 70.46 63.65 64.20 59.98

偏差値に直すとトータルスコアは60台半ばでジャンプの基礎も60台半ばです。

ジャンプの加点は70台に乗せることが多いです。加点で稼ぐことが出来ています。

スピンも60台半ばでステップ系要素も60台半ば。

PCSだけ60前後でやや低いですが、ほとんどが60台半ばの偏差値で、ジャンプの加点はもっと伸びるよ、という構図になっています。

 

22-23シーズン キムチェヨン選手の要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートはこんな形でばらつき大きく見えますが、これは中心に50を置いているためです。安定しているからこそそれができます。

左上のPCSが凹みがちで、右下はいい時は伸びるよ、という形になっています。

 

・シーズン最高の基礎点構成

○4大陸選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
2 2A   3.30   0.99 4.29 3.000
3 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.556
4 3F   5.83 x 1.29 7.12 2.444
5 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
6 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.333
7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.444
  TES   32.53   7.46 39.99  

ショートの基礎点最高は32.53でした。ルッツの3-3入れて単独をフリップで1.1倍に入れると割とこうなります。コンビネーションを1.1倍に持ってくれば33.01まで持っていけます。32.53は今シーズン9位タイの構成です。

この構成は技術点で46.43満点、PCS加味して86.43満点となります。

 

○世界選手権 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.111
2 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.111
3 3S   4.30   0.55 4.85 1.444
4 2A   3.30   0.66 3.96 2.111
5 FCCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.333
6 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.111
7 3F+2T+2Lo   9.13 X 1.06 10.19 1.889
8 3Lz+2A+SEQ   10.12 X 1.26 11.38 2.222
9 3F   5.83 X 1.21 7.04 2.333
10 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.667
11 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.222
12 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.333
  TES   64.78   12.00 76.78  

フリーは世界選手権で64.78の基礎点が出ました。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。1.1倍にコンビネーションが2つ入って、1つ目はルッツとフリップで構成されていてシークエンスアクセルもしっかり使っています。スピンも合計10.20の1番高い組み合わせです。

この64.78は今シーズン、トリプルアクセル以上の高難度ジャンプがない構成の中で最高基礎点です。全体でも8位にあたります。

なお、冒頭に付けた3Tを最後のフリップに付ける形にすればさらに0.42基礎点が上がるので65.20まで基礎点が上がります。つまり、トリプルアクセル以上の高難度ジャンプが無くても、フリーの基礎点は65点台までは出るわけです。

この64.78の構成はGOE満点の時、技術点は92.18まで出るのでPCS加味して172.18満点です。GOE平均+4.000で技術点86.70 +3.000で81.22になります。極めると160点までトリプルアクセル以上のジャンプがなくても出せるのかもしれません。

 

○平均GOE3.000以上

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
JGP Egna FS 5 FCCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
JGP Egna SP 7 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.778
Finlandia Trophy SP 7 LSp3   2.40   0.88 3.28 3.750
Four Continents FS 5 FCCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Four Continents SP 7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.444
JGP Egna FS 11 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.333
JGP Egna SP 4 3Lo   5.39 x 1.61 7.00 3.222
JGP Egna SP 5 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.222
JGP Gdansk SP 5 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222
Finlandia Trophy SP 4 3Lo   5.39 x 1.47 6.86 3.125
World Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.111
JGP Egna FS 10 ChSq1   3.00   1.57 4.57 3.111
World Championships SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.111
JGP Egna SP 1 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.000
Four Continents SP 5 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Finlandia Trophy FS 11 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Four Continents FS 12 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
Four Continents SP 2 2A   3.30   0.99 4.29 3.000
Finlandia Trophy FS 5 FCCoSp3   3.00   0.90 3.90 3.000
Korean Championships SP 7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000

評価の高い要素はスピンが並んでいます。

ジュニアグランプリエーニャではFCCoSp フライングの足替えコンビネーションスピンで+3.889 これはこのスピンで今シーズン2位の評価になります。

ジャンプではループが2つ入っています。コンビネーションも2つ。ステップもそれなりに評価が高いものがあり、どの要素も満遍なく高評価が出てきています。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
JGP Gdansk SP 1 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
JGP Gdansk FS 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.444
Finlandia Trophy SP 1 3Lzq+3T q 10.10   0.10 10.20 0.250
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.57 11.67 2.750
JGP Egna SP 1 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.000
JGP Egna FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   0.08 10.18 0.000
JGP Final SP 1 3Lzq+3T q 10.10   0.00 10.10 -0.111
JGP Final FS 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.556
Korean Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 2.857
Korean Championships FS 1 3Lzq+3Tq q 10.10   -1.42 8.68 -2.429
Four Continents SP 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
Four Continents FS 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.556
World Championships SP 4 3F+3T< 9.53 X -1.14 8.39 -2.111
World Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.111

3回転-3回転はショートフリーのどちらも冒頭でルッツから跳びます。しっかり入らなかったのは世界選手権のショートで入らず、リカバリーでフリップから飛んだらセカンドがアンダーローテーションになりました。

それも含めて14回飛んでコンビネーションにならずが1、qが付いたものが4つで、GOEプラスは11回ありましたので、成功率は78.6%ということで割と高いです。転倒がないというのも大きいです。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
JGP Gdansk FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.10 10.89 1.889
Finlandia Trophy FS 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.18 10.97 2.125
JGP Egna FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.26 11.05 2.111
JGP Final FS 6 3F!q+2T+2Lo ! 9.13 x -0.68 8.45 -1.222
Korean Championships FS 7 3F!q+2T+2Lo ! 9.13 x -1.06 8.07 -2.000
Four Continents FS 8 3Lz+2A+2T+SEQ   11.55 x 1.01 12.56 1.556
World Championships FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 X 1.06 10.19 1.889

3連続ジャンプはジュニアとシニアの構成差などでどこに入るかの微妙な揺れもあるのですが、1.1倍のルッツまたはフリップから飛んでいます。

7試合で3連続が入れられなかった試合はなく、基礎点削られたこともなく、GOEプラスの成功ジャンプは5回です。これもしっかり計算できるジャンプになっていそうです。

 

○転倒した要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Four Continents FS 9 3Fq+REP F 4.08 x -2.65 1.43 -5.000

今シーズン7試合で転倒は1つだけでした。ただ、4大陸選手権は3位と2.59差の4位だったことを考えると、この転倒は非常に残念だったと言えるかもしれません。

とはいえ7試合で1つしか転倒がないこと。また、ジャンプの回転不足率は5.71%と1試合平均0.5程度。こういったように大きなミスがほぼ出ないことがキムチェヨン選手の強みになっています。

 

スケート始めたのが2017年らしいのですが・・・、何者ですか? キャリア5年経たない時期にジュニアグランプリシリーズで表彰台に乗り、6年目にはジュニアグランプリファイナルで表彰台に乗りました。チャンピオンシップでは小さなメダル2つ。大きな本物メダルは獲り逃しましたが、あと一歩まで来ています。ジャンプの驚異的な安定感が強み。普通、キャリアの浅い選手は一発あるけど不安定、とかなりそうなものですが…、あなた何者ですか? 来期は、何か大きなタイトルを持っていくこともあるかもしれません。