四大陸選手権 パーソナルベスト3つでダブル表彰台

前回の女子に引き続いて男子シングルの四大陸選手権振り返りです。男子は、なんだか昨年の世界選手権でも見たような、ひとり何とかすれば表彰台独占なんだけど、その一人に頂点取られました、という試合になりました。2位3位4位も十分すごいのですけどね。

 

○男子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Junhwan CHA KOR 273.22 98.96 174.26
2 Kazuki TOMONO JPN 268.99 97.10 171.89
3 Kao MIURA JPN 251.07 88.37 162.70
4 Sena MIYAKE JPN 240.02 79.67 160.35
5 Mikhail SHAIDOROV KAZ 234.67 75.96 158.71
6 Brendan KERRY AUS 227.57 81.12 146.45
7 Sihyeong LEE KOR 223.18 79.13 144.05
8 Tomoki HIWATASHI USA 222.37 77.51 144.86
9 Joseph PHAN CAN 220.85 69.70 151.15
10 Jimmy MA USA 215.12 69.98 145.14
11 Corey CIRCELLI CAN 213.02 69.57 143.45
12 Camden PULKINEN USA 204.39 57.58 146.81

チャジュンファン選手優勝。韓国勢男子の四大陸選手権優勝は史上初でした。韓国選手権フリーから四大陸選手権ショートまで12日、四大陸選手権フリーからオリンピックのショートまで16日。よくこのスケジュールで出てきたなという感じがしますが、チャンピオンシップのタイトルを獲る大きなチャンスであったのは確かで、そのチャンスは掴みました。自国で言ったら怒られそうですが、他国なので無責任に言ってしまうと、チャンピオンシップの優勝ということで、徴兵が回避できる権利を得られたなら目出度いことだと思います。実際に所は確認できないのでわかりませんけれど。

友野一希選手は惜しくも2位。技術点はショートもフリーもトップだったのですがPCS

差で届きませんでした。チャンピオンシップの初メダル。ここまで来たんですねえ。そう思う一方、23歳かあ、とも思ったりします。268.99はオリンピックに出られない選手の中のシーズン最高点となりました。

三浦佳生選手が3位。ケガしたらしいですが強行出場で3位。エキシビジョン出ていたようですが大丈夫なんでしょうか? 本番の世界ジュニアに向けて、いや、世界ジュニアと四大陸だと四大陸のが重いのか? 気分的にはジュニア集大成で本番感のある世界ジュニアに向けて、ケガを引きづらなければよいのですが・・。 250点到達。世界ジュニアではジュニアルールで250点到達、さらにその上を期待しています。

三宅星南選手が4位に入りました。突然の開花。全日本ノービス勝った後、ジュニア時代に結局ほとんど実績を残せなかったという印象なのですが、二十歳になるので強制的にシニアに上がらざるを得ないというこのシーズンにいきなり開花してチャンピオンシップの4位にまで来ました。世界ランキングは50位、シーズンベストランク31位なので、まだいろいろと足りてませんが、チャンピオンシップ4位はグランプリ枠もらえそうな気がします。

5位にはカザフスタンのシャイドロフ選手が入ってきました。トゥルシンバエワ選手も引退してしまったし、デモ隊は銃撃され国内ぐちゃぐちゃだし、となかなか明るい光が見えなかったカザフスタンに久しぶりに表れたデニステン選手以来の有望株。2004年生まれの17歳。オリンピックの出場権はないので、この後は世界ジュニア、世界選手権とはしごするのかと思います。まだまだジャンプマンな感じでほかの要素が追い付いてきてないようですけど今後に期待です。

オーストラリアのブレンダンケリー選手が6位に入ってきました。ネーベルホルン杯で自分で代表枠取ってきて、北京オリンピックの代表もこの6位で確保。南半球ナンバーワン、という称号があるかわかりませんが、オリンピックでも頑張っていただいて、南半球にもフィギュアスケートを広めていっていただきたいです。

 

