北京オリンピック 団体戦プレビュー2

前回の団体戦プレビューの続きです。

前回同様にエントリー選手全員のシーズンベスト、セカンドベスト、シーズンワーストと、国内選手権のスコアを並べます。後半フリーに進めるのは5チームだけですが、一応全チーム分スコアは出しておきます。

 

○男子シングル フリー

  Name Season best 2nd best Season worst National
USA Nathan Chen 200.46 186.48 186.48 212.62
JPN Yuzuru HANYU       211.05
USA Vincent ZHOU 198.13 186.88 161.18 177.38
JPN Yuma KAGIYAMA 197.49 185.77 179.98 197.26
JPN Shoma UNO 187.57 181.61 181.61 193.94
RUS Mark KONDRATIUK 187.50 165.29 157.72 186.60
ITA Daniel GRASSL 182.73 177.30 150.55 177.30
RUS Andrei MOZALEV 179.77 171.44 159.93 187.30
ITA Matteo RIZZO 176.18 173.02 161.46 174.90
USA Jason BROWN 174.81 170.13 165.55 188.94
RUS Evgeni SEMENENKO 172.60 168.30 160.96 176.25
GEO Morisi KVITELASHVILI 170.96 168.08 159.66  
CAN Roman SADOVSKY 169.21 144.79 131.52 170.43
CAN Keegan MESSING 168.03 164.81 145.06 173.65
CZE Michal BREZINA 166.78 152.04 137.28  
UKR Ivan SHMURATKO 150.07 132.44 126.56 147.07
CHN Boyang JIN 144.38 139.07 139.07  
GER Paul FENTZ 143.57 129.30 121.38 135.42

男子シングルフリーは前半最後の女子シングルの後に同じ日に行われます。個人戦の男子ショートの二日前という鬼スケジュールです。

誰が出てくるかがまず問題。中国やジョージアがフリーに進んだ場合は、ボーヤンジン選手、クビテラシビリ選手で確定です。アメリカはどうするか? 個人戦の雪辱を期すネイサンチェン選手をショートフリーフル回転させて個人戦へ臨ませるという酷なことはなかなかしづらい。普通に考えればヴィンセントジョウ選手が来そうなところ。

日本はショート羽生フリー宇野という全日本の1位2位というのが従来からの相場ですが、国際大会での4回転アクセルの挑戦回数を増やすために羽生選手を団体戦フリーに出す、みたいなことをするかどうか? しないと思うけど。

日米は誰が出るかで1位2位は入れ替わるかもしれませんが、この2カ国で1位2位を示そうには思われます。カナダは二人のどちらを使ってもシーズンベストは160点台。ここで3位まで行けるか、5位に沈むかで日本との表彰台争いに影響が出ます。中国もボーヤンジン選手がショートフリーと本来の力を取り戻せれば表彰台に絡んでこられないこともないです。

男子でどう失敗しても金メダルでしょ、という感じのロシアですが、このロシア勢が何番に入るかが表彰台争いに影響したりもします。

 

○ペア フリー

  Name Season best 2nd best Season worst National
RUS Mishina / Galliamov 157.46 153.37 148.88
RUS Tarasova / Morozov 154.85 148.73 135.39
RUS Boikova / Kozlovskii 150.97 139.79 130.10
CHN Wenjing / Cong 145.11 144.48 144.21
USA Knierim / Frazier 136.60 131.54 120.25
JPN Miura / Kihara 135.57 135.44 131.74
CHN Cheng / Yang 135.15 130.27 130.27
USA Cain-Gribble / LeDuc 132.04 128.22 111.06
CAN James / Radford 130.83 124.50 115.72
GER Fabienne Hase / Seegert 123.18 118.89 106.54
CAN Moore-Towers / Marinaro 122.77 118.77 113.82
GEO Safina / Berulava 122.12 116.23 110.62
ITA Ghilardi / Ambrosini 116.14 111.59 104.56
ITA Monica / Guarise 114.14 112.93 112.93
CZE Žuková / Bidař 105.33 96.25 91.44
UKR Holichenko/Darenskyi 92.46 89.75 89.75

