グランプリファイナル23 女子シングル展望

ジュニアが終わりましたので続いてシニア。今回はシニアの女子シングルになります。

 

○今季の成績

Event Pl Name Nation Total SP FS
Skate Canada 1 Kaori SAKAMOTO JPN 226.13 75.13 151.00
Skate America 1 Loena HENDRICKX BEL 221.28 75.92 145.36
Skate America 2 Isabeau LEVITO USA 208.15 70.07 138.08
Grand Prix Espoo 1 Kaori SAKAMOTO JPN 205.21 69.69 135.52
Cup of China 1 Hana YOSHIDA JPN 203.97 64.65 139.32
Grand Prix de France 1 Isabeau LEVITO USA 203.22 71.83 131.39
Autumn Classic 1 Kaori SAKAMOTO JPN 203.20 75.62 127.58
Cup of China 3 Loena HENDRICKX BEL 201.49 70.65 130.84
Grand Prix de France 2 Nina PINZARRONE BEL 198.80 65.74 133.06
Nebelhorn Trophy 1 Isabeau LEVITO USA 198.79 69.30 129.49
Grand Prix de France 3 Rion SUMIYOSHI JPN 197.76 61.72 136.04
NHK Trophy 3 Nina PINZARRONE BEL 194.66 63.44 131.22
Skate America 4 Hana YOSHIDA JPN 190.98 59.40 131.58
Grand Prix Espoo 2 Rion SUMIYOSHI JPN 190.21 68.65 121.56
Lombardia Trophy 2 Hana YOSHIDA JPN 185.45 62.54 122.91
Shanghai Trophy 4 Nina PINZARRONE BEL 181.06 59.21 121.85
Lombardia Trophy 9 Nina PINZARRONE BEL 155.43 47.41 108.02

グランプリシリーズに限らず今季出場した国際大会を全て並べています。ただしジャパンオープンは含めません。

シーズンベストが今季はすでに220点超えが2人います。坂本選手とヘンドリックス選手。ただし、セカンドベストはだいぶ下がって200点台一桁です。200点台一桁のシーズンベストは2人、レビト選手と吉田陽菜選手。ピンツァローネ選手と住吉りをん選手は190点台のベストになります。

シーズンワーストで見ても坂本選手とヘンドリックス選手は200点を超えています。レビト選手は200点近い水準です。昨年も出場していたこの3人がやはり強そうです。続くのは吉田陽菜選手ですがワーストで見ると住吉選手の方が上です。ピンツァローネ選手は155.43で始まって、2戦目も181.06なところからよくグランプリ2戦でスコア上げてファイナルまでたどり着いたなという印象です。

 

ショートプログラムの構成

  Kaori  Loena  Isabeau  Hana  Nina  Rion 
SAKAMOTO HENDRICKX LEVITO YOSHIDA PINZARRONE SUMIYOSHI
1 2A 3F 3Lz!+3T 3A< 3Lz<+3T 2A
2 3Lz! 2A 2A 3Lz+3T 2A 3F+3T
3 FCSp4 CCoSp4 FCSp4 SSp4 FCSp3 CCoSp4
4 3F+3T 3Lz+3T< 3F 3Lo 3Lo 3Lz
5 LSp4 StSq4 CCoSp4 FCSp3 StSq3 LSp3
6 StSq3 FCSp4 StSq4 StSq3 CCoSp4 StSq4
7 CCoSp4 LSp4 LSp4 CCoSp4 LSp4 FCSp4
Base 32.35 32.09 32.53 33.99 29.91 32.29
TES 39.78 39.92 38.39 35.52 33.28 38.16
PCS 35.84 36 33.44 30.13 30.16 30.49
Total 75.62 75.92 71.83 64.65 63.44 68.65

ショートプログラムは基本的には似た構成が多いですが、その中で吉田陽菜選手だけトリプルアクセルが入っています。ただし、今期はショートでのトリプルアクセル成功率は0%です。以前は決まらなくても転倒が無いという安定感があったのですが、今シーズンは転倒も目立ちます。当たれば大きいですが当たらない確率の方が高いです。それでも見た目基礎点は吉田選手が1位になります。トリプルアクセルの要素はダブルアクセルとの比較になりますので、うまく決まらなくても転倒無しで4点ほど取れれば十分かと思います。

