21-22 アレクサンドラトゥルソワ

2004年6月23日生まれ

シニア3シーズン目

シーズン獲得賞金:$29,000

世界ランキング:2位

シーズンランキング:7位

シーズンベストスコア 251.73(3位) オリンピック

ショートプログラムシーズンベスト 77.69 スケートアメリカ

フリーシーズンベスト 177.13 オリンピック

ショートプログラム楽曲:フリーダ

フリープログラム楽曲:クルセラより

スピンレベル4率 28/30=93.3%

ステップレベル4率 5/10=50.0%

スピンオールレベル4 3/5

スピンステップオールレベル4  1/5

ジャンプ要素回転不足率 4/50=8.00%

ジャンプ回転不足なし 2/5

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/5

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC US International 1 216.80 74.75 142.05
GP Skate America 1 232.37 77.69 154.68
NC Russian Nationals 2 248.65 74.21 174.44
EC Europe Championships 3 234.36 75.13 159.23
OG Olympic Games 2 251.73 74.60 177.13

今シーズンはチャレンジャーシリーズでもない一般の国際B級大会になってしまったUSインターナショナルから国際大会に登場しました。ショート、トリプルアクセル転倒。それでも74.75が出るのが強いと言えば強いのですが、フリーは4回転5本構成で決まったのは1本だけでした。それでも216.80 普通の選手には届かないスコアですが、トゥルソワ選手としてはなかなか見ないひどいスコアのスタートとなりました。

グランプリシリーズはスケートアメリカから。怪我があるとのことでショートはダブルアクセル構成。これが結果的にシーズンベストのショートになるのが皮肉ですが77.69で問題なく首位発進。フリーも4回転1本の徐行運転でトータル232.37 楽勝でした。ただ、ケガの状態は良くないようで、3週間後のNHK杯は欠場します。

年末に最大の難関ロシア選手権。これはトゥルソワ選手と言えどすんなり通過できるかわからない試合。ここでも試合で跳べたことのないトリプルアクセルをショートに投入するというチャレンジャーぶりでしたが案の定転倒で5位スタートとなります。フリーで崩れると危ない、という立ち位置でしたが、4回転4本構成で今回は3本成功。トータル2位に入りヨーロッパ選手権の出場権をまず得ます。

ヨーロッパ選手権もいつものショートトリプルアクセル転倒で3位スタート。フリーは4回転4本構成で2本成功。シェルバコワ選手に抜かれ結局3位となりました。

シェルバコワ選手の方がロシアの代表に入れるか、代表として妥当なのか? という外野の声が強かったように感じましたが、実際にはトゥルソワ選手の不安定さの方が危ないのではないか、と感じていたのですが、何とか乗り切ってオリンピックの代表の座を得ました。

オリンピックは個人戦のみの登場。いつものようにショートにトリプルアクセルを入れて転倒、74.60の4位スタート。崩れたらメダルなしというフリー。ここで4回転5本構成をいくらかの減点はありつつもすべて着氷。177.13のパーソナルベストでトータル251.73 首位に立ち残りの選手を待ちます。結果的にシェルバコワ選手に上へ行かれ4.22ポイント差の2位に終わります。おそらく、着氷乱れた4回転トーループをクリーンに降りていれば金メダルだった、というくらいの差でした。

終結果が出た後ブチ切れていた、などという話も聞きますが、いずれにしてもトゥルソワ選手はこのオリンピックがシーズン最後の試合となりました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
US International 1 216.80 120.48 98.32 92.12 -10.38 24.60 14.14
Skate America 1 232.37 127.89 104.48 75.62 14.40 24.64 13.23
Russian Nationals 2 248.65 140.95 109.70 98.72 3.41 25.48 13.34
Europe Championships 3 234.36 133.12 104.24 91.48 2.05 25.56 14.03
Olympic Games 2 251.73 146.28 106.45 102.20 4.88 24.88 14.32

