NHK杯 3カテゴリー制覇はならず

グランプリシリーズ5戦目はNHK杯でした。日本開催、日本のトップ選手が集まっているのでここでも3カテゴリー制覇となるかと思いましたが、今回は2カテゴリーまで。これまででしたら2カテゴリー制覇は普通に男女シングルね、という感じですが、時代は変わりまして、まさかの女子シングルが取れずの男子シングルとペアという2カテゴリーの制覇となりました。また、ファイナル進出券の争奪戦も佳境に入ってきています。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Shoma UNO JPN 279.76 91.66 188.10
2 Sota YAMAMOTO JPN 257.85 96.49 161.36
3 Junhwan CHA KOR 254.76 80.35 174.41
4 Kazuki TOMONO JPN 251.83 85.07 166.76
5 Adam SIAO HIM FA FRA 250.45 87.44 163.01
6 Matteo RIZZO ITA 240.76 78.57 162.19
7 Nika EGADZE GEO 232.86 84.47 148.39
8 Stephen GOGOLEV CAN 221.02 69.01 152.01
9 Gabriele FRANGIPANI ITA 212.31 68.78 143.53
10 Conrad ORZEL CAN 202.69 73.10 129.59
11 Maurizio ZANDRON AUT 201.72 68.21 133.51
12 Tomoki HIWATASHI USA 185.05 57.18 127.87

男子シングル、最終的には順当に宇野昌磨選手が優勝しました。スケートカナダからスコアは伸ばしてきています。グランプリ通算8勝目。これで日本人男子の最多優勝回数に並びました。2戦2勝でファイナル進出決定です。グランプリファイナルはこれで5回目の出場になります。

2位にはショート首位の山本草太選手が残りました。中盤以降、これは危ないか? とひやひやしましたが何とか踏みとどまって2戦連続2位で初のファイナル進出です。フランス杯では257.90 2戦してその差が0.05というのもなかなかないです。

3位にチャジュンファン選手が入ってきました。これでグランプリシリーズ5回目の3位。3位が多いチャジュンファン選手。今シーズンは3位が2つで理論上ファイナルの可能性が残ってはいますが、順当にいけば補欠の1番手ないしは2番手になる見込みです。フリーはいい演技を見せていて世界選手権でメダルを狙ってくるくらいの位置には今シーズン入ってきそうです。

友野選手は4位。これが3位に残っていれば16年ぶりのNHK杯日本勢表彰台独占でした。3位が2つなら代打の神様の法則が発動しそうだったのですが、2戦して3位4位だと補欠もなしの見込みでファイナル出場は来年以降に持ち越しとなりました。

フランス杯優勝のアダムシャオイムファ選手は5位でした。悪く無い演技ではあったのですがフランス杯のような強さは感じられず。4位に入ればファイナルほぼ確定だったのですが5位だと最終戦次第。主に佐藤駿選手の結果待ちになります。

もう一人ファイナルの可能性があったマッテオリッツォ選手はフリーで盛り返しましたが6位に終わりました。残念ながら地元イタリアでのファイナル進出は果たせませんでした。

 

宇野昌磨選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Lo   10.50   3.45 13.95 3.111
2 4S   9.70   2.08 11.78 2.000
3 2F   1.80   0.00 1.80 0.111
4 3A+2A+SEQ   11.30   2.06 13.36 2.556
5 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
6 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.778
7 4T   10.45 X 1.49 11.94 1.556
8 4T+2T   11.88 X 1.22 13.10 1.222
9 3A   8.80 X 2.17 10.97 2.556
10 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.778
11 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 2.889
12 CSSp3   2.60   0.78 3.38 3.000
  TES   80.03   18.26 98.29  

宇野選手は4回転5本構成です。フリップは決まらず。トリプルアクセル2本も決め、大きなミスはフリップくらいに一見見えるのですが、3連続が入っていなかったりセカンド3回転が無かったりと基礎点が予定より大きく削られています。ただ、転倒はなくGOEマイナスがなかったことで加点は大きく膨らみました。

セカンド3回転がなかなか付けられないという課題は今も残ったままのようです。3連続ジャンプは最後のトリプルアクセルに付けられたと思うのですが、なぜつけなかったのでしょう? 今シーズン3試合、3連続がどれも入っておらず、セカンド3回転だけでなく、3連続も課題になってきています。

冒頭の4回転ループは平均GOE+3.111の美しいジャンプでした。今シーズンの4回転ループとして全選手の中で今のところこれが最高評価です。

ファイナルでマリニン選手らを打ち破って初のファイナル戴冠するにはセカンド3回転と3連続が鍵になってきそうに見えます。

 