ちょっと不思議なのですが、前半はアイスダンスが先だったのに、後半はペアが先に来ます。最終日の1種目目はペアです。

ロシアは誰が出てきても強いですが、中国がフリー進出していれば食われる可能性がなくはないです。ロシア自身はそれでも安泰でしょうけれど、中国はメダル争いに食い込むにはここで1位を取りたい。

日本ペアはシーズンベストだと4番手になります。中国は仕方ないとしてアメリカの上までられるとよいですがどうだろう。セカンドベストは勝ってますしチャンスある。また、カナダペアのシーズンベストを日本ペアはシーズンワーストでも上回っているというのが大きいです。

カナダペアが5番手になっています。シングル競技ではちょっと勝ち味がないのでアイスダンスだけでなく、ペアでも日本の上へ出られると表彰台チャンスがある、という立ち位置。そのためにはジェームス/ラドフォード組をショートフリーフル回転させたいのですけど、そこまでやってくるかどうか。

仮にペアが終わった時点で3位にいて4位以下に9ポイント以上の差を付けられていれば表彰台確定です。

 

アイスダンス フリーダンス

  Name Season best 2nd best Season worst National
RUS Sinitsina / Katsalapov 130.07 129.11 124.91  
RUS Stepanova / Bukin 126.75 120.71 120.40 134.61
ITA Guignard / Fabbri 126.10 124.62 121.23 132.27
USA Hubbell / Donohue 125.96 123.24 123.11 136.20
USA Chock / Bates 125.68 124.76 124.59 135.43
CAN Gilles / Poirier 125.62 125.32 121.81 132.26
RUS Davis / Smolkin 118.60 115.42 109.91 123.71
CAN Beaudry / Sørensen 117.29 115.01 108.62 125.61
USA Hawayek / Baker 116.72 113.90 113.90 126.29
UKR Nazarova / Nikitin 115.79 113.18 99.31 115.91
CAN Lajoie / Lagha 112.93 110.47 107.20 116.00
GEO Kazakova / Reviya 111.80 106.25 106.25  
CHN Shiyue / Xinyu 111.31 110.91 110.91  
CZE Taschlerová / Taschler 108.95 104.29 102.26 106.68
GER Müller / Dieck 105.27 102.81 95.56 108.46
JPN Komatsubara / Koleto 104.07 100.76 100.76 110.01

最終日2種目目にアイスダンス

これが終わった時点で3位にいれば日本はメダルがほぼ固くなるのですが、そういくかどうか。

ロシアがここも普通に強いです。イタリアはフリーに残っているかどうか。いなければアメリカが2番手。カナダがそれに続きます。カナダはアイスダンスで2位まで入ってポイントを稼ぎたいですが、そのためにはショートフリーをギレス/ポワリエ組でどちらも滑る必要がありそうですが、そこまでやってくるかどうか。

日本はシーズンベストは10カ国中10番目ですが、中国やジョージアがフリーに進んできている場合4位のチャンスはありそうです。イタリアが来た場合は日本の勝ち目はないですが、イタリアがカナダにも勝ってくれるチャンスがあって、それはそれでありがたいという構図にもなります。

アイスダンス終わった時点で3位以内にいて4位以下と5ポイント差以上あれば表彰台確定です。実際にはカナダ中国などが女子シングルでロシアに勝つ目はないでしょうから、4ポイント差で勝がほぼ決まります。

 

○女子シングル フリー

  Name Season best 2nd best Season worst National
RUS Kamila VALIEVA 185.29 180.89 168.61 193.10
RUS Anna SHCHERBAKOVA 168.37 165.05 147.97 158.10
RUS Alexandra TRUSOVA 159.23 154.68 142.05 174.44
JPN Kaori SAKAMOTO 146.78 144.77 125.58 154.83
USA Alysa LIU 144.93 136.54 132.90  
JPN Wakaba HIGUCHI 141.04 135.86 109.70 147.12
USA Mariah BELL 140.98 129.98 112.35 140.70
USA Karen CHEN 134.99 129.33 114.67 139.30
JPN Mana KAWABE 134.91 133.22 131.56 135.38
GEO Anastasiia GUBANOVA 134.41 121.15 118.61  
CAN Madeline SCHIZAS 125.44 124.32 113.64 126.19
GER Nicole SCHOTT 123.63 114.44 100.98 119.00
ITA Lara Naki GUTMANN 118.33 111.05 103.74 124.00
UKR Anastasiia SHABOTOVA 117.45 116.21 94.48 122.55
CZE Eliska BREZINOVA 111.82 105.52 88.85 110.27
CHN Yi ZHU 111.25 94.50 94.50  

