四大陸選手権 男子シングル 最年長vs最年少

どんなメンバーが派遣されるか? というところで毎回装いが変わってくるのが四大陸選手権です。男子は、マリニン選手がシニアの大きなタイトルを獲りに来るかと思っていましたが結局全米4,5,6位と肩透かし。日本も世界選手権組を派遣しなかったこともあり、ショートでは日加米中韓という5大国から1人づつ上から並ぶという面白い展開になりました

 

○男子シングル(上位12名)

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kao MIURA JPN 281.53 91.90 189.63
2 Keegan MESSING CAN 275.57 86.70 188.87
3 Shun SATO JPN 259.14 80.81 178.33
4 Junhwan CHA KOR 250.14 83.77 166.37
5 Mikhail SHAIDOROV KAZ 237.14 72.43 164.71
6 Sihyeong LEE KOR 227.79 70.38 157.41
7 Boyang JIN CHN 227.47 85.32 142.15
8 Conrad ORZEL CAN 226.10 80.09 146.01
9 Jimmy MA USA 221.04 86.64 134.40
10 Maxim NAUMOV USA 218.71 75.96 142.75
11 Koshiro SHIMADA JPN 217.85 74.06 143.79
12 Jaeseok KYEONG KOR 211.98 75.30 136.68

17歳の三浦佳生選手がショートフリー共に1位で初優勝。ネイサンチェン選手を下回っての史上最年少優勝となりました。フリーは最終滑走、重圧のかかる局面でしたが今季初のノーミス。素晴らしい野獣でした。

2位には今季限りの引退表明をしているキーガンメッシング選手が入りました。31歳。おそらくこの試合含めて残り2戦となるのだろうと思いますがこの275.57はパーソナルベストになります。これまでグランプリシリーズの表彰台はありましたが、ジュニアシニアのファイナルに世界ジュニアや世界選手権含めチャンピオンシップの表彰台はなく、これが初表彰台になります。ここまで来たら勝たせてあげたかった、という気分にもなりました。

佐藤駿選手が3位表彰台です。ショートでミスが出ましたがフリーはいい出来でした。フリーはワールドユニバーシティゲームズ以外は今シーズンかなり良くて170点はコンスタントに超えてくるのですが、結局最後までショートが決まらずでした。2本そろえば頂点が狙える試合だったのですが、そういう意味では残念でした。

昨年のチャンピオンチャジュンファン選手は4位。ショートではセカンドループでミスが出て転倒。フリーも4回転で1つ転倒。ほどほどの演技ながらこのスコアまで来るあたりはさすがと言えばさすがです。世界選手権の悲願のメダルを向けて、途中経過としてはそれほど悪くないのかな、とも思います。

5位にはカザフスタンのシャイドロフ選手が入りました。これで2年連続5位です。237.14はパーソナルベスト。今季はチャレンジャーシリーズ2試合に出ていますがグランプリシリーズの出場は無し。来シーズンはグランプリ枠回って来るでしょうか

6位には韓国のイシヒョン選手が入ってきました。ショート14位からの大ジャンプアップでチャンピオンシップ大会の最高成績を出しています

復帰戦のボーヤンジン選手は7位。回復途上なようで構成はまだだいぶ抑えめですが、4回転が入るところまではきました。世界選手権に期待です。

日本からのもう一人、島田高志郎選手は11位に終わりました。結果的にフリーはシーズンワースト。せっかくのおチャンスを生かしきれない形となりました。

 

○三浦佳生選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A+1Eu+3S   12.80   2.86 15.66 3.667
2 4T+3T   13.70   3.12 16.82 3.444
3 4S   9.70   -0.42 9.28 -0.222
4 FCSp4   3.20   0.32 3.52 0.889
5 3A   8.00   0.80 8.80 1.111
6 StSq2   2.60   0.67 3.27 2.667
7 4T   10.45 x 3.66 14.11 3.667
8 3F+2A+SEQ   9.46 x 1.36 10.82 2.556
9 3Lo   5.39 x 1.47 6.86 2.889
10 CSSp3   2.60   0.63 3.23 2.222
11 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
12 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
  TES   84.40   17.62 102.02  

冒頭はトリプルアクセルからの3連続で4回転は全体で3本の構成でした。予定構成は冒頭4回転ループで出していましたが、ループなし構成で滑っています。2回飛ぶジャンプは4回転トーループトリプルアクセル。シークエンスアクセルも入って4回転3本構成としては基礎点高くなる構成を組めています。

8つ目の要素の時に、あれ、アクセルの体勢? トリプルアクセル2本飛んだよね? ダブルアクセル跳ぶの??? という入りからの、急遽思い直してのフリップ-アクセル。8番目の要素は冒頭4回転ループの時にはここでトリプルアクセルのコンビネーションという場所でしたので、おそらくその感覚で入っていってしまったのだろうと思います。あそこでトリプルアクセル跳んでいたらザヤックルールでキックアウトされて優勝を逃している、という場面でした。あれは、GOEの加点要素である、独創的な入り方にカウントされるんでしょうか???

