グランプリファイナル22 女子シングル展望

ジュニアが終わりましたので続いてシニア。今回はシニアの女子シングルになります。

 

○今季の成績

Event Name Nation Total SP FS
Skate America Kaori SAKAMOTO JPN 217.61 71.72 145.89
MK John Wilson Trophy Mai MIHARA JPN 217.43 72.23 145.20
Grand Prix de France Loena HENDRICKX BEL 216.34 72.75 143.59
MK John Wilson Trophy Isabeau LEVITO USA 215.74 72.06 143.68
Finlandia Trophy Yelim KIM KOR 213.97 71.88 142.09
Lombardia Trophy Rinka WATANABE JPN 213.14 66.83 146.31
Nebelhorn Trophy Loena HENDRICKX BEL 208.05 76.19 131.86
Philadelphia International Isabeau LEVITO USA 207.67 70.72 136.95
Skate America Isabeau LEVITO USA 206.66 71.30 135.36
Lombardia Trophy Kaori SAKAMOTO JPN 205.33 72.93 132.40
NHK Trophy Yelim KIM KOR 204.49 72.22 132.27
Grand Prix Espoo Mai MIHARA JPN 204.14 73.58 130.56
Grand Prix Espoo Loena HENDRICKX BEL 203.91 74.88 129.03
NHK Trophy Kaori SAKAMOTO JPN 201.87 68.07 133.80
Ondrej Nepela Memorial Isabeau LEVITO USA 198.99 65.37 133.62
Skate Canada Rinka WATANABE JPN 197.59 63.27 134.32
Grand Prix de France Yelim KIM KOR 194.76 68.93 125.83
US International Yelim KIM KOR 190.64 58.32 132.32
NHK Trophy Rinka WATANABE JPN 188.07 58.36 129.71

グランプリシリーズに限らず今季出場した国際大会を全て並べています。ただしジャパンオープンは含めません。

それぞれのシーズンベストは217.61から213.14までの4.47の中に含まれます。6人いるというのに非常に僅差です。ただし下位の二人、キムイェリム選手と渡辺倫果選手はチャレンジャーシリーズでのスコアでありグランプリシリーズではここまでのスコアは出せていません。

セカンドベストが一番高いのはヘンドリックス選手。ネーベルホルン杯の208.05です。210点台を2回出した選手はまだ今シーズンいません。レビト選手は200点台後半も2回出しています。

ジュニアの方はほとんどの選手が2戦目の方がスコアがよかったのですが、シニアはグランプリ2戦目がシーズンベストになっているのはレビト選手だけです。年齢的にはジュニアに混ざっているのが自然なレビト選手だけというのは印象的です。大事な試合に合わせるシニアの調整力をファイナルに持ってきた選手が勝つ、ということになるでしょうか。そうなると、この後にシーズン後半の代表選考会になるナショナル選手権を控えている国の方が調整の難しさがあり、選考会無縁なヘンドリックス選手が有利な部分があるかもしれません。

 

ショートプログラムの構成

  Kaori SAKAMOTO Mai MIHARA Loena HENDRICKX Isabeau LEVITO Yelim KIM Rinka WATANABE
1 2A 2A 3F 3F 3Lz+3T 3A<<
2 3Lz 3F 2A 2A 2A 3Lz+3T
3 FCSp3 FSSp4 CCoSp4 FSSp2 FCSp4 CSp4
4 CCoSp4 3Lz+3Tq 3Lz+3T 3Lz+3Lo 3F 3Lo
5 3F+3T CCoSp4 StSq4 CCoSp4 StSq3 CCoSp4
6 StSq3 StSq4 FCSp4 StSq4 CCoSp4 StSq4
7 LSp4 LSp4 LSp4 LSp3 SSp4 FSSp4
Base 31.95 32.81 33.01 32.58 31.73 31.79
GOE 6.60 6.67 8.27 5.82 7.38 4.12
PCS 34.38 34.10 34.91 32.32 33.11 30.92
Total 72.93 73.58 76.19 70.72 72.22 66.83

