北京オリンピックが直前にまで迫ってきました。
今回は、団体戦のプレビューをします。団体戦は誰が出場するか直前までわからないわけですが、とりあえずエントリー選手全員のシーズンベスト、セカンドベスト、シーズンワーストと、国内選手権のスコアを拾ってきて並べてみました。シーズンベストにはISU公認試合だけでなく、いわゆる国際B級大会も含みますが国内選手権は別枠として含めません。また、ジャパンオープンは含めました。2試合しか出ていない選手はセカンドベストとシーズンワーストに同じスコアが入っています。国内選手権はそもそもなかった国や出場していない選手もいて、そういったところは空欄になります。
○男子シングル ショートプログラム
Name | Season best | 2nd best | Season worst | National | |
USA | Nathan Chen | 106.72 | 82.89 | 82.89 | 115.39 |
JPN | Yuzuru HANYU | 111.31 | |||
JPN | Shoma UNO | 102.58 | 89.07 | 89.07 | 101.88 |
USA | Vincent ZHOU | 102.53 | 99.51 | 97.35 | 112.78 |
JPN | Yuma KAGIYAMA | 100.64 | 97.80 | 80.53 | 95.15 |
RUS | Andrei MOZALEV | 99.76 | 84.68 | 68.77 | 90.98 |
RUS | Mark KONDRATIUK | 99.06 | 84.79 | 74.16 | 97.77 |
RUS | Evgeni SEMENENKO | 99.04 | 87.71 | 69.63 | 98.03 |
CHN | Boyang JIN | 97.89 | 85.02 | 85.02 | |
ITA | Daniel GRASSL | 95.67 | 91.75 | 70.88 | 96.66 |
GEO | Morisi KVITELASHVILI | 95.37 | 92.76 | 58.53 | |
USA | Jason BROWN | 94.00 | 92.39 | 89.39 | 100.84 |
CAN | Keegan MESSING | 93.28 | 92.39 | 85.03 | 84.38 |
ITA | Matteo RIZZO | 88.08 | 84.78 | 62.57 | 88.08 |
CZE | Michal BREZINA | 87.48 | 82.31 | 71.60 | |
CAN | Roman SADOVSKY | 84.59 | 76.10 | 72.94 | 77.17 |
UKR | Ivan SHMURATKO | 82.13 | 76.94 | 64.27 | 82.18 |
GER | Paul FENTZ | 76.76 | 73.32 | 57.17 | 71.42 |
シーズンベスト順に基本は並べたのですが、羽生選手だけ今シーズンの国際大会出場がないので、何となくで2番目に置きました。
100点を超えるシーズンベストを持っているのは日米の選手のみです。ワーストは80点台まで落ち込む姿もあるので絶対ではないですが、基本的には日米でワンツーかと思われます。どちらが上に行くかは誰が出るかとその日の出来次第でしょう。
3番手から7番手あたりまでが混戦に見えます。ロシア勢が3番手に並んでいて、いい演技をすればここまでくるのかもしれませんが、シーズンワーストは70点台や60点台。崩れる時の崩れ方がひどい。中国、イタリア、ジョージア、カナダ、までが90点台のシーズンベストを持っています。日本のメダルを考えると、中国やカナダがここでスコアを伸ばさないことを祈る形になります。クビテラシビリ選手、グラスル選手、何ならブレジナ選手あたりまで頑張れ、みたいなことになる。男子シングルは自国の選手よりも、カナダ中国が何位になるのかの方がたぶん重要です。
○アイスダンス リズムダンス
Name | Season best | 2nd best | Season worst | National | |
RUS | Sinitsina / Katsalapov | 87.89 | 86.81 | 86.33 | 93.61 |
RUS | Stepanova / Bukin | 86.45 | 81.47 | 79.89 | 88.76 |
USA | Chock / Bates | 86.02 | 83.72 | 82.55 | 91.94 |
CAN | Gilles / Poirier | 85.65 | 83.35 | 81.35 | 86.98 |
USA | Hubbell / Donohue | 84.79 | 84.06 | 83.58 | 89.39 |
ITA | Guignard / Fabbri | 83.35 | 82.78 | 78.82 | 89.24 |
RUS | Davis / Smolkin | 81.30 | 75.21 | 70.66 | 83.99 |
CAN | Beaudry / Sørensen | 77.38 | 76.64 | 75.33 | 81.04 |
CHN | Shiyue / Xinyu | 75.67 | 73.28 | 73.28 | |