セカンド3回転はこのレベルなら常識でルッツから飛ぶかフリップから飛ぶかは分かれています。単独ジャンプがループになるのが吉田選手とピンツァローネ選手です。ピンツァローネ選手はミスもあって基礎点が30点に達していませんが、ノーミス比較でも6人中一番基礎点は低くなります。

PCSは坂本選手とヘンドリックス選手は9点平均程度取ってきます。レビト選手は33点台で2人に続いていて、残りの3人は30点を少し超えるくらいなので7.5平均程度までです。PCSで上位2人と下位3人は5~6点差が出ますので、吉田陽菜選手のようにトリプルアクセル入れて押し上げるようなことをしないとノーミス比較では差がついた状態でフリーを迎えることになります。

 

○フリーの構成

  Kaori  Loena  Isabeau  Hana  Nina  Rion 
SAKAMOTO HENDRICKX LEVITO YOSHIDA PINZARRONE SUMIYOSHI
1 2A 3Lz+3Tq 3Lz+3T 3Aq 3Lz+3T 2A+3T
2 3Lz 2A 2A 2A+3T 3F 4T
3 3S 3F 3F 3Lo 3S FCCoSp3V
4 CCoSp4 2A 2A FCCoSp4 3Lz 3Lzq
5 StSq4 CCoSp4 CCoSp3 3F! FCCoSp4 3Lo
6 3F+2T ChSq1 3Lz+1Eu+3S< 3Lz+3T 3Lo+2A+2T StSq3
7 FSSp3 3Lz+2T ChSq1 ChSq1 3Lo+2T 3F+3T
8 3F+3T 3F+2T+2Lo 3F+2T 3Lz 2A 2S+2T+2Lo
9 2A+3T+2T 3S 3Loq 3S+2A+1T CCoSp4 3F
10 ChSq1 FCCoSp4 FCSp4 CCoSp4 ChSq1 LSp4
11 3Lo StSq4 StSq4 StSq4 StSq3 ChSq1
12 FCCoSp4 LSp4 FCCoSp4 SSp4 LSp4 CCoSp4
Base 62.12 60.38 62.07 68.50 62.50 63.56
TES 77.87 72.42 70.69 73.64 72.69 72.78
PCS 73.13 72.94 67.39 65.68 60.37 63.26
Total 151.00 145.36 138.08 139.32 133.06 136.04

フリーもショートと似たような構図でしょうか。吉田陽菜選手がトリプルアクセルを入れて基礎点を押し上げています。クリーンに決まったトリプルアクセルは今季まだありませんが、フリーの方は比較的転倒無く降りています。以降はミス少なく滑ったこの試合は基礎点68.50でシニア勢の中ではトップの構成です。住吉選手は4回転を決めた試合がシーズンベストですが、サルコウが2回転になったことが影響して他の選手との基礎点差がそれほど出せていません。ノーミス基礎点は68.71になるのでノーミス吉田陽菜選手と匹敵します。

坂本選手、レビト選手、ピンツァローネ選手は同じような基礎点水準です。ヘンドリックス選手はルッツフリップ2本構成ですがループなしの6トリプル構成なことで基礎点が他より劣ります。

