全米選手権22 勝者はコロナ?

全米選手権が閉幕しました。全米選手権の男女シングルはエントリー18人なはずなのですが、ケガにコロナにと減っていきひどいことに。20年のロステレコム杯クラスター出してましたが、今度は全米選手権でクラスター。もうちょっと何とかならないものなんでしょうか・・・。

というわけで、全米選手権のレビューですが、今回は先に終わった女子シングルの方を見ていきます。

 

○女子シングル結果

Pl Name Total SP FS
1 Mariah Bell 216.25 75.55 140.70
2 Karen Chen 213.85 74.55 139.30
3 Isabeau Levito 210.75 71.00 139.75
4 Gabriella Izzo 188.11 67.51 120.60
5 Lindsay Thorngren 186.38 70.22 116.16
6 Audrey Shin 180.58 61.77 118.81
7 Kate Wang 178.20 64.27 113.93
8 Hanna Harrell 175.66 56.99 118.67
9 Starr Andrews 173.04 59.43 113.61
10 Gracie Gold 171.92 67.61 104.31
11 Jill Heiner 171.54 60.30 111.24
12 Sierra Venetta 164.24 53.88 110.36
13 Rena Ikenishi 158.69 55.32 103.37
14 Wren Warne-Jacobsen 143.39 48.45 94.94
  Alysa Liu 71.42 71.42  
  Amber Glenn 54.80 54.80  

女子シングルは結局フリーまで滑り切ったのは14人だけになってしまいました

優勝はマライアベル選手。25歳の初優勝。ショートフリー共に1位で逃げ切りました。

2位にはカレンチェン選手。これで2大会連続のオリンピック出場権を確保しました。

3位表彰台までが210点台で、ジュニアのレビト選手が入ってきました。フリーは2位の高スコア。ただ、14歳。オリンピックの代表を争うには年齢が足りていません。4年前の紀平梨花選手、コストルナヤ選手、8年前のラジオノワさん、12年前のトゥクタミシェワ選手、16年前の浅田真央さん、などと同じ、ナショナルで表彰台に乗ったけど選考対象にそもそもなれない、という状態です。

その下が180点にまで一気に落ちてしまうのが今のアメリカ。4位に入ったガブリエライッゾ選手は20歳になっているシニアの選手ですが、グランプリシリーズの出場経験もなく、国際大会でのベストスコアは今シーズンのUSインターナショナルの182.76という選手。ちょっとこれだとオリンピック3枠目には選びづらい。5位にいるのは16歳で中止になったジュニアグランプリファイナルに出場予定だったリンジートルグレン選手なので、やはりこれもオリンピック代表には選びにくい。

そうなってくると、今シーズンの実績十分で、ショートまでは滑って3位につけていて、フリー欠場の理由もケガでもなく1か月以内に回復する可能性が極めて高いコロナ陽性という理由だったアリサリュウ選手が必然的に浮上します。

残念だったのはアンバーグレン選手。グレン選手もコロナでフリー欠場。ショートのスコアの悪さも、どうも著しい倦怠感的なものが原因だった部分もあるようで、それってすでに症状出てたんじゃ、という気もしますが、まあそれはそれとして、一発逆転のチャンスをこういう形で失ってしまったのは残念だったと思います。

 

最終的には10位でしたがグレイシーゴールド選手、ショートでは6位で最終グループ入り。オリンピックはさすがに厳しいまでも、これは四大陸で国際大会復帰まで来て来るか??? と一瞬色めき立ったのですが、残念ながらフリーではスコアが伸びませんでした。(なお、あとから確認してみたらゴールド選手は4大陸のミニマムスコアを取れていなかったのでどちらにしても出場は不可でした。クランベリーカップ出てたのでミニマムも獲れていると思ったのですが、出場したけどショートのスコアが足りてませんでした)。

