世界選手権23 女子シングルプレビュー

シーズン締めくくりの世界選手権がついにやってきます。今シーズンはワールドチームトロフィーもありますが、クライマックスは世界選手権ということでよいでしょう。

今回はそんな世界選手権の女子シングルプレビューです。エントリー選手たちの今季の成績から展望をしていきます。以下、シーズンベストやセカンドベスト、等の表記が出てきますが、それらはISU公認だけでなく、B級大会やワールドユニバーシティゲームズといった非公認のものも含むものとしてご覧ください。ただし、それぞれの国内大会は含みません。

 

○今シーズンの戦績

  Name   Season best 2nd best Worst National
1 Kaori SAKAMOTO JPN 228.35 217.61 192.56 233.05
2 Mai MIHARA JPN 221.18 217.43 203.23 219.93
3 Loena HENDRICKX BEL 216.34 208.05 193.48 223.50
4 Isabeau LEVITO USA 215.74 207.67 197.23 223.33
5 Yelim KIM KOR 213.97 209.29 180.58 210.28
6 Rinka WATANABE JPN 213.14 200.50 188.07 183.99
7 Haein LEE KOR 210.84 195.72 164.88 205.31
8 Chaeyeon KIM KOR 205.51 203.94 190.36 200.60
9 Niina PETROKINA EST 203.52 183.74 152.00 200.92
10 Anastasiia GUBANOVA GEO 199.91 197.56 166.57  
11 Bradie TENNELL USA 199.91 193.31 153.19 213.12
12 Amber GLENN USA 197.61 192.50 166.73 207.44
13 Kimmy REPOND SUI 192.51 180.45 168.96 175.13
14 Nina PINZARRONE BEL 191.20 185.92 169.28  
15 Ekaterina KURAKOVA POL 190.44 189.98 178.68 185.14
16 Madeline SCHIZAS CAN 187.84 183.28 159.73 196.47
17 Nicole SCHOTT GER 181.41 172.56 147.46 192.67
18 Lara Naki GUTMANN ITA 180.89 175.71 166.24 189.88
19 Lorine SCHILD FRA 179.00 168.35 165.82 176.45
20 Janna JYRKINEN FIN 178.72 176.96 136.96 174.42
21 Sofja STEPCHENKO LAT 177.71 174.66 100.18  
22 Lindsay van ZUNDERT NED 176.84 174.81 154.09  
23 Kristen SPOURS GBR 176.69 156.19 118.61 167.96
24 Olga MIKUTINA AUT 174.70 173.36 155.53  
25 Julia SAUTER ROU 171.88 168.74 143.53 158.09
26 Anastasia GRACHEVA MDA 167.56 157.46 132.66  
27 Eliska BREZINOVA CZE 167.55 164.32 129.15 152.41
28 Ema DOBOSZOVA SVK 167.31 161.56 127.05 134.72
29 Marilena KITROMILIS CYP 165.81 158.91 128.30  
30 Alexandra FEIGIN BUL 165.78 157.76 140.96 162.57
31 Julia LANG HUN 165.07 143.52 115.78 163.21
32 Kristina ISAEV GER 163.79 163.73 146.69 166.58
33 Mia Caroline RISA GOMEZ NOR 163.04 156.51 137.62  
34 Jade HOVINE BEL 161.66 161.53 127.68 166.76
35 Dasa GRM SLO 148.19 143.05 135.27 141.03

坂本選手が昨シーズンに続いてシーズンベストトップで世界選手権に臨みますが、ここで記載のスコアはB級大会チャレンジカップでのもの。三原選手もワールドユニバーシティゲームズでのスコアがシーズンベスト扱いで記載されています。従ってISU公認スコアで220点を超えている選手がいない、という形での試合になります。

セカンドベストを持ってきても坂本選手がトップで三原選手が2番目なことは変わりませんが、210点台になってくるのでヘンドリックス選手以下とそれほど差がありません。どの選手も結構崩れることはあるので、210点を超えるスコアを出している7人くらいまでは優勝のチャンスがありそうです。

今期3枠持っているのは日米韓3か国。日本は来期も堅そうですが、韓国が意外と危ういかもしれません。シーズンベスト順位で言えば5位7位8位。そのままなら大丈夫ですが際どい戦にいます。アメリカは4位11位12位ですのでこのままだとアウト。テネル選手がどこまで戻ってきているかで決まるかもしれません。

