21-22 松生理乃

2004年10月10日生まれ

シニア1シーズン目

シーズン獲得賞金:$5,000

世界ランキング:30位

シーズンランキング:16位

シーズンベストスコア 224.34 (8位) チャレンジカップ

ショートプログラムシーズンベスト 74.21 チャレンジカップ

フリーシーズンベスト 150.13 チャレンジカップ

ショートプログラム楽曲:恋は何のために?

フリープログラム楽曲:月光

スピンレベル4率 42/51=82.4% (国際大会:21/24=87.5%)

ステップレベル4率 4/17=23.5%(国際大会:4/8=50.0%)

スピンオールレベル4 2/8(国際大会:1/4)

スピンステップオールレベル4  1/8(国際大会:1/4)

ジャンプ要素回転不足率 11/87=12.6%(国際大会:5/40=12.5%)

ジャンプ回転不足なし 1/8(国際大会:1/4)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/8(国際大会1/4)

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL みなとアクルス 1 207.48 69.70 137.78
DL げんさんサマーカップ 5 192.56 70.27 122.29
RT 中部選手権 1 201.44 69.48 131.96
Others Japan Open 2 135.12   135.12
GP NHK Trophy 6 186.17 63.34 122.83
GP Rostelecom Cup 8 184.36 62.98 121.38
NC 全日本選手権 7 198.77 72.31 126.46
4CC Four Continents 5 202.21 60.16 142.05
IC Challenge Cup 1 224.34 74.21 150.13

松生理乃選手は今シーズンからシニアへ上がりました。

シーズン初戦と言っていいのかくらいの早い時期、7月頭のみなとアクルス杯で前年の全日本を超えるパーソナルベスト相当のスコア207.48を出します。フリーではトリプルアクセルにチャレンジ。今シーズン中に完成するかはどうかという部分はありましたが、代表争いの面白い存在になりそうだ、と見られていました。

女子のトップが集まったげんさんサマーカップでは5位。フリーでスコアが伸びませんでした。

中部選手権とジャパンオープントリプルアクセルはダウングレードながらスコア的にはまずまずの結果を出してグランプリシリーズへ。最初からエントリーされていたのはロステレコム杯のみでしたが、NHK杯の地元枠を確保。2戦分の出場権を得ます。ただ、ここで結果を残せませんでした。この時期、あまりはっきりと明言されていなかったと思いますが、ケガを抱えているようでした。

力はあるけれどシーズンベスト低めな6番手、という立ち位置で全日本を迎えます。

ショートは全要素全ジャッジプラス評価の72.31で6位スタート。3位まで1.96ポイント差。フリー次第で全くわからないという位置で初めてのフリー最終グループに入ります。

戦前の予想された上位6人がそのまま最終グループに入ったフリー。その1番滑走として出てきての月光。冒頭から二つのジャンプで転倒。この時点でオリンピックは夢と消えました。気落ちしてそのまま大崩れしてもおかしくない展開でしたが、3つ目の要素以降は立て直して全要素全ジャッジプラス評価。いい印象を残して終えましたがこの時点で2位。総合で7位に終わります。

これは昨シーズン権利があったのに中止で出られなかった世界ジュニアかな、と思っていたら、いろいろなめぐりあわせもあって四大陸選手権に回ります。これがシニアの大きな大会に出られてよかったのか、世界ジュニアの表彰台チャンスがもらえず悪かったのかは何とも微妙なところ。本調子ではなさそうなまま臨んでショートではジャンプの転倒もあり8位スタート。残念な感じでしたがフリーでは盛り返します。スピンステップオールレベル4で全要素プラス評価。技術点が初めて70点台後半までもってきて142.05 初の140点台でフリーだけなら3位、総合5位まで順位を上げました。

大きな大会はこれで終わり。後は国内ローカル大会くらいか、とも思われましたが2月の終わりにチャレンジカップに派遣されました。ここで驚きのスコア。ショートは全要素全ジャッジプラス2以上の評価で74.21のパーソナルベスト相当のスコアを出します。そしてフリー。前半は妖精が舞うステップの中に組み込まれた4つのジャンプを決め、スピンを挟んで後半、ステップからコンビネーションジャンプ3つ、コレオにスピンとすべて決め、スコアはまさかの150.13 トータルスコアは224.34という驚きの水準に達しました。ISU公認にはなりませんが、今シーズンのベスト8位にあたるスコアで、来シーズンに繋げました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
みなとアクルス 1 207.48 110.46 98.02 69.42 6.31 23.13 11.60
げんさんサマーカップ 5 192.56 98.49 95.07 59.06 5.17 22.09 12.17
中部選手権 1 201.44 109.10 92.34 66.26 5.70 23.67 13.47
Japan Open 2 135.12 71.32 63.80 46.55 5.11 10.74 8.92
NHK Trophy 6 186.17 93.19 92.98 58.26 1.35 23.10 10.48
Rostelecom Cup 8 184.36 92.04 93.32 52.55 2.72 23.42 13.35
全日本選手権 7 198.77 106.57 94.20 63.98 4.23 25.23 13.13
Four Continents 5 202.21 107.39 95.82 65.16 4.76 24.19 13.28
Challenge Cup 1 224.34 121.58 102.76 66.22 14.77 25.36 15.23