グランプリシリーズに限らず今シーズンの技術点が一番高かったショートプログラムの構成です。

シニアはショートからトリプルアクセルあり。トリプルアクセルを構成に入れているのはこの中では渡辺倫果選手1人だけです。ただし、今シーズンショートプログラムでのトリプルアクセル成功はありません。シーズンベストの試合の時にはダウングレードでした。

基礎点トップはヘンドリックス選手です。ショートのシーズンベストも同様にヘンドリックス選手。今シーズン70点台後半まで出しているのはヘンドリックス選手だけです。

三原選手もヘンドリックス選手同様に3Lz+3Tのコンビネーションを1.1倍に入れているのですがスピンの構成の差で0.20劣ります。ノーミスならレビト選手はトリプルアクセル無し組では一番高い基礎点になります。セカンドループを1.1倍に入れる。ただしスピンレベル4を揃えきれないところがあります。また、ファイナルでセカンドループを入れてくるかもわかりません。

ノーミス勝負したら基礎点は渡辺倫果選手が当然一番高くなります。しかしながらショートでは今シーズンそれが出来ずシーズンベストはただ一人60点台です。どこまでかき回せるか? また、世界王者の坂本選手も今シーズンベストの演技は出来ていません。それがここで出ると強いですが、どうでしょうか。

 

○フリーの構成

  Kaori SAKAMOTO Mai MIHARA Loena HENDRICKX Isabeau LEVITO Yelim KIM Rinka WATANABE
1 2A 2A 3Lz!+3T 3Lz+3Lo 3Lz+3T 3A
2 3Lz 3Lz+3T 2A 3T 2A 3Lo
3 3S 3S 3F 2A 3Lo 3Lo+3T
4 CCoSp4 3F!q 2A CCoSp4 3F 3F
5 3F+2T FSSp4 CCoSp4 3F! CCoSp4 FCSp4
6 StSq3 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 3F+2A+SEQ ChSq1
7 3F+3T 2A+3Tq 3Lz!+2T 2A 3Lz+2T+2Lo 3Lz+2A+SEQ
8 FSSp4 3Lz+2T+2Lo 3F+2T+2Lo 3Lz+1Eu+3S 3S 2A+1Eu+3S
9 2A+3T< 3Lo 3S 3F!+2T FCSp4 CCoSp4
10 ChSq1 StSq4 FCCoSp4 FCSp4 StSq2 3Lz<<
11 3Lo ChSq1 StSq4 StSq4 ChSq1 StSq4
12 FCCoSp4 FCCoSp4 LSp3 FCCoSp4 FCCoSp4 FSSp4
Base 59.57 63.33 60.08 63.36 63.38 65.24
GOE 13.08 11.09 11.79 10.82 11.08 12.32
PCS 73.24 70.78 71.72 69.50 67.63 68.75
Total 145.89 145.20 143.59 143.68 142.09 146.31

フリーの構成。技術点が一番高い時の構成で基礎点が一番低いのは坂本花織選手だったりします。回転不足あり、ステップレベル3あり。それでもスコアは145点台まで出ています。

フリーのシーズンベストトップはショートのシーズンベスト最下位の渡辺倫果選手です。トリプルアクセルが決まると強い。これでも最後のルッツジャンプはダウングレードのミスです。PCSも上位3人と比べるとまだ少し落ちる。これが本当のノーミスで滑った時にどこまで行くのかは楽しみではあります。

トリプルアクセルを除いた時には63.3台で3人の基礎点が続きます。このあたりがトリプルアクセル無しの限界ではあるのですが、そこまで出せている3人はほぼノーミスの試合があったということでもあります。レビト選手はセカンドループがあるのですが、次のジャンプで単独3Tというよくわからない構成なので、結局セカンドループが何も生きておらず三原選手やキムイェリム選手と変わらない基礎点になります。