世界ジュニアの優勝スコアが224.54 最低でもこれを超える優勝スコアが欲しいシニアの試合。実際にはジュニアルールでのそのスコアなので、シニアルールでは230点超えるくらいまで行かないと勝った気しない、みたいな比較にはなります。そこまで出せそうなのは坂本選手しかいませんが、はたしてどうなるか。

 

ショートプログラム シーズンベスト上位20人

  Name   Season best 2nd best Worst National
1 Kaori SAKAMOTO JPN 78.40 76.85 68.07 77.79
2 Loena HENDRICKX BEL 76.19 74.88 67.85 77.95
3 Mai MIHARA JPN 75.60 74.58 72.23 74.70
4 Yelim KIM KOR 73.73 72.84 58.32 71.59
5 Rinka WATANABE JPN 72.58 66.83 58.36 56.23
6 Isabeau LEVITO USA 72.06 71.50 65.37 73.78
7 Chaeyeon KIM KOR 71.39 70.29 66.71 70.69
8 Anastasiia GUBANOVA GEO 69.81 68.03 56.03  
9 Amber GLENN USA 69.63 68.42 45.99 68.96
10 Bradie TENNELL USA 69.49 68.84 56.50 73.76
11 Haein LEE KOR 69.13 66.24 58.06 70.75
12 Madeline SCHIZAS CAN 67.90 65.19 58.66 68.32
13 Niina PETROKINA EST 66.25 61.68 47.34 63.98
14 Marilena KITROMILIS CYP 64.92 54.58 39.32  
15 Ekaterina KURAKOVA POL 64.66 63.65 59.24 63.01
16 Julia SAUTER ROU 64.28 59.13 45.28 53.76
17 Kimmy REPOND SUI 63.83 60.86 53.22 58.51
18 Nina PINZARRONE BEL 62.99 61.35 44.79  
19 Olga MIKUTINA AUT 62.78 60.07 52.81  
20 Lara Naki GUTMANN ITA 62.63 56.46 50.06 62.36

ショートプログラムからやはり坂本選手がシーズンベストを持っています。ただ、この78.40はワールドユニバーシティゲームズ。2ndベストはチャレンジカップ。ISU公認だとグランプリファイナルの75.86になるのでヘンドリックス選手の方が上になります。ただ、ヘンドリックス選手の76.19もネーベルホルン杯なのでチャレンジャーシリーズの試合となり少し格落ち感はある。他の選手も含め、世界選手権でその辺を超えるはっきりしたシーズンベストを出していってほしいところです。

トリプルアクセル持ちの渡辺選手は72.58がシーズンベスト。優勝狙うならショートからトリプルアクセルを決めたいですが、ジャンプミスするとショート落ちもあり得るということからするとダブルアクセルで安全に行ってほしいところもあったりします。どういう選択になるか。

シーズンベスト20番目でも62.35あります。60点出してもフリーへ通過できるか怪しい情勢です。上位の選手でもシーズンワーストは50点台という選手が多数いますし、え?この人がショート落ち!! という展開もあるかもしれません。

最終グループ入りは最低70点は必要そうです。69点台持っている4人も含めて11人くらいまで可能性がありそうです。日本、韓国はそれぞれ3人最終グループ、という可能性があります。

 

○フリー シーズンベスト上位15人

  Name   Season best 2nd best Worst National
1 Kaori SAKAMOTO JPN 151.50 146.66 116.70 155.26
2 Rinka WATANABE JPN 146.31 134.90 123.43 127.76
3 Mai MIHARA JPN 145.58 145.20 129.68 145.23
4 Isabeau LEVITO USA 143.68 136.95 127.97 149.55
5 Loena HENDRICKX BEL 143.59 132.53 122.11 145.55
6 Yelim KIM KOR 142.09 136.45 119.03 138.69
7 Haein LEE KOR 141.71 130.72 106.82 134.56
8 Chaeyeon KIM KOR 137.67 133.65 123.65 129.91
9 Niina PETROKINA EST 137.27 123.32 104.66 136.94
10 Bradie TENNELL USA 130.42 124.47 96.69 139.36
11 Anastasiia GUBANOVA GEO 130.10 129.53 110.54  
12 Amber GLENN USA 129.19 122.87 117.32 138.48
13 Kimmy REPOND SUI 128.68 122.36 110.08 116.62
14 Nina PINZARRONE BEL 128.21 124.57 111.00  
15 Lara Naki GUTMANN ITA 125.65 118.26 111.93 127.52