1995年月生まれの26歳。今後の去就について取りざたされていたりするようですが、ここまで来たならもう少し続けて国際舞台に復帰してほしいなあ。グランプリシリーズの復帰権は確か使ってしまっていると思うので、そこまで戻すには自力で上がっていかないといけないですが、チャレンジャーシリーズには出ても問題ない力が戻ってきてると思いますし、アメリカ国内での活動にとどまらず、海外のファンにも姿を見せてもらえたらと思います。とはいっても、来日できそうな試合は、なかなか、ないですが・・。

 

ショートプログラム上位6人の構成

  Mariah Bell Karen Chen Alysa Liu Isabeau Levito Lindsay Thorngren Gracie Gold
1 3F+3T 3Lz+3Tq 3A< 2A 3F! 3Lz+3Tq
2 2A 2A 3F 3F 2A 2A
3 FSSp4 CCoSp4 FCSp3 CCoSp4 CCoSp4 FCSp4
4 3Lz FCSp4 3Lz+3T 3Lz+3Lo< 3Lz+3T 3Lo
5 StSq4 3Lo CCoSp4 FSSp4 FSSp4 LSp3
6 CCoSp4 StSq4 StSq4 StSq4 StSq4 StSq3
7 LSp4 LSp4 LSp4 LSp4 LSp4 CCoSp4
Base 32.39 32.09 35.71 32.50 32.81 31.19
GOE 8.75 7.32 4.00 6.36 6.47 5.21
PCS 34.41 35.14 32.71 32.14 30.94 31.21
Total 75.55 74.55 71.42 71.00 70.22 67.61

アメリカ勢ではアリサリュウ選手が一番構成が高くなります。今回はトリプルアクセルが回転不足の転倒となりましたが、それでも基礎点は35.71まで出ています。

上位2人よりジュニア勢の方が基礎点高め。レビト選手はボーナスタイムにルッツループというダブルアクセル勢の最高難度構成でしたがループで回転不足。ボーナスタイムにコンビネーション入れて回転不足なく跳びきったトルグレン選手の方が基礎点は上でした。

ゴールド選手はステップとスピンのレベル3があるので基礎点は31点台ですが、久しぶりに3回転-3回転を決めてくれました。構成自体はもう全盛期と変わりません。フリップは苦手で!ではなくてeまでつくのでショートではループを飛ぶ、というところも全盛期からそうでした。

 

○総合上位5選手のフリーの構成

  Mariah Bell Karen Chen Isabeau Levito Gabriella Izzo Lindsay Thorngren
1 3F+2T 2A+3T< 2A 2A+3Tq 3A<<
2 3Lo 3F 3Lz 3F+2T 3Lz
3 CCoSp4 3S 3Lo 3Lz+2T 2A
4 3S 3Lo 2A 3Lo 2A
5 2A StSq4 CCoSp4 CCoSp4 LSp4
6 StSq3 FCCoSp4 ChSq1 StSq3 3F!+3T
7 3F+2T+2Lo 3Lz+2T+2Lo 3F+3T 3F 3Lz+1Eu+3S<
8 3Lz+2A+SEQ 3Lzq 3Lz+1Eu+3S< 1Lz 3F!<
9 FCCoSp4 CCoSp4 3F+2T 2A StSq4
10 3Lz ChSq1 FCSp4 ChSq1 FCCoSp4
11 ChSq1 3Loq+2Tq StSq4 FCCoSp4 ChSq1
12 LSp4 LSp4 FCCoSp4 LSp4 CCoSp4
Base 58.82 60.86 63.03 52.32 58.33
GOE 11.89 9.42 11.18 7.02 1.10
PCS 69.99 69.02 65.54 62.26 59.73
Total 140.70 139.30 139.75 120.60 116.16

フリーの構成もジュニアのレビト選手が最高基礎点でした。コンビネーション3つをボーナスタイムにすべてつぎ込む構成です。ショートフリー、二つ見るというなればザギトワ型構成といったところ。サルコウの回転不足がありながらも基礎点63点台にまで乗せました。