技術点はみなとアクルス杯で110点を出しましたがその後はそこまではなかなか伸びず。そこから最後のチャレンジカップでは一気に121.58まで伸ばしました。これは坂本花織選手の世界選手権での123.35に極めて近い水準です。

PCSは90点台半ばあたり。チャレンジカップで100点に乗せました。5項目平均8点前後、チャレンジカップで8.5あたりになります。

ジャンプの基礎点はチャレンジカップで66.22 トリプルアクセル以上のジャンプがない中では限界近い構成です。コンビネーションをすべて1.1倍に入れることで作り出しています。一方、みなとアクルス杯では69.42まで出ています。これはアンダーローテーションながらもトリプルアクセルが構成に入っているためです。

ジャンプの加点はシーズン序盤は5点から6点ありましたが、中盤はそこまで伸びず、最後のチャレンジカップでは二桁加点と大きく稼ぎました。この14.77という加点は今シーズン8位という高い加点になります。

スピンでは23点台が多かったですが4大陸選手権で国際大会初の24点台、チャレンジカップで全日本並みの25点台を出しました。

ステップ系要素は国内でも13点台にとどまっていましたが、チャレンジカップではショートフリーレベル4を揃え15点台まで出し、上位と遜色ないスコアを出しています。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
みなとアクルス 1 62.98 64.17 62.98 57.70 52.74 61.90
げんさんサマーカップ 5 58.93 56.44 61.07 54.46 55.00 59.94
中部選手権 1 61.34 61.81 61.96 59.38 60.18 58.12
NHK Trophy 6 57.20 55.84 54.65 57.60 48.28 58.54
Rostelecom Cup 8 56.71 51.58 56.95 58.60 59.70 58.77
全日本選手権 7 60.62 60.11 59.49 64.23 58.83 59.36
Four Continents 5 61.55 60.99 60.38 61.00 59.42 60.44
Challenge Cup 1 67.55 61.78 77.18 64.64 67.18 65.06

偏差値に直すと、トータルスコアは60前後でしたがチャレンジカップで67.55まで一気に伸ばしました。

ジャンプの基礎点は偏差値60を少し超えるくらい。トリプルアクセル無しではここが限界ですが、トリプルアクセルを入れると65に近いところまで来ます。

ジャンプの加点は偏差値60前後でしたがチャレンジカップでは偏差値77.18という極めて高いものになりました。

スピンステップも偏差値60前後だったものがチャレンジカップで偏差値60台半ばから後半に上げています。

偏差値60くらいの選手のように一見見えていたけれど、本領発揮したチャレンジカップでは偏差値60台後半まで出してきて、ちょっと普通のレベルの選手ではないぞ、という風に変わりました。

21-22シーズン 松生理乃要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートはこうなって、チャレンジカップだけ他の試合より全体的に一回りおおきくなっています。特にジャンプの加点は突出しました。もともと苦手な要素というのはあまりなく、バランスよく偏差値60前後なことが多かったわけですが、チャレンジカップで一回り大きな選手になりました。次はISU公認試合でこれができるか、というのが問われます。

 

●シーズン最高の基礎点構成

チャレンジカップ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
2 2A   3.30   1.25 4.55 3.571
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
4 3Lz+3T   11.11 x 1.53 12.64 2.571
5 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.857
6 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
  TES   33.01   8.44 41.45  

ショートの最高基礎点は33.01 ルッツフリップトーループと3つ3回転があり、1.1倍にコンビネーション。トリプルアクセル無しで基礎点上げるにはルッツループの投入以外ありません。

 

チャレンジカップ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz   5.90   2.01 7.91 3.429
2 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
3 2A   3.30   1.06 4.36 3.286
4 2A   3.30   1.32 4.62 4.143
5 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.143
6 StSq4   3.90   1.48 5.38 3.714
7 3Lz+3T+2T   12.54 x 1.77 14.31 2.857
8 3S+3T   9.35 x 1.38 10.73 3.286
9 3Lo+2T   6.82 x 1.27 8.09 2.571
10 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
11 CCoSp4   3.50   1.47 4.97 4.143
12 LSp4   2.70   0.92 3.62 3.571
  TES   63.11   17.02 80.13  

フリーの最高基礎点は63.11 トリプルアクセル無しでの今シーズン全体の最高は63.33ですのでそれに極めて近いところまで来ています。コンビネーションをすべて1.1倍に入れて、3回転5本を1.1場合している計算です。レイバックスピンがあるのでややスピンの基礎点で低くなります。そこを変えればもう少し基礎点は上がります。

国内ローカルなので外しましたが、アンダーローテーションのトリプルアクセル入りのみなとアクルス杯では65.01の基礎点がありました。

 

