ロステレコム杯 世界最高スコア ついでに男子も勝ちました

グランプリシリーズ最終戦はロシアでロステレコム杯。一人の天才にすべてを持っていかれたような感じもありますが、実際にはそのほか様々見どころがありました

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kamila VALIEVA RUS 272.71 87.42 185.29
2 Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 229.23 80.10 149.13
3 Maiia KHROMYKH RUS 219.69 64.72 154.97
4 Mariah BELL USA 210.35 69.37 140.98
5 Loena HENDRICKX BEL 203.69 64.44 139.25
6 Madeline SCHIZAS CAN 192.14 67.82 124.32
7 Viktoriia SAFONOVA BLR 185.64 58.19 127.45
8 Rino MATSUIKE JPN 184.36 62.98 121.38
9 Ekaterina KURAKOVA POL 175.64 56.43 119.21
10 Ekaterina RYABOVA AZE 175.24 58.87 116.37
11 Eva-Lotta KIIBUS EST 163.11 49.26 113.85
12 Olga MIKUTINA AUT 161.09 57.09 104.00

ショート出遅れて3位からフリーで逆転優勝・・、ではなくて、ショートもフリーも歴代最高スコアでの優勝ですね。はい。グランプリシリーズでは史上初の同じ試合で男子の優勝スコアを上回る女子の優勝スコアとなりました。

2位にはトゥクタミシェワ選手が入りました。3試合連続の230点台はならず。ロシアですしPCSもう少し出るかな、と思ったのですがフリーのPCSは今シーズンで一番低く抑えられました。今シーズン国際大会でトリプルアクセルは9回飛んですべて着氷。その中GOEでマイナス付いたのは2回で、今回のフリーの2本目が一番悪いジャンプでした。成功率は高くなっています。

フロミフ選手が3位でファイナル進出。ショートは、先週のひどい滑りを引きづっているのか、やっぱり調子悪いんだ、というのが明らかに出ていましたがフリーでは四回転二本を着氷。追い込まれたところでしっかり結果を出して、エテリ組はやはり根性あります

4位にマライアベル選手が入ってきました。今シーズン調子が上がっていませんでしたがここにきて210点に乗せてきました。アメリカ勢ではアリサリュウ選手に次ぐシーズンベスト2位になります。ただ、相変わらずセカンド三回転が入っていません。フリーの構成はもう最初からセカンドで三回転を飛ぶ意思がない、というような構成。これはむしろ調子が上がっていないとみる方が正しいのでしょうか? よくわかりません。

ルナヘンドリックス選手が5位。2位まで行くか、3位でもフロミフ選手がやらかして5位以下になればファイナル、という線があったのですが届きませんでした。

日本から出場の松生理乃選手は8位。なんとかランキングポイントは確保しました。シーズンベストは伸ばせず。180点台だとちょっと苦しい。全日本で3位に入っても4位の選手に代表の切符を持っていかれてしまいそうな力関係になってしまいそうです。

ただ、明らかに本調子ではないこの2試合でも180点台はキープしています。全日本ジュニアでノービスの島田麻央選手以外のトップスコアは180.25 昨シーズン中止になった世界ジュニアに1年越しで回っていく、というのが今シーズン後半の展開になりそうに見えます。

 

○女子シングル 要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kamila VALIEVA RUS 272.71 113.72 90.08 25.00 28.02 15.89
2 Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 229.23 105.98 77.42 7.81 23.44 14.58
3 Maiia KHROMYKH RUS 219.69 103.40 72.30 5.15 25.37 14.47
4 Mariah BELL USA 210.35 102.74 59.31 8.65 24.65 15.00
5 Loena HENDRICKX BEL 203.69 102.45 57.80 3.17 25.16 15.11
6 Madeline SCHIZAS CAN 192.14 93.00 60.52 4.88 21.80 11.94
7 Viktoriia SAFONOVA BLR 185.64 87.23 65.63 0.93 21.99 10.86
8 Rino MATSUIKE JPN 184.36 93.32 52.55 2.72 23.42 13.35
9 Ekaterina KURAKOVA POL 175.64 88.60 58.70 -7.86 23.08 13.12
10 Ekaterina RYABOVA AZE 175.24 87.35 58.35 -1.65 21.75 10.44
11 Eva-Lotta KIIBUS EST 163.11 86.49 51.27 -5.80 20.39 11.76
12 Olga MIKUTINA AUT 161.09 86.82 48.99 -7.56 23.30 11.54

何をとってもワリエワ選手がトップ、というのはわかり切っていることではありますが・・。

技術が大事か? 表現力が大事か? みたいな議論がフィギュアスケートではよくなされたりしますが、本当の答えは決まっていて、そんなの両方だよ、となります。その答えをワリエワ選手が体現している、というように感じます。