フリーはシーズンベスト上位に日本勢が並びました。坂本選手の151.10はチャレンジカップ、セカンドベストワールドユニバーシティゲームズのそれをカウントしていますので、ISU公認でのトップは渡辺倫果選手になっています。トリプルアクセル込みで他のジャンプ含めてノーミスしたら坂本選手の上へ行けますが、セカンドベストは130点台前半でそれほど伸びていません。

三原選手はナショナル含め145点台を今シーズン3回出しています。ここが限界という見方にもある種なりますが安定感の高さがあるので表彰台確率は一番高い選手かもしれません。

レビト選手も140点台があり、全米ではありますが150点に近いスコアも出しました。アメリカ勢として2006年のキミーマイズナー選手以来の優勝なるか。元々はロシアではなくアメリカが、若くして勝ってサッサと引退してしまう問題を起こした国ではありました。シニア1年目の16歳での優勝というのは普通にありえるコースかと思います。

ヘンドリックス選手も143.59を1度出しているものの、他は130点台前半以下です。意外と伸びてこないフリー。そのせいでヨーロッパチャンピオンにもなり損ねたわけですが今回は合わせられるかどうか。

韓国勢がその下に続きます。このあたりの3人も表彰台チャンスは十分にある。韓国勢が表彰台に乗れば2013年のキムヨナさん以来10年ぶりです。

エストニアのペトロキナ選手が137点台を出していますが、これは2月のB級大会で出しました。再現性あるかどうか。これをもう一度出せればトップ10に入ってきて2枠獲得の芽があります。

その下にいるのがテネル選手。怪我からの回復、調子の向上具合はどうか? 100%の力を発揮できれば優勝までチャンスあるとも思うのですが、合わせてきていられるか

ヨーロッパチャンピオンのグバノワ選手は意外とフリーのスコアは伸びていません。トップ10争いくらいまでかな、と思われます。

 

○上位6選手のフリーの技術点シーズンベスト時の構成

  Kaori SAKAMOTO Mai MIHARA Loena HENDRICKX Isabeau LEVITO Yelim KIM Rinka WATANABE
1 2A 2A+3T 3Lz!+3T 3Lz+3Lo 3Lz+3T 3A
2 3Lz 3Lz 2A 3T 2A 3Lo
3 3S 3S 3F 2A 3Lo 3Lo+3T
4 CCoSp4 3Fq 2A CCoSp4 3F 3F
5 3F+2T FSSp4 CCoSp4 3F! CCoSp4 FCSp4
6 StSq2 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 3F+2A+SEQ ChSq1
7 3F+3T 2A+3T 3Lz!+2T 2A 3Lz+2T+2Lo 3Lz+2A+SEQ
8 FSSp4 3Lz+2T+2Lo 3F+2T+2Lo 3Lz+1Eu+3S 3S 2A+1Eu+3S
9 2A+3T+2T 3Lo 3S 3F!+2T FCSp4 CCoSp4
10 ChSq1 StSq4 FCCoSp4 FCSp4 StSq2 3Lz<<
11 3Lo ChSq1 StSq4 StSq4 ChSq1 StSq4
12 FCCoSp4 FCCoSp4 LSp3 FCCoSp4 FCCoSp4 FSSp4
Base 61.22 63.33 60.08 63.36 63.38 65.24
GOE 16.06 12.29 11.79 10.82 11.08 12.32
PCS 74.22 69.96 71.72 69.50 67.63 68.75
Total 151.50 145.58 143.59 143.68 142.09 146.31

坂本選手はそれほど高い基礎点はもっていません。ステップがレベル4になったとしても62.52までです。加点とPCSで稼ぐ構図。

三原選手、レビト選手、キムイェリム選手と言ったところが63点台前半で並びます。この中ではキムイェリム選手がステップのレベルが取れれば64.68まで出ますので一番高い構成です。ルッツ2本フリップ2本が効いています。レビト選手もルッツ2本フリップ2本ですし、セカンドループまであるのですが、単独3Tという謎要素がありつつ1.1倍に単独2Aが入るなど、ちょっともったいない構成なところがあります。