トータルスコアは最低で216.80最高で251.73まで出ました。技術点はオリンピックで146.28 これは今シーズン2位のスコアです。PCSは国際大会ではオリンピックの106.45が最高でした、5項目平均で8点台後半です。今シーズン6位。やはり技術点の順位の方が上へ来ます。

ジャンプの基礎点は4回転5本を基礎点削られることなかったオリンピックで102.20に達しました。2位に8.82ポイントもの差をつけてのトップです。

ジャンプの加点はスケートアメリカの14.40が最高。このスコアは4回転1本構成で出したもの。4回転を多数持ってくると、やはり加点で稼ぐということは出来ていない形です。オリンピックのジャンプで得たスコアはワリエワ選手が他の試合でジャンプで得たスコアに劣って2番目。ヨーロッパ選手権くらいだと4番目になります。基礎点は圧倒的ですがGOEも含めたジャンプのスコアとなると飛びぬけているわけではないです。ロシア外の選手と比べるとあっとうてきではありますが。

スピンはヨーロッパ選手権で25点台となっています。スピンの順位は13位。ジャンプと比べると順位は下がります。

ステップは14点台前半です。これはトップ選手の中ではそれほど高くないスコアです。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
US International 1 65.51 81.12 34.96 62.27 62.85 62.10
Skate America 1 69.73 68.80 76.56 62.40 59.22 66.21
Russian Nationals 2 74.15 86.05 58.11 65.01 59.66 69.69
Europe Championships 3 70.27 80.64 55.83 65.26 62.41 66.05
Olympic Games 2 74.99 88.65 60.58 63.14 63.56 67.53

偏差値を見ると、トータルスコアは70台、オリンピックではほぼ75となりました。

ジャンプの基礎点がやはり高く、偏差値は80台と異常値レベル。オリンピックでは88.65という凄まじい数字になりました。

一方ジャンプの加点は4回転1本のスケートアメリカでは76.56と高い値ですが、それ以外では偏差値60前後が出たり普通です。

スピンとPCSは60台半ば、ステップは60前後、悪くはないですが、トップ選手としてはよく見るくらいのものになっています。

21-22シーズン トゥルソワ要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートはイメージ通り、右上が突出する形です。スピンステップと比べるとPCSが評価されているな、というのも見て取れます。

このジャンプの基礎点に完成度が加わったらとんでもないことになるのですが、そこまではたどり着きませんでした。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○USインターナショナル ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -4.00 4.00 -4.800
2 3F   5.30   1.77 7.07 3.400
3 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.200
4 3Lz+3T   11.11 x 1.97 13.08 3.400
5 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
6 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.800
7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000
  TES   37.71   4.12 41.83  

基礎点としてはトリプルアクセル込みの37.71が最高で、これは今シーズンのショートプログラム最高基礎点です。ただ、実際に本人が取ったスコアとしてはダブルアクセル構成の時の方が高くなります。

 

○オリンピック フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4F! ! 11.00   2.20 13.20 2.000
2 4S   9.70   3.19 12.89 3.111
3 4T   9.50   -2.44 7.06 -2.556
4 2A+3T   7.50   -0.54 6.96 -1.333
5 CCoSp3   3.00   0.81 3.81 2.667
6 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.778
7 4Lz+3T   17.27 x 2.63 19.90 2.222
8 4Lzq q 12.65 x -0.99 11.66 -0.778
9 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.43 13.20 2.333
10 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.667
11 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.333
12 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
  TES   95.39   10.77 106.16  

フリーはオリンピックで95.39という基礎点を出しました。当然、今シーズンの全選手最高、というか歴史上女子選手として最高基礎点です。4回転が5本あるのにダブルアクセルが入っているのが違和感ありますが、この4番目の要素はトリプルアクセルを入れたい意志があるのだろうと思います。ここを3F+3Tにすれば基礎点があと2.00上がります。また、スピンステップでレベル3がありますのでこれらをレベル4にすればあと1.10基礎点があがります。そこまで行くと基礎点は98.49 何の話してるんだ? という感じの値になっていきます。

なお、今シーズンのフリー基礎点2位で86.07です。3位は83.07 さすがに4回転5本は飛びぬけています。

 