UKR | Nazarova / Nikitin | 75.46 | 75.17 | 66.07 | 76.40 |
GEO | Kazakova / Reviya | 74.98 | 66.95 | 66.95 | |
USA | Hawayek / Baker | 74.60 | 73.72 | 73.72 | 79.39 |
CAN | Lajoie / Lagha | 74.45 | 71.93 | 71.27 | 76.67 |
GER | Müller / Dieck | 73.43 | 69.73 | 63.41 | 68.65 |
CZE | Taschlerová / Taschler | 73.22 | 71.91 | 68.45 | 73.27 |
JPN | Komatsubara / Koleto | 68.13 | 63.56 | 63.56 | 68.16 |
アイスダンスはロシア勢が上にいます。シーズンベスト87.89 シーズンワースト86.33 なんという安定感。シーズンベストで見ればアメリカカナダも近い位置にいますしイタリアあたりまでも勝負に絡める。イタリアは素直にいくと後半に進むのが厳しいのです、チャンスを残すにはここでカナダに勝ちたいし、日本から見てもイタリア勢がカナダ勢の上に出てくれるのが好ましい、という構図です。
中国がシーズンベスト5番手で、9番手のチェコまで近い水準にいます。中国はここで順位が低くなるとジョージアやイタリアに負けてフリー進出できない、という可能性が高まる構図です。
日本勢はただ一組シーズンベストが60点台。ただ、NHK杯では直接対決でウクライナのペアにショートもフリーも勝ったりしていまし、ジョージアやチェコはネーベルホルン杯経由で出場権を得た国ですから、昨年の世界選手権実績で言えば日本ペアの方が上なわけです。下はないので、1つでも2つでも上に行ければ、ポイントが増えるだけです。
○ペア ショートプログラム
Name | Season best | 2nd best | Season worst | National | |
RUS | Mishina / Galliamov | 82.36 | 78.40 | 73.64 | 83.70 |
RUS | Tarasova / Morozov | 81.58 | 80.36 | 75.78 | 78.68 |
CHN | Wenjing / Cong | 80.07 | 79.27 | 78.94 | |
RUS | Boikova / Kozlovskii | 77.17 | 76.26 | 75.43 | 82.84 |
CHN | Cheng / Yang | 76.71 | 66.41 | 66.41 | |
JPN | Miura / Kihara | 73.98 | 72.63 | 72.32 | |
CAN | James / Radford | 71.84 | 68.29 | 56.74 | 63.33 |
USA | Cain-Gribble / LeDuc | 70.75 | 64.98 | 59.58 | 79.39 |
USA | Knierim / Frazier | 70.15 | 66.44 | 66.37 | |
GER | Hase / Seegert | 67.93 | 65.19 | 54.63 | 68.94 |
GEO | Safina / Berulava | 66.95 | 66.46 | 57.64 | |
CAN | Moore-Towers / Marinaro | 66.43 | 61.60 | 58.95 | 73.02 |
ITA | Monica / Guarise | 65.12 | 59.92 | 59.92 | 66.28 |
ITA | Ghilardi / Ambrosini | 64.60 | 62.76 | 60.89 | 60.23 |
CZE | Žuková / Bidař | 60.88 | 54.40 | 46.96 | |
UKR | Holichenko/Darenskyi | 55.15 | 52.63 | 52.63 | 49.58 |
初日の最終競技はペアのショートプログラムです。
これもロシアが強いです。男子で出遅れたとしても、この段階でロシアがトップまでくるのではないかと思います。中国ペアがそれに続きます。中国もここまでで上位に来ていると思います。
なんと日本ペアが国別でみると3番手。カナダアメリカよりシーズンベストが上です。シーズンベストだけではないです。シーズンワーストがカナダアメリカのシーズンベストより上。たまたま一度出したスコアではなく、安定して高いスコアを出せています。
アメリカまでが70点台。ドイツ以下は60点台で上位に絡むのはちょっと苦しそうです。
イタリアがフリーに進むためには、このペアで8番目のシーズンベストよりも高い順位を取ることが求められます。ジョージアも7番目ですが何としても6位に入りたい。
表彰台争い考えると、このペアで日本アメリカカナダがどういう順位で並ぶかは結構注目でカギを握ることになるかもしれません。
○女子シングル ショートプログラム
Name | Season best | 2nd best | Season worst | National | |
RUS | Kamila VALIEVA | 90.45 | 87.42 | 74.93 | 90.38 |