○総合上位6選手のショートプログラム

  Junhwan CHA Kazuki TOMONO Kao MIURA Sena MIYAKE Mikhail SHAIDOROV Brendan KERRY
1 4S 4T+3T 4S+2T 4S 4T 4T
2 3Lz+3Lo 4S 3A 3A FSSp3 3Lz+3T
3 FCSp4 CSSp4 FCSp3 FCSp3 3A CCSp4
4 3A 3A 4T CSSp4 CCSp4 3A
5 CSSp4 FCSp4 CSSp4 3Lz!+3T StSq2 CCoSp4
6 StSq3 StSq3 StSq2 StSq3 3Lz+3T StSq3
7 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 FSSp3
Base 42.30 45.20 41.35 41.41 40.51 41.00
GOE 12.07 9.93 8.78 2.76 3.49 2.45
PCS 44.59 41.97 38.24 35.50 31.96 37.67
Total 98.96 97.10 88.37 79.67 75.96 81.12

4回転2本をもくろみ通りしっかり決めたのは友野一希選手だけだったようです。三浦佳生選手は4回転は2本決めましたがセカンドジャンプが2回転に。そこにスピンステップのレベルの取りこぼしがあると、3回転-3回転をしっかり決めた三宅星名選手のような選手に基礎点で追いつかれますし、セカンドループ持ちのチャジュンファン選手には基礎点が上を行かれます。ショートで4回転を2本飛ぶならセカンドジャンプで3回転を飛ばないとリスクに合ったリターンが得られません。

加点最高はチャジュンファン選手。全要素全ジャッジでマイナス評価無しでした。友野一希選手も10点近い加点。三浦佳生選手も大きな加点を得ています。

PCSはチャジュンファン選手がトップ。平均9点近いところまで出ました。友野選手は8点台前半。平均8点の40点を超えたのはこの二人だけでした。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Junhwan CHA Kazuki TOMONO Kao MIURA Sena MIYAKE Mikhail SHAIDOROV Brendan KERRY
1 4T< 4T+2T 3A 4S+2T 4T+3T 4T
2 4S 4S 4S+2T 4S 4T 3S
3 3Lz+3Lo 4T 4S 3A+1Eu+3S StSq2 3A+2T
4 FCSp4 3Lo FCSp1 FCSp3 3Lz 3F!
5 StSq3 StSq2 3A+2T 3A 3Lo CCSp3
6 3A<+2T FSSp4 ChSq1 ChSq1 CCoSp4 StSq3
7 3A 3A+1Eu+3S 4T 3Lz!+2T 3A+1Eu+3S 3Lz+2T
8 3Lz+1Eu+3S 3A 3Lo 3F 3A 2A
9 3F 3F+2T CSSp3 3Lo FSSp4 3Lz+2Lo
10 ChSq1 FCCoSp3 StSq2 StSq2 ChSq1 CCoSp4
11 CSSp4 CCoSp4 2A+1Eu+2S CSSp3 3F+2A+SEQ ChSq1
12 CCoSp4 ChSq1 CCoSp3 CCoSp4 FCCoSp4 FSSp4
Base 78.20 80.14 72.55 75.14 80.05 63.91
GOE 8.28 7.33 9.23 6.45 7.24 6.12
PCS 88.78 85.42 80.92 78.76 72.42 76.42
Total 174.26 171.89 162.70 160.35 158.71 146.45

フリーの構成も友野一希選手が基礎点トップです。友野選手はショートもフリーも技術点はトップでした。基礎点2番目にカザフスタンのシャイドロフ選手がいます。4回転3本の友野選手と2本のシャイドロフ選手でほとんど基礎点が変わらないのは、友野選手がセカンド3回転を付けられなかったからというのが大きな要因になります。セカンド3回転がついていれば少なくともフリーのスコアはチャジュンファンを超えていました。

チャジュンファン選手は回転不足が2つあり基礎点は3番目でした。高難度ジャンプの数で勝負するのではなく、それ以外の要素で特徴を生かしながら点を取っていき合計点で勝つ、というブライアンスタイルがよく出た勝ち方だったように感じました。

三浦佳生選手は基礎点72.55と低めです。ケガの影響があったと思うのでスピンステップのレベルをどうこう言う試合でもないのでしょう。ジャンプの構成でルッツもフリップもない、というのは特徴的。ケガの影響でトゥジャンプがつらいという側面もあったかもしれないですが、普段からあまりこの二つのジャンプは跳びません。国内のジュニア試合ではショートでフリップ強制なので跳びますが、どうも成功率が低い。ショートで4回転が入れられないのでルッツを当然飛ぶわけですがこれも成功率が低い。世界ジュニアの心配点です。

加点は二桁の選手はいませんでした。四回転を複数抱える男子は一つのミスで大きくGOEを削られるので加点合計は伸びにくい傾向はあります。そんな中では三浦佳生選手がトップではありました。

