四大陸選手権 5年ぶりの戴冠

アメリカ、アジア、オセアニア、アフリカ。今回は南米とアフリカからの参加はありませんでしたが、四つの大陸の選手たちが集う四大陸選手権ヨーロッパ選手権の翌週に行われました。元々中国の天津で開催の予定でしたが、やっぱりやらない、と言うのでヨーロッパ選手権の会場であったエストニアでの開催という大変イレギュラーな形となりました。中国なに勝手なこと言ってるのって、グランプリファイナルやっぱりやらない、っていった国の人間が言う権利はないですねすみません。エストニアありがとうございました。

女子が先に終わっていますので、まず女子の振り返りをします。

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mai MIHARA JPN 218.03 72.62 145.41
2 Haein LEE KOR 213.52 69.97 143.55
3 Yelim KIM KOR 209.91 68.93 140.98
4 Audrey SHIN USA 203.86 67.20 136.66
5 Rino MATSUIKE JPN 202.21 60.16 142.05
6 Young YOU KOR 198.56 67.86 130.70
7 Yuhana YOKOI JPN 185.34 53.93 131.41
8 Gabriella IZZO USA 180.06 63.19 116.87
9 Starr ANDREWS USA 173.01 66.60 106.41
10 Gabrielle DALEMAN CAN 172.98 59.01 113.97
11 Alison SCHUMACHER CAN 168.42 57.36 111.06
12 Kailani CRAINE AUS 164.02 57.46 106.56

三原舞依選手5年ぶり2回目の優勝。チャンピオンシップのタイトルを再び獲得しました。ショートフリー共に1位。文句のつけようのない優勝です。

2位には韓国のイ・ヘイン選手が入りました。韓国選手権では2位と1.31ポイント差の3位に敗れオリンピックの代表を逃した選手です。1位2位はオリンピック代表にわずかに届かなった選手が入りました。

3位はキムイェリム選手。韓国選手権2位でオリンピックの代表になっています。ハードな国内選手権から2週間、本番は来月のオリンピック、というこのタイミングの試合でよくここまでのスコア出してきたな、という印象でした。フリーはトゥーランドットトゥーランドット姫に求められる冷たさのようなものは感じられたのですが、最後にそれが溶けていくあたりも欲しかったように感じました。

4位にアメリカのオードリーシン選手が入ってきました。今シーズンのベストはクランベリーカップの174.73 公認パーソナルベスト172.46 2週間前の全米選手権も180.58の6位だった選手が表彰台にあと一歩の4位 200点に乗せてきました。

松生理乃選手は5位。月光二人で4位5位と続きました。ちょっと意外でしたが初の200点突破。順調なら2シーズン前のジュニア時代に200点は出していてもおかしくなかった選手なのですが、ケガにコロナに翻弄されここまでかかりました。ショート普通に滑れば表彰台どころか優勝争い可能な立ち位置だったと思うのですが、そういう観点で見るとむしろ残念だったようにも感じます。三原選手がその称号は持って行ってしまっているのですが、個人的には、松生選手が妖精でもいいんだよな、と思ったりもしています。

ユヨン選手が6位。宮原知子選手欠場で、ユヨン選手と三原舞依選手の一騎打ちかな、とも思ったのですがスコアは伸びず6位。まあ、実績のある選手で本命はオリンピックで、国内選手権から2週間というこの時期ですので、一度調子は落ちていておかしくないですし、その調整でいいのではないかと思います。むしろ、韓国は190点台200点台の層が厚いので、四大陸はオリンピックメンバー外してもよかったのではないかと思うのですが本人の意思としてはどうだったのでしょうか。この6位で世界ランキングが3位まで上がりました。オリンピックのショートで最終グループ確定? オリンピックの滑走順ルールは確認していませんが、それが狙いでこの試合に出てきたなら良いのですが、協会の都合とかで出てきたのだとしたらもったいない試合だったな、という感じがします。

横井ゆは菜選手は7位でした。ショートは53.93と散々。四大陸なので普通にフリーを滑っていますが、全日本ではショート落ちのスコアです。フリーはしっかり滑りました。最近インタビュー見てると心配になるのですが、なんだかんだでシーズン進むにしたがってスコアは伸びてきていました。大学3年生。来シーズンで辞めますとか言い出さないか心配です。

日米韓で上位9名を占めました。日本とアメリカはオリンピック代表選手を出していないのですが、それでもやはり強いです。

 