○平均GOE3.200以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Europe Championships FS 1 4F   11.00   4.71 15.71 4.333
Europe Championships FS 2 4S   9.70   3.88 13.58 4.000
US International SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.800
Olympic Games SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.778
Skate America SP 4 3Lz+3T   11.11 x 2.11 13.22 3.556
Russian Nationals SP 4 3Lz+3T   11.11 x 2.11 13.22 3.556
Skate America SP 2 3F   5.30   1.82 7.12 3.444
Europe Championships SP 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
US International SP 2 3F   5.30   1.77 7.07 3.400
US International SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.97 13.08 3.400
Russian Nationals FS 6 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.333
Europe Championships FS 3 2A+3T   7.50   1.38 8.88 3.333
Olympic Games SP 3 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
Olympic Games FS 11 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.333
Skate America SP 3 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.222
Skate America SP 5 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.222
Skate America SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.222
Russian Nationals SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222
Russian Nationals FS 3 2A   3.30   1.04 4.34 3.222
Russian Nationals FS 7 4Lz+3T   17.27 x 3.78 21.05 3.222
Europe Championships SP 7 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.222
Olympic Games SP 7 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.222
US International SP 3 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.200

今シーズン一番評価が高かったのがヨーロッパ選手権の4回転フリップ、2番目もヨーロッパ選手権の4回転サルコウ。平均GOEが+4.0を超えていく4回転。なんんだこれは?

ただ、オリンピックの4回転はこの中に入ってきません。オリンピックの4回転が、このヨーロッパ選手権の質で跳べていれば金メダルだった、とも言えます。

ジャンプの次に来るのはステップです。スピンよりもステップの評価が高い。コレオのクリムキンイーグルは印象的ですが、コレオよりステップの評価の方が高いようです。

 

○4回転要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US International FS 1 4F   11.00   -5.50 5.50 -5.000
US International FS 2 4S   9.70   2.59 12.29 2.400
US International FS 7 4Lz< 10.12 x -4.29 5.83 -4.600
US International FS 8 4Lz+1Eu+3S< 16.98 x -4.98 12.00 -4.000
Skate America FS 1 4Lz   11.50   2.30 13.80 2.111
Russian Nationals FS 1 4F! ! 11.00   1.41 12.41 1.333
Russian Nationals FS 2 4T   9.50   -4.75 4.75 -4.778
Russian Nationals FS 4 4Lz+1Eu+3S   16.30   3.12 19.42 2.778
Russian Nationals FS 7 4Lz+3T   17.27 x 3.78 21.05 3.222
Europe Championships FS 1 4F   11.00   4.71 15.71 4.333
Europe Championships FS 2 4S   9.70   3.88 13.58 4.000
Europe Championships FS 4 4Tq q 9.50   -4.75 4.75 -5.000
Europe Championships FS 7 4Lz<< <<  6.49 x -2.95 3.54 -5.000
Olympic Games FS 1 4F! ! 11.00   2.20 13.20 2.000
Olympic Games FS 2 4S   9.70   3.19 12.89 3.111
Olympic Games FS 3 4T   9.50   -2.44 7.06 -2.556
Olympic Games FS 7 4Lz+3T   17.27 x 2.63 19.90 2.222
Olympic Games FS 8 4Lzq q 12.65 x -0.99 11.66 -0.778

今シーズン4回転はルッツを8回、フリップを4回、サルコウを3回、トーループを3回飛びました。ルッツではダウングレードが1回とアンダーローテーションが1回にコンビネーションの後ろがアンダーローテーションとありましたが、ほかのジャンプは基礎点が削られることはありませんでした。

サルコウは3回飛んで3回とも加点の成功ジャンプ、意外なのはトーループが3回飛んで3回ともGOEマイナスで2回は転倒です。フリップは3本成功。ルッツは成功が4回で、GOEが軽いマイナス1回なので、8分の5はうまくいったと取っていいでしょうか。サルコウが比較的苦手な印象でしたが、今シーズンはそんなことはなく、トーループが決まらない、という形でした。