PCSはチャジュンファン選手がフリーもトップで友野選手が2番手。三浦佳生選手も平均8点を超えてきました。ショートよりPCS面で評価が上がったということになります。三宅星南選手は75点台で平均7.5まで持ってきました。

 

○総合上位12選手の要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Junhwan CHA KOR 273.22 133.37 91.50 7.79 26.84 14.72
2 Kazuki TOMONO JPN 268.99 127.39 97.24 8.52 23.92 12.92
3 Kao MIURA JPN 251.07 119.16 88.90 13.54 18.36 11.11
4 Sena MIYAKE JPN 240.02 114.26 89.45 3.02 21.55 11.74
5 Mikhail SHAIDOROV KAZ 234.67 104.38 93.06 8.10 20.41 9.72
6 Brendan KERRY AUS 227.57 114.09 76.71 2.11 22.16 12.50
7 Sihyeong LEE KOR 223.18 109.38 84.66 -2.98 23.71 10.41
8 Tomoki HIWATASHI USA 222.37 115.60 73.36 -4.23 23.69 14.95
9 Joseph PHAN CAN 220.85 113.24 67.77 6.07 23.49 10.28
10 Jimmy MA USA 215.12 108.88 85.36 -13.09 23.07 11.90
11 Corey CIRCELLI CAN 213.02 111.19 67.85 0.98 21.54 11.46
12 Camden PULKINEN USA 204.39 107.65 76.75 -7.39 19.87 10.51

ショートフリーの合計を要素別に並べるとこうなります。

PCSは総合順位上から3人がそのまま上から3人になっています。

ジャンプの基礎点は友野選手がトップ。ジャンプのイメージの強い三浦佳生選手ですが基礎点は今回は5番目でした。三宅星南選手が三浦選手をジャンプの基礎点で上回っています。三浦選手がよかったのはジャンプの出来栄えの方。ジャンプの加点が全体トップでした。友野選手が2番目。ジャンプの合計点では友野選手がトップで三浦選手が2位、3番目のシャイドロフ選手までがジャンプスコアが100点超えです。

スピンはチャジュンファン選手がとびぬけたトップ。26.84は今シーズンの男子の国際大会ではトップスコアになります。2番目に友野一希選手。レベルが取れないことの多い友野選手ですが、今回は6つのスピンのうち5つでレベル4でした。一方、三浦佳生選手はフリーまで滑った16選手のうち14番目。ケガの影響もあったとは思うのですが、スコアが伸びませんでした。

ステップ系要素はトータルスコアは伸ばせなかったアメリカの樋渡選手が14.95でトップでした。ジャンプがうまくいきませんでしたが、その力は見せてくれました。友野選手は12点台で3番目。評価は高いのですがレベルがショートで3 フリーで2 と基礎点が稼げていません。ショートフリーでレベル4なら基礎点だけで1.9上がりますし、GOEも+3以上出てますので、レベルが取れていないことで2.5点程度損していることになります。

 

 

男子はパーソナルベスト連発ながら、実はノーミスは出なかった形になりました。順位としてはそれぞれがそれぞれに得るものがあってこれでよかったのかもしれません。

チャジュンファン選手はこの後オリンピックへ。ランキングが上がったことでオリンピックのショートは後半の方のグループに入ってくると思われます。

友野選手はもちろん優勝したかったのでしょうけれどチャンピオンシップの2位はすごいことです。フリーノーミス180点が見えてきて、トータル280点くらいまで見えてきました。来シーズンにもつながる。ただ、日本のレベルが高すぎる・・・。280点出しても世界選手権にも出られない可能性がある。オリンピックに出る3人、誰か世界選手権休みますかね。そうなると4年前と同じパターンもあるかもしれません。

三浦選手は次は世界ジュニアへ。マリニン選手、佐藤駿選手あたりとの戦い。なんか最近の日本男子は、2位3位4位というのが続いたのですが、世界ジュニアもその可能性あったりします? 何とか勝っていただければと。

実は一番驚いたのは三宅星南選手だったりしました。全日本はフロックではなかったことを四大陸で証明してくれました。ジュニア時代低迷していたのにここまで上がって来るとは。来シーズンはグランプリシリーズで姿が見られるかもしれません。

 

さて、四大陸が終わり、オリンピック前の大きな試合はこれで終了しました。ぎりぎりまで代表選出を引っ張っていた国々も代表を確定。あとはオリンピックを待つだけ、となりました。