○山本草太選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4S   9.70   2.63 12.33 2.556
2 4T+3T   13.70   1.36 15.06 1.444
3 4T   9.50   1.36 10.86 1.444
4 3Aq q F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
5 FCSp4   3.20   0.73 3.93 2.222
6 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.333
7 3A+REP F 6.16 X -4.00 2.16 -5.000
8 3F+3T* * 5.83 X -1.29 4.54 -2.556
9 3Lz!+1Eu+3S ! 11.77 X -0.17 11.60 -0.333
10 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.000
11 CSSp4   3.00   0.94 3.94 3.000
12 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
  TES   80.66   0.41 81.07  

本草太選手は4回転3本構成。その3本は成功させたのですが中盤以降崩れました。トリプルアクセルで2転倒、リピートになっているのも痛いです。そのあとでコンビネーション入れてトリプルトーループが3つ目の繰り返しジャンプになってキックアウト。試合終わった後に日本人3選手でジャンプ数えてる姿は微笑ましかったですが、飛んだ瞬間は、これでファイナル吹き飛んだかと思いました。何とか最後にリカバリー3連続を決めてファイナルを確保しています。おそらくトリプルアクセルがリピートになったことで、コンビネーションをもう1回使ってリカバリーしなきゃというところが、2回飛ぶジャンプもう1回使えるという勘違いが生じてしまったのではないかと思われます。予定では3F+2Aでしたからその場の勢いで3回転にとかではなく、意図的にダブルアクセルに行かずにトーループにしてしまっています。フランス杯はトリプルアクセルが抜けて1回転半になり、次のところで2Aを3Tに変えて成功してましたから、同じことをしようとした勘違い。成功体験があだとなったように見えます。

基礎点80.66は結果的に宇野選手は上回っています。出来栄え差で点差がだいぶつきました。ただ、トリプルアクセルしっかり降りて、3Tザヤックミスをなくしてちゃんと2Aにしていたら優勝まであり得ました。4回転3本降りた時にはそれが見えたのですが、トリプルアクセルが残念。あと一歩でした。

シーズンベスト順位は今のところ7位。ファイナルで表彰台を目指すにはノーミスに近いところで勝負する必要があります。

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T+3T   13.70   2.04 15.74 2.111
2 2S   1.30   0.04 1.34 0.333
3 4T F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
4 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.556
5 CSSp4   3.00   0.56 3.56 1.889
6 FCSp4   3.20   0.55 3.75 1.667
7 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.889
8 3A+1Eu+3S   14.08 X 1.60 15.68 2.000
9 3F+2T   7.26 X 0.91 8.17 1.556
10 3A   8.80 X 1.37 10.17 1.667
11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.333
12 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.889
  TES   76.14   7.40 83.54  

友野選手も4回転3本構成です。サルコウは抜けて2回転になり、トーループは2本目が転倒でした。トリプルアクセル2本は成功。3連続、セカンド3回転はついて基礎点76.14 もう少し出せますが大崩れはしなかったという形です。結果的には4回転サルコウを決めていれば2位でファイナル可能性が出ていたわけですから、今回もまたあと一歩で惜しいところを逃しています。昨年から、あと一歩というのが多いです。

スピンステップはすべてレベル4を確保。以前はスピンのレベルが全然取れないことが多かったですが、その辺のレベルの取りこぼしは減っています。

9番目の要素の3F+2Tが新ルール的にはもったいなく、これを3F+2Aにすれば基礎点が2.20上がります。同じ4回転3本でもシークエンス2Aが標準装備をした山本草太選手と比べてその分さが出ます。世界選手権の代表を争う全日本選手権ではその辺が効いてくる可能性もあります。

 

○男子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Shoma UNO 279.76 134.18 93.73 13.62 24.38 14.85
2 Sota YAMAMOTO 257.85 123.32 96.86 2.37 24.82 12.48
3 Junhwan CHA 254.76 125.49 92.95 -2.13 24.71 14.74
4 Kazuki TOMONO 251.83 126.27 89.80 0.45 23.06 14.25
5 Adam SIAO HIM FA 250.45 124.24 87.93 0.92 23.46 13.90
6 Matteo RIZZO 240.76 121.61 81.80 0.80 23.47 13.08
7 Nika EGADZE 232.86 110.94 97.72 -5.34 20.50 10.04
8 Stephen GOGOLEV 221.02 108.27 75.65 3.69 22.41 11.00
9 Gabriele FRANGIPANI 212.31 108.45 80.42 -5.59 19.64 10.39
10 Conrad ORZEL 202.69 102.80 82.31 -12.06 20.13 9.51
11 Maurizio ZANDRON 201.72 101.05 79.53 -6.49 17.56 10.07
12 Tomoki HIWATASHI 185.05 102.96 61.52 -8.13 18.99 10.71

