全米選手権22 男子プレビュー

前日の女子に続いて男子の全米選手権プレビューです。

 

○今シーズンのアメリカ所属選手の国際大会シーズンベスト

  Event Pl Name Total SP TSS FS TSS
1 Skate Canada 1 Nathan CHEN 307.18 106.72 200.46
2 Skate America 1 Vincent ZHOU 295.56 97.43 198.13
3 Internationaux de France 3 Jason BROWN 264.20 89.39 174.81
4 Golden Spin 3 Jimmy MA 250.97 80.84 170.13
5 JGP Linz 1 Ilia MALININ 245.35 81.31 164.04
6 Rostelecom Cup 7 Camden PULKINEN 237.97 83.47 154.50
7 Cranberry Cup 3 Maxim NAUMOV 223.15 73.64 149.51
8 Skate Canada 11 Tomoki HIWATASHI 221.77 72.92 148.85
9 US International 3 Eric SJOBERG 221.12 78.11 143.01
10 Cranberry Cup 4 Yaroslav PANIOT 210.84 76.68 134.16
11 JGP Kosice 3 William ANNIS 204.60 76.21 128.39
12 JGP Krasnoyarsk 8 Lucas BROUSSARD 198.77 64.00 134.77
13 Cranberry Cup 1 Matthew NIELSEN 196.46 68.79 127.67
14 JGP Gdansk 6 Jacob SANCHEZ 194.03 70.92 123.11
15 Cranberry Cup 2 Will ANNIS 191.98 73.64 118.34
16 JGP Courchevel 2 4 Maxim ZHARKOV 178.05 60.45 117.60
17 US International 9 Dinh TRAN 176.72 65.77 110.95
18 JGP Courchevel 2 5 Kai KOVAR 175.87 57.24 118.63
19 Cranberry Cup 4 Michael XIE 172.11 61.42 110.69
20 Cranberry Cup 5 Liam KAPEIKIS 160.36 51.33 109.03
21 Cranberry Cup 6 Robert YAMPOLSKY 157.04 60.20 96.84
22 Cranberry Cup 8 Samuel MINDRA 146.58 60.61 85.97

今シーズン国際大会で滑ったアメリカの選手は22人います。全員が全米選手権のシニアカテゴリーのエントリーしているわけではありませんが、ここには全員並べてみました。

トップスコアは300点を超えるネイサンチェン選手。ショート100点超え、フリー200点超え、両方合わせての300点超え。ちゃんと滑ればやはり強いです。

2番手にヴィンセントジョウ選手がいます。300点には乗っていませんがフリーも200点近いスコアを出しています。国内選手権なので二人で300点超えの勝負をする形になるでしょうか?

3番手はジェイソンブラウン選手。4年前は全米選手権6位で落選。ショートは3位で折り返したのですがフリーで崩れた試合でした。2大会ぶりのオリンピック復帰を狙います。上位2人とは少し離れた位置にいますがシーズンベスト3位は今回も確保しているという立ち位置です。

その下はジミーマ選手。全米選手権最高位は6位。今シーズンゴールデンスピンでパーソナルベストの250.97を出してきました。昨シーズンまではあまり見ない名前でしたが26歳ですでにベテランです。

5番手にジュニアからイリアマリンイン選手。今シーズンのジュニアの最高得点選手です。中止になってしまったジュニアグランプリファイナルの最有力優勝候補でした。17歳なので年齢的にはオリンピック出場可能。チャレンジャーシリーズの試合に出ているのでミニマムスコアも取得済み。大勝すれば代表入りもなくはない、という立場です。

カムデンプルキネン選手が6番手。シーズンベスト237.97 パーソナルベストは2シーズン前の244.78 この水準だと代表争いに絡むのは少し苦しいかもしれません。

この下まで行くとシーズンベストが230点を割ります。19年世界ジュニアチャンピオンの樋渡選手などもいますが、パーソナルベストでみても240.78とそれほど高くありません。

代表争いはシーズンベスト上位の選手に限られるように感じます。

 