それにしてもPCS113.72は凄まじいです。オリンピック以外でなかなかここまでもらえることはない。

ジャンプの基礎点で90点に乗りました。ただ、フリーの3連続の三つ目が2回転になりましたのでスケートカナダの93.38には劣ります。また、今シーズンではUSインターナショナルのトゥルソワ選手も92.12というこれより高い基礎点を持っていました。いずれにしてもトリプルアクセル3本のトゥクタミシェワ選手と基礎点にして10点以上の差がついています。フロミフ選手も四回転2本着氷しましたが、ショートでコンビネーションが入らなかったのでこのスコアになっています。ただ、入っていたとしてもトゥクタミシェワ選手よりジャンプの基礎点は低くなります。トリプルアクセル3本は四回転2本に勝る。

ジャンプの加点25点というのもすさまじいです。スケートカナダでも16.44でしたから、ここが大きく伸びました。セカンド三回転を入れなかったマライアベル選手がトゥクタミシェワ選手を超えて全体2番目です。完成度で勝負、というのはこういうことなのでしょう。

スピンもワリエワ選手は28点超え。ただ、今シーズン3試合の中ではこの28.02は最低値です。トゥクタミシェワ選手はここが伸びなかったのが230点に乗らなかった一つの要因だったりもしました。

ステップ系要素の15.89は今シーズン2番目。ヘンドリックス選手やマライアベル選手といったステップの評価の高い選手が続きました。

 

○ワリエワ選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   2.74 10.74 3.444
2 3F   5.30   1.82 7.12 3.444
3 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
4 3Lz+3T   11.11 x 1.94 13.05 3.333
5 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
6 FCSp4   3.20   1.33 4.53 4.111
7 LSp4   2.70   1.31 4.01 4.778
  TES   37.71   12.26 49.97  

トリプルアクセルが決まるようになってきたのでショートでも点が出るようになってきました。全要素全ジャッジが+2以上を付けています。+2は1つの要素に1つだけで他は+3以上です。この中ではスピンがいつもはもう少し点が出せていて、今回は3つで13.49でしたがスケートカナダでは13.84まで出ていました。そこまで出ると技術点が50点に乗ります。

 

○ワリエワ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4S   9.70   3.88 13.58 4.111
2 3A   8.00   3.31 11.31 4.222
3 4T+3T   13.70   4.21 17.91 4.333
4 3Lo   4.90   1.47 6.37 2.889
5 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
6 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.778
7 4T+1Eu+2S   12.43 x 2.04 14.47 2.000
8 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333
9 3Lz   6.49 x 1.85 8.34 3.222
10 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
11 FCCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.000
12 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
  TES   82.77   26.25 109.02  

技術点109.02は女子歴代最高点です。今シーズンこれより上の技術点はスケートアメリカでヴィンセントジョウ選手が出した110.19しかありません。エールをもらうのは僕の方、という宇野選手のコメントは謙遜でもなんでもなく単なる現状認識としてのコメントであってもおかしくない(ジャンプの種類的にはワリエワ選手には負けているわけではないですが)。また、四回転2種類でも極めればここまで点が出る、ということで、男子の多くのサルコウトーループまでの選手も出来栄えを極めて行けばPCS男子ルールで300点近く出ますし、ショートから四回転の入る男子ルールなら320点近い点数まで出せるわけです。

これ、基礎点上げる方法としては、四回転-三回転をやめて、トリプルルッツにトリプルトーループを上げるというのがあります。ジャンプの難易度は下がるのでありえる選択肢なわけですが、四回転トーループの安定度が高いというのと、リカバリー可能な構成にしておくというのと、両方の理由で今の構成の方がおそらく良いのでしょう。

 

これに勝てる可能性がある選手は一人しかいません。四回転四種類5本をノーミスでトゥルソワ選手が滑った時。フリーで技術点が120点に届いて勝負になる。そこにトリプルアクセルがショートフリー入ればPCSで多少負けていてもその分を十分カバーして勝てます

ワリエワ選手の残る敵は、15歳にして国を背負って迎えるオリンピックのプレッシャー、ケガ、コロナ、そして四回転五本ノーミストゥルソワの4つかと思います。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Morisi KVITELASHVILI GEO 266.33 95.37 170.96
2 Mikhail KOLYADA RUS 264.64 84.48 180.16
3 Kazuki TOMONO JPN 264.19 95.81 168.38
4 Roman SADOVSKY CAN 253.80 84.59 169.21
5 Matteo RIZZO ITA 250.47 77.45 173.02
6 Evgeni SEMENENKO RUS 246.66 81.00 165.66
7 Camden PULKINEN USA 237.97 83.47 154.50
8 Mark KONDRATIUK RUS 231.88 74.16 157.72
9 Keiji TANAKA JPN 229.75 76.69 153.06
10 Michal BREZINA CZE 219.59 82.31 137.28
11 Nika EGADZE GEO 210.17 50.35 159.82
12 Brendan KERRY AUS 204.19 80.48 123.71

優勝はジョージアのクビテラシビリ選手でした。ジョージアのというよりエテリ組男子の、と言った方がいいかもしれません。グランプリシリーズ初優勝。エテリ組男子としても初優勝かと思います。

コリヤダ選手が2位に入りました。ショートはどうしたかと思いましたが、フリーはある程度立て直してファイナルにはたどり着きました。今回のスコアはシーズンベストではなく2番目のスコア。これでもほかの男子のロシア勢は上回ります。ロシアのオリンピック枠は2つで、激戦ではありますがコリヤダ選手は頭一つ抜けているように見えます。