全体として転倒したのは18分の6で3分の1 GOE加点まで来るのは確率半分くらい、というのがトゥルソワ選手の4回転です。なお転倒確率3分の1のジャンプを転倒せずに5本続けて降りる確率は、(2/3)^5 = 32/243 ≒ 13.2% ということで、これをオリンピックに合わせてきた形でした。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US International SP 1 3A   8.00   -4.00 4.00 -4.800
Russian Nationals SP 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -5.000
Europe Championships SP 1 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.000
Olympic Games SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000

トリプルアクセルは4回飛んですべて転倒でした。ただ、オリンピック以外は基礎点は満額入っており、結果的に大きな痛手にはなっていないとも言えます。

 

○3回転以上-3回転トーループ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US International SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.97 13.08 3.400
US International FS 9 3Lz+3T   11.11 x 0.98 12.09 1.600
Skate America SP 4 3Lz+3T   11.11 x 2.11 13.22 3.556
Skate America FS 7 3Lz+3T   11.11 x 1.60 12.71 2.667
Russian Nationals SP 4 3Lz+3T   11.11 x 2.11 13.22 3.556
Russian Nationals FS 7 4Lz+3T   17.27 x 3.78 21.05 3.222
Russian Nationals FS 8 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.51 10.60 -0.889
Europe Championships SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.85 12.96 3.111
Europe Championships FS 9 3Lz+3T   11.11 x 1.52 12.63 2.556
Olympic Games SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.77 12.88 2.889
Olympic Games FS 7 4Lz+3T   17.27 x 2.63 19.90 2.222

セカンド3回転はトゥルソワ選手にとっては容易ジャンプなのでしょうか。11回飛んでGOEマイナスは1回だけです。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US International FS 8 4Lz+1Eu+3S< 16.98 x -4.98 12.00 -4.000
Skate America FS 8 3F!+1Eu+3S ! 11.11 x 0.45 11.56 0.778
Russian Nationals FS 4 4Lz+1Eu+3S   16.30   3.12 19.42 2.778
Europe Championships FS 8 3Lz+1Eu+3S   11.77 x -1.18 10.59 -2.000
Olympic Games FS 9 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.43 13.20 2.333

3連続ジャンプに4回転を入れるという無茶苦茶な構成があったりしますが、ロシア選手権ではそれを決めました。普通の3-1-3でヨーロッパ選手権はミスが出ていたり、意外とこの要素は安定していないようです。基本的に4回転4本飛んだあとあるいは4本目そのもの、だったりするわけで、確かにつらいよな、とは思います。ロシア選手権のスコア19.42ってなんだろう? みたいな数字です。

 

○回転不足要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US International FS 7 4Lz< 10.12 x -4.29 5.83 -4.600
US International FS 8 4Lz+1Eu+3S< 16.98 x -4.98 12.00 -4.000
Europe Championships FS 7 4Lz<< <<  6.49 x -2.95 3.54 -5.000
Olympic Games SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000

あれだけ4回転を飛びまくるトゥルソワ選手ですが、今シーズンの50回あったジャンプ要素のうち、回転不足で基礎点を削られたのは4回しかありませんでした。4回転ルッツからみが3つとトリプルアクセル1つ。それ以外は転倒したりステップアウトしたり成功率が高いとは言えないものの、基礎点が削られるケースはあまりないようです。

 

 

オリンピックでついにファイブクワッドを揃えたトゥルソワ選手。しかしながら金メダルにはわずかに届きませんでした。私だけ何も持っていない、と叫んだとか叫ばなかったとか聞きますが、シニアに上がってからはグランプリファイナル3位、世界選手権3位、ヨーロッパ選手権2度3位、そしてオリンピックは2位。ついでにロシア選手権も2位2回に3位2回。あまりこういう言われ方はしていないですが、ブロンズコレクター、シルバーコレクターという状態になっています。

オリンピックは終わりました。次のオリンピックは4年後。そしていま、国際大会には出られない。欲しいものは得られなかった。

これから先の彼女の人生はどうなっていくのでしょう?