コレオシークエンスの平均GOE+4.000が非常な驚きでした。三浦選手は国際大会だけでなく国内大会含めてもコレオシークエンスで+3台も出したことがありませんでした。それが3を飛び越えて一気に4までもらいました。+5を付けたジャッジも2人。最終滑走でここまでの流れもいいという中の終盤のコレオ。大変高い評価を受けました。

四大陸のタイトルをもっての世界ジュニア、というよくわからない流れになっていますが、そこでもタイトルを獲りつつ、後輩たちのために来季の3枠を取ってきていただければと思います。コロナ無ければ、スーパースラムチャンスがあった選手のような気がしているのですが、ジュニアグランプリシリーズをまともに経験することなく(中学2年のシーズンに1試合は出ていますが)シニアのタイトルを手に入れるという珍しい形になりました。

 

キーガンメッシング選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T+2T   10.80   2.85 13.65 3.000
2 4T   9.50   3.66 13.16 3.778
3 3A   8.00   -0.46 7.54 -0.667
4 3Lo   4.90   1.33 6.23 2.667
5 FSSp3   2.60   0.93 3.53 3.444
6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
7 3A+2T   10.23 x 2.40 12.63 2.889
8 3Lz+3T   11.11 x 1.77 12.88 3.000
9 3F! ! 5.83 x 0.38 6.21 0.667
10 FCCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
11 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.667
12 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
  TES   76.87   19.12 95.99  

素晴らしい出来だったメッシング選手のフリー。4回転トーループ2本、トリプルアクセル2本という構成です。2本目の単独4回転トーループは今シーズンの全選手の4回転トーループの中で最高評価です。これと同じ平均GOE+3.778の4回転トーループは今シーズンもう1例あって、それもメッシング選手でスケートカナダのフリーのものでした。

さらにはコレオシークエンスの平均GOE+4.667も今シーズンの全選手中最高評価です。とにかく非常に素晴らしいフリーでした。メッシング選手人生最高のフリーかもしれません。

野暮なこと言いますが、スコア的には残念な部分もありまして、今回3連続がありませんでした。予定では3つ目の要素のトリプルアクセルのところが3連続なのですがそれが入らず、7番目の要素でリカバリーに行かずダブルトーループを付けた時点でおそらく3連続を入れるのはあきらめたかと思います。ここで3連続入っていればフリー190点台で1位まで出ました。さらにスピンのレベル3が1つ、フリップの!まで外す真ノーミスであればスコア的には優勝出来ていました。

滑り終わった時点では、これは勝った、と思いましたが、結局届かず。惜しい試合でしたが、大変すばらしい滑りでした。

 

○佐藤駿選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Lz   11.50   3.78 15.28 3.333
2 4T+2T   10.80   2.17 12.97 2.333
3 3A+1Eu+3S   12.80   1.60 14.40 2.000
4 FCSp4   3.20   0.59 3.79 1.778
5 4T   9.50   2.99 12.49 3.222
6 CSSp4   3.00   0.90 3.90 3.000
7 3A   8.80 x 1.37 10.17 1.667
8 3F!+2T ! 7.26 x -0.23 7.03 -0.444
9 3Lo   5.39 x 0.98 6.37 1.889
10 StSq2   2.60   0.45 3.05 1.778
11 ChSq1   3.00   0.79 3.79 1.556
12 CCoSp3   3.00   0.47 3.47 1.556
  TES   80.85   15.86 96.71  

佐藤駿選手はルッツ付きの4回転3本構成。2回飛ぶジャンプは4回転のトーループトリプルアクセルでした。4回転ルッツの平均GOE+3.333は今シーズンの全選手の中で最高評価の4回転ルッツとなっています。これにより歴代の日本人選手の中での4回転ルッツ最高評価ともなりました。

トータル基礎点が80.85 4回転3本でルッツ入りなのに、同じ4回転3本の三浦佳生選手より基礎点が3.55も低くなっています。1番大きな理由はセカンド3回転が入っていないこと。2つ目のコンビネーションのところで3回転付けられるように見えたのですが2回転にしていました。あとは、後半ステップやスピンでレベルが取れませんでした。GOEもあまり伸びていません。自分からジャンプを取ったら何も残らない、というようなことを言っているようですが、立ち居振る舞い雰囲気からすると、ステップやコレオで迫力ある滑りができるんじゃないかと思うんですけどね。今回のレッドバイオリンとか、ジュニアグランプリファイナルのロミオとか、結構似合っていていいと思うのですが。