PCSは宇野選手一人だけ抜けていました。ただ1項目平均9.00にはわずかに届かず、本人比では特別よかったわけではありません。その下は125点前後で固まっています。

ジャンプの基礎点はトータルスコアが7位になったニカエガゼ選手がトップです。山本選手は2番目。素直にセカンドジャンプを2Aにしておけばジャンプ基礎点100点に乗ったのですが、飛びすぎ零点でこのスコアになりました。

ジャンプの加点はさすがの宇野選手が一人だけ二桁もらっています。ここの差がやはり大きい。フリー頑張ったゴゴレフ選手が2番目、山本草太選手は3番目です。マイナスになる選手がどうしても大きい項目です。

スピンは山本草太選手がトップでした。ファイナル出場決定者の中では今シーズントップになります。チャジュンファン選手、宇野選手までが24点台入りました。

ステップ系要素は宇野選手がトップでチャジュンファン選手、友野一希選手まで14点台でした。山本選手はショートもフリーもステップレベル3でここの要素は伸びませんでした。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yelim KIM KOR 204.49 72.22 132.27
2 Kaori SAKAMOTO JPN 201.87 68.07 133.80
3 Rion SUMIYOSHI JPN 193.12 68.01 125.11
4 Audrey SHIN USA 189.00 65.87 123.13
5 Rinka WATANABE JPN 188.07 58.36 129.71
6 Seoyeon JI KOR 184.14 62.92 121.22
7 Niina PETROKINA EST 180.29 58.81 121.48
8 Seoyeong WI KOR 176.74 61.06 115.68
9 Starr ANDREWS USA 174.06 64.13 109.93
10 Olga MIKUTINA AUT 173.36 56.95 116.41
11 Amber GLENN USA 169.36 52.04 117.32
12 Eva-Lotta KIIBUS EST 162.37 48.56 113.81

女子シングルは韓国のキムイェリム選手がグランプリシリーズ初優勝となりました。韓国勢のグランプリシリーズ優勝は2009年のキムユナさん以来です。キムユナさんは14年のソチオリンピックまで現役でしたが、グランプリシリーズには2010年以降出場しませんでした。層の厚い韓国勢ですが優勝は久しぶりとなります。キムイェリム選手はこれでファイナル進出確定です。今シーズンは全6戦で20代選手の優勝となるかと思いましたが、19歳のキムイェリム選手が優勝したことでそれはなくなりました。

坂本花織選手は2位。これまで日本女子はグランプリシリーズ6戦のうち3勝したシーズンはなんどかあるのですが4勝したことはありません。ここでそれを達成するかと思われたのですが、世界チャンピオンのまさかの敗北。随所に強さは見せてはいたものの、全体的には精彩を欠いた演技だったかと思います。全日本でこの出来だと、年明けてからがユニバーシアードで終わってしまう可能性もあるのですが、流石に12月には合わせてくるでしょうか。

住吉りをん選手が2戦連続3位表彰台を確保しました。素晴らしいと見るか惜しかったと見るか。上位がこの出来だったのでノーミスなら優勝までありました。3位2つだとファイナルにはおそらく届かないです。ただ、補欠1番手に残る可能性はかなりあり、アジア選手のファイナル進出者が多いので、現代の事情によりコロナ欠場代役が回ってくる可能性はそれなりにあるかと思います。

4位にオードリーシン選手。アメリカ勢では今シーズンレビト選手が少し抜けていますがその下は混戦です。190点近い点数まで出してきましたので全米選手権表彰台からの世界選手権チャンスもあるかと思います。

渡辺倫果選手はフリーで盛り返して5位に残りました。ファイナルはぎりぎり。渡辺選手的には抜けてる選手が2人くらいいて後はほどほど、みたいな試合が望ましかったのですが、ショートで中位に固まって混戦になるのは最悪の展開。それを何とかフリーで抜け出して5位まで持ってきました。日本女子は1位5位のファイナルに縁があって、2009年鈴木明子さん、2014年本郷理華さん(補欠繰上り、2017年宮原知子さん(補欠繰上り)と3例もあります。最終戦の特にグバノワ選手次第ですが高確率でファイナルに進めるところに何とか残りました。