○上位6選手の今シーズンの国際大会の戦績

Event Pl Name Total SP FS
Skate Canada 1 Nathan CHEN 307.18 106.72 200.46
Skate America 1 Vincent ZHOU 295.56 97.43 198.13
Cranberry Cup 1 Vincent ZHOU 288.26 102.53 185.73
Nebelhorn Trophy 1 Vincent ZHOU 284.23 97.35 186.88
Skate America 3 Nathan CHEN 269.37 82.89 186.48
Internationaux de France 3 Jason BROWN 264.20 89.39 174.81
Finlandia Trophy 1 Jason BROWN 262.52 92.39 170.13
NHK Trophy 2 Vincent ZHOU 260.69 99.51 161.18
Skate Canada 2 Jason BROWN 259.55 94.00 165.55
Golden Spin 3 Jimmy MA 250.97 80.84 170.13
JGP Linz 1 Ilia MALININ 245.35 81.31 164.04
Rostelecom Cup 7 Camden PULKINEN 237.97 83.47 154.50
US International 2 Jimmy MA 233.58 84.07 149.51
Cranberry Cup 2 Jimmy MA 230.59 78.30 152.29
Skate America 5 Jimmy MA 228.12 84.52 143.60
Cup of Austria 3 Ilia MALININ 222.55 67.58 154.97
JGP Courchevel 1 Ilia MALININ 214.64 80.07 134.57
US International 4 Camden PULKINEN 208.99 66.84 142.15
Finlandia Trophy 14 Camden PULKINEN 204.24 75.51 128.73
Warsaw Cup 16 Jimmy MA 195.09 71.49 123.60
NHK Trophy 11 Camden PULKINEN 193.18 55.53 137.65
Cranberry Cup 8 Camden PULKINEN 179.50 61.13 118.37

上位6選手の今シーズンの国際大会を全て並べてみました。

シーズンベスト3番手のネイサンチェン選手のシーズンワーストに、シーズンベスト4番手のジミーマ選手でも届いていません。3番手と4番手の間に大きな壁があるように見えます。ジミーマ選手は250点にベストは乗せましたが、セカンドベストは230点台に留まり、悪い試合では200点に届いていません。マリンイン選手もセカンドベストは222.55 プルキネン選手に至ってはセカンドベストで208.99 上位3人の安定度合いと比べると4から6番手の選手のスコアはばらつきが大きい。やはり力の差を感じます。

 

○上位5選手のシーズンベストのフリーの構成要素

  Nathan CHEN Vincent ZHOU Jason BROWN Jimmy MA Ilia MALININ
1 4S 4Lz 4S 4T+3T 4T
2 3Lz 4F! 3A+2T 4T 4S
3 4F+3T 4Sq 3Aq 3Lo 3A
4 3Lo 4Tq CCoSp4 3A+2T 3F
5 CCSp3 ChSq1 2Lo FCSp4 FCCoSp4
6 StSq3 4Sq+3T 3F+3T StSq4 StSq3
7 3A 3A+1Eu+3S 3Lz!+1Eu+1S 3A 3Aq+1Eu+3S
8 4T+1Eu+3F FCSp4 ChSq1 3Lz+1Eu+3S 3Lz+3Loq
9 4T+2T CSSp3 3F 3F! 3Lz+3T
10 CCoSp4 3A+2T FCCoSp4 ChSq1 FSSp4
11 ChSq1 StSq4 StSq4 CSSp4 CCoSp4
12 FCCoSp4 CCoSp4 CCSp4 CCoSp4  
Base 89.31 97.50 69.56 80.40 82.87
GOE 18.37 12.69 12.53 10.63 5.81
PCS 92.78 87.94 92.72 79.10 75.36
TSS 200.46 198.13 174.81 170.13 164.04

上位5選手のフリーの構成を見てみます。

ネイサンチェン選手は4回転5種類6本という構成を試したりしていましたが、シーズンベストの構成は3種類4本の構成でした。スピンステップにレベル3もあり、万全ではないですが基礎点89.31まで出ています。これでもノーミスなら90点に届く構成。