ヘンドリックス選手はループなしの6トリプルなので基礎点は他の選手より落ちます。レイバックスピンがレベル4になっても基礎点は60.38まで。完全に出来栄え勝負ですのでミスが少しでも出ると苦しいです。

渡辺倫果選手が基礎点はトップ。これ、トリプルルッツのダウングレードがあっての基礎点なので、ノーミスなら69.42まで出ます。最近は少し構成組み替えているのですが、それでもノーミスなら68.99の構成です。今のメンバーの中では圧倒的な基礎点です。問題はそのノーミスができるかどうか。特にルッツがトリプルアクセルよりも成功率低いという大きな課題だったりしています。国体の時のような演技が出来れば150点も見えてくるわけですが、それをこの大きな舞台で出来るでしょうか。

 

○7-12番手の選手のフリーの技術点シーズンベスト時構成

  Haein LEE Chaeyeon KIM Niina PETROKINA Anastasiia GUBANOVA Bradie TENNELL Amber GLENN
1 2A+3T 3Lz+3T 2A+3T 3Lz+3T 3Lzq+3T 3A<
2 3Lz+3T 3Lo 3Lz+1Eu+3S 2A 2F 3F+3Tq
3 3Lo 3S 3F 3Lo 2A+3T<+2T 3S
4 3S 2A 3Lo 3S FCCoSp4 3Lo+2T
5 FCSp4 FCCoSp3 FCCoSp4 FCSp3 3S FSSp4
6 FCCoSp4 FCSp4 3Lz ChSq1 3Loq StSq3
7 ChSq1 3F+2Aq+SEQ 3F+2T 3F+3T 3Lz<+2T 3Lz
8 3Lz+2T+2Lo 3Lz+2T+2Lo CCoSp4 3F+2T+2T 2A 3Lo
9 3F 3F StSq4 2A StSq4 3F
10 2A StSq4 2A StSq3 ChSq1 ChSq1
11 StSq4 CCoSp4 LSp4 CCoSp3 CCSp4 CCoSp3
12 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 LSp2 CCoSp4 LSp3
Base 63.15 64.28 62.38 59.37 56.90 58.81
GOE 11.81 10.97 10.15 7.07 5.92 5.23
PCS 66.75 62.42 64.74 63.09 67.60 65.15
Total 141.71 137.67 137.27 129.53 130.42 129.19

韓国勢2人はトップ6と比べても高めの基礎点構成になります。キムチェヨン選手は64.28でトリプルアクセル無し構成では今季最高の基礎点となっています。スピンのレベルも取れれば64.78まで出ます。ルッツフリップ2回構成で1.1倍も強いので高い基礎点になります。ジュニアグランプリファイナルで3位に入ったように、まだジュニアカテゴリーでの試合の多い選手なのでPCSが出ていませんが、4大陸では64点台まで出しました。高い基礎点にシニア級PCSが入れば140点台まで出しての表彰台チャンスもあるかもしれません。

ヨーロッパチャンピオンのグバノワ選手はスピンステップのレベルが取れずに基礎点が伸びていません。オールレベル4までいけば61.67までは出ます。

テネル選手は回転不足で基礎点出ていませんが、ノーミスなら63.54まで出る構成です。それが出せればやはり表彰台候補。

グレン選手はトリプルアクセルありなのですが、3連続も入らないなどもありこちらも基礎点が60点に届いていません。トリプルアクセル以外の構成も重要になります。

 

ロシア勢抜きの今シーズン。シニアから4回転は消えましたがジュニアではむしろトリプルアクセルの多国籍化が起きたりしています。今大会の最大の注目は、世界ジュニアに勝てるかどうかだったりするのかもしれません。

連覇するのが難しい世界選手権。坂本選手が2連覇すれば16,17のメドベージェワさん以来6年ぶりです。メドベージェワさん以前だと00-01のミシェルクワンさんまでさかのぼります。

優勝争いも表彰台争いも、入賞圏内も3枠2枠の取り合いも、すべて混戦。上位選手のショート落ちもあり得る。そんな、最初から最後まである種はらはらさせ同士になりそうな世界選手権。女子シングルは22日(水)にショートプログラム、24(金)にフリー、という日程になります。