 

○坂本花織選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.41 4.71 4.333
2 3Lz! ! 5.90   0.25 6.15 0.444
3 3S   4.30   0.92 5.22 2.111
4 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.222
5 3F+2T   6.60   1.29 7.89 2.444
6 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.556
7 3Fq+3Tq q 10.45 X -2.35 8.10 -4.222
8 FSSp4   3.00   0.51 3.51 1.778
9 2A+3T+2T   9.68 X 1.20 10.88 2.889
10 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.667
11 1Lo   0.55 X -0.04 0.51 -0.778
12 FCCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
  TES   57.08   7.38 64.46  

坂本選手のフリーはいつもの構成ですが後半崩れました。3-3のコンビネーションはしかたないとして、最後のループが抜けたのが致命傷でNHK杯3連覇を逃した形です。ループは元来得意な要素なはずでしたが今回はすっぽ抜けました。

冒頭のダブルアクセルはさすがで、平均GOE+4.333はスケートアメリカに続いて今シーズン全体のダブルアクセル最高評価です。今シーズン坂本選手はジャパンオープン含めて5回、平均GOEで+4.000以上のダブルアクセルを飛んでいますが、他に+4.000以上のダブルアクセルを飛んだ選手はいません。

とはいえ、ジャンプの抜け1つと-4を下回るコンビネーション1つあると、さすがにスコアは伸びてきませんでした。

 

○住吉りをん選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T<< <<  F 4.20   -2.10 2.10 -5.000
2 3Lo   4.90   0.91 5.81 1.889
3 FCCoSp3   3.00   0.64 3.64 2.111
4 3F+3T   9.50   1.29 10.79 2.444
5 3Lz   5.90   0.84 6.74 1.333
6 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
7 2A+3T   8.25 X 1.26 9.51 3.000
8 3F+2T+2Lo   9.13 X -1.06 8.07 -2.000
9 3S<< <<  F 1.43 X -0.65 0.78 -5.000
10 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
11 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.222
12 CCoSp3   3.00   0.81 3.81 2.667
  TES   58.91   5.15 64.06  

住吉選手、冒頭4回転トーループに挑みましたがダウングレードの転倒になりました。単純計算でこれを決めていれば2位。また、決めないまでも回転足りての転倒で、最後のサルコウを平均GOE+2.68以上で決めていればやはり2位でした。2位に入っていれば高確率でファイナル進出だったわけで、非常に惜しかったとも言えます。

フランス杯に続いて190点台前半をマーク。200点が見えているのですがなかなか届きません。今回基礎点は58.91 フランス杯のフリーの67.67からだいぶ落としました。ノーミス基礎点は68.51 4回転含めてノーミスなら技術点80点超えが見えていて、トータル145点、総合で210点台まではあります。一度も決めたことのない4回転を全日本で決められる、と考えるのは虫が良すぎるかもしれませんが、それをトリプルアクセルでやってのけたのが渡辺倫果選手なわけで。同じように4回転で住吉選手がそれをやり遂げると、一気に世界選手権代表もありえます。

 

○渡辺倫果選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -0.46 7.54 -0.556
2 3Lo   4.90   1.12 6.02 2.444
3 3Lo+3T   9.10   1.19 10.29 2.444
4 3F!< ! 4.24   -2.06 2.18 -4.778
5 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.556
6 ChSq1   3.00   0.93 3.93 1.889
7 3Lz+2A+SEQ   10.12 X 1.43 11.55 2.444
8 2A+1Eu+3S   8.91 X 1.17 10.08 2.667
9 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.889
10 1Lz   0.66 X -0.23 0.43 -3.778
11 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.111
12 FSSp4   3.00   0.77 3.77 2.556
  TES   61.93   5.99 67.92  

フリーはトリプルアクセルを下りました。7.54取れれば十分です。フリップはもともと苦手で下手するとトリプルアクセルより成功率低いという課題ジャンプなのである種想定の範囲内です。最後のルッツも課題で213点出したロンバルディア杯でもこのジャンプは決められずにいました。最近の課題がそのまま出たのがこのフリーだったように見えます。最後のルッツ抜けでファイナルを失いかねないところでしたが何とか生き残りました。ただ、決めていれば今回で確定まで行けたわけですからやはり残念ではあります。