○総合上位6選手のショートプログラムの構成

  Mai MIHARA Haein LEE Yelim KIM Audrey SHIN Rino MATSUIKE Young YOU
1 2A 3Lz+3T 3Lz!+3T 3T+3T 3F< 2A<<
2 3Lz+3T 3F 2A 2A 2A 3Lz+3T
3 FSSp4 FCSp4 FCSp3 StSq4 FCSp3 FCSp4
4 3F SSp4 3F FCSp4 3Lz+3T LSp4
5 CCoSp4 2A StSq2 3Lo LSp4 3F
6 StSq4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 StSq2 StSq3
7 LSp4 StSq3 SSp4 LSp4 CCoSp4 CCoSp4
Baae 32.33 31.53 30.63 30.39 30.25 29.73
GOE 6.94 6.36 5.71 6.01 0.57 5.47
PCS 33.35 32.08 32.59 30.80 30.34 32.66
Total 72.62 69.97 68.93 67.20 60.16 67.86

ただ一人70点台の三原舞依選手が基礎点もGOEもトップでした。全要素全ジャッジプラス評価でスピンステップオールレベル4です。イ・ヘイン選手はステップレベル3なことで70点に届かず。キムイェリム選手もステップレベル2とスピンレベル3があったことで70点に乗せられませんでした。

オードリーシン選手はジャンプ構成が弱めです。松生選手は冒頭のジャンプで転倒、スピンステップのレベルも取れておらずコンビネーションもGOEマイナス。ユヨン選手はアクセルで転倒して点が入らず、という形でショートでは点が伸ばせませんでした。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Mai MIHARA Haein LEE Yelim KIM Audrey SHIN Rino MATSUIKE Young YOU
1 3Lz+3T 3Lz+3T 3Lz+3T 3Lz 3Lz 3A<<
2 2A 3Lo 2A+3T 3T+3T 3F! 3Lz+3T
3 3F 2A+3T 3Lo 3S 2A 3Lo
4 3S 3S 3F 2A 2A 2A
5 CCoSp4 FCCoSp4 FCSp4 FCSp4 FCCoSp4 StSq3
6 2A+3T 3Lz+2T+2Lo 3Lz ChSq1 StSq4 3Lz+1Eu+3S
7 3Lz+2T+2Lo 3F 3S+2T+2Lo 3Lz+2T 3Lz+3T+2T LSp4
8 3Lo StSq4 CCoSp4 3F+2T+2Lo 3S+3T 1A+3T<
9 FSSp4 2A ChSq1 3Lo 3Lo+2T 3F
10 StSq4 ChSq1 2A CCoSp4 ChSq1 FCCoSp4
11 ChSq1 FCSp4 StSq3 StSq4 CCoSp4 ChSq1
12 FCCoSp2 CCoSp4 SSp4 LSp4 LSp4 CCoSp3
Baae 62.33 63.15 61.45 60.64 63.11 59.61
GOE 14.07 13.27 12.61 11.68 13.46 8.19
PCS 69.01 67.13 66.92 64.34 65.48 64.90
Total 145.41 143.55 140.98 136.66 142.05 130.70

フリーの構成ではイ・ヘイン選手が基礎点はトップでした。松生理乃選手がコンビネーションをすべて1.1倍に投入したこともあり2番目。三原舞依選手が最後のスピンでレベルを落としたことで3番目でした。

加点は三原舞依選手がトップで松生理乃選手が2番目です。両選手とも非常にいい出来でした。それ以外でもイ・ヘイン選手、キムイェリム選手、オードリーシン選手は二桁加点、載ってませんが横井ゆは菜選手も二桁加点と、6人もの選手がフリーで加点が二桁ありました。そのあたりが全体的に出来の良かった印象を与えています。加点二桁が6人というのは今シーズンの国際試合の中で最多です。

一方でPCSは全体的に伸びていません。70点超えは無し。平均8.5超えの68点以上の三原舞依選手のみ。セカンドマークがあまり伸びなかったなという試合でした

構成の特色としては三原舞依選手のステップコレオが続く、というのはかなりインパクトあります。2要素続けてGOE+5を付けたジャッジもいましたし、全員が両要素に+3以上を付けています。松生選手の冒頭4つが単独ジャンプというのも月光のプログラムに非常に合っていた印象でした。静かに始まる月光の曲。松生選手レベルだと調子のよい時は前半にある単独ジャンプというのは余裕をもって飛べるのかほとんど振り付けの一部と感じられるもので、コンビネーションジャンプの時のようなある種の切迫感がない。その流れで入っていく月光は素晴らしかったです。