○平均GOE3.200(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Challenge Cup FS 4 2A   3.30   1.32 4.62 4.143
Challenge Cup FS 11 CCoSp4   3.50   1.47 4.97 4.143
全日本選手権 FS 11 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
Four Continents FS 11 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
Challenge Cup FS 6 StSq4   3.90   1.48 5.38 3.714
Four Continents FS 10 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
Challenge Cup SP 2 2A   3.30   1.25 4.55 3.571
Challenge Cup FS 12 LSp4   2.70   0.92 3.62 3.571
全日本選手権 SP 3 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.556
全日本選手権 SP 7 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
Challenge Cup FS 1 3Lz   5.90   2.01 7.91 3.429
Challenge Cup FS 10 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
Rostelecom Cup FS 11 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
Four Continents FS 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.333
Challenge Cup FS 3 2A   3.30   1.06 4.36 3.286
Challenge Cup FS 8 3S+3T   9.35 x 1.38 10.73 3.286
全日本選手権 SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222

チャレンジカップは全体の評価がとにかくよく、こういった形で要素を取り出すとチャレンジカップだらけになりました。最高評価はダブルアクセルとスピンで4.143 ステップやコレオも上の方に出てきますし、バランスよく各要素をこなすことができるのが見て取れます。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
みなとアクルス FS 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
げんさんサマーカップ FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000
中部選手権 FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -4.800
Japan Open FS 1 3A<< <<  3.30   -1.16 2.14 -3.167

今シーズン序盤はトリプルアクセルに挑みましたが、回転不足の転倒か、ダウングレードということになりました。怪我もあったようでシーズン中盤以降はチャレンジもありませんでしたが来シーズンどうでしょうか? 元祖トリプルアクセルのグランプリ東海。トリプルアクセルが入るようになるとよいのですが。

 

○3回転-3回転を含む要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
NHK Trophy SP 1 3Lz<+3T 8.92   -0.54 8.38 -1.111
NHK Trophy FS 2 3Lz+3T+2T   11.40   1.18 12.58 2.000
Rostelecom Cup FS 8 3S+3T< 8.43 x -1.90 6.53 -4.333
全日本選手権 SP 4 3Lz+3T   11.11 X 1.10 12.21 1.778
全日本選手権 FS 7 3Lz+3T+2T   12.54 X 1.35 13.89 2.333
全日本選手権 FS 8 3S+3T   9.35 X 1.23 10.58 2.889
Four Continents SP 4 3Lz+3T   11.11 x -1.35 9.76 -2.222
Four Continents FS 7 3Lz+3T+2T   12.54 x 1.26 13.80 2.111
Four Continents FS 8 3S+3T   9.35 x 1.17 10.52 2.778
Challenge Cup SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.53 12.64 2.571
Challenge Cup FS 7 3Lz+3T+2T   12.54 x 1.77 14.31 2.857
Challenge Cup FS 8 3S+3T   9.35 x 1.38 10.73 3.286

松生理乃選手は今シーズン、3連続ジャンプをすべて3回転-3回転-2回転で跳びましたので、ここの中にすべて入ってきています。

グランプリシリーズでは調子が上がっていなかったからかちょっと違いましたが、全日本以降は、ショートフリー、4回あるコンビネーションジャンプをすべて1.1倍の後半に入れる構成にしていました。従って、3回転-3回転も後半に来る形です。全日本以降だと、四大陸のショート以外はすべて成功ジャンプでした。怪我さえなければこの安定感、と思ってよいのでしょうか。

 

チャンスがあってのオリンピックシーズンでしたが、結果的にはちょっと遠かったという形でした。ただ、オリンピックへ出場したのは同い年の河辺愛菜選手でした。まだ若かった、ということではなさそうです。チャレンジカップの出来を見ると、世界ジュニアに出ていたら面白かった、と思うのですがこれもめぐりあわせ。全日本ジュニアの優勝経験がありながら世界ジュニアの出場経験がないという珍しいことになっています。224.34というチャレンジカップのスコアは日本勢では今シーズン2番目です。ここにトリプルアクセルが加わればとんでもないことになっていきます。

樋口美穂子先生が山田先生のところを離れて独立しました。松生理乃選手はどうしたんでしょう? ついていったのか、山田先生のところに残るのか? 河辺愛菜選手が樋口先生のところへやってきました。同い年、力的にも近い関係。同じ場所で練習するのは微妙かもしれませんが、目の前に女子のトリプルアクセルがあるということも意味します。どっちなのかなあ、残ったのかなあ?

妖精、という言葉は三原舞依選手の形容でよく出てくるように感じますが、三原舞依選手には精霊になっていただいて、松生理乃選手に妖精という言葉を使いたい感じがしています。ピンクが似合うと思っていますが、青系衣装でも四大陸、チャレンジカップの月光は良かった。

一気に飛躍する可能性も感じる来シーズン。新たなプログラムもお待ちしております。