JPN | Wakaba HIGUCHI | 79.73 | 69.41 | 63.87 | 74.66 |
RUS | Anna SHCHERBAKOVA | 77.94 | 74.76 | 69.05 | 81.46 |
RUS | Alexandra TRUSOVA | 77.69 | 75.13 | 74.75 | 74.21 |
JPN | Kaori SAKAMOTO | 76.70 | 76.56 | 71.16 | 79.23 |
USA | Alysa LIU | 74.31 | 73.63 | 67.72 | 71.42 |
JPN | Mana KAWABE | 73.88 | 53.30 | 53.30 | 74.27 |
GEO | Anastasiia GUBANOVA | 69.50 | 67.02 | 65.68 | |
USA | Mariah BELL | 69.37 | 67.07 | 60.81 | 75.55 |
USA | Karen CHEN | 68.74 | 67.50 | 58.01 | 74.55 |
CAN | Madeline SCHIZAS | 67.82 | 62.61 | 59.29 | 72.05 |
UKR | Anastasiia SHABOTOVA | 63.92 | 61.49 | 51.21 | 66.04 |
GER | Nicole SCHOTT | 63.03 | 61.86 | 52.84 | 59.75 |
CHN | Yi ZHU | 60.00 | 52.88 | 71.16 | |
CZE | Eliska BREZINOVA | 59.62 | 55.27 | 52.13 | 58.56 |
ITA | Lara Naki GUTMANN | 57.16 | 54.83 | 48.65 | 63.43 |
女子シングルは当然ロシアが上にいます。トリプルアクセルを回転不足で転倒、なんてなっても勝てない気がします。
日本は普通にやれば2番手に来るはずです。シーズンベストは坂本花織選手より樋口新葉選手が上ですが、全日本チャンピオンの坂本選手が滑りそうに感じます。
3番手にアメリカがいます。アメリカは誰が滑るのか。アリサリュウ選手なら坂本選手を脅かす可能性もあります。
ジョージアのグバノワ選手が4番手にいて、カナダのシザース選手が5番目。シザース選手もカギを握る選手で、ここでウクライナ、ドイツあたりに負けて6番7番になってくるとメダル争いが苦しくなります。アメリカ勢やグバノワ選手の上へ行けるとチャンスが広がる。グバノワ選手頑張れ、というのが日本の立場です。
○シーズンベスト順に並べた前半終了時の結果(順位)
Ladies | Men | Pair | Ice Dance | 順位合計 | |
RUS | 1 | 3 | 1 | 1 | 6 |
USA | 3 | 1 | 5 | 2 | 11 |
JPN | 2 | 2 | 3 | 10 | 17 |
CAN | 5 | 7 | 4 | 3 | 19 |
CHN | 8 | 4 | 2 | 5 | 19 |
GEO | 4 | 6 | 7 | 7 | 24 |
ITA | 10 | 5 | 8 | 4 | 27 |
UKR | 6 | 9 | 10 | 6 | 31 |
GER | 7 | 10 | 6 | 8 | 31 |
CZE | 9 | 8 | 9 | 9 | 35 |
単純にシーズンベスト順に各国並べるとこうなりました。40から順位合計を引いた数字が実際のポイントになるはずですが、ここではめんどくさいので順位合計を出して小さい方がいい、というだけの計算にします。
日本は順当にいけば3番手です。フリー進出は大きな問題ないと思いますが、女子男子ペアの3つのうち2つで大きな失敗すると危なくなります。表彰台争いはカナダと中国が相手。ペアの直接対決でカナダに負けるとポイントで追いつかれます。また、男子でキーガンメッシング選手あたりは3番手まで来る可能性が十分あって、そういうことが起きると、やはり逆転されます。一方で、アイスダンスは日本はこれより下がないので、予定以上のポイントを得られる可能性があります。
ジョージアでカナダ中国と5ポイント差。クビテラシビリ選手が序列6位ですが、これが日米に次ぐ3位あたりまで来るとチャンスが出てくる。グバノワ選手もアメリカの上の3位まで行くチャンスはあります。一方中国は序列4位のボーヤンジン選手がやらかすと苦しくなります。男子シングルが結構鍵です。日本から見ると、カナダ中国ジョージアでは、ジョージアが上がってくるのが一番好ましいです。
日本がアメリカにも勝って銀メダルを求めるのは、ちょっと苦しいでしょうか。女子シングルでアメリカが崩れ、男子シングルの直接対決で勝ち、アイスダンスで日本ペアが躍進する、という3つそろってようやくフリー勝負に持ち込めるというくらいです。
ロシアを超えて金メダル? コロナがあるのでその可能性はありますが・・・
今回は、まず、前半を見るところまでとします。
日本は後半フリー進出は固く、表彰台争いは優位な位置に立てそうな計算だけど、結構際どく大変。カギを握るのは男子シングルのキーガンメッシング選手と、ペアの日本カナダ直接対決どっちが上か、というあたりになりそうに感じています。カナダが男子とペアでエースを投入してこなければたぶん勝てます。