 

○女子シングル 上位12選手の要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Mai MIHARA JPN 218.03 102.36 65.66 11.96 22.62 15.43
2 Haein LEE KOR 213.52 99.21 65.08 10.88 24.33 14.02
3 Yelim KIM KOR 209.91 99.51 65.18 10.67 22.66 11.89
4 Audrey SHIN USA 203.86 95.14 61.43 9.04 23.56 14.69
5 Rino MATSUIKE JPN 202.21 95.82 65.16 4.76 24.19 13.28
6 Young YOU KOR 198.56 97.56 61.14 5.59 23.19 13.08
7 Yuhana YOKOI JPN 185.34 90.55 56.48 5.57 21.76 11.98
8 Gabriella IZZO USA 180.06 89.54 54.41 0.61 24.25 12.25
9 Starr ANDREWS USA 173.01 87.80 52.46 -0.80 22.80 12.75
10 Gabrielle DALEMAN CAN 172.98 87.91 58.50 -9.02 23.75 13.84
11 Alison SCHUMACHER CAN 168.42 82.91 50.31 2.89 20.92 11.39
12 Kailani CRAINE AUS 164.02 81.68 55.70 -3.31 21.06 8.89

ショートフリーを足し合わせての要素別スコアを見てみます

PCSは三原舞依選手がトップ。ただ一人100点超えです。90点以上は上位7位まで。ここまでが上位争いをする力が今回あった選手、ということになるのだろうと思います。

ジャンプの基礎点も三原舞依選手がトップ。三原選手含め65点台が4人います。トリプルアクセル持ちのユヨン選手はショートフリー共に決まらず基礎点から削られてスコアが伸びませんでした。

ジャンプの加点も三原舞依選手がトップ。韓国勢二人が続きます。上位3選手はジャンプの加点だけで10点以上です。4位のオードリーシン選手も9.04を稼ぎました。ジャンプの出来が良くないと上位まで来られないという構図です。

スピンは韓国のイ・ヘイン選手がトップ。24点台は他に二人、総合8位のイッゾ選手と松生選手でした。三原舞依選手はフリー最後のスピンをしっかりレベル4でミスなくできていたらスピンもトップで本当に要素別で見ても完全優勝な感じになるところでしたが、ちょっと、画竜点睛を欠くみたいな感じがあったように感じます。大学4年生でオリンピックシーズンを迎えていた三原選手には、こういう宿題を少し残すことで、まだ続けてくださいね、というスケートの神様からのメッセージという部分もあったのかもしれません。

ステップ系要素も三原舞依選手がただ一人15点台でトップでした。15.43は今シーズン第7位に相当します。オードリーシン選手が14.69で2番手。ショートフリー共にレベル4を取ったのは、この2人だけでした。

 

上位選手の中では韓国勢から二人は次はオリンピックです。韓国は団体戦がないので女子シングルまでは3週間あります。オリンピックの無いイ・ヘイン選手は世界ジュニアに回ります。これは強敵。

日本勢はオリンピックの代表は来ませんでした。世界選手権の代表はオリンピックと同じ。ということで今回の3選手は今シーズンはこれで終わりでしょうか。国内で県大会的なものくらいは出るかもしれませんが。三原選手。オリンピックは直接対決で負けたので仕方ないと思いますが、世界選手権は従来通りオリンピックと一人替える形で出してあげたかったように思います。枠取り係としてこれくらいあてになる選手もなかなかいない。

来シーズンには繋がる試合になったでしょうか? 四大陸優勝は繋がるも何もそれ自体が本来大きな価値がありますし、三原選手はこれがなくても普通に来シーズンもグランプリ2戦が取れ世界選手権を目指す、という位置にいる選手でした。むしろ後の二人。松生選手はパーソナルベストの200点。これでシーズンベスト順位は31位 世界ランキングは35位まで浮上。横井ゆは菜選手はシーズンベスト順位48位で世界ランキングは33位。それぞれ本当はもう少し欲しかった感じがします。可能であれば、B級大会にもう1つ2つ出てポイントを稼いでいきたいですが、ちょっと難しいでしょうか。

松生選手の月光も、横井選手のクイーンメドレー(ほんとはマラゲーニャも結構好きなのだけど如何せんミスが多すぎる)も、国際舞台で十分に通用する演技。二人の姿を来シーズンも国際舞台で見ていたいです。