この後チャレンジカップに出るようですが、その辺はある種気軽に楽しんできていただければと思います

 

○島田高志郎選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Sq q 9.70   -1.66 8.04 -1.667
2 3T   4.20   0.12 4.32 0.444
3 3A+2T   9.30   -1.60 7.70 -1.667
4 3Lo   4.90   0.84 5.74 1.778
5 StSq2   2.60   0.74 3.34 2.778
6 FSSp4   3.00   0.86 3.86 2.556
7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.43 9.34 1.000
8 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.222
9 3F! ! 5.83 x -0.68 5.15 -1.222
10 3Lz+2A+SEQ   10.12 x -1.69 8.43 -2.889
11 CCoSp3V   2.25   0.00 2.25 0.111
12 FCCoSp4   3.50   0.20 3.70 0.333
  TES   67.31   -1.30 66.01  

島田選手は4回転2種類2本構成なのですがトーループが3回転になりました。2回飛ぶジャンプは結果的になし。ダブルアクセルは2回飛んでますが。本来は7つ目の要素がトリプルアクセルで2本になるはずでした。従って元々2本飛ぶジャンプは1種類という構成です。これは、4回転のうちの片方を2本目でどこかに入れる未来がすぐ先にあるからそうしている、という理解にしておいていいのでしょうか? 少なくともセカンド3回転2本にする、という手はあるはずではあるのですけれど。

会場は盛り上がっていたんですけどねえ。国際大会での結果が次は欲しいところ。

今シーズンはあと3月にクープドプランタンに出るようです。シーズンベスト15位があるので来期のグランプリシリーズも枠は回って来ると思いますが、その確実度を上げるために、きっちり優勝してランキングも上げていただければと思います。

 

○男子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア(上位12名)

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kao MIURA 281.53 128.41 102.27 15.85 22.39 12.61
2 Keegan MESSING 275.57 136.89 88.98 10.25 25.26 15.19
3 Shun SATO 259.14 121.88 94.45 11.43 22.35 10.03
4 Junhwan CHA 250.14 127.13 86.81 -2.33 24.85 15.68
5 Mikhail SHAIDOROV 237.14 106.54 100.71 -0.81 19.54 11.16
6 Sihyeong LEE 227.79 108.01 88.27 -1.66 22.56 11.61
7 Boyang JIN 227.47 121.84 75.02 -1.87 22.23 11.25
8 Conrad ORZEL 226.10 103.53 90.15 1.44 20.06 10.92
9 Jimmy MA 221.04 117.64 71.60 -2.90 22.23 13.47
10 Maxim NAUMOV 218.71 114.12 78.65 -9.41 23.49 13.86
11 Koshiro SHIMADA 217.85 116.55 73.56 -4.47 20.53 11.68
12 Jaeseok KYEONG 211.98 105.59 77.40 -0.88 19.87 12.00

PCSはメッシング選手が圧倒的なトップで136.89 ただ一人平均9点超えです。2番目に三浦佳生選手がいます。チャジュンファン選手が3番目でした。

ジャンプの基礎点は三浦佳生選手がトップ。2番手のシャイドロフ選手までがジャンプ基礎点100点超えです。佐藤駿選手は3番目。ショートが4回転1本、フリーでセカンド3回転無し、ということで三浦選手と差があります。

ジャンプの加点は上位3選手が二桁。三浦選手、佐藤選手が高いですが、ジャンプのイメージではないメッシング選手も出来栄えは高いものをもらっていました。それ以外の選手がジャンプGOEがプラスなのは8位に入ったカナダのオーゼル選手と、表にはありませんが13位のゴゴレフ選手のみ。高い順位には入ってこられませんでしたが、カナダは3選手ともジャンプのGOEがプラスでした。

スピンはメッシング選手がトップでチャジュンファン選手が2番目。この辺は印象通りです。

ステップ系要素はチャジュンファン選手がトップでメッシング選手が2位でした。佐藤駿選手は10.03と低いスコア。今シーズンは国際大会で最高でも11.12しかありません。もう少しここの差を埋めてほしい佐藤駿選手だったりします。

 

男女合わせて1つのエントリーにするつもりでしたが、分量がだいぶ多くなったので男子だけで終わって女子は別エントリーとします。

最後は31歳メッシング選手と17歳三浦佳生選手の闘い。メッシング選手が勝てば初の30代チャンピオンで最年長記録更新でしたが、勝ったのは三浦佳生選手で最年少記録更新となりました。日米のトップは不在でしたが、十分に楽しめる男子シングルでした。