友野一希選手は3位表彰台。グランプリシリーズ2度目の表彰台となりました。1意図は2.14ポイント差。大健闘と見るか大魚を逸したと見るか。本人としては悔しいけれど一定の結果と受け取っているようで、冷静ですかね。四回転やトリプルアクセルではなくて、トリプルループをしっかり飛べていただけで優勝でしたので、本当に残念だったように感じてしまう部分はあります。ついでに、日本勢の中でシーズンベスト3番目までもあと0.80とわずかに届かず。惜しかったです。

日本からもう一人田中刑事選手は9位でした。これでグランプリ2戦で9位と10位。今シーズン結局ポイントを得られていません。シーズンベストも全体で32位、日本勢の中で7番目。オリンピック代表争いは非常に厳しくなっていますし、それだけでなく、来シーズンにグランプリシリーズの枠があるかも怪しい状態です。オリンピックに出たこともありますし、年齢的にもそろそろ去就が気にされる時期に来ています。調子が上がっていませんが、全日本一発勝負期待はしたいです。

 

○男子シングル 要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Morisi KVITELASHVILI GEO 266.33 125.84 97.34 6.37 23.70 14.08
2 Mikhail KOLYADA RUS 264.64 132.92 97.04 -3.75 25.81 14.62
3 Kazuki TOMONO JPN 264.19 124.34 100.14 2.93 23.23 14.55
4 Roman SADOVSKY CAN 253.80 124.50 90.07 0.27 25.47 13.49
5 Matteo RIZZO ITA 250.47 125.35 87.30 0.90 23.41 14.51
6 Evgeni SEMENENKO RUS 246.66 122.41 96.95 -7.40 23.58 14.12
7 Camden PULKINEN USA 237.97 116.07 85.56 1.51 23.07 12.76
8 Mark KONDRATIUK RUS 231.88 114.90 89.11 -3.52 21.45 11.94
9 Keiji TANAKA JPN 229.75 115.14 74.77 3.61 22.45 13.78
10 Michal BREZINA CZE 219.59 121.96 70.80 -5.05 21.93 12.95
11 Nika EGADZE GEO 210.17 105.43 81.39 -2.79 18.64 10.50
12 Brendan KERRY AUS 204.19 109.96 75.16 -10.26 20.65 10.68

PCSはコリヤダ選手がトップ。この辺は実績のある選手が強いです。それ以外の1位から5位の選手が125点前後で並びました。

ジャンプの基礎点は友野一希選手がトップでした。四回転は2種類でもすべて基礎点満額取れば100点に乗ります。今シーズンジャンプの基礎点が100点を超えた選手はこれで10人目。意外ですがその中に宇野昌磨選手がいません。四回転を3種類4種類飛んでも、セカンド3回転が入らないと基礎点が100点まで入ってきません。

基礎点はわずかに劣りましたがGOEではクビテラシビリ選手が勝りました。結果的にここが優勝できた要因になった形です。

スピンステップはコリヤダ選手がトップでした。友野選手は割とスピンで点が出ない選手なのですが、今回は23点台までは出ていて、決していいスコアではないですがそれほど足を引っ張らないところまで来ています。

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4T+3T   13.70   2.58 16.28 2.778
2 4Sq q 9.70   -3.74 5.96 -3.778
3 4T   9.50   3.12 12.62 3.222
4 3Lo   4.90   -1.61 3.29 -3.000
5 StSq4   3.90   0.89 4.79 2.222
6 FSSp4   3.00   0.64 3.64 2.111
7 3A+1Eu+3S   14.08 x -0.80 13.28 -0.889
8 3A   8.80 x -4.00 4.80 -5.000
9 3F+2T   7.26 x 0.76 8.02 1.444
10 FCCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
11 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.778
12 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
  TES   84.84   1.20 86.04  

非常に惜しかったフリーですが、スピンステップはすべてレベル4 ここの取りこぼしがこれまで多い選手だったのですが今回はショートからしっかりこういった要素の取りこぼしなくスコアを稼いでいきました。ジャンプも回転不足はなく抜けもなく基礎点はすべて満額入っています。トリノでは序盤の四回転までは良かったものの後半崩れて基礎点からだいぶ削られました。今回は四回転をきれいにとはいかずにすべて降りて、以降もミスはありつつも基礎点は満額取りました。次はノーミスまで行くと、技術点100点の芽があります。そのチャンスがある、と感じられるところまで今回来ました。全日本が大変楽しみになってきました。

 

グランプリシリーズが完了しファイナル進出者も固まりました。さあ、次はファイナル、大阪で、というところなのですが、まさかのコロナ、さらなる変異株で外国人入国禁止に。どうなるんでしょう? 今回もロシア勢のファイナル進出組が多いわけですが、フィギュア界のロシアと言えば、昨年のロステレコム杯の後にコロナクラスターを出した前科もあります。そんな前科もあるので、何とか開いてほしい、ともちょっという気分にはならず。でも、延期っていうのも、オリンピックシーズンにはちょっと考えにくいですし。何とも難しいことになってきてしまいました・・・。