ヴィンセントジョウ選手は4回転4種類5本にトリプルアクセル2本という構成で97.50の基礎点を叩きだしました。

やはりこの二人が基礎点では抜けています。出来栄え差とPCS差でネイサンチェン選手が上へ行っていますが、ヴィンセントジョウ選手も二桁の加点をこの構成で得ています。

ジェイソンブラウン選手はやはり基礎点は低いですが、それでも初めて4回転を国際大会で降りました。ジャンプがしっかり入り切らなかったので70点に乗らない基礎点になっていますが、ジャンプが全部入れば基礎点75点まで出ます。ただ、全米選手権を勝ち抜くためにはそこまでは必要なくて、4回転抜いて高い出来栄えとPCSで勝負すれば十分ではあります。

ジミーマ選手やマリンイン選手は4回転2本構成です。マリンイン選手は1.1倍にコンビネーションをすべてつぎ込んでしかもセカンドループまで入れています。その結果として基礎点は80点まで乗ってきています。PCSではジェイソンブラウン選手と差がありますがノーミスで技術点を稼げば勝負になるかもしれません。

 

○上位5選手のシーズンベスト時の要素別スコア

Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
Nathan CHEN 307.18 139.21 107.78 18.82 25.83 15.54
Vincent ZHOU 295.56 130.59 115.50 11.26 23.56 14.65
Jason BROWN 264.20 139.04 76.87 6.10 25.38 16.81
Jimmy MA 250.97 115.55 91.40 6.79 23.34 13.89
Ilia MALININ 245.35 111.32 93.77 7.87 24.14 8.25

5人の要素別のスコアを見てみます。

PCSはネイサンチェン選手とジェイソンブラウン選手が140点近いスコアです。ヴィンセントジョウ選手は130点ほど。10点近い差があります。ジミーマ選手やマリンイン選手はジェイソンブラウン選手と20点以上の差がある。1項目平均9点を超えるブラウン選手と8点に満たない二人。この差は大きいです。

ジャンプの基礎点はヴィンセントジョウ選手が圧倒。世界最高クラスです。ジェイソンブラウンセントとの差は40点近くもあります。ジミーマ選手やマリンイン選手は90点台前半。PCSの大きな差をジャンプの基礎点でかなり詰めていますがまだ足りません。

ジャンプのGOEはさすがのネイサンチェン選手。ヴィンセントジョウ選手も二桁の加点を得ています。ここがジェイソンブラウン選手とジミーマ選手、マリンイン選手でほぼ差がありません。基礎点で上回る二人がミスなく滑ればジャンプの加点は高くなるはずなので、ここでPCSの差を補うことはまだ可能です。

スピンはネイサンチェン選手とジェイソンブラウン選手が25点台です。ヴィンセントジョウ選手は23点台でやや弱点になっています。

ステップ系要素はジェイソンブラウン選手が16点台後半まで出しています。16.81は今シーズン2番目のスコア。今シーズン国際大会でステップ系要素で16点を超えたのは3件あるのですが、すべてジェイソンブラウン選手です。

 

こうやって並べてみると、優勝争いをするのは二人、ネイサンチェン選手とヴィンセントジョウ選手であって、この二人はオリンピックの代表争いはほぼ安泰に見えます。

ジェイソンブラウン選手の3番手というのも堅そう。ジミーマ選手やマリンイン選手はジャンプノーミスで加点を稼ぎつつ、ブラウン選手がジャンプをミスするのを待ちたいということになりそうです。代表争いの鍵はジェイソンブラウン選手が握っていそうです。今回詳しく取り上げませんでしたが、ジェイソンブラウン選手は4回転の無い構成の場合もトリプルアクセルが2本そろわずに崩れて点数が伸びない、ということが結構あります。その形に陥ってしまった場合、表彰台に乗れない可能性もある。ただ、国際大会での実績は段違いにあります。なので、僅差で4位くらいならジェイソンブラウン選手の方が選ばれる、という可能性がかなり高い。4番手以下の選手はオリンピック代表を目指すにはかなり大差をつけないと厳しいように感じます。

 

男子シングルは現地時間の8日にショートプログラム、9日にフリーです。日本時間では

それぞれ翌早朝というか深夜から早朝にかけての時間になります。