基礎点が低いのは世界選手権のメダリスト2人という不思議構図。ヘンドリックス選手は3Lo無しの6トリプル構成なのでどうしても基礎点は低くなります。

出来栄え勝負の坂本選手にヘンドリックス選手、安定して全体で稼ぎたい三原選手、レビト選手、キムイェリム選手、基礎点高く取っていきたい渡辺倫果選手という構図です。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
Kaori SAKAMOTO 217.61 108.06 59.73 11.44 24.05 14.33
Mai MIHARA 217.43 104.93 65.13 6.30 25.61 15.46
Loena HENDRICKX 216.34 106.59 62.48 8.60 24.74 13.93
Isabeau LEVITO 215.74 103.49 65.97 7.25 24.94 14.09
Yelim KIM 213.97 100.67 66.81 10.91 24.08 11.50
Rinka WATANABE 213.14 99.67 67.43 8.05 23.65 14.34
Loena HENDRICKX 208.05 104.47 57.20 5.81 25.59 14.98
Isabeau LEVITO 207.67 98.94 64.23 7.49 21.90 15.11
Isabeau LEVITO 206.66 101.63 62.07 4.42 24.30 14.24
Kaori SAKAMOTO 205.33 104.47 60.78 5.63 23.02 12.43
Yelim KIM 204.49 99.48 65.06 4.88 23.49 12.58
Mai MIHARA 204.14 100.74 58.27 5.57 24.67 14.89
Loena HENDRICKX 203.91 104.12 58.82 1.62 25.51 14.84
Kaori SAKAMOTO 201.87 103.02 59.51 1.31 24.06 13.97
Isabeau LEVITO 198.99 94.09 66.05 1.72 22.87 14.26
Rinka WATANABE 197.59 95.70 67.87 -1.34 22.29 13.07
Yelim KIM 194.76 97.36 62.61 2.22 22.53 12.04
Yelim KIM 190.64 93.47 60.14 0.98 22.77 14.28
Rinka WATANABE 188.07 91.38 62.43 -0.03 22.44 12.85

ショートとフリーを合わせた要素別のスコアです。大会名入れると横幅がひどいことになったので残念ながら外していますが、見づらくて申し訳ないです。

PCSは坂本選手が108.06まで出した試合がありぬけていますが、悪い試合ではヘンドリックス選手や三原舞依選手で上へ行けます。渡辺倫果選手は100点にまだ乗らずにこのメンバーの中では分が悪いです。

ジャンプの基礎点はやはり渡辺倫果選手が強い。ただそれほど差はなくキムイェリム選手や三原舞依選手も続きます。坂本選手とヘンドリックス選手はややここは落ちます。

ジャンプの加点は坂本選手とキムイェリム選手の2人が二桁出しています。マイナスが付くのは渡辺倫果選手のみ。やはりまだ博打感のある構成というところでしょうか。

スピンは25.61がある三原舞依選手がトップでヘンドリックス選手は25.5台を2度出してます。渡辺選手以外は24点以上出していますでそれほど差はないです。

ステップ系要素も15.46がある三原選手がトップです。レビト選手も15点台があります。他の選手も14点台までは出していますのでそれほど差はないですが、キムイェリム選手は11点台12点台も目立ち、ここで少し差がつく可能性もあります。

 

シニアの女子も日本勢が3人。そこにアメリカ、韓国、ベルギーから1人づつが加わってきます。ここもシーズンベストトップは日本勢から出ていますが非常に混戦です。全く誰が勝つかわからない。ショートで一番出遅れる可能性が高いのは渡辺倫果選手になっていますが、フリーで一発逆転する可能性が一番高いのも渡辺倫果選手ということで、出遅れてもチャンスが残る。グランプリシリーズでいきなり躍進した新鋭はファイナルで3位に入る、という伝統を何となく感じていたりしますが、どうなるでしょう。優勝争いもさっぱり読めない。これはこれで面白いグランプリファイナルになりそうです。