最終種目が女子シングルフリーです。通常、個人戦も女子シングルが最後を締めるのですが、今回は中国が強いペアが最後になっていたりします。さすがに団体戦まで最後に女子フリーを持ってくるのを変えるということはしてきませんでした。

誰が出てもロシアが勝つ、という構図ですが、実際にはここに来るまでにロシアの金メダルは確定していそうに感じますが、交換券を使い切っている状態で、ショートもフリーもワリエワ選手で最終滑走に出てきて花を添える、という感じの展開が何となく予想されます。。

坂本花織選手は、トゥルソワ選手が大崩れすれば逆転できる、というシーズンベストを持っていますが、果たして出るかどうか。これまでの例からすると樋口新葉選手が出る可能性が高そうです。樋口選手は爆発力はあるのですが大崩れもあるのでそこが怖いところ。

アメリカは誰が出るでしょう。個人戦の近い男子で1枚、実力の近いアイスダンスで1枚、と交換券を使い切っているとアリサリュウ選手の2枚使いもありえますし、全米チャンピオンのマライアベル選手が優先されて出てくる可能性もあります。順とに行けばどちらが来ても3位に入って来る。

カナダのシザース選手はジョージアがフリーに残っていると5番手になってしまうのですが、イタリアや中国がフリーに来ていれば4番目のスコアです。日本に2ポイント以上の差をつけて最終種目に入ってきたいというのがカナダの立ち位置です。

 

○前半の上位5カ国が順当に来た場合のフリーのシーズンベスト順順位

  Ladies Men Pair Ice Dance  
RUS 1 3 1 1 6
USA 3 1 3 2 9
JPN 2 2 4 5 13
CAN 4 4 5 3 16
CHN 5 5 2 4 16

順当にいくとこうなって、日本は前半のスコアと合わせて3位に入れます。カナダが上に来る可能性は、日本の女子が大崩れすること、カナダの男子が3位に入り、ペアも直接対決でカナダが上に行き、アイスダンスのカナダが2位まで入る。そうなると、カナダが日本より4ポイント上に行き、前半の3ポイントビハインドをひっくり返して表彰台、という展開がありえます。ポイントはカナダの男子とペアの直接対決、でしょうか。ショートでも同じでしたが。前半でカナダと同点くらいでフリーに進んでも普通にいけば勝てますが、やはりポイントはカナダの男子とペアの直接対決になるはずです。

 

○中国ではなくジョージアがフリーに進んだ場合

  Ladies Men Pair Ice Dance  
RUS 1 3 1 1 6
USA 3 1 2 2 8
JPN 2 2 3 5 12
CAN 5 5 4 3 17
GEO 4 4 5 4 17

ジョージアが来ると、男女シングルで日本とカナダの間に入ってくる可能性が高くなるので、日本としては対カナダで余裕が少し出ます。中国ではなくジョージアがフリーに進んでくれることが日本にとって望ましい理由です。

 

というわけで、順当にいけば日本は3位でメダルが取れそうです。ポイントはカナダの男子シングルとペアの直接対決。この辺でポイントが大きく動く可能性があります。そして、団体戦は、自国のために他国の選手を応援する、みたいな不思議な構図が生じるレギュレーションです。それはそれで面白いので良いですけど。

まあ、最大の敵はコロナで、これによってとんでもない結末が待っている可能性もありますが・・・。

また、団体戦で後半まで進んで男子シングルに出る選手は、2日おきでショートフリー合計4回滑る、なんてことになる可能性があります。やっぱりどう考えても団体戦個人戦全部終わった後の方がよいですね。

 

いずれにせよ、間もなくオリンピックが始まります。政治的にはあれこれありますし、社会的にはコロナという強敵がいますが、競技は競技として、楽しめたらよいなと思います。