PCSはやはり坂本選手とヘンドリックス選手が高く73点前後まで出してきます。PCSが同じくらいならループなしのヘンドリックス選手よりも坂本選手の方がノーミス勝負すると上へ出ます。レビト選手がこの2人に次ぐPCSですが、フリー得意な吉田選手もショートよりはPCSをもらえています。基礎点差があるのでPCSで多少負けてもフリーのスコアとしては吉田選手がシーズンベストは上へ行っています。住吉選手はまだ8点平均までもらえていません。4回転込みでノーミスまで出来れば1段上に上がれますがどうか。ピンツァローネ選手はまだ60点付近のPCSですので少々苦しいです。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
Kaori SAKAMOTO 226.13 108.61 65.27 13.07 23.68 15.50
Loena HENDRICKX 221.28 108.94 62.57 8.40 26.11 15.26
Isabeau LEVITO 208.15 100.40 64.70 5.48 23.79 13.78
Kaori SAKAMOTO 205.21 103.58 59.38 5.09 24.17 13.99
Hana YOSHIDA 203.97 95.81 73.99 -0.16 22.30 13.03
Isabeau LEVITO 203.22 99.42 64.70 4.29 20.30 14.51
Kaori SAKAMOTO 203.20 106.47 52.29 7.13 23.90 13.41
Loena HENDRICKX 201.49 105.80 57.19 1.60 22.81 14.09
Nina PINZARRONE 198.80 89.92 65.29 6.15 24.31 13.13
Isabeau LEVITO 198.79 97.59 64.57 3.96 20.69 12.98
Rion SUMIYOSHI 197.76 92.38 68.10 5.24 20.74 12.30
Nina PINZARRONE 194.66 93.84 62.93 1.77 23.70 12.42
Hana YOSHIDA 190.98 87.61 68.58 -0.45 21.95 13.29
Rion SUMIYOSHI 190.21 92.75 67.40 -4.95 22.74 13.27
Hana YOSHIDA 185.45 91.54 66.92 -6.44 21.57 13.86
Nina PINZARRONE 181.06 84.20 65.29 -2.85 24.13 11.29
Nina PINZARRONE 155.43 72.41 61.30 -7.06 19.16 11.62

PCSは坂本選手とヘンドリックス選手は108点まで出してきます。ショートフリー合わせて9点平均ということです。他に100点に届くのはレビト選手までです。

ジャンプの基礎点は吉田陽菜選手だけ70点台がありますがそこまで出たのは1試合だけです。住吉選手が67.40があって2番目。続くのはピンツァローネ選手で65.29 シーズンベストの下位3人の方がジャンプの基礎点は高いという、男子とは全く違う構図が女子にはあります。

ジャンプの加点は坂本選手のみ二桁があります。ヘンドリックス選手の+8.40がそれに続きます。吉田選手は3試合でプラスがなし。トリプルアクセルを2本入れるリスクがこの辺に表れています。

スピンはヘンドリックス選手が26点台を出しました。ピンツァローネ選手が24.31をもっていて2番目。ベルギー勢がスピンは上位です。

ステップ系要素は坂本選手とヘンドリックス選手が15点台を出します。他は13点台以下です。

 

シニア女子も日本勢は3人います。今期はベルギーから2人、アメリカから1人です。ショートは坂本選手とヘンドリックス選手、ちゃんとノーミスしたら2人が上に抜けそうですが、そこに取りつけるとしたらトリプルアクセル込みノーミスで吉田陽菜選手が滑った時でしょうか。フリーは基礎点と出来栄えの両立をさせる坂本選手が基本的には強そうですが、すべての試合でノーミスできるわけでもない。基礎点劣ってもヘンドリックス選手が高い出来場でスコアを伸ばすか、基礎点勝負なら強い吉田選手がノーミスをここで魅せてくるか、あるいは4回転を住吉選手が上位に来る、という線もありますし、安定のレビト選手が1人上に勝ち残る、という展開もあるかもしれません。

日本勢にとっては代表選考の条件として、グランプリファイナル出場者上位 2 名というのがありますので、吉田選手と住吉選手はどちらが上に行くか? というのが大事です。2人とも坂本選手に勝てば2人ともそこの選考基準を満たせます。シーズンベスト上位3人という基準を満たす最後のチャンスになりますので、現在1位2位の坂本選手と吉田陽菜選手は関係ないですが、5位の住吉選手は3位の203.22を超えたいです。また、シーズンランキングも選考の基準になりますが、住吉選手はファイナルを5位以内で終われば、日本勢の3位以内に入ってこられますのでこれも1つの目標になります。吉田選手はすでに2位、坂本選手は1位ですので、特に影響ありません。選考を考えると日本勢3選手の中で住吉選手にとって特に大事な試合になります。

まあ、選考も大事なわけですが、グランプリファイナルそれ自体も十分に大事な試合です。勝ったことないので勝ちたい坂本選手、大きな試合で表彰台に乗りたい吉田選手住吉選手。日本勢3人にとってもそうですし、三原選手もいませんので、誰が勝っても初優勝でもある。昨年と3人は同じ顔触れですが、大変興味深い試合となっています。