フリーはまだなんとかある程度の結果を出せているのですが問題はショート。ジャンプ3本が揃わないのはまだしも2本も決まってこない試合が結構あります。東京選手権ではショート54.69 最悪、全日本でショート落ちまでありえるスコアです。シーズンベストは国内で68.31まではあります。ただグランプリファイナルで勝負しようとしたら70点台が欲しいところ。トリプルアクセル持ちなのでショートから決めてきめてフリーもそろえると、この間まで無名だった選手がいきなりファイナル制覇もあります。一方で、ショート次第では一人だけ蚊帳の外もある。読めない選手ですが、そこが今の渡辺選手の一つの魅力かもしれません。

 

○女子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Yelim KIM 204.49 99.48 65.06 4.88 23.49 12.58
2 Kaori SAKAMOTO 201.87 103.02 59.51 1.31 24.06 13.97
3 Rion SUMIYOSHI 193.12 93.17 62.60 1.96 23.23 14.16
4 Audrey SHIN 189.00 92.81 56.92 2.47 22.93 13.87
5 Rinka WATANABE 188.07 91.38 62.43 -0.03 22.44 12.85
6 Seoyeon JI 184.14 82.56 65.70 6.35 19.80 9.73
7 Niina PETROKINA 180.29 88.35 57.98 0.08 22.12 12.76
8 Seoyeong WI 176.74 84.71 64.58 -2.97 21.01 10.41
9 Starr ANDREWS 174.06 88.87 52.66 -2.34 23.22 12.65
10 Olga MIKUTINA 173.36 85.61 55.91 -2.81 22.98 12.67
11 Amber GLENN 169.36 89.07 56.31 -8.23 21.32 11.89
12 Eva-Lotta KIIBUS 162.37 82.38 53.88 -0.91 16.05 10.97

PCSはさすがの坂本選手がトップ。ただ103.02は本人比では平凡です。各選手、今大会はあまりPCSが伸びていませんでした。

ジャンプの基礎点は6位に入ったチソヨン選手がトップ。ジャンプの加点もトップで今大会は良くジャンプを決めていました。キムイェリム選手がどちらも2番目。韓国勢の安定したジャンプが今大会は決まっていました。ジャンプの基礎点3番目も韓国のウィソヨン選手でしたが、こちらはGOEはマイナスでした。渡辺倫果選手はショートフリーでトリプルアクセルを入れながら基礎点は5位。ジャンプの抜けで高難度ジャンプを生かしきれませんでした。坂本選手は加点が今回はあまり得られず優勝を逃したかたちです。

スピンは坂本選手がトップ。キムイェリム選手、住吉選手と表彰台勢が続きます。ジャンプでトップのチソヨン選手がスピンは11位でステップが12位。ジャンプ以外のスコアを稼げるようになると、韓国代表の座が近づいてきます。

ステップのトップは住吉選手で14.16 国際大会で2試合続けて14点台を出し、ステップで高い評価を得ています。

 

次週はフィンランドで最終戦です。女子では4位以内でファイナル確定の三原舞依選手、ルナヘンドリックス選手、2位以内でファイナルに進めるグバノワ選手に、201.34以上のスコアで優勝してグバノワ選手が3位以下なら大逆転ファイナルという可能性が残る紀平梨花選手が出場。日本からはもう一人、河辺愛菜選手もエントリーです。なお、上記の4つのうち成立するのが2つまでの時に渡辺倫果選手がファイナル進出ですので、三原、ヘンドリックス、両選手に頑張って上位2位まで占めてもらいたいというのが渡辺選手の立ち位置になります。興業的にも一人トリプルアクセルジャンパーに入っていてもらいたいところかもしれません。紀平選手はファイナルとは別に全日本に向けてどの程度調整が進んでいるのかとう観点でも非常に注目が集まるところです。

男子は4位以内でファイナルのマリニン選手、5位でも他の選手次第で可能性はあります。佐藤駿選手は2位以内必須でかつメッシング選手が優勝しなければファイナル、優勝してもマリニン選手が5位以下ならファイナル、キーガンメッシング選手は優勝でファイナルの他に、壷井達也選手、プルキネン選手も優勝ならスコア次第で大逆転ファイナルも理論上あります。NHK杯で2戦終わったアダムシャオイムファ選手は上記のうち2例以上満たされるとファイナルに進めないので、佐藤駿選手の結果が鍵となります。

他に、日本からは本田ルーカス剛史選手がエントリー。海外勢では初戦大崩れしたクビテラシビリ選手や、初戦は棄権したケビンエイモズ選手といった有力選手もエントリーしています。