カレンチェン選手は何とか60点台に基礎点が乗りました。セカンド3回転は冒頭のダブルアクセルに付けたものだけですがこれが回転不足。決まったセカンド3回転がないとちょっと基礎点は伸びない。優勝したマライアベル選手はダブルアクセルをシークエンスで入れているあたりから、おそらく最初からセカンド3回転入れない構成だったのだろうと思います。まあ、展開的に、大崩れしなければ表彰台は守れてオリンピック代表は固い、というのがフリー始まった時点で分かっていますので、無理はしないということかもしれませんが、このままの構成だとオリンピックで上位に行くのは苦しくなります。

 

○フリーまで滑った14選手の要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Mariah Bell 216.25 104.40 62.11 9.38 25.37 14.99
2 Karen Chen 213.85 104.16 63.05 5.41 25.60 15.63
3 Isabeau Levito 210.75 97.68 65.33 7.24 25.44 15.06
4 Gabriella Izzo 188.11 93.77 52.12 5.54 24.39 13.29
5 Lindsay Thorngren 186.38 90.67 61.44 -0.44 23.71 14.00
6 Audrey Shin 180.58 91.39 53.44 -2.68 23.69 14.74
7 Kate Wang 178.20 82.75 56.81 7.49 20.01 11.14
8 Hanna Harrell 175.66 84.57 56.01 1.78 21.47 13.83
9 Starr Andrews 173.04 89.06 46.12 0.76 23.26 13.84
10 Gracie Gold 171.92 88.29 47.06 1.97 22.34 12.26
11 Jill Heiner 171.54 78.95 54.42 2.30 23.21 12.66
12 Sierra Venetta 164.24 78.81 49.22 0.64 24.76 11.81
13 Rena Ikenishi 158.69 74.61 54.06 -0.17 20.04 10.15
14 Wren Warne-Jacobsen 143.39 69.25 41.87 -0.80 22.69 10.38

要素別で並べてみるとPCSはオリンピック代表になったベル選手とチェン選手、二人が抜けています。ただ、全米選手権の割にはPCSは余りでなかったなという印象です。3位のレビト選手はPCSで100点に届かず。これ、逆にみると技術点ではレビト選手がトップスコアだったわけです。

ジャンプの基礎点はレビト選手がトップ。カレンチェン選手も2番手で意外と差は小さいです。マライアベル選手も3番手にはいます。アメリカ国内ならこれくらいの基礎点があれば十分勝負できます。

ジャンプの加点はベル選手がトップ。難度を少し落としている分加点は十分にとりました。

スピンはカレンチェン選手がトップ。カレンチェン選手は今シーズンの国際大会でもワリエワ選手に次いで2位のスピンの評価を得ている選手ですので、これくらいは普通に出してきます。レビト選手、ベル選手までが25点台。上位3人がPCSやジャンプだけでなくこういうところでも抜けています。

ステップ系要素もカレンチェン選手がトップ。レビト選手も15点台に乗せ、ベル選手が3番手。ステップも上位3人がやはり強い。

こうやって見てみても、レビト選手がジュニアで年齢制限に引っ掛かるなら、3番手はアリサリュウ選手を選ぶしかない、というのが歴然としているかと思います。

 

オリンピック代表と世界選手権代表は、マライアベル選手、カレンチェン選手、アリサリュウ選手の3人に決まりました。団体戦はどうするでしょう? アリサリュウ選手が3枠目として団体戦には出さない、となるとベテラン二人が初めてオリンピックのメダルを得る可能性が高くなります。団体戦でもメダルはメダル。でも個人戦では団体出てないで集中した方がいい結果が出る可能性が高い。何とも難しいです。

世界ジュニアの代表はまだ発表になっていないようですが、レビト選手とトルグレン選手の二人までは確定でしょう。レビト選手は打倒ロシアの世界連合の一番手の選手。大技がないのがつらいところですが期待したいところ。トルグレン選手は日本代表の強力なライバルになるかと思われます。

 

それにしても、最終的に14人になってしまうとは・・・。滑り切った各選手、コロナは大丈夫なんでしょうか? 四大陸選手権は中一週でもう来週にあります。氷上濃厚接触者がエントリーしているわけなんですが、四大陸